Photos(C)James Law, Glory Sports International

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2019年9月28日(土・現地時間)
アメリカ・フロリダ州マイアミ ジェームズ・L.ナイト・センター

▼メインイベント GLORY世界ライトヘビー級暫定王座決定戦 3分5R
○アレックス・ペレイラ(32=ブラジル/GLORY世界ミドル級王者)
KO 3R 2分08秒
×ドネギ・アベナ(21=スリナム/GLORY世界ライトヘビー級2位)
※ペレイラが暫定王座に就く。

ペレイラ(右)のヒザ蹴りがアベナ(左)を襲う

 GLORY世界ライトヘビー級王者アルテム・ヴァキトフ(ロシア)が腕を負傷し、来年までの戦線離脱。今大会では、GLORY世界ミドル級王者ペレイラが階級を上げ、GLORY世界ライトヘビー級2位の新鋭アベナと暫定王座を争うことになった。

 ペレイラは2017年10月の『GLORY 46: Guangzhou』で、当時のGLORY世界ミドル級王者サイモン・マーカス(カナダ)に判定勝ちしてベルトを奪取。今年5月の『GLORY 65: Utrecht』では、4度目の王座防衛を目指して元王者の強敵ジェイソン・ウィルニス(オランダ)を迎え撃ち、1R1分31秒KO勝利を収めている。

 対するアベナはGLORYライトヘビー級のホープ。日本でもお馴染みのマイク・パッセニール会長率いるMike’s Gymの所属だ。GLORY初参戦から2連勝で迎えた今年6月の『GLORY 66: Paris』で、ヴァキトフの王座に挑戦し、試合を支配していたかに思われたが、結果は無念の判定負けとなり、GLORY史上最年少での初戴冠を逃した。その試合からわずか2カ月。再び巡ってきた初戴冠のチャンスを掴めるか。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。開始と同時に左右フックとヒザ蹴りで襲いかかるのはペレイラ。アベナもペレイラをプッシュして突き放すと、すぐさま左右フックを振るっていく。パワフルな攻防の中、ペレイラの左ボディと右ローがたびたびヒット。アベナも時おり左ボディストレートを返し、ペレイラのヒザ蹴りは左右フックで迎え撃つ。終了間際にはペレイラの右ハイ強襲がアベナを脅かした。

 2R、ペレイラがすっと踏み込んで左ジャブや左フックを入れ、さらに右ハイと右ローにも繋げる。この攻撃を受けてアベナは後退。しかし中盤に入ると、ややペースダウンしたペレイラに対し、アベナが左フックを届かせる。これが効いたか、ペレイラは動きが止まり、アベナの左右フックも被弾して頭がバウンド。危ない場面となったが、ペレイラはいったん距離を取って落ち着くと、今度は右足の踵で相手の腿を蹴るヴァレリーキックを繰り出す。アベナも無理な追撃には入らない。

 3R、ペレイラが開始直後に左ローを叩き込み、続けて左ハイ、左ボディストレート、右ハイなど攻撃を散らしていく。アベナはディフェンスしながらパンチを返すが、徐々にペレイラの動きに翻弄され始める。ペレイラは左フックで切り込むと、そこから右アッパーやヴァレリーキックなどに繋げる多彩なコンビネーションも披露。アベナはワンツーを返すものの、ペレイラに左右フックとヒザ蹴りで迎え撃たれ、ここでダウンを喫する。

 アベナはなんとか立ち上がって左右フックを当てにいくが、ペレイラの電光石火の左フックをカウンターで喰らうと、マットに打っ伏したまま動かなくなった。

 ミドル級王者ペレイラが衝撃の失神KO勝ちでライトヘビー級暫定王座も獲得し、GLORY史上初となる2階級同時戴冠を達成。この日一番の歓声の中、マイクを向けられたペレイラは「この試合は自分にとってとても重要だった。アベナは手強い相手で、若さと可能性に満ちたホープだ。彼も近い将来、チャンピオンになるだろう」とアベナを称えた。

 そして、「2階級王者になったが、自分はどんな相手が準備されても受け入れて戦う。近いところで12月21日でも良いだろう」と話し、今年最後の大会『GLORY: Collision 2』への参戦をアピールした。


▼女子スーパーバンタム級 3分3R
○ティファニー・ヴァン・スースト(30=アメリカ/元GLORY世界女子スーパーバンタム級王者/同級2位)
判定3-0 ※30-27、30-27、30-27
×ジェイディー・メネゼス(27=ブラジル/元GLORY世界女子スーパーバンタム級王者/同級3位)

ストレートで射抜くヴァン・スースト(左)

 GLORY世界女子スーパーバンタム級の初代王者ヴァン・スーストと第3代王者メネゼスの初対決。ともに現王者アニッサ・メクセン(フランス)に敗れてからの再起戦となる。

