2019年10月26日(土・現地時間)アメリカ・コネチカット州モントビルのモヒガン・サン・アリーナで『Bellator 232』が開催されました。以下に試合レポート・結果を綴ります(※試合順を入れ替えている箇所があります)。

Photos(C)Bellator

▼メインイベント Bellator世界ウェルター級タイトルマッチ/ウェルター級ワールドグランプリ 決勝戦 5分5R
×ローリー・マクドナルド(30=カナダ/王者)
判定0-3 ※46-49、45-50、45-50
○ドゥグラス・リマ(31=ブラジル/挑戦者)
※マクドナルドが3度目の防衛に失敗、リマがグランプリ優勝とともに新王座に就く。

リマお得意の右カーフキック。
またもマクドナルドを苦しませた

 両者は昨年1月の『Bellator 192』で王座を懸けて対戦。この時は挑戦者として臨んだ“ロリマク”ことマクドナルドが判定3-0で勝利し、リマからベルトを奪っている。試合は双方流血の大激闘で、マクドナルドは3Rにリマの右カーフキック攻めで足を引きずるほどのダメージを負うが、5Rに執念のテイクダウンからパンチとエルボーで猛攻を加え、満身創痍の中で勝利を掴むこととなった。

 そして王座の移動から8カ月。両者参戦の下、ウェルター級ワールドグランプリが開幕を迎える。リマは1回戦が昨年9月の『Bellator 206』で、アンドレイ・コレシュコフ(ロシア)に5R一本勝ち。続く準決勝は今年5月の『Bellator 221』で、マイケル・ペイジ(イギリス)に2RKO勝ちし、決勝へと駒を進めた。

 一方、王座防衛戦も兼ねてグランプリに臨んだマクドナルドは、1回戦が今年4月の『Bellator 220』で、ジョン・フィッチ(アメリカ)に苦戦を強いられ判定0-1のドローとなったが、規定により勝ち上がることに。続く準決勝は6月の『Bellator 222』で、ネイマン・グレイシー(ブラジル)を判定3-0で下し、2度目の王座防衛とともに決勝進出を果たした。

 こうして迎える1年9カ月ぶりの再戦は、ウェルター級グランプリの決勝という舞台であり、王者と挑戦者が存在するタイトルマッチでもある。すなわち、マクドナルドにとってはこれが3度目の防衛戦。リマにとっては挑戦者として臨む雪辱戦だ。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。両者ステップを踏みながらの探り合いからスタート。リマがケージ中央に入り、マクドナルドはその周りを右方向へ回り込んでいく。まずはリマが右ローで先制。マクドナルドもほどなくしてタックルのフェイントから左オーバーハンドを繰り出す。

 以降はコンタクトがなく、動きがあったのは中盤すぎ。左フックで仕掛けたリマに対し、マクドナルドがダッキングでかわすと同時にタックル。リマは一気に後ろへ下がってケージを背負う。マクドナルドは両脇を差してのクラッチを組み、リマの体を揺さぶりながら足を引っかけていくが、テイクダウンすることはできなかった。

 2R、マクドナルドが再び右方向へのサークリングを開始し、リマはケージ中央。マクドナルドは拳を肩と腕を細かく動かすフェイントも混ぜつつ、サウスポーにスイッチして右ジャブから左フックを放つ。リマはさっとステップしてかわし、距離を取り直したところで右カーフキック。再びオーソドックスに戻していたマクドナルドは蹴りを受けて一瞬体を傾ける。リマがやや間合いを縮めるようになり、左ジャブと左フックで牽制してから再び右カーフキック。マクドナルドはカットしきれず、ステップが少し乱れる。

 大きく仕掛けることなく慎重に探り合う両者。観客からブーイングも飛び始めて中盤戦を迎える。ここでマクドナルドがリマの左フックに合わてタックル。リマはすかさず腰を落として胸を合わせ、ケージに押し込んでくるマクドナルドの組みを振り払う。足早にケージ中央に戻るリマ。マクドナルドは再びサークリングを開始するが、終盤にやや足の運びが重くなり、リマに右フックと左ジャブを当てられてしまう。

