2019年11月15日(金・現地時間)イスラエル・テルアビブのメノーラ・ミヴタキム・アリーナで『Bellator 234』が開催されました。以下に試合レポート・結果を綴ります(※試合順は入れ替えています)。

Photos(C)Bellator

▼ヘビー級 Main Event 5分3R
×セルゲイ・ハリトーノフ(39=ロシア)
TKO 2R 3分15秒
○リントン・ヴァッセル(36=イギリス)

ヴァッセルにジャブを突かれるハリトーノフ

 ハリトーノフは2003年から2010年にかけてPRIDE、DREAM、K-1などを舞台に日本で活躍し、その後もStrikeforce、GLORY、M-1 Challengeなど世界の有名団体で戦ってきたベテランだ。Bellatorには2017年3月の『Bellator 175』から参戦中。そのデビュー戦こそハビー・アヤラ(アメリカ)に16秒KO負けを喫したが、以降は昨年10月の『Bellator 207』でロイ・ネルソン(同)に1RKO勝ち、今年8月の『Bellator 225』でマット・ミトリオン(同)に2RTKO勝ちするなど好調を維持する。通算戦績は29勝(17KO・TKO/10SUB)6敗2ノーコンテスト。

 対するヴァッセルはBellatorライトヘビー級のトップファイターで、戴冠こそ逃しているが2度のタイトルマッチを経験するなど活躍してきた。ヘビー級に階級を上げて臨んだ今年3月の『Bellator 218』では、ワレンティン・モルダフスキー(ロシア)に判定負け。ライトヘビー級から続く連敗が3となり、再びヘビー級での出場となる今大会で再起を目指す。通算戦績は18勝(6KO・TKO/8SUB)8敗1ノーコンテスト。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。ジリジリと前に出てくるハリトーノフに対し、ヴァッセルは足を後ろへ運んで一定の距離を保つ。ハリトーノフは相手の腹と顔面に向けて左ジャブを伸ばしていくが、ヴァッセルに右カーフキックをタイミング良く合わされてヒザががくっと落ちる。サウスポーにスイッチしたヴァッセルはサークリングしながら左ストレート、右の前蹴り、左ハイも飛ばしていく。

 なかなか拳を届かせることができないハリトーノフはさらに前がかりになろうとするが、ここでヴァッセルに組みつかれてグラウンドに引き込まれる。ハリトーノフは対処が遅れてヴァッセルに背中を許し、パンチとエルボーを落とされる状態に。ヴァッセルはハリトーノフが強引に立ち上がろうとしても落ち着いて潰し、両足を相手の胴に回して巧く動きを制しながら拳を落とした。

 2R、左ジャブの突き合いでスタートし、ほどなくヴァッセルがサウスポーにスイッチしてサークリングを開始。ハリトーノフが追いかけてきたところで、ヴァッセルは巧くタックルで意表を突いてテイクダウン、さらにパスガードからマウントを取る。ハリトーノフはブリッジで引っくり返さんとするも、失敗して横向き寝の状態に。ヴァッセルはハリトーノフをうつ伏せにさせ、馬乗り体勢で相手の両耳辺りを殴りつける。ハリトーノフはガード一辺倒でもはや成す術がない。ヴァッセルが一方的に打ち込む様子を見てレフェリーが試合を止めた。

 ヴァッセルが好調の相手をTKOに下して連敗脱出。ハリトーノフはBellatorデビュー戦以来、2年8カ月ぶりとなる黒星を喫した。


▼ウェルター級 Main Card Bout 5分3R
○ハイム・ゴザリ(46=イスラエル)
一本 1R 4分12秒 ※ヒールホールド
×アルトゥール・プロニン(31=ロシア)

師ヘンゾとともに歩んだゴザリ

 ゴザリはヘンゾ・グレイシー門下で、ノーギワールド2014・ウルトラヘビー級(マスター2)3位などの実績を持つ46歳。総合格闘家としてのプロデビューは1998年だが、試合間隔が4年、6年ほど開く時期もあって、通算戦績は11勝(1KO・TKO/10SUB)6敗となっている。昨年11月の『Bellator 209』でライアン・クートゥア(アメリカ)に判定負けしたが、今年7月の『Bellator 222』ではグスタヴォ・ウーリッツァー(ブラジル)に1R一本勝ち。この間にウクライナで2試合を戦い、いずれも1R一本勝ちしていることが記録されている。母国開催の今大会で引退する意向を示しており、勝って有終の美を目指す。

