ウィテカー(左)とアデサニヤ(右)
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UFC 243
2019年10月6日(日・現地時間)
オーストラリア・メルボルン マーベル・スタジアム

▼メインイベント UFC世界ミドル級王座統一戦 5分5R
×ロバート・ウィテカー(28=オーストラリア/UFC世界ミドル級王者)
KO 3R 3分33秒
○イズラエル・アデサニヤ(30=ナイジェリア/UFC世界ミドル級暫定王者)
※アデサニヤが王座統一。

 ウィテカーは2009年3月にプロデビューし、ここまで20勝(9KO・TKO/5SUB)4敗の戦績。ウェルター級で連敗を喫したこともあり、2014年11月の『UFC Fight Night 55』からミドル級に階級を上げた。すると、そこから連勝街道まっしぐら。2017年7月の『UFC 213』でヨエル・ロメロ(キューバ)に判定勝ちし、UFC世界ミドル級暫定王座に就いた。

 その後、当時の正規王者ジョルジュ・サンピエール(カナダ)がベルトを返上。これを受けて、ウィテカーが暫定王者から正規王者に昇格した。だが、昨年6月の『UFC 225』で迎えた戴冠1戦目(ワンマッチ)で、ロメロを判定勝ちで返り討ちにして以降は、腹部ヘルニアの緊急手術を受けるなどして長期の戦線離脱。地元開催の今大会で1年4カ月ぶりの復帰を果たすとともに、王座統一戦のビッグマッチに臨むことになった。

 対戦相手のアデサニヤは2012年3月にプロデビューし、現在までの戦績は17戦全勝(13KO・TKO)。キックボクシングでも80戦以上を経験しており、試合を終わらせる強烈な打撃と卓越したディフェンステクニックを持ち味としている。2月の『UFC 234』では憧れの元UFC世界ミドル級王者アンデウソン・シウバ(ブラジル)に判定勝ち。4月の『UFC 236』でケルヴィン・ガステラム(アメリカ)にも判定勝ちし、UFC世界ミドル級暫定王座に就いている。

 1R、構えはともにオーソドックス。ウィテカーは左の関節蹴りを入れると、しばしの間を置いて左フックで切り込む。同様の攻撃を繰り返すウィテカー。アデサニヤは右ローを一発返し、以降はウィテカーの右ハイや右オーバーハンドを素早く距離を取りながらのスウェーバックでかわしていく。

 両者は徐々に間合いが狭まり、パンチのカウンターを狙い合うなど緊張感のある攻防に。アデサニヤの左インローをカットして、ウィテカーはすかさず右ローと左フック。今度はウィテカーが左の関節蹴りを狙うと、アデサニヤは返す刀で左ハイを入れる。終了間際に右フックを打ったウィテカーに対し、アデサニヤが一瞬のスウェーバックでかわして
右フックのカウンター。ウィテカーはダウンするが、直後のホーンに救われる。

 2R、右ローを蹴るアデサニヤだが、ウィテカーに左ジャブを合わされ上体が仰け反る。ウィテカーは左ジャブを打ちながら一気に踏み込んで右ストレート。アデサニヤは下がりながらスウェーバックするが、かわしきれずに被弾する。しかし、ダメージが受けていない様子のアデサニヤは、すぐに構えを整え直す。

 ウィテカーは再び左ジャブから懐に潜り込んでの左右フック。ウィテカーは同様の攻めを展開するが、今度はアデサニヤもスウェーバックとスリッピングアウェーなどディフェンステクニックを駆使してクリーンヒットを許さない。そしてウィテカーが再び左ジャブから踏み込んできたところへ、アデサニヤは左フックのカウンターを当てる。

 一瞬よろめいたウィテカーはすぐに距離を取らんとサイドへステップ。アデサニヤが右の拳を回しながら追いかけてくると、ウィテカーは左ジャブから右フックをフルスイングする。アデサニヤは距離を取り直して右ハイ。ウィテカーは腕を上げてガードするが、一瞬ヒザが落ちてしまう。

 アデサニヤは攻め急ぐことなく、左右フックを顔面と腹に打ち分け、ウィテカーのパンチ連打と左ハイも上体と頭を動かしてクリーンヒットさせない。するとウィテカーは気合いのかけ声を発し、左ジャブから右フックをフルスイング。アデサニヤはスウェーバックでかわして右フックを当て、次の瞬間、ウィテカーの左フックに電光石火の左フックをカウンターで合わせた。

 ヒザから崩れ落ちたウィテカーに対し、アデサニヤがパウンドを落としたところでレフェリーストップ。アデサニヤがKO勝ちで全勝記録を「18」に伸ばすとともに、ミドル級王座統一を果たした。

 マイクを向けられたアデサニヤは「俺は象のようにすべて覚えている。言った通りだよ。俺は鼻から血を流したが、今は彼(ウィテカー)が鼻から血を流している。俺たちは彼のすべてを予想していた。彼はプランA、プランB、プランCがあったんだろうが、俺たちはプランZまで持っていた。本当に信じられない。俺はKOするパワーも持っていないと言われたことがある。笑っちまう。お前らは貧弱なんだよ!」と、独特の言い回しで勝利のコメントを述べた。