 3R、開始早々にリマの右ローを狙っていた様子のマクドナルドが、蹴られると同時にタックル。ここもリマが素早く反応してカットする。マクドナルドはサークリングに戻って左ジャブ。リマはより速い左ジャブでマクドナルドの鼻っ柱を突く。直後にマクドナルドはさらに深めのタックルで片足をとらえるが、リマの腰が強い。それでもリマにケージを背負わせながら両脇を差してヒザ蹴りを入れるマクドナルド。リマはマクドナルドのクラッチが緩んだところでひっぺがして脱出する。

 リマのワンツーをダッキングでかわすマクドナルド。そのまま両者が体をぶつけて組み合うと、一瞬の駆け引きからマクドナルドが離れ際にエルボーを振るう。これは空を切るが、マクドナルドは打撃の手数をやや増やし始め、左ジャブをリマの腹に当てる。リマも譲らず右カーフキックで牽制。マクドナルドは終盤にもタックルをカットされ、直後にリマの右カーフキックで足が泳ぎ、左ジャブも被弾してしまう。

 4R、マクドナルドはここでも開始早々に組みついていくが、テイクダウンできない。そしてついにリマの強烈な右カーフキックが綺麗に決まり、マクドナルドが大きくバランスを崩す。マクドナルドはステップをテンポアップさせてワンツーと前蹴りをみせ、リマが右ローを蹴ってくればすかさずタックルを合わせるが、これも防がれてしまう。リマは立ち上がろうとするマクドナルドに右アッパーを入れ、打撃戦に戻るとすぐにまた右カーフキックで削らんとする。

 ほどなくしてマクドナルドは再びタックルを試みるが、リマの足に触れるので精一杯。リマは立ち上がろうとしたマクドナルドを右カーフキックで刈り飛ばす。そしてマクドナルドが立ち上がれば、リマはすぐさま右ハイをガードの上から叩き込む。マクドナルドはしばし組みついて落ち着き、離れ際に回転エルボーを振るうも不発に終わった。

 5R、後がなくなったマクドナルドはステップとスイッチを駆使しながらワンツーや左右フックを積極的に放っていくが、リマが高速ハンドスピードで繰り出す左ジャブがみえず、1発で寸断されてしまう。それでもマクドナルドは食い下がり、リマの右カーフキックに倒れながらのタックルでついに尻餅を着かせる。しかし、マクドナルドは上からコントロールできず、リマに引っくり返される苦しい展開に。リマはマクドナルドの下からの腕十字とヒザ十字を続けて外し、背後からパンチを浴びせていく。

 マクドナルドはなんとかガードポジションに戻し、残り時間1分に迫ったところで腕十字の仕掛けからスイープに成功。ガードポジションで守りをかためるリマに対し、マクドナルドは懸命にパンチを落としたが、試合はこのまま終了を迎えた。

 リマがマクドナルドを完封し、大差の判定勝ちでリベンジ、グランプリ優勝、そして王座奪回を成し遂げた。

 2本のベルトと優勝賞金100万ドルの小切手を受け取ったリマは、感慨深げな表情を浮べながら「まず初めに、この勝利、この舞台、ここにいる家族、ここまで足を運んでくれたみんな、これらを自分に与えてくれた神に感謝したい」と喜びの第一声。

「長い道のりだったが、俺たちはやったんだ。それにしてもローリー。俺も彼にとってはタフな相手なんだろうが、本当に手強い戦士だよ。彼と再びケージを共有することができて光栄だった。尊敬の気持ちしかない。素晴らしい男さ。彼に最大の敬意を」と、マクドナルドに感謝の言葉を送った。

 また、この日の解説を務めたビッグ・ジョン・マッカーシーから、マクドナルドとの初対決で何を学んだのか、それに基づき何を変える決断をして今回の再戦に臨んだのか、を尋ねられると「ハートだ」と答え、「あの男こそがハートを意味する存在なんだ。最初の戦いでそれが分かった。あの戦いから俺は本当に多くのことを学んだ。その意味でも彼には感謝している。自分にかけがえのない経験をもたらしてくれた」と続けた。

 そして敗れたマクドナルドも、今回の再戦について「とても光栄だ。自分もこの経験に感謝している。自分はかなり練習を積んできたし、仕上がりも良く、戦略も練ってきた。残念ながら、本来かけるべきプレッシャーをかけることができなかった。プレッシャーがはまって優勢になる局面もあったが、後半まで十分な力を注ぐことができなかった」と振り返り、「あまりここで深刻すぎる顔をみせたくない。素晴らしい経験ができたのだから。自分は本当に恵まれている。ワールドステージに立てたんだ。神に感謝したい」との言葉で締め括った。


