村田夏南子がプロデビューから3年半、
アメリカのInvicta FCで初戴冠を果たした
Photos(C)Dave Mandel, Invicta FC

 2019年11月1日(金・現地時間)アメリカ・カンザス州カンザスシティのメモリアル・ホールで『Invicta FC 38』が開催されました。以下に試合レポート・結果を綴ります。

▼メインイベント Invicta FC世界ストロー級王座決定戦 5分5R
○村田夏南子(26=日本)
判定2-1 ※48-47、47-48、49-46
×エミリー・ダコーティー(25=アメリカ)
※村田が新王座に就く。

村田の右フックがダコーティーにヒット

 ブリアナ・ヴァン・ビューレン(アメリカ)がUFC参戦に伴い、Invicta FC世界ストロー級王座を返上。今大会で村田とダコーティーが新王座を争うことになった。村田が勝利して日本人王者誕生となれば、浜崎朱加が2015年7月にアトム級王座を獲得して以来、Invicta FC史上2人目の快挙となる。

 村田はレスリングからMMAに転向し、2016年4月の『RIZIN.1』でプロデビュー。これまではRIZINを中心に国内を主戦場としてきたが、今年6月の『Invicta FC 35』で満を持してのInvicta FCデビュー戦に臨むと、リアーナ・ピロシン(ブラジル)から1R2分11秒で会心の一本勝ちを収めた。通算戦績を10勝(2KO・TKO/4SUB)1敗とし、同団体2戦目となる今大会で早くもタイトルマッチに臨む。

 対するダコーティーは2016年から2年間、UFCに次ぐメジャーの舞台であるBellatorに在籍し、1階級上のフライ級で2度のタイトルマッチを戦っている実力者だ。ストロー級に階級を落としてからは、今年2月の『Xtreme Fight Night 356』でキャスリーン・パプロッキー(アメリカ)に3R一本勝ち、8月の『Invicta FC 36』でジャナイサ・モランヂン(ブラジル)に1RTKO勝ちと好調。通算戦績を8勝(1KO・TKO/4SUB)5敗とし、村田と同じくInvicta FC2戦目でのタイトルマッチとなる。

 1R、構えは村田がサウスポー、ダコーティーがオーソドックス。ケージ中央に入った村田は足幅を広めに取って上体、両腕、ステップの細かい動きを混ぜながらプレッシャーをかけていく。ダコーティーが左ジャブで牽制しつつ右インローを蹴れば、村田は左の前蹴りからのワンツーや単発の左ミドル。ダコーティーの右インローが村田の前足のスネをたびたびとらえる。

 村田は一瞬その場で跳ねて弾丸タックル。一気にステップバックしたダコーティーがケージに跳ね返されると、村田はすかさず組みつき、自ら腰を落とすようにして投げ崩す。ダコーティーは背中を許す場面もあったが、組みつく村田を振りほどく。打撃戦に戻れば、パンチを振るわんと踏み込んだダコーティーに村田が再びタックルを決めてテイクダウン成功。村田は上からパンチを落とすが、ダコーティーの腕十字にたびたびひやっとさせられる。

 2R、ステップを刻んで動き続ける村田に対し、ダコーティーも右へ左へと足を運ぶ。右インローを蹴るダコーティーに左ストレートを伸ばす村田。ダコーティーがワンツーや左ジャブからの右フックを振るえば、村田も右ジャブから左ハイを返す。ダコーティーは徐々に村田のタックルに慣れ始め、右インローのタイミングを狙われても一気にステップバックしてケージを背にしながら引きはがす。

 ダコーティーは左右ローで村田の前足を蹴り、右ストレートも上下に打ち分け。村田もスーパーマンパンチや右アッパーからの左ストレートをみせる。しばし打撃戦が続き、ダコーティーが前がかりになったところで、村田がタックルを綺麗に決めてテイクダウンに成功。村田はダコーティーの腕十字を潰しながらパンチを落としていく。

