2019年11月22日(金・現地時間)アメリカ・イリノイ州シカゴのウィントラスト・アリーナで『GLORY 71: Chicago』が開催されました。以下に試合レポート・結果を綴ります。

Photos(C)GLORY

Headline Event
▼GLORY世界女子スーパーバンタム級タイトルマッチ 3分5R
×アニッサ・メクセン(31=フランス/王者)
判定0-3 ※47-48、47-48、46-49
○ティファニー・ヴァン・スースト(30=アメリカ/同級1位/挑戦者)
※メクセンが3度目の防衛に失敗、ヴァン・スーストが新王座に就く。

メクセンを仰け反らせるヴァン・スーストの拳

 GLORYの女子二大巨頭がみたび王座を懸けて拳を交えた。両者の初対決は2017年12月の『GLORY 48: New York』。この時は王者として2度目の防衛を目指したヴァン・スーストが、過去最強の挑戦者と謳われたメクセンに判定で敗れ、ベルトを失った。

 2度目の対決は今年3月の『GLORY 64: Strasbourg』。メクセンはこの間、ジェイディー・メネゼス(ブラジル)に奪われた王座を奪い返すという展開を経験していたが、王座返り咲き後の初防衛戦としてヴァン・スーストを迎え撃ち、再び判定でその挑戦を退けている。

 メクセンは6月の『GLORY 66: Paris』でもソフィア・オロフソン(スウェーデン)を判定で下し、2度目の防衛に成功。一方、ヴァン・スーストも9月の『GLORY 68: Miami』でメネゼスとの元女王対決を判定で制し、再起を飾っている。過去2戦2敗と相性が悪いメクセンに対し、ヴァン・スーストは3度目の正直なるか。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。グローブタッチはしない。いきなりクリンチからのヒザ蹴りで仕掛けたのはヴァン・スースト。膠着するとレフェリーが引き離す。メクセンはリング中央からのワンツーと左ローで仕切り直し。ヴァン・スーストはその周りを左回りに移動しながらブロッキングと左インローで様子をうかがう。

 中盤に入るとヴァン・スーストがスーパーマンパンチからクリンチに持ち込んでヒザ蹴り、さらに離れたところから上段後ろ回し蹴りも当てにいく。メクセンはワンツーの打ち終わりにヴァン・スーストの左ハイを喰らってしまうが、これは当たりが浅かったようだ。

 2R、メクセンが左ジャブから右ハイ、そしてダブルの左ローまで繋げる綺麗なコンビネーションをみせる。しかし、ヴァン・スーストは細かいパンチの連打でメクセンを打ち合いに誘い、乗ってきたところでバックハンドブローをぶつけるなど主導権を譲らない。

 メクセンはヴァン・スーストの蹴りにパンチを合わせにいくが、すぐにクリンチで寸断されてしまう。ただ、メクセンの右ストレートとワンツーも依然鋭く、ヴァン・スーストのディフェンスが紙一重になる局面もある。

 3R、開始早々にヴァン・スーストの中段後ろ回し蹴りがヒット。ヴァン・スーストはスーパーマンパンチ、二段蹴り、後ろ回し蹴りの動きをみせつつ、左右ミドルを当ててすぐに距離を取る。メクセンは離れ際に右ローを当てるが、自らコンビネーションで仕掛ける頻度はいつもより少ない印象だ。

 メクセンの左右ローに右ストレートも合わせるヴァン・スースト。メクセンはパンチの手数を増やすが、ヴァン・スーストのカウンターのヒザ蹴りを喰らってしまう。終盤にはヴァン・スーストが右ボディストレートからの左フックもヒットさせる。

 4R、ヴァン・スーストは左ミドルを当て、直後にメクセンの右ストレートをさっと左に動いてかわす。こうした場面がこの試合ではよくみられる。メクセンはパンチを当てられないものの、ヴァン・スーストが右ローを蹴る場面では返す刀で強烈な左ローを蹴り返しており、足にダメージを与えることはできてはいるようだ。

 互いにパンチの連打から左右ローに繋げるコンビネーションをぶつけ合う中、ヴァン・スーストがバックハンドブローで意表を突こうとするが、ヒジが当たってしまうこともあり、レフェリーから注意を受けてしまう。メクセンは右目の下が紫色に腫れ上がっている。

