覆面姿でポーズを決める村田夏南子。
日本人2人目の快挙なるか
Photos(C)Dave Mandel, Invicta FC

 2019年11月1日(金・現地時間)アメリカ・カンザス州カンザスシティのメモリアル・ホールで開催される『Invicta FC 38』の前日計量が、10月31日(木・同)に行われた(計量の模様はこちらのInvicta FC公式YouTubeでご覧いただけます)。

 今大会には日本から村田夏南子(26)が参戦し、メインイベントでエミリー・ダコーティー(25=アメリカ)とInvicta FC世界ストロー級王座決定戦を争う。

村田と対戦するダコーティー

 計量は村田が114.9ポンド(52.12キロ)、ダコーティーが114.2ポンド(51.8キロ)で、ストロー級リミットの115ポンド(52.16キロ)をそれぞれパス。

 ハロウィンコスチュームで計量に臨む選手もいる中、村田は恒例のサクマシンならぬカナコマシンのマスク姿で登場し、結果が告げられるとお馴染みのレスリングポーズを披露。対するダコーティーは真顔でさっそうとポージングを決め、村田から握手の手を差し出されると一瞬微笑んで応じた。

リサ・ヴァーゾサ(左)とケリ・ケネソン(右)。
バンタム級で対戦する両者がハロウィン仕様に

 当初、今大会のメインイベントはInvicta FC世界フライ級タイトルマッチで、王者ヴァネッサ・ポルト(35=ブラジル)がカリーナ・ロドリゲス(34=メキシコ)の挑戦を受け、初防衛戦を戦う予定であったが、ロドリゲスが計量を超過したことから、試合は3Rのノンタイトル戦(ワンマッチ)で実施されることになり、順番もセミファイナルに変更。村田vsダコーティーの王座決定戦がメインイベント昇格となっている。

 セミファイナルの計量結果は、フライ級リミットの125ポンド(56.7キロ)に対し、ポルトが124.2ポンド(56.34キロ)で、ロドリゲスが1.1ポンド(0.5キロ)超過の126.1ポンド(57.2キロ)。ロドリゲスにはファイトマネーの25%分が罰金として課されている。

ロドリゲス(右)が計量超過。
王者ポルト(左)はノンタイトル戦に臨む

 ここからは改めて村田とダコーティーの戦歴を中心に綴りたい。

 村田はアマチュアレスリングからMMAに転向し、2016年4月の『RIZIN.1』でプロデビュー。今回の試合は10勝(2KO・TKO/4SUB)1敗の通算戦績で迎える初のタイトルマッチだ。

 唯一の黒星は2016年12月のプロ5戦目。『RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2016』のワンマッチで、中井りんに喫した一本負け。

Movie(C)RIZIN FF

 初黒星に大粒の悔し涙を流した村田だが、ここから奮起して破竹の6連勝をマーク。さらに直近の4戦は全て一本勝ちしており、フィニッシュ力にもいっそう磨きがかかっている。

 前回の試合は今年6月の『Invicta FC 35』。数々のUFC女子トップファイターを輩出し、世界最高峰への登竜門とも言えるInvicta FCで満を持してのデビュー戦に臨み、リアーナ・ピロシン(ブラジル)からリアネイキドチョークで一本勝ちしている。フィニッシュタイムは1R2分11秒だった。

 この試合から6日後、当時のInvicta FC世界ストロー級王者ブリアナ・ヴァン・ビューレン(アメリカ)がUFCと契約し、ベルトを返上。さらに日本人トップファイターとしてInvicta FCストロー級戦線を牽引し、タイトルコンテンダーでもあった魅津希[みずき]もUFCと契約を結び、Invicta FC2戦目の村田に早くもチャンスが巡ってくることになった。

 一方、ダコーティーも村田と同じくInvicta FC2戦目でのタイトルマッチとなるが、北米MMAのメジャー舞台を経験している点では一日の長がある。2016年から2年間、UFCに次ぐメジャーの舞台、Bellatorに在籍。現在よりも1階級上のフライ級で、2度のタイトルマッチを戦うなど活躍してきたからだ。

 2016年12月の『Bellator 167』では、村田の友人でもあるイリマレイ・マクファーレン(アメリカ)とBellator世界女子フライ級初代王座決定戦を争い、判定負け。2連勝を挟んで臨んだ翌年11月の『Bellator 186』では、挑戦者という立場でマクファーレンと再び拳を交えたが、5R一本負けとなった(マクファーレンは2度目の防衛に成功)。

Movie(C)Bellator

 マクファーレンとの再戦に敗れてからは、昨年3月の『Bellator 195』でクリスティーナ・ウィリアムス(アメリカ)に判定負け、昨年7月の『Bellator 202』でヴィータ・アルテアガ(アメリカ)に判定負け。Bellatorで4勝(0KO・TKO/3SUB)4敗の戦績を残し、新天地を目指すことを選択している。

 まずは今年2月に『Xtreme Fight Night 356』で再起戦に臨み、キャスリーン・パプロッキー(アメリカ)に3R一本勝ち。ちなみにパプロッキーはこの試合の前、昨年11月の『Invicta FC 32』でプロデビューし、オランダ女子キックボクシング界のホープ、イシス・ヴァービーク(オランダ)に判定勝ちしていた。

 そして迎えた今年8月の『Invicta FC 36』。ストライカーのジャナイサ・モランヂン(ブラジル)を相手に1RTKO勝ちし、Invicta FCデビュー戦を飾るとともに、通算戦績を8勝(1KO・TKO/4SUB)5敗としている。

 Bellatorを離れてからの2戦はいずれもストロー級。そもそもBellatorで女子王座が創設されているのはフライ級とフェザー級の2階級のみだ。ストロー級を適正階級とし、Invicta FC王座獲得からのメジャー復帰、すなわちUFC参戦という定石ルートを視野に入れているのかもしれない。

 村田の今後の展望も気になるところだが、まずは目前の大一番。女子単独の団体としては世界最大とされるInvicta FCで、先人の魅津希も果たせなかったストロー級王座の初戴冠が懸かっている。また、Invicta FCで日本人王者誕生となれば、それは同じく先人の浜崎朱加が2015年7月にアトム級王座を獲得して以来、史上2人目の快挙だ。

 レスリング時代は55キロ級であの吉田沙保里に肉薄し、後にリオ五輪でフリースタイル63キロ級の金メダリストに輝く、川井梨紗子からもフォール勝ちするなど、将来を担う逸材として注目を集めた。

 その後、体重区分の変更により55キロ級は消滅。吉田が53キロ級を選択し、58キロ級に伊調馨が君臨という状況の中、村田は63キロ級で夢の五輪出場を目指していたようだ。

 それから紆余曲折あって、というのはあくまで想像だが、辿り着いた舞台は2016年8月のリオ五輪ではなく、2015年大晦日のRIZINのリング上でのMMA挑戦表明だった。

「応援よろしくお願いしますとは言いません。言わなくても誰からも応援されて、期待される選手になりたいと思っています」

 当時は東京五輪出場を目指しながら二足のわらじをはくという気持ちもあったようだが、すっかり総合格闘家として戦う姿が定着した今では、これ一本で世界を目指していることがうかがえる。

 いずれにしても村田は明日勝てば新たな歴史を創り、新たなステージで世界最高峰への扉を開くのかもしれない。

Movie(C)Invicta FC
Movie(C)Invicta FC