 対するプロニンはBellator初参戦のファイターで、プロデビューは2014年。通算戦績が16勝(7KO・TKO/9SUB)3敗となっており、勝った試合は全てフィニッシュしている。現在7連勝中と勢いもあり、ゴザリにとって簡単な相手ではなさそうだ。

 1R、構えはゴザリがサウスポー、プロニンがオーソドックス。プロニンは二段蹴りや後ろ回し蹴りを飛ばすが、横蹴りを放ったところでゴザリのタックルにつかまりテイクダウンされてしまう。スクランブルの中でマウントとバックマウントを取ったゴザリ。プロニンは腰を上げてゴザリの三角絞めをちぎるが、足関節を狙われてグラウンドに引き戻される。ガードポジションのゴザリは両足を徐々に上方へ移動。察知したプロニンは絡みつくゴザリを振りほどいて立ち上がる。

 ゴザリも続いて立ち上がり、すぐにプロニンのパンチをかいくぐりながら組みついてグラウンドに引き込む。プロニンは下から絡みつくゴザリを抱え上げてから軽く落として脱出すると、今度は自らタックルで豪快にテイクダウンを決めて果敢にグラウンド勝負にいく。しかし、結果としてこれが裏目に。プロニンはゴザリの腕十字を嫌がって立ち上がったところで、今度はヒールホールドにつかまってしまい、直後に激痛に襲われたか、急いでタップした。

 ゴザリが自分の土俵に飛び込んできた相手を逃すことなく、しっかりと一本勝ち。試合後、“ビッグ”・ジョン・マッカーシーからマイクを向けられたゴザリは「これで終わりだ」と言ってグローブを外し、自身の愛称“バットマン”のマスクとともにマットに置いて引退宣言とした。

 そして大きな歓声の中、改めてスピーチに臨んだゴザリは「イスラエルで戦うと世界最高の気分が味わえるんだ。みんな愛している。そして、MMAをこんなにも大きなものにしてくれてありがとうとも言いたい。みんなのおかげでアリーナーは満杯だ。ありがとう」と観客に向けて感謝の言葉。「自分は柔術とともに存在している。私の師であるヘンゾ・グレイシーはいつもともに戦ってくれた。私が知る全ての技は彼から学んだものだ。彼のおかげだ」と、近くではにかむヘンゾにも言葉を送る。

 すぐ次に試合をひかえる息子のアヴィブをはじめ、イスラエルにはシモン・スモトリツキーやアダム・ケレシュといったホープも誕生。ゴザリは「誇りに思うよ。20年前、イスラエルでは誰もMMAを知らなかった。でも今は見ての通り、みんながMMAのことを知っている。そして才能ある新たな選手も続いている。あと5年ほどすれば、イスラエルから世界王者が誕生するだろう」と話し、イスラエルMMAの繁栄を願って締め括った。

 ハイム・ゴザリ。生涯戦績は12勝(1KO・TKO/11SUB)6敗。


▼ライト級 Preliminary Bout 5分3R
○アヴィヴ・ゴザリ(18=イスラエル)
一本 1R 56秒
×ザカ・ファトゥラザデ(22=ウクライナ)

https://twitter.com/BellatorMMA/status/1195538149331492867

 アヴィヴはハイム・ゴザリの息子。昨年11月の『Bellator 209』でプロデビューし、現在3戦連続の1R一本勝ちを収めている。今大会で対戦するファトゥラザデはBellator初参戦のファイターで、通算戦績は14勝8敗(2KO・TKO/7SUB)。キャリアで大きく勝る相手に対し、アヴィヴは勝利で父の引退に花を添えることができるか。

