前日計量をパスできず王座を剥奪されたフレイが勝利したことで、Invicta FCアトム級王座は空位となった Photos(C)Dave Mandel/ Invicta FC

 2020年2月7日(金・現地時間)アメリカ・カンザス州カンザスシティのメモリアルホールで『Invicta FC 39』が開催されました。以下、試合レポート・結果です。

Main Event
▼Invicta FC世界アトム級タイトルマッチ 5分5R
○ジン・ユ・フレイ(34=アメリカ)
判定3-0 ※48-47、48-47、48-47
×アシュリー・カミンズ(32=アメリカ)
※王座は空位のまま。
※フレイは規定体重をオーバー、王座を剥奪されたうえで対戦相手のカミンズに報奨金の25%を支払う。また、試合は予定通りタイトルマッチとして実施され、カミンズが勝利した場合のみ、王座が認められる。

フレイ(左)の左の拳がカミンズ(右)の顔面を何度もとらえた

 当初はフレイの2度目の王座防衛戦として行われる予定であった今回の試合。フレイが前日計量をパスできず、王座剥奪処分を受けたため、カミンズが勝利した場合のみ王座が認められるという、変則的な条件の下で行われることになった。

 フレイは2018年12月の『Invicta FC 33』でInvicta FC世界アトム級王座の初防衛戦に臨み、ミナ・グルサンデル(フィンランド)の挑戦を判定で退けていた。前戦は昨年6月の『RIZIN.16』で、当時、浜崎朱加が保持していたRIZIN女子スーパーアトム級王座に挑戦するも判定負け。今回の試合が8カ月ぶりの再起戦だ。通算戦績は8勝4敗(1KO・TKO/2SUB)。

 対するカミンズは2017年7月の『Invicta FC 24』で一度、フレイと拳を交えており、この時は判定負けしている。今回は初めて闘うタイトルマッチで2年7カ月ぶりのリベンジを目指す。通算戦績は7勝4敗(0KO・TKO/2SUB)。

 1R、オーソドックスのカミンズが左ジャブを突きながらジリジリと前進し、機を見て右ストレートへと繋ぐ。サウスポーのフレイは左方向へ回り込み、左ストレートや左フックのカウンターを返す。フレイはクリンチとステップを巧く使い、カミンズの攻撃をかわしながら左ミドルと左ハイも当てていく。

 2R、カミンズはパンチの手数を増し、右ローと右ミドルにも繋げていくが、体格も一回り大きいフレイの懐が深く、なかなか拳を届かせられない。フレイは再びクリンチ。カミンズはここで止まらず膝蹴りを返し、フレイの離れ際に右フックをヒットさせる。さらにパンチでたたみかけんと前がかりになるカミンズ。しかし、打ち合いになれば唸りを上げるのはフレイの左フックだ。たびたび被弾するカミンズは右まぶたから出血し、フレイの右フックに吹っ飛ぶ場面も。

 3R、カミンズはパンチから蹴り、蹴りからパンチと変化をつけながら果敢に前に出るが、攻撃の途切れ目にやはりフレイの左の拳を喰らってしまう。フレイがクリンチからの離れ際を狙う左エルボーも鋭い。カミンズは口元からも出血。フレイの安定感が光る。

 4R、フレイはカミンズのパンチと右ミドルをブロックし、右ジャブから左インロー、右ジャブから左ストレートをシャープに返していく。フレイの左インローはカミンズの前足の内すねを正確にとらえている。カミンズは粘り強く右フックと右ストレートは振るうも当たりが浅く、フレイにダメージを与えるには至らない。カミンズの顔面にフレイの左ストレートがカウンターで決まっていく。

 5R、フレイは距離を取りながら左右ミドルと左インローを蹴り、カミンズが前に出てくれば右フックからの左フックで迎え撃つ。今度はタックルを仕掛けるカミンズ。しっかりと防いだフレイはクリンチからの膝蹴り、そして離れ際の左フックまで流れるように繋げる。フレイの左右ミドルをブロックするもカミンズの体が流れる。カミンズも最後まで手数と闘志が衰えることはなかったが、フレイの牙城は高かった。

 結果はフレイが満場一致の判定勝ちし、アトム級王座は空位のままに。ブーイングの中、マイクを向けられたフレイは「自分にとって105ポンド(アトム級)が良いのか、階級を上げる時なのか、改めて考えたい」とコメントし、今後の階級については見極めるとした。