▼セミファイナル 175ポンド(79.38キロ)契約 5分3R
○ポール・デイリー(36=イギリス)
TKO 2R 1分30秒
×サヤッド・アワッド(36=アメリカ)

デイリーが前手を軽く曲げて合わせたエルボー。
爆発力の中で巧さも光った

 デイリーは当初、サバ・ホマシ(アメリカ)との対戦が予定されていたが、ホマシが大会6日前に負傷欠場。これによりアワッドが急遽、代役として参戦し、デイリーと拳を交えることになった。

 アワッドは10月4日にカリフォルニア州テメキュラで開催された『Bellator 229』に出場し、ゴイチ・ヤマウチ(ブラジル)に一本負けしたばかり。3連敗中ということもあってか、22日という短いスパンでの試合を承諾し、西海岸から東海岸まで足を運んで再起を目指すことになった。

 一方、デイリーは今年6月に母国イギリス・ロンドンで開催された『Bellator 223』で、元UFCの実力者エリック・シウバ(ブラジル)に判定勝ち。連敗を2で止め、復活の狼煙を上げた。

 通算戦績はデイリーが41勝(31KO・TKO/2SUB)17敗2分、アワッドが23勝(10KO・TKO/7SUB)13敗1ノーコンテスト。ともに36歳のベテラン対決だ。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。上下にステップしながらケージ際を右へ左へと移動するアワッドに対し、中央から見据える構えのデイリー。蹴りを散らすアワッドの右ローが時おり当たる。

 デイリーが右アッパーのフェイントをみせると、アワッドは反射的にタックルの動き。デイリーがすぐさま腰を引いて反応すれば、アワッドは自らマットに背をつけて守りの体勢を取る。デイリーは「立て」のゼスチャー。アワッドがデイリーの打撃をかなり警戒していることがうかがえる攻防となった。

 アワッドがスタンドに戻され試合再開。デイリーはすぐに間合いを詰め、右ストレートを外したアワッド目がけて飛びヒザ蹴り。アワッドはこれをかわすとサークリングを再開し、前蹴りと右カーフキックを放つ。デイリーは追いかけて二段蹴り。続くパンチの攻防ではアワッドがショートの右フックをヒットさせ、デイリーも左アッパーと右ハイのコンボを返す。

 デイリーの二段蹴りをキャッチして組むアワッド。デイリーはこれを振り払うと、右オーバーハンドを振るってきたアワッドに前手のエルボーを巧く当てる。デイリーのワンツーも喰らったアワッドは、自らマットに背をつけてゴングを待った。

 2R、デイリーは序盤からパンチをガンガン振るっていくが、右アッパーからの左フックに飛びヒザ蹴りを加えたところで、着地に失敗して転倒。アワッドは立ち上がるデイリーの背後から組みつく。潰されそうになっても踏ん張るデイリー。アワッドはテイクダウンが難しいとみたか、いったん自ら離れる。

 するとほどなくしてデイリーが右カーフキックで仕掛け、アワッドが片ヒザを落としながら右ストレートを返してきたところへ、強烈な左フックのカウンター。これが見事に決まり、腰からマットに崩れ落ちたアワッドは両手で顔を覆う。デイリーが追撃の鉄槌を落としたところでレフェリーが試合を止めた。

 デイリーがTKOで2連勝をマーク。アワッドは緊急参戦ではあったが、苦しい4連敗となった。


▼160ポンド契約 Feature Bout 5分3R
×ニック・ニューウェル(アメリカ)
判定1-2 ※28-29、29-27、28-29
○マニー・ムーロ(アメリカ)

隻腕[せきわん]で戦うニューウェル。
スタミナを消耗した後半に逆転を許した

 1R、序盤にニューウェルが組みの攻防を制し、ムーロの上から覆い被さるようにして右手でチョークを仕掛けるが、これは惜しくも極まらず。ニューウェルはなおも優位なポジションをキープしながら左手でパウンドも落とし、バックマウントから腕十字を狙うなど優勢に試合を運ぶ。