 1R、構えはファトゥラザデがオーソドックスで、アヴィヴが父ハイムと同じサウスポー。アヴィヴはいきなり左右の拳を連打しながら突進し、ファトゥラザデがケージを背負ったところで首相撲にとらえてヒザ蹴り。ファトゥラザデはこれを振りほどいて距離を取らんとするが、追いかけてきたアヴィヴに蹴り足をキャッチされてテイクダウンを許してしまう。続くスクランブルの中、アヴィヴががぶりの体勢からアナコンダチョークにとらえ、ファトゥラザデの体を綺麗に引っくり返しての絞め上げ。これがしっかりと極まり、ファトゥラザデがタップした。

 アヴィヴが秒殺一本勝ちでデビュー4連勝。マイクを向けられたアヴィヴは父が2度敗れているライアン・クートゥア(アメリカ)との対戦を目標に掲げ、今後のさらなる飛躍を誓った。


▼ウェルター級 Preliminary Bout 5分3R
○ホブソン・グレイシーJr.(30=ブラジル)
一本 1R 4分39秒 ※三角絞め
×アミール・バシール(イスラエル)

https://twitter.com/BellatorMMA/status/1195519403149758464

 ホブソンはヘンゾ・グレイシーの弟。プロデビュー戦となった昨年12月の『Bellator 212』で、ブライソン・ボラハオ(アメリカ)にリアネイキドチョークで2R一本勝ち。続くプロ2戦目は今年7月の『Bellator 222』で、オスカー・ヴェラ(同)に腕十字で1R一本勝ち。今大会がデビュー3連勝を目指す。

 対するバシールは今年4月にイスラエルのKnock-Out MMAでプロデビュー戦に臨んだが、肩固めで1R一本負け。今回の試合が再起戦となる。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。左インローを蹴ってくるバシールに対し、ホブソンはジリジリと間合いを狭めていき、左の拳を振るって一気に組みつく。バシールはホブソンにケージ際でテイクダウンされ、早々からマウントも許す苦しい展開。ホブソンは肩固めをセットして必勝態勢に入るが、ややかかりが甘くなってしまっているか、バシールがなかなかタップしない。このまま時間が経過して迎えた終盤、ホブソンは腕十字に切り替え、バシールが防いで立ち上がろうとしたところで三角絞め。ホブソンがバシールに逃げ切ることを許さず最後はタップさせた。

 ホブソンがまたも1R一本勝ちで3連勝をマーク。セコンドに就いたヘンゾも笑顔で祝福した。


▼女子フェザー級 Preliminary Bout 5分3R
×オルガ・ルビン(30=イスラエル)
TKO 2R 4分33秒
○シネイド・キャヴァナー(33=アイルランド)

https://twitter.com/BellatorMMA/status/1195521827587575809

 ルビンはロシア生まれの移民で、2016年11月にイスラエルで開催された『Bellator 164』でプロデビュー。6戦全勝で臨んだ今年7月の『Bellator 224』では、自身初のBellator世界女子フェザー級タイトルマッチに臨んだが、王者ジュリア・バッド(アメリカ)の前に1RKO負けし、初戴冠を逃すとともに初黒星を喫した。通算戦績を5勝(2KO・TKO/1SUB)1敗とし、今大会で再起を目指す。

 対するキャヴァナーはアマチュアボクシングのアイルランド国内王者として活躍した実績を持つファイター。ボクシングでは2012年のロンドン五輪出場も目指していたが、疑惑の判定に泣かされたことで情熱を失い、MMAの道に進むことを選択している。2015年にBAMMA(British Association of Mixed Martial Arts)でプロデビュー。現在までの通算戦績は5勝(3KO・TKO/1SUB)4敗だが、このうちBellatorでは6試合を戦って2勝(1KO・TKO/0SUB)4敗と負け越し。前戦は今年7月の『Bellator 224』で、元UFCファイターのレスリー・スミス(アメリカ)に判定負けしている。

https://twitter.com/BellatorMMA/status/1195518869554618368

 1R、サウスポーのルビンは左ストレートを放ちながら近づき、キャヴァナーがケージ際で詰まったところで組みついてテイクダウン。キャヴァナーは倒れ際にギロチンチョークを仕掛ける。ルビンは時おり苦しそうな表情になりながらも腰を上げてパウンドを落とし、キャヴァナーの絞めが緩んだところで首を抜く。ルビンがパウンドを落とせば、ガードポジションのキャヴァナーも負けじとエルボー。膠着したところでレフェリーが両者をスタンドに戻す。すると終了間際、攻め疲れた様子のルビンに対し、キャヴァナーのワンツーがヒット。ルビンは足元がふらついてしまう。

