フリーエージェントになったことが報道され、今後の去就が注目されるペイジ・ヴァンザント(右)。夫のオースティン・ヴァンダーフォード(左)はBellator MMAのミドル級で活躍中だ Photo(C)Bellator MMA

UFC』との契約を満了し、フリーエージェントとなったことが現地の報道で伝えられている有名女子総合格闘家のペイジ・ヴァンザント(26=アメリカ)。今後の去就が注目される中、『Bellator MMA』のスコット・コーカー代表が、ヴァンザント獲得に意欲を示している。

 アメリカの格闘技専門メディア『MMAFighting』がYouTubeチャンネルで行ったインタビュー『Scott Coker Talks Bellator Return, Possible Addition of Paige VanZant – MMA Fighting』で明らかとなり、その他メディアもこれに続くかたちで報じた。

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 インタビューはMMA Fightingのマイク・ヘック記者が行ったもの。その中で、ヴァンザントと契約を結ぶ可能性について問われたコーカー代表は、「本人とビジネスの話しはまだしていないが、彼女の夫とマネージメントサイドとは明確な話しをした。彼女が帰国し落ち着いたら、我々は絶対に話し合う機会を持ちたい。私が聞いたところでは、彼女は向こう(アブダビ)であまり楽しめなかったようだ」と、かなり前向きな返答をしている。

 ヴァンザントは7月12日(日)、アラブ首長国連邦・アブダビのファイトアイランド(ヤス島)で開催された『UFC 251』に出場し、女子フライ級ワンマッチで新星アマンダ・ヒバス(26=ブラジル)に1R・一本負け。ヴァンザントはこれが1年半ぶりの出場で、UFCとの現契約下における最後の試合だった。

 コーカー代表の話しに登場するヴァンザントの夫とは、現在、Bellator MMAのミドル級戦線で活躍するオースティン・ヴァンダーフォード(30=アメリカ)だ。プロ総合格闘家として9戦全勝(3KO・TKO/3SUB)の通算戦績を誇り、このうち直近の3連勝(1KO・TKO/1SUB)をBellator MMAであげている。

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 ヴァンダーフォードがBellator MMAで試合に出場する際には、ヴァンザントもセコンドの一人として来場していた。ヴァンダーフォードのバックアップもあれば、コーカー代表にとっては比較的、進めやすい交渉となるかもしれない。

 ヴァンザントは2012年6月に総合格闘家としてプロデビュー。2014年11月のキャリア5戦目を『UFC Fight Night 57』で戦い、そこから5年半以上の時をUFCで過ごしてきた。

 UFCの女子ストロー級でデビュー3連勝の好スタートを切り、ランキングも7位に上昇。リーボックとスポンサード契約を結び、ナイキとコロンビア・スポーツウェアのモデルを務めるなど、才色兼備の次世代スター候補として一気に注目の的となる。

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 しかし、2015年12月の『UFC Fight Night 80』では、自身初のメインイベントで後のUFC世界女子ストロー級王者ローズ・ナマユナス(28=アメリカ)を相手にワンマッチを戦うが、結果は5R・一本負け。UFCで4戦目にして初黒星を喫することとなった。

 このしばらく後にさらなる転機となったのが、人気ダンスリアリティ番組『Dancing with the Stars -season 22』への出演だ。この番組は、芸能人やスポーツ選手が男女ペアを組み、社交ダンスの特訓を受けながらダンス勝負で勝ち抜きを決めるというもの。

 ダンス経験があったヴァンザントは決勝まで勝ち残り、見事、2位でシーズンを終え、格闘技ファンにとどまらない、さらなる知名度を獲得することになった。

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 そうした中、2016年8月の『UFC on FOX 21』でナマユナス戦以来の再起戦に臨み、ベック・ローリングス(31=オーストラリア)に二段蹴りからのパウンド連打でインパクト大の2R・KO勝ち。自身初のファイトボーナスを手にし、まさに順風満帆といったところだった。

 だが、その4カ月後に『UFC on FOX 22』のメインイベントで、ミシェル・ウォーターソン(34=アメリカ)に1R・一本負けし、上位進出争いから一歩後退。ここから腕の負傷もあって出場機会が減り、年1回ペースになる。