 3R、ケージ中央に入ったダコーティーが左ジャブを突きながら左ハイ強襲を狙う。ケージ際でステップを刻む村田は、相手の動きをしっかり見ながら左ストレートや右フックの一太刀を返していく。村田の組みを受け止めてヒザ蹴りを突き刺すダコーティー。村田も右アッパーからタックルとみせかけて左フックを入れる。直後に村田はこれまでよりも低空のタックルで奇襲するが、ダコーティーは足を掴ませない。

 残り時間1分。ダコーティーがパンチのコンビネーションで仕掛けると、村田がタックルから片足をとらえて転がすことに成功する。村田の粘りがようやく実を結ぶ。ガードポジションのダコーティーからは疲労もうかがえる。村田は押さえ込みながらパンチとエルボーを落とした。

 4R、ダコーティーは左ジャブを起点に右ストレート、右フック、そして左右ローに繋げるコンビネーション。村田は左右へ足を運びながらフェイントも混ぜて単発の左ストレートと右フックを振るう。手数と仕掛けはダコーティーで、有効打が村田という展開が続く。
 
 中盤に入ると、ダコーティーの左ハイがたびたび村田を強襲。ダコーティーはパンチのコンビネーションで仕掛け、右ストレートを当てる場面も。残り時間2分を切ったところで村田はタックルから組みつき、ダコーティーがケージを背負うと一気に腰を落としながら足をかける投げを決め、鮮やかにテイクダウンを取る。ダコーティーは下からうるさく足を絡めて応戦。いったん立ち上がった村田は側転パスガードで割って入らんとする。両者が組み合いになったところでゴングが鳴った。

 5R、両者の戦い方はこれまでと同じだが、ダコーティーがパンチで仕掛ける場面が多く、村田はやや足さばきが重い。ワンツーを打ちながら徐々に接近してくるダコーティー。村田は右の拳を返さんとするが、ダコーティーの右ストレートをカウンターで喰らって一瞬よろめく。村田は口から出血もみられる。

 それでも村田はダコーティーの右ローを逃さず、蹴り足キャッチからのタックルでテイクダウンに成功。ダコーティーも下から何度も腕十字を仕掛け、村田にディフェンスを強いさせる。足関節を狙うダコーティーを嫌がり立ち上がる村田。残り時間10秒で両者がスタンドに戻る。すると村田は左オーバーハンド、左ストレート、さらにタックルの連続攻撃を仕掛け、最後まで攻めきる姿勢をみせた。

 試合後、村田が両腕ガッツポーズをみせ、ダコーティーが観客を煽る。互いに意地を見せた熱戦の勝敗はジャッジに委ねられた。

 結果はスプリットで村田に軍配が上がり、ついにInvicta FC史上2人目の日本人女王が誕生。村田は自らの右腕が持ち上げられると驚きの表情をみせたが、ベルトを腰に巻かれると笑顔でガッツポーズをみせた。

 マイクを向けられた村田は「What’s happened ?!」と、まずは英語で第一声。続けて「相手の選手は自分が思っていた以上に強かったです。私は打撃にそんなに自信がないんですけど、コーチが教えてくれた打撃とレスリングを信じて、アタック、アタック、アタックしようと思っていました」と試合を振り返り、「チャンピオンになったからには組まれた試合、組まれた試合でしっかりと防衛できるように、もっと強くならないといけないと思いました」と今後の抱負も語った。

【関連記事】
村田夏南子がカナコマシンで計量パス、いざ運命の王座戦へ


▼セミファイナル 126.1ポンド(57.2キロ)契約 5分3R
○ヴァネッサ・ポルト(35=ブラジル/王者)
判定3-0 ※29-28、29-28、29-28
×カリーナ・ロドリゲス(34=メキシコ)
※ロドリゲスはフライ級タイトルマッチの規定体重をオーバー、ファイトマネーの25%分を罰金として支払う。