 2R、鋭い左ジャブを突いていくキャヴァナー。ルビンはダメージが抜けておらず、ワンツーを返すもののスピードがない。キャヴァナーは流石のハンドスピードをみせ、右ストレート、右フック、右アッパーなどを次々と決める。ルビンはうつろな表情で足がそろう場面も。キャヴァナーは怒濤のパンチ連打でさらにたたみかけ。ルビンはケージに釘付けにされてもなんとか倒れずに踏ん張り、キャヴァナーがやや打ち疲れたところで組みにいくが力無くさばかれてしまう。キャヴァナーは気合いの声を張り上げながら再びパンチのコンビネーション。ルビンがサンドバック状態になったところで、レフェリーが試合を止めた。

 タイトルコンテンダーを相手に自身の持ち味を発揮したキャヴァナーが、価値あるTKO勝ちで連敗脱出。一方、ルビンは母国で再起を飾ることができず、タイトル戦から2連敗となった。


▼ライト級 Co-Main Event 5分3R
×ロジャー・フエルタ(アメリカ)
判定0-3 ※28-29、27-30、27-30
○シドニー・アウトロー(アメリカ)

▼ミドル級 Main Card Bout 5分3R
○オースティン・ヴァンダーフォード(29=アメリカ)
判定3-0 ※29-28、29-28、29-28
×グラチク・ボズィニャン(24=ロシア)

▼ヘビー級 Preliminary Bout 5分3R
○アダム・ケレシュ(イスラエル)
TKO 1R 3分29秒
×ウラジミール・フェディン(ロシア)

▼ウェルター級 Preliminary Bout 5分3R
○シモン・スモトリツキー(イスラエル)
TKO 1R 2分10秒
×イリア・ハラッキー(ウクライナ)

▼ライト級 Preliminary Bout 5分3R
×グスタヴォ・ウーリッツァー(ブラジル)
KO 1R 1分29秒
○ヴカール・ケラモフ(アゼルバイジャン)

▼157ポンド(71.21キロ)契約 Preliminary Bout 5分3R
○キリル・メドヴェドフスキー(イスラエル)
一本 2R 46秒 ※ギロチンチョーク
×アクメド・ファラーザ(イスラエル)

▼バンタム級 Preliminary Bout 5分3R
○ラズ・ブリング(イスラエル)
判定3-0 ※30-26、30-27、29-28
×ナジリ・ダニリウク(ウクライナ)

▼ライト級 Preliminary Bout 5分3R
×オフィール・レイベル(イスラエル)
判定0-3 ※28-29、27-30、27-30
○ミカイル・ドゥルガー(ロシア)

▼バンタム級 Preliminary Bout 5分3R
○ロン・ベッカー(イスラエル)
TKO 1R 2分57秒
×アルテム・カザーツェフ(イスラエル)

▼バンタム級 Preliminary Bout 5分3R
○ベン・コーエン(イスラエル)
一本 1R 3分17秒 ※リアネイキドチョーク
×マクシム・トカチューク(ウクライナ)

▼ライトヘビー級 Preliminary Bout 5分3R
○エリ・アロノフ(イスラエル)
判定2-1 ※26-30、28-27
×サリ・ヘレイヒル(イスラエル)

▼フライ級 Preliminary Bout 5分3R
○イタイ・リプシッツ(イスラエル)
一本 1R 2分51秒 ※アンクルロック
×アイズィク・ヤコボフ(イスラエル)

▼220ポンド(99.79キロ)契約 Preliminary Bout 5分3R
×ニシム・ロザリス(イスラエル)
判定1-2 ※27-30、29-28、28-29
○ノアム・ヴォルドマン(イスラエル)