 ヴァン・スーストは2016年10月の『GLORY 36: Oberhausen』で、アメル・デビー(フランス)に判定勝ちし、GLORY世界女子スーパーバンタム級王座を獲得。2017年12月の『GLORY 48: New York』で迎えた2度目の防衛戦で、メクセンに判定負けし、王座陥落となった。今年9月にはメクセンとの雪辱戦に臨むも、判定負けで王座返り咲きならず。それでもGLORY女子スーパーバンタム級においては、メクセンと渡り合える数少ない選手といえる。

 対するメネゼスもそのメクセンと3度拳を交え、1勝をあげた実力の持ち主。GLORY初参戦となった2017年7月の『GLORY 43: New York』で、メクセンを相手にワンマッチで判定負けを喫したものの、アグレッシブな戦いぶりと持ち前の耐たれ強さで一気に注目株となった。

 そして、2度目の対戦となった昨年8月の『GLORY 56: Denver』では、判定勝ちでメクセンのベルトを奪取。だが、この判定が物議を醸し、そのわずか3カ月後の『GLORY 61: New York』で即再戦。ここでメクセンの圧倒的な攻めを前にTKO負けとなり、短期間で王座を失う苦汁を味わっている。

 1R、構えはともにオーソドックス。左インローで先制したヴァン・スーストに対し、すぐさま右ローを返すメネゼス。直後にヴァン・スーストも強烈な左ハイで快音を鳴らす。メネゼスもパンチの連打から右ローを蹴ったり、バックハンドブローを狙ったりするが、ヴァン・スーストは落ち着いてディフェンス。終盤にはメネゼスがヴァン・スーストの顔面前蹴り被弾し、よろめく場面も。

 2R、メネゼスは左右ローと右ハイを飛ばすが、距離が合わずに空を切る。ヴァン・スーストはメネゼスの蹴り終わりを逃さず、右ロー、左ストレート、顔面前蹴りの連続攻撃。パンチも走り始めたヴァン・スーストは鋭いワンツーも打ち、メネゼスの左右フックが大振りになると、左右フックのカウンターをコンパクトに当てる。クリンチからのヒザ蹴り合戦もヴァン・スースト優勢。鼻から出血し始めたメネゼスは果敢にパンチを返すが、ヴァン・スーストにかわされて逆に左ボディを叩き込まれてしまう。

 3R、一気に間合いを詰めるメネゼスに対し、ヴァン・スーストはすかさずワンツースリーから右ミドル。大振りのパンチは見切られてしまうメネゼスだが、右ローと右ミドルはたびたびヒットするようになる。以降もヴァン・スーストが当てては離れるヒットアンドアウェイを展開。メネゼスの攻撃は空を切り続ける。ヴァン・スーストはクリンチに持ち込んでのヒザ蹴りも突き刺した。

 盤石の戦いをみせたヴァン・スーストが、判定3-0で元女王対決に勝利。試合後、マイクを向けられたヴァン・スーストは自身の出来について「10点満点中、6.5点か7点くらいね」と採点し、続けて「ベルトを取り戻したいわ。みんなはどう思う?」と観客に投げかけ、大きな声援を受けた。


▼フェザー級 3分3R
○エイブラハム・ヴィダレス(24=メキシコ/GLORY世界フェザー級10位)
TKO 3R 1分26秒
×ジャスティン・グレスカウィッツ(35=アメリカ)

ヴィダレス(右)の強烈ボディ

 ヴィダレスは通算戦績14戦全勝(12KO)という注目の超新星。昨年11月の『GLORY 61: New York』からGLORYに参戦し、現在までに4試合に出場している。

 対するグレスカウィッツは通算戦績41勝(18KO)24敗3分のベテラン。GLORYには昨年7月の『GLORY 55: New York』から参戦しているが、現在までに2戦2敗とまだ白星はあげていない。

 1R、ヴィダレスが多彩かつスピーディーなパンチのコンビネーションから強烈な右ローを次々とヒットさせ、早くも主導権を握る。残り1分に迫ったところで、ヴィダレスはグレスカウィッツをコーナーに追い込むと、右フックからの右ボディで先制のダウンを奪う。

 立ち上がるも力無いグレスカウィッツ。ヴィダレスがパンチのコンビネーションから右ハイ、さらに電光石火の左右ボディを叩き込むと、グレスカウィッツはその場にしゃがんでしまう。ヴィダレスがダウンを追加したが、グレスカウィッツはゴングに救われる。

 2R、なおもヴィダレスの強烈な攻撃が続く。グレスカウィッツは終盤まで持ち堪えるが、残り30秒に迫ったところで左ジャブからの右フックを被弾し、3度目のダウン。何もさせてもらえない状況のグレスカウィッツだが、ここも立ち上がってゴングを聞く。段落

 3R、ヴィダレスが左フックから右ミドルを強打し、さらに左右ボディで追撃。グレスカウィッツがコーナーを背負い、両腕で頭を抱え込んだまま体を丸めると、ヴィダレスは顔面ヒザ蹴りの2連打を突き刺す。グレスカウィッツはこの試合4度目のダウンを喫し、ヴィダレスが超新星に相応しい戦いぶりでTKO勝ちを決めた。ヴィダレスはこれで通算戦績を15戦全勝としている。

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