< GLORY 69: Dusseldorf >
2019年10月12日(土・現地時間)
ドイツ・デュッセルドルフ ISSドーム

Photos(C)GLORY Sports International

▼メインイベント GLORY世界ライト級タイトルマッチ 3分5R
○マラット・グレゴリアン(28=アルメニア/GLORY世界ライト級王者)
判定5-0 ※50-44、50-44、49-46、49-46、48-46
×ティジャニ・ベズタティ(21=モロッコ/GLORY世界ライト級2位/挑戦者)
※グレゴリアンが初防衛に成功。

グレゴリアンの強烈フックでベズタティの顔が歪む

 グレゴリアンはライト級世界屈指の強豪で、日本の新生『K-1』と中国の『Kunlun Fight』で世界トーナメントを制覇するなど活躍。『GLORY』にも2012年10月の『GLORY 2: Brussels』から長らく参戦している。今年5月の『GLORY 65: Utrecht』で、過去4戦4敗と相性が悪かったシッティチャイ・シッソンピーノン(タイ)から判定勝ちを収め、悲願だったGLORY世界ライト級王座の初戴冠を果たした。戦績は通算で61勝(35KO・TKO)11敗1分、GLORYで8勝(4KO・TKO)5敗。

 対するベズタティはGLORYライト級のホープで、そのルーツ、言動、ファイトスタイルからバダ・ハリ(モロッコ)と重ねられることも多く、“ワンダーボーイ”の異名を持つ。GLORYには2016年12月の『GLORY 36: Collision』から参戦。昨年5月の『GLORY 53: Lille』で一度、GLORY世界ライト級タイトルマッチを経験しているが、その時はシッティチャイに判定負けし、王座を逃している。戦績は通算で19勝(6KO・TKO)3敗、GLORYで9勝(2KO・TKO)2敗。

 1R、構えは両者ともにオーソドック。ベズタティがいきなり左右フックから飛びヒザ蹴り、直後にもクリンチからヒザ蹴りを突き上げる。グレゴリアンはブロッキング、左ジャブを返してサイドへステップ。今度はグレゴリアンが左ジャブから右ローを蹴ると、ベズタティはすぐさま右フックを顔面にヒットさせる。

 ベズタティは左ジャブからのヒザ蹴り、左ジャブからの右ハイなども好調。グレゴリアンはたびたび左フックで飛び込むが、ベズタティの素早いサイドステップでかわされてしまう。それでもグレゴリアンは徐々に圧力を強め、ベズタティをコーナーに追い込むようになると、左ジャブからの右ロー、ワンツースリーからの右ハイ、右フックからの左ボディなどのコンビネーションをまとめた。

 2R、グレゴリアンは左ジャブから右ロー、ワンツーから左インローに繋げる攻撃。ベズタティは離れ際に右アッパーや右ボディを打ち込み、グレゴリアンが前がかりになったところをヒザ蹴りで迎え撃つ。グレゴリアンは左ジャブから右ローへと繫ぐ間に、ベズタティの右ショートフックを被弾する場面も。

 残り1分に迫ったところで、グレゴリアンの左ローと左右フックが連続ヒット。ベズタティはロープを背負うが、グレゴリアンが左アッパーをフルスイングしてきたのをかわすと、すぐに右フックと右アッパーを当て返す。

 3R、グレゴリアンはパンチを素早くワンツー、ワンツースリーのテンポで散らし、左右ローへと繋ぐコンビネーションが冴えを増す。ベズタティは頻繁にサイドへステップするが、ローを蹴られるとその場で上下に跳ねる動きをたびたびみせる。

 ベズタティの左右フックと左右アッパーも強烈だが、やや単発か。グレゴリアンのブロックも固い。グレゴリアンは左ボディからの右フック、右フックからの左ボディ、この打ち分けに左右ローも混ぜ、ベズタティを削っていく。

 4R、開始早々にグレゴリアンが左ジャブの連打から左インローを蹴り、右方向へステップしたベズタティに左フックを合わせる。コーナー付近で詰まったベズタティはヒザ蹴りを突き上げるも空砲。グレゴリアンは左インロー、右フック、左アッパー、クリンチからのヒザ蹴りと怒濤の攻めに出る。追い込まれたベズタティは右ショートフックを返さんとするが、グレゴリアンに右ボディをカウンターで叩き込まれると、両手と片ヒザがマットに着いてしまう。グレゴリアンがついにダウンを奪った。

 息を切らせながら立ち上がってガードを固めるベズタティ。グレゴリアンは左アッパーの連打から左ボディと右ロー、さらに左ジャブから右アッパー、左アッパー、右フック、そして左ローと、多彩な高速コンビネーションでたたみかける。その後も足を止められたベズタティはなんとかガードを固めるが、グレゴリアンの集中砲火の中、左右アッパーで何度もアゴを突き上げられてしまう。

 5R、ベズタティは気合いのかけ声とともに右フックや左アッパーを力一杯振るうも、グレゴリアンのガードをこじ開けることはできない。グレゴリアンは細かく距離を調節しながら荒々しくも丁寧にパンチのコンビネーションと右ローを当てていく。

 ベズタティは左ミドルを返すが、軸足にグレゴリアンの右ローを受けると、バランスを崩して四つん這いに。ベズタティは立ち上がるのも遅く、ダメージがうかがえるが、これはスリップとみなされる。ベズタティはグレゴリアンの左右ローに体を傾けながらも、懸命にパンチを返したが、以降も戦況は変わらず、タイムアップとなった。