 2R、組みついてきたムーロをニューウェルが右手一本で投げ飛ばし、再びバックマウントからのチョークで攻め込む。ニューウェルはしばらく粘るも極まらないとみたか、いったん胸を合わせてからタックルに切り替え。ムーロはがぶって踏ん張り、ニューエルが引き込みに失敗したところで背後に回り込む。ニューウェルはしぶとく組みつくも疲労。終了間際にムーロが上から押さえ込むようになった。

 3R、ムーロが組みついてテイクダウン。ニューウェルはムーロに背中を許しながら立ち上がるが、ほどなくして再びグラウンドに引き込まれる。この展開が繰り返されると、残り時間2分を切ったところでムーロが背後からニューウェルの胴を両足で挟み込み、足首をフックして動きを制す。ニューウェルは亀の状態でムーロにパンチを打ち込まれ、試合終了を迎えた。

 組みと寝技の攻防が続いた試合。ニューウェルは前半戦で主導権を握ったが、後半戦はスタミナの消耗もあってムーロに巻き返しを許し、スプリット判定負けとなった。ニューウェル寄りだった観客はこの結果に大ブーイング。ホームタウンで悪役扱いとなってしまったムーロは、勝利者インタビューに応じるもコメントを続けられず、やけくそ気味に「オクラホマー!」と叫んだ。


▼160ポンド契約 Preliminary Bout 5分3R
−ベイビー・スライス(27=アメリカ)
ノーコンテスト
−クレイグ・キャンベル(34=アメリカ)

後頭部に落とされたスライスのエルボー

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。スライスが左ジャブに続けてワンツースリーのパンチを繰り出すなど積極的。キャンベルはスライスの右カーフキックで体が傾く。スライスはすぐに2発目の右カーフキック。キャンベルはこれをキャッチしてタックルを仕掛けるが、ケージを背負って防いだスライスにエルボーと鉄槌を落とされてしまう。直後にキャンベルが四つん這いのまま動かなくなり、レフェリーが試合を止めた。

 スライスの1R38秒TKO勝ちがコールされ、キャンベルもこれを拍手で祝福した。

 しかし後日、結果がノーコンテストに変更されていたことが、現地の報道で明らかに(試合直後に解説陣からもエルボーが後頭部をとらえていたとの声はあがっていた)。映像検証の結果、スライスの放ったエルボーがキャンベルの後頭部をとらえていたことが確認され、これが試合のストップに繋がるダメージになったと考えられるため、裁定は偶発的な反則によるノーコンテストに変更されたとのことだ。


▼136.25ポンド契約 Feature Bout 5分3R
○パトリック・ミックス(アメリカ)
一本 1R 3分49秒 ※ヒザ十字
×アイゼヤ・チャップマン(アメリカ)
※チャップマンがバンタム級規定体重をオーバー。試合は136.25ポンド契約で実施。

▼ウェルター級 Preliminary Bout 5分3R
×デメトリオス・プラザ(アメリカ)
一本 3R 3分03秒 ※リアネイキドチョーク
○ライアン・ハーディー・エヴァンス(アメリカ)

▼ライト級 Preliminary Bout 5分3R
○ランス・ギブソンJr.(カナダ)
KO 1R 1分58秒
×ドミニク・ジョーンズ(アメリカ)

▼ライト級 Preliminary Bout 5分3R
×マーカス・スリン(アメリカ)
一本 2R 5分00秒 ※フロントチョーク
○デヴィン・パウエル(アメリカ)

▼フライ級 Preliminary Bout 5分3R
○ジョニー・ロペス(アメリカ)
判定3-0 ※29-28、30-27、30-27
×ダン・コーミエ(アメリカ)

▼バンタム級 Preliminary Bout 5分3R
×ジョン・ドゥーマー(アメリカ)
判定3-0 ※30-26、30-27、30-27
○ジョーネル・ルーゴ(アメリカ)

▼フライ級 Preliminary Bout 5分3R
○ザルーク・アダシェフ(アメリカ)
TKO 2R 1分39秒
×テヴィン・ダイス(アメリカ)

▼フェザー級 Feature Bout 5分3R
−ロビン・ファン・ロスマレン(オランダ)
試合中止
−クリス・レンシオーニ(アメリカ)
※ロスマレンがフェザー級規定体重を大幅にオーバー。レンシオーニが対戦を拒否したため試合は中止。

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