 2018年には再びオクタゴンの外での活動が活発になり、初の自伝本『Rise: Surviving the Fight of My Life』を発売したり、豊胸手術を受けたことを明かしたり、交際中だったヴァンダーフォードと結婚したりと、試合に出ずとも話題には事欠かないといった状況でもあった。

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 ウォーターソン戦後は階級をフライ級に上げ、2年間で1勝1敗。そして先のヒバスとの試合に敗れ、同階級で1勝2敗となった。ストロー級の3勝2敗と合わせ、UFC戦績は5勝4敗(2KO・TKO/2SUB)、キャリアの通算戦績は8勝5敗(2KO・TKO/3SUB)となっている。

 UFCの新たな女子スター候補として期待されてきたが、近年の戦いぶりや活動を見て、競技への情熱を失っているのでは?と、その姿勢を疑問視するような声も聞かれる。

 そうした中でなされた、1年半ぶり復帰戦にしてUFCとの契約最終戦での1R敗戦、そして契約満了に伴うフリーエージェント選択という報道。

 ヴァンザント本人は最近のインタビューで、「自分はプロの格闘家、競技者として、キャリアを継続する」、「UFCでの6年間は素晴らしかったし、それが終わるかどうかはまだ定かではない」、「フリーエージェントになって自分の価値を知りたい」、「自分にとっては初めて経験する立ち位置であり、前向きに情報と知識を得たい」、「(ヒバス戦後)できるだけ早く次の試合を戦いたい。この敗戦は忘れて次に進む。交渉的なことがどれくらいかかるか分からないけれど」など、揺れ動くさまざまな思いを口にしている。

 ただ、UFCのデイナ・ホワイト代表は厳しい見方も示している。

 7月20日の大会終了後の会見で、記者から「ペイジと再契約する意志はあるか?」と問われたホワイト代表は、「そうだな…。ペイジのことは好きだよ」と、少し間を置きながら前置きを述べたうえで、「(カーティス・)ブレイズの一件の時と似ている。安定して試合に出場することができていないにもかかわらず、『ファイトマネーが十分ではない』云々言う。昨年の出場は1試合だっただろう?負傷と諸々あって。で、試合に出ると1Rでやられた。彼女は絶対にフリーエージェントを試した方が良い」と、ヴァンザントの近年のパフォーマンスと姿勢に対して不満を示した。

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 また、現在、UFC女子フェザー級の選手として活躍し、古巣のInvicta FCでは解説者も務める元Invicta FC世界フェザー級王者ミーガン・アンダーソン(30=オーストラリア)は、自身のYouTubeチャンネルの中で、ヴァンザントの今後について触れている。

 アンダーソンは「ペイジ・ヴァンザントが再び戦うと思うか?」との問いに対し、「正直、私は思わない。まずは『UFC 251』での敗戦がある。そして、ここ数年間は浮き沈みも多くあった。必ずしも多くの成功を得たとは言えない。腕の怪我も何度も再発していた。だから私は彼女が戦いから離れる道を選択しても驚かない」と話し、引退もあり得るのでは、とした。また、「もし戦うことがあるなら、その場所はUFCではないと思う」との見解も。

 そのうえで、「彼女はスターのポテンシャルを持っている。急がせないであげて欲しい。彼女はまだ若くて成長中なのだから。セイジ・ノースカットの時と同じような過ちにして欲しくない」とも続け、必要以上に外からプレッシャーをかけることも良くないと、ヴァンザントを気遣う様子も見せた。

 一時の加熱ぶりが落ち着いたとは言え、やはり関係者やファンにとってもまだまだ気になる存在であり続けるヴァンザント。その次なる選択や如何に?

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【参照動画・記事】
Scott Coker Talks Bellator Return, Possible Addition of Paige VanZant – MMA Fighting(MMAFightingonSBN)
Paige VanZant wants better contract after Amanda Ribas | UFC 251 pre-fight interview(MMA Junkie)
Paige VanZant plotting ‘comeback story’ to fight again soon and ‘show off how good I am’(MMAFighting)
Is Paige VanZant Done?(The Megan Anderson Show)