 一方、地元で王座陥落となったウィテカーは「アデサニヤには脱帽だよ。偉大なストライカーだ。俺の出来も良かったんだが…彼に捕まってしまった」と勝者を称え、「俺はまだ28歳だ。また彼に会う時がくるだろう。そしてみんなに感謝したい。実は今、最高の気分なんだ。俺はどこにも行かない!」と再起を誓った。


▼セミファイナル ライト級 5分3R
×アル・アイアキンタ(32=アメリカ/UFC世界ライト級6位)
判定0-3 ※27-30、27-30、26-30
○ダニエル・フッカー(29=ニュージーランド/UFC世界ライト級15位)

 アイアキンタは5連勝(4KO・TKO)で臨んだ昨年4月の『UFC 223』で、急遽の対戦相手変更の末で、ハビブ・ヌルマゴメドフ(ロシア)とUFC世界ライト級王座決定戦を争うことになり、結果は判定負け。その8カ月後の『UFC on FOX 31』ではケビン・リー(アメリカ)に判定勝ちしたが、今年5月の『UFC Fight Night 151』でドナルド・セラーニ(アメリカ)に判定負けを喫し、今大会で再び再起を図る。

 対するフッカーは4連勝(3KO・TKO/1SUB)で臨んだ昨年12月の『UFC on FOX 31』で、エドソン・バルボーザ(ブラジル)にKO負けしたが、今年7月の『UFC on ESPN 4』ではジェームス・ビック(アメリカ)にKO勝ちして、復活の狼煙を上げた。2015年5月の『UFC Fight Night 65』で、日沖発(日本)にKO勝ちしていることも知られている。

 1R、構えはともにオーソドックス。ケージ中央を取ったフッカーに対し、アイアキンタは右方向へステップしていく。タックルのフェイントから左右フックを放つアイアキンタ。フッカーは左ジャブから右ローを届かせる。アイアキンタも時おり右ストレートと右フックのカウンターを合わせ、フッカーの右ローをキャッチしてケージに押し込むと、片足タックルに切り替えてテイクダウンを狙う。

 フッカーはこれを潰しながらエルボーと鉄槌を落としてスタンド。アイアキンタがすぐに片足にしがみついてくると、フッカーはフロントチョークを仕掛ける。アイアキンタはなんとかこれを外すも、バックマウントを許す苦しい展開。残り1分のところでアイアキンタはフッカーの足のロックを外し、脱出に成功した。

 2R、アイアキンタが構えをスイッチしながら上体に左右の動きもつけ、変則的なパンチを打つ。フッカーは素早くステップアウトしてアイアキンタの射程距離から離れ、巧く右ローを返していく。中盤に入ると、フッカーが右ストレートを外したところでアイアキンタの左ボディがようやくヒット。アイアキンタはフッカーが離れ際にもたついたところも逃さず、右オーバーハンドも打ち込む。

 しかし、フッカーはダメージを受けていない様子。アイアキンタはタックルを仕掛けるが、ここもフッカーに潰されてしまう。ほどなくして打撃戦に戻ると、アイアキンタがサウスポーの構えから狙いすました左フックをフルスイング。フッカーは頭を下げてこれをかわし、右フックのカウンターを炸裂させる。アイアキンタはダウンして尻餅。フッカーは上から徹底を落とすが、アイアキンタも下からのアンクルロックでフィニッシュを免れる。

 3R、開始早々にフッカーの右フックがヒット。それでもアイアキンタの戦い方に変化はみられない。フッカーは細かく左ジャブを突きながら間合いを保ち、アイアキンタの左ストレートを避けるとすぐさま左エルボーのカウンターも決める。左ジャブの連打から右ストレートも入れるフッカー。アイアキンタは鼻と右まぶたから出血する。以降もパンチ中心の攻防が続く中、フッカーが時おり鋭い右カーフキックでアイアキンタの足を削り、優勢を守った。フッカーが上位ランカーのアイアキンタから判定勝ちを収め、再び連勝街道に乗った。


▼ヘビー級 5分3R
×タイ・トゥイバサ(26=オーストラリア/UFC世界ヘビー級14位)
一本 2R 3分14秒 ※肩固め
○セルゲイ・スピバック(24=モルドバ)

 トゥイバサは2017年11月の『UFC Fight Night 121』からUFCに参戦し、いきなり3連勝をマーク。だが、その後は昨年12月の『UFC Fight Night 142』でジュニオール・ドス・サントス(ブラジル)にTKO負けし、プロ10戦目にして初黒星を喫すると、今年6月の『UFC 238』でもブラゴイ・イワノフ(ブルガリア)に判定負け。今回は母国で連敗脱出を目指す。

 対するスピバックは今年5月の『UFC Fight Night 151』でUFC初参戦を果たしたが、ウォルト・ハリス(アメリカ)にわずか50秒でTKO負けし、こちらもプロ10戦目にして初黒星。今大会で再起ととともにUFC初白星を目指す。