長身のロドリゲスに右の拳をぶつけるポルト

 この試合は当初、Invicta FC世界フライ級タイトルマッチとしてメインイベントで組まれていたが、ロドリゲスが前日計量で規定体重をパスできなかったため、セミファイナルでノンタイトル戦(ワンマッチ)として実施されることになった。

 ポルトは今年2月の『Invicta FC 34』で空位のフライ級王座を懸けてパール・ゴンザレス(アメリカ)と対戦。試合は4R2分34秒にゴンザレスのアイポークでポルトが戦闘不能になったため、この時点までのスコアで勝敗が決することに。結果、ポルトが判定3-0で勝利し、新王者に輝いた。

 対するロドリゲスは2月の『Invicta FC 34』でミラナ・ドュダエヴァ(ロシア)、6月の『Invicta FC 35』でディアナ・ベネット(アメリカ)をいずれも判定で下し、王座挑戦権を獲得していた。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。ポルトが左インローを当てつつ右オーバーハンドも振るう攻撃で先手を取る。ロドリゲスはタックルで先制のテイクダウンを許すも、下から足を暴れさせてポルトを寄せつけない。ポルトも無理に攻め込まず、両者はスタンドの攻防に戻る。ロドリゲスはガンガン前に出てワンツー。ポルトは被弾しながらも組みついてテイクダウンし、ロドリゲスの立ち際に左フックの連打を浴びせる。その後もロドリゲスが立ち上がるたびにポルトが組みつき、テイクダウンを重ねる展開が続いた。

 2R、リーチで勝るロドリゲスはストレート系のパンチを連打。ポルトが頭を下げながらの右ボディストレートと回り込みながらの左フックを返すが、ロドリゲスのパンチを被弾する場面も目立つ。ロドリゲスは組みついてきたポルトを首相撲にとらえ、顔面ヒザ蹴りも突き刺す。ポルトは鼻から出血。しかし終盤、二段蹴りを狙ったロドリゲスに対し、ポルトが右フックを叩き込み、ほどなくして組みからのテイクダウンも決める。ロドリゲスも鼻から出血した。

 3R、ロドリゲスがダブルの左ジャブから右ストレート。これを被弾したポルトは一瞬足がそろう。ポルトはすぐに組みついてテイクダウン。立ち際に背中を許したロドリゲスだが、胸を合わせて振りほどき、離れ際に右ストレートを突き刺す。打撃戦に戻れば、ロドリゲスがパンチのコンビネーションで攻勢。ポルトはテイクダウンするも上をキープできない。終盤にはロドリゲスが再び首相撲から顔面ヒザ蹴りを突き刺し、ポルトをダウン寸前へと追い込んだ。

 有効打ではロドリゲス、テイクダウンではポルトとなった試合。判定は満場一致でポルトに軍配が上がることとなった。ポルトは息を切らせながらも笑顔で勝利者インタビューに応じ、「計量をオーバーしたけれど、彼女は素晴らしい選手だわ。私は今後も勝ち続けて、自分の目標を叶えていきたい」と第一声。今度については「一晩経てばまた強敵を迎え撃つために動きたい。でも今日のところは家に帰ってゆっくり休みたいわ」と答えた。


▼ストロー級 5分3R
○マロリー・マーティン(アメリカ)
判定3-0 ※30-26、30-26、30-27
×シンシア・アルセオ(アメリカ)

▼フライ級 5分3R
○シャナ・ヤング(アメリカ)
判定3-0 ※29-27、28-27、28-26
×マイユ・スオタマ(アメリカ)

▼バンタム級 5分3R
○リサ・ヴァーゾサ(アメリカ)
判定3-0 ※29-28、29-28、29-28
×ケリ・ケネソン(アメリカ)

▼フェザー級 5分3R
×ヤヤ・リンコン(アメリカ)
判定0-3 ※26-30、26-30、26-30
○オータム・ノートン(アメリカ)

▼バンタム級 5分3R
×セリーナ・デヘズース(アメリカ)
判定0-3 ※28-29、28-29、28-29
○ティニーシャ・テネット(アメリカ)