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Co-Main Event
▼フライ級 5分3R
×パール・ゴンザレス(33=アメリカ)
判定0-3 ※27-30、27-30、26-30
○ミランダ・マーヴェリック(22=アメリカ)

グラウンドで攻め込むマーヴェリック(左)

 Invicta FCフライ級王座の次期挑戦権を懸けた一戦。2度目のタイトルマッチを目指すゴンザレスと、初のタイトルマッチを目指すマーヴェリックが拳を交える。

 ゴンザレスは3連勝で迎えた昨年2月の『Invicta FC 34』で、ヴァネッサ・ポルト(ブラジル)と空位のInvicta FC世界フライ級王座を懸けて激突。試合はゴンザレスの偶発的なアイポークにより、ポルトが続行不能となったため、その時点(4R2分34秒)までの判定により勝敗が決められ、結果、ゴンザレスが敗れてポルトが新王者に輝くこととなった。ポルトとの完全決着を目指し、今回の次期挑戦者決定戦に臨む。通算戦績は10勝4敗(1KO・TKO/5SUB)。

 マーヴェリックは昨年9月、Invicta FCが新たに始動させた1dayトーナメントシリーズ大会の第2弾『Invicta FC Phoenix Series 2』に出場。1回戦と準決勝が5分1R制、決勝のみが通常と同じ5分3R制という変則ルールの中、決勝まで勝ち進むと、半年前に一度敗れた相手であるディアナ・ベネット(アメリカ)に3R一本勝ちでリベンジを果たし、優勝を飾った(戦績に含まれるのは5分3Rの決勝のみ)。その戦いぶりが評価され、今回の次期挑戦者決定戦に抜擢されている。通算戦績は6勝2敗(0KO・TKO/5SUB)。

 1R、サウスポーのマーヴェリックは距離を取りながら左ジャブ。オーソドックスのゴンザレスは左ジャブ、右ストレート、右ミドルを積極的に繰り出しながら前に出る。ゴンザレスの右ミドルをもろに喰らったマーヴェリックだが、ほどなくタックルで先制のテイクダウンに成功。マーヴェリックはサイドから押さえ込み、ゴンザレスが身を起こそうしたところでバックグラブに移る。マーヴェリックに転がされ、バックチョークと鉄槌に耐える展開が続くゴンザレスだが、残り時間1分のところで上を取り返す。

 2R、今度はゴンザレスがタックルでテイクダウン。マーヴェリックもすぐに下から三角絞めを仕掛けて応戦し、ゴンザレスがポジションを移そうとしたところで立ち上がる。逃すまいと組み伏せにかかるゴンザレスに対し、ケージに押し込むマーヴェリック。ゴンザレスは投げで2度目のテイクダウンを取るが、マーヴェリックも押さえ込みのかたちを作らせずすぐに立ち上がる。譲らぬ組みの攻防が続く中、マーヴェリックが残り時間1分のところでテイクダウンに成功。ゴンザレスはマーヴェリックにマウントを許し、パンチを浴びた。

 3R、前に出てくるゴンザレスに対し、マーヴェリックは左ミドル、右ハイ、右の前蹴りを散らして寄せつけず、さらにワンツーからの右ミドルで追撃。バックハンドブローを外したゴンザレスはマーヴェリックに組みつかれ、再びテイクダウンを許してしまう。マーヴェリックはゴンザレスが立ち上がってもすぐに抱えてテイクダウン。ゴンザレスはスイープを試みるも、マーヴェリックにバックグラブへと持ち込まれて万事休すとなった。

 マーヴェリックが元タイトルコンテンダーのベテランに満場一致の判定勝ち。次期挑戦権を掴んだマーヴェリックは、「私はもはやプロスペクト(有望な若手)なんかじゃない。トーナメントで優勝し、この階級でベストな選手の一人も倒したのだから。タイトルマッチの連絡を待つことにする」と自信をみなぎらせた。


▼フライ級 5分3R
○エリン・ブランチフィールド(20=アメリカ)
KO 2R 2分06秒
×ヴィクトリア・レオナルド(29=アメリカ)

ブランチフィールド(手前)の左ハイがレオナルド(奥)の顔面に直撃

 ブランチフィールドは成長著しい若手で、通算戦績が4勝1敗(1KO・TKO/1SUB)。初黒星は昨年2月の『Invicta FC 34』で現UFCファイターのトレイシー・コルテス(アメリカ)に喫したものだが、判定2-1の接戦を繰り広げている。その5カ月後に他団体で迎えた再起戦を2R一本勝ちで飾り、今大会で連勝を狙う。