 グレゴリアンが左右ローで削り、4Rには右ボディでダウンも取った試合。ジャッジ2名が50-44の大差をつけての判定5-0で、グレゴリアンが完勝での初防衛に成功した。ベズタティはGLORY史上最年少、21歳での戴冠を果たすことができなかった。

 試合後、マイクを向けられたグレゴリアンは「ベストパフォーマンスだったと思う。試合に勝ててとても嬉しい。相手も強くなっているのが分かった。タフなのでフィニッシュすることが難しかったが、決着はついた」と満足した様子で試合を振り返り、今後の目標について聞かれると、「この階級のトップファイター全員と戦いたい」と、王者らしく堂々とした口ぶりで返した。


▼SUPERFIGHT SERIES ヘビー級 3分3R
×トマス・モズニー(28=スロバキア/GLORY世界ヘビー級5位/116.7キロ)
判定0-5 ※25-29、25-29、25-29、25-29、25-29
○アントニオ・プラズィバット(25=クロアチア/107.5キロ)

モズニーに右フックを喰らわせるプラズィバット

 2017年11月に新生『K-1』の初代ヘビー級王座決定トーナメントを制したプラズィバットが、GLORYで2戦目を迎えた。対戦相手はGLORY世界ヘビー級5位の実力者、“スロバキアの巨人”ことモズニーだ。

 プラズィバットは昨年3月の『K’FESTA.1』でK-1ヘビー級王座の初防衛戦に臨んだが、ロエル・マナート(オランダ)に判定負けしてベルトを失う。同年5月には初参戦の『ONE Championship』で、今大会にも出場しているセルゲイ・マスロボイエフ(リトアニア)に判定負けするが、その半年後にはボスニアの格闘技イベントでKO勝ち。今年6月のGLORYデビュー戦『GLORY 66: Paris』でも、ノルディーン・マハディーン(フランス)に判定勝ちし、復調している。戦績は通算で16勝(11KO)3敗。

 対するモズニーは2016年4月の『GLORY 29: Copenhagen』からGLORYに参戦中。戦績は通算で20勝(6KO)8敗1分、GLORYでは2勝2敗だ。前戦は昨年12月の『GLORY 62: Rotterdam』でGLORYヘビー級トーナメントに出場し、1回戦でジャファー・ウィルニス(オランダ)に判定負けしている。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。モズニーが前蹴りで先制し、左ジャブから右ローも蹴る。体格で勝るモズニーに対し、プラズィバットは果敢にパンチの打ち合いに持ち込み、左ショートフックや右ストレートを当てる場面も。モズニーがコーナーを背にする展開が続く。終盤の離れ際にモズニーはプラズィバットの左ジャブを被弾。距離を取らんとするモズニーに対し、プラズィバットが追いかけながらパンチをまとめた。

 2R、プラズィバットが右ローで先制し、すぐに間合いを詰めながら左ジャブと右フックをヒットさせる。早くもコーナーを背負ったモズニーはワンツーから右ハイを返すが、これはプラズィバットがすべてブロック。続くパンチの打ち合いでプラズィバットの右アッパーも当たる。そして1分が経過したところで、プラズィバットが声を張り上げながら右フックを叩き込み、モズニーはたまらず背を向けてロープにもたれかかってしまう。プラズィバットが接近戦から先制のダウンを奪った。

 試合が再開されると、コーナー付近から動かないモズニーに対し、プラズィバットはパンチをまとめて追撃。クリンチを捌かれたモズニーがそのまま倒れ込むと、レフェリーが2度目のダウンを宣告する。気力を振り絞って立ち上がるモズニー。プラズィバットが容赦無くフィニッシュにいくが、モズニーもやけくそ気味に左右フックを振るい、至近距離からの右ハイも放ってなんとか追撃を食い止めた。

 3R、プラズィバットが強烈パンチの雨を降らせると、モズニーはサンドバック状態。1分30秒を切ったところで、ふらつきながら距離を取ろうとしたモズニーにプラズィバットが鋭い左ジャブを突き刺す。モズニーはロープまで吹っ飛ばされ、この試合3度目のダウン。レフェリーストップが入っても良さそうだが、モズニーはそれでも立ち上がる。

 パンチを浴びせて仕留めにかかるプラズィバット。しかし、スロヴァキアの巨人はまだ死んでおらず、右アッパーでプラズィバットのアゴを跳ね上げ、右ショートフックのカウンターも当てる。場内は盛り上がろうというよりも騒然した雰囲気。モズニーは鼻血を流しながら後ろ回し蹴りを返し、試合終了のゴングまで戦い続けた。

 判定は満場一致。体格とパワーの差に臆すること無く接近戦でパンチの打ち合いを仕掛け、3度のダウンを奪ったプラズィバットに軍配が上がり、これでGLORYデビュー2連勝となった。一方、敗れたモズニーの意地とタフさも凄まじく、試合後には観客から大きな拍手が送られた。

 勝利者インタビューに臨んだプラズィバットは、「ハロー、ジャーマニー!みんなが試合を気に入ってくれたんじゃないかな?トマスがリングを共有してくれたことに感謝している。素晴らしいショーがみせられた。みんなが楽しんでくれたことを願うよ」と第一声。

 そして今後の目標を聞かれると、「マイク(Mike’s Gymのマイク・パッセニール会長)も言っているように、自分も一夜にしてすべてを叶えることはできないと思うし、ステップバイステップで進んでいきたい。準備も必要だし、タイミングもある。いつの日か、ベストになりたい」と堅実な言葉を返した。

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