 1R、構えはともにオーソドックス。トゥイバサが開始一発目の強烈な右ローでスピバックを大きく転倒させ、会場が沸く。スピバックが背中を自らマットに着けると、トゥイバサはグラウンド勝負にはいかず、レフェリーがスタンドに戻すのを待つ。トゥイバサは右アッパーから左フックを振るい、再び右ローを蹴るが、今度はスピバックがキャッチしてテイクダウンに成功。トゥイバサはスピバックに押さえ込まれながらも、ケージ際まで移動して立ち上がる。

 しかし、以降もトゥイバサは左ローをキャッチされたり、払い腰で投げられたり、立ち上がるたびにテイクダウンを取られてしまう。袈裟固めからパンチを落とすスピバック。残り1分を切ったところでトゥイバサは脱出するが、すぐにタックルでテイクダウンされる。トゥイバサはマットに背をつけたままホーンを聞く。

 2R、スピバックが左ジャブから右オーバーハンドを伸ばし、続けてタックルでテイクダウンに成功。トゥイバサはすぐに立ち上がるも、疲労の色が濃い。トゥイバサはわずかなスタンドの時間も左右フックが不発。スピバックはタックルで難なくテイクダウンを決めると、マウントからエルボーとパンチ、さらに肩固めで今度こそフィニッシュにいく。トゥイバサが落ちたところで、レフェリーが試合をストップ。スピバックが粘りの一本勝ちで、UFC初勝利をあげた。


▼ヘビー級 5分3R
×ジャスティン・タファ(25=オーストラリア)
KO 1R 2分10秒
○ヨルガン・デ・カストロ(32=カーボベルデ)

 タファはヨーロッパ最大のキックボクシング団体『GLORY』のヘビー級戦線で活躍しているジュニア・タファの弟。兄譲りの剛腕を武器に2017年5月のプロデビューから3戦全勝(3KO・TKO)の戦績をあげ、今大会でUFC初参戦となる。

 一方、カストロも2017年11月のプロデビューから5戦全勝(4KO・TKO)。デイナ・ホワイトUFC代表が新たな才能を発掘する『Dana White’s Contender Series』で今年7月に勝利をあげ、今大会でUFC初陣を迎える。

 1R、サウスポーのタファに対し、オーソドックスのカストロ。タファは右ジャブを突きながらジリジリと間合いを縮め、カストロの右ストレートにカウンターの左フックを合わせる。カストロは組みついてタファにケージを背負わせると、離れ際にエルボーと左右フック。タファは涼しげな顔で歩を進めようとするが、カストロに右ミドルも叩き込まれて再びケージに押し込まれる。

 体勢が入れ替わり、今度はカストロがケージを背負う。タファはヒザ蹴りと右ボディを入れるが、このまま膠着状態になるとカストロを解き放つ。カストロは右ストレートを外して組みついたところで、タファの右アッパーを被弾。タファは右フックでカストロの組みつく腕を払いのける。勢いづいたタファはカストロがひと呼吸入れると、すぐさまにじり寄りながら右フックの構え。しかし次の瞬間、カストロの右ショートフックがわずかに速く打ち抜き、タファはマットにばたりと倒れ込れた。

 衝撃の失神KO勝ちでアウェーの観客を沸かせたカストロは試合後に涙し、「ありがとう、オーストラリア。とても美しい場所だ。対戦相手がすぐに回復することを祈っている。MMAのトップ中のトップの世界で自分のスキルを示す機会を与えてくれたデイナ・ホワイト(UFC代表)に感謝したい。12月も戦わせてほしい。自分は家族の生活を変えたいんだ。戦わなければならない」と切実な重いを口にした。


▼ウェルター級 5分3R
×ルーク・ジュモー(ニュージーランド)
判定1-2 ※29-28、28-29、28-29
○ディエゴ・リマ(ブラジル)

▼ウェルター級 5分3R
○ジェイク・マシューズ(オーストラリア)
判定3-0 ※30-27、30-27、30-27
×ロスタム・アクマン(スウェーデン)

▼ライト級 5分3R
○キャラン・ポッター(オーストラリア)
判定3-0 ※29-28、29-28、29-28
×マキ・ピトーロ(アメリカ)

▼ライト級 5分3R
○ブラッド・リデル(ニュージーランド)
判定3-0 ※30-26、29-27、30-26
×ジェイミー・ムラーキー(オーストラリア)

▼ライト級 5分3R
○ミーガン・アンダーソン(オーストラリア)
一本 1R 3分57秒 ※三角絞め
×ザラ・フェイリン(フランス)

▼女子フライ級 5分3R
×ナディア・カセム(オーストラリア)
TKO 2R 4分59秒
○キム・ジヨン(韓国)

※キムが規定体重をオーバーしたため、対戦相手のカセムに報奨金の20%を支払う。

▼バンタム級 5分3R
○カリッド・タハ(ドイツ)
一本 3R 3分00秒 ※肩固め
×ブルーノ・シウバ(ブラジル)

※タハが規定体重をオーバーしたため、対戦相手のシウバに報奨金の20%を支払う。

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