 対するレオナルドは通算戦績が6勝1敗(0KO・TKO/4SUB)。Invicta FCだけでなく、BellatorやLFA(Legacy Fighting Alliance)のケージでも勝利を掴んでいる。2018年9月の『Invicta FC 31』で新星ミランダ・マーヴェリック(アメリカ)に1R一本負けし、キャリア3戦目で初黒星を味わうことになったが、その後は4連勝をマークしており好調だ。

 1R、構えは両者共にオーソドックスでスタート。レオナルドが積極的にパンチで仕掛け、ブランチフィールドのクリンチを引き剥がして右サイドキックも当てる。30秒ほどでサウスポーにスイッチしたブランチフィールドは左ミドルと左ハイを返し、パンチが交錯したところで組みついて投げにいくが、ここはレオナルドが踏ん張ってテイクダウンさせない。

 打撃戦へと戻る両者。するとほどなく、後方へ足を運ぼうとしたレオナルドに対し、ブランチフィールドの左ハイがクリーンヒットする。レオナルドはダウン。以降はブランチフィールドがバックマウントを取るなどグラウンドで攻め込む。終盤にレオナルドがスタンドへと戻すが、再びブランチフィールドの左ハイにひやりとする場面も。

 2R、レオナルドは右の前蹴りから前に出ようとしたところで、またもブランチフィールドの左ハイを浴びそうになる。一瞬怯んだレオナルド。ブランチフィールドはすかさずパンチをまとめてタックルを仕掛ける。ケージ際で組みの攻防を繰り広げる両者。レオナルドの腰も強い。

 離れ際にレオナルドの左の拳とブランチフィールドの右の肘が交錯。打撃戦に戻ると巻き返したいレオナルドがすぐさまワンツーの連打を振るい、ケージ際のレオナルドに向かって頭から突っ込んでいく。ブランチフィールドはこれを落ち着いてかわすと、直後に足の運びがもたついたレオナルドに対して渾身の左ハイ。レオナルドがマットに崩れ落ちた。

 ブランチフィールドが再三ヒットさせていた左ハイで勝負を決め、2連勝をマーク。レオナルドは5連勝ならず、キャリア初のKO負けを喫することとなった。


▼アトム級 5分3R
○アリーシャ・ザペテラ(24=アメリカ)
判定3-0 ※30-27、30-27、29-28
×ケリー・ディアンジェロ(34=アメリカ)

思い切り良くパンチを当てていったザペテラ(右)が、浅倉カンナに敗れて以来の再起戦を会心の勝利で飾った

 昨年8月の『RIZIN.18』で浅倉カンナに判定負けしたザペテラの再起戦。対戦相手のディアンジェロは現在2連勝中で、このうち1勝は2018年9月の『Invicta FC 31』でリンジー・ヴァンザント(アメリカ)に判定勝ちして掴んでいる。

 1R、ザペテラが強烈な右オーバーハンドをカウンターで当て、左右ロングフックの連打もまとめるなど打撃戦を優位に展開。2R、ディアンジェロは巻き返したいところだが、開始早々にザペテラの鋭いタックルでテイクダウンされてしまう。ザペテラはアームロックを狙いながら3分近く、ディアンジェロを押さえ込む。

 3R、タックルに出たザペテラはディアンジェロの左ローを顔面に喰らうが、そのまま構わずテイクダウン。ザペテラはしばし押さえ込んで立ち上がる。残り時間は3分。ディアンジェロは懸命にパンチを振るって向かい続けるも逆転ならず。判定勝ちで再起戦を飾ったザペテラは歓喜の涙を流した。


▼アトム級 5分3R
○ジリアン・デコーシー(アメリカ)
判定3-0 ※30-27、29-28、29-28
×リンダ・マハレック(アメリカ)

▼バンタム級 5分3R
×ティナ・ペティグルー(アメリカ)
判定0-3 ※27-30、27-30、26-30
○モニカ・フランコ(アメリカ)

▼フライ級 5分3R
-シャナ・ヤング(アメリカ)
試合中止
-ダイアナ・トルクァート(ブラジル)
※ヤングが体調不良により前日計量に臨めず、試合は中止に。