 5R、メクセンはヴァン・スーストの左ジャブを喰らいながらの左ロー。メクセンがストレート系のパンチの連打から左ローを蹴れば、ヴァン・スーストは左右フックの連打からクリンチに持ち込んでのヒザ蹴りを突き刺す。

 白熱の攻防だが、ヴァン・スーストはやや疲労もあり、メクセンの手数に押され始める。さらにヴァン・スーストはバックハンドブローがヒジ打ちになってしまい、手痛い減点を喫してしまう。メクセンはパンチを振るって前進。ヴァン・スーストはクリンチからのヒザ蹴りでなんとか反撃を食い止めた。

 ヴァン・スーストは終盤こそメクセンの追い上げと自身の反則による減点を受けたが、全体としては過去2戦と異なるような巧さが光る戦いぶりをみせ、判定3-0で勝利。ヴァン・スーストが3度目の対戦にしてついにメクセンを破り、2年ぶりに女王返り咲きを果たした。

 勝敗のコールを受けると、メクセンはヴァン・スーストの肩を叩いて称えるが、笑顔をみせることはない。メクセンはヴァン・スーストから「アニッサ」と何度か名前を呼びかけられても、一切振り返ることなくリングを後にした。

 ヴァン・スーストは少しばつが悪そうな表情をみせたが、ベルトを腰に巻かれるとすぐに「I miss you!(寂しかったわ)」と叫んで喜びを爆発させる。

 勝利者インタビューに臨んだヴァン・スーストは「忍耐力と一貫性が報われた」と第一声。続けて「この機会を与えてくれたアニッサには感謝している。彼女はベストな状態で臨んでくれた。彼女とまた戦うことになれば私は恐れずに受けて立つわ。素晴らしい時間を過ごせたのだから」と、メクセンに向けて感謝の言葉を述べるとともに、4度目の対戦についても前向きに考えているとした。

 そして、メクセンとの過去2戦とは何が違ったのか。そう尋ねられたヴァン・スーストは、「あれこれ考えることをやめにしたの。相手をリスペクトし過ぎることもね。彼女のゲームをプレイするのではなく、私のゲームをプレイするんだって。強く殴って心は穏やかに。食事もファイトスタイルもマインドセットもそれぞれ少しずつ変えたところがあって、それも実を結んだんだと思う」と勝因を明かし、「これが私の新しいスタートになる」と今後のさらなる飛躍を誓った。

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Co-Headline Event
▼ヘビー級 3分3R
○ベンジャミン・アデグバイ(ルーマニア/同級2位)
判定3-0 ※30-26、30-26、30-26
×ディアンジェロ・マーシャル(キュラソー島/同級3位)

Featured Fight
▼ウェルター級 3分3R
○マイク・ルメール(アメリカ)
判定3-0 ※29-28、29-28、30-27
×マリク・ワトソン・スミス(アメリカ)

Featured Fight
▼ウェルター級 3分3R
○ロラント・ネルソン(南アフリカ)
判定3-0 ※29-27、29-27、29-27
×アマリ・ディエドリック(イギリス)

Superfight Series Headline Event
▼ヘビー級 3分3R
○アルカディウシュ・ゾシェク(ポーランド/同級5位)
TKO 2R 2分59秒
×デモレオ・デニス(アメリカ)

Super Fight
▼ウェルター級 3分3R
○ニック・チャスティーン(アメリカ)
TKO 2R 3分00秒
×セイジョー・イマザキ(アメリカ)

Super Fight
▼女子スーパーバンタム級 3分3R
○アリーニ・ペレイラ(ブラジル/同級5位)
TKO 1R 59秒
×クリスタル・ロウソン(アメリカ)

Super Fight
▼ミドル級 3分3R
×アンドリュー・ナヴィックス(アメリカ)
KO 2R 2分18秒
○トーマス・ジェンキンス(アメリカ)

Super Fight
▼フェザー級 3分3R
○アーサー・ソーソー(アメリカ)
判定2-1 ※29-28、28-29、29-28
×マット・ジルチ(アメリカ)

Undercard
▼ウェルター級 3分3R
○ジャスティン・モス(アメリカ)
判定2-1 ※29-28、28-29、30-27
×クチュロン・クチュロン(アメリカ)