日本での格闘技活動も経験したストリアレンコが、初参戦のInvicta FCで王座獲得を果たした Photos(C)Dave Mandel/Invicta FC

 2020年3月6日(金・現地時間)Invicta FCの『PHOENIX SERIES 3』が、アメリカ・カンザス州カンザスシティのメモリアル・ホールで開催されました。以下、試合レポート・結果です。

Main Event
▼Invicta FC世界バンタム級王座決定戦 5分5R
×リサ・ヴァーゾサ(24=アメリカ)
判定1-2 ※46-48、49-46、46-49
○ユリア・ストリアレンコ(26=リトアニア)
※ストリアレンコが王座に就く。

ラウェイのリングでも唸ったストリアレンコ(右)のパワフルな拳が、ヴァーゾサ(左)を苦しめる

 サラ・カフマン(カナダ)がPFL参戦に伴い返上したInvicta FC世界バンタム級王座を懸け、ストリアレンコとヴァーゾサが激突した。

 ストリアレンコはInvicta FC初参戦でいきなりのタイトルマッチ。2018年にはUFCとの契約を目指して争うTUF女子フェザー級トーナメントの準決勝まで勝ち進んだ実力を持つ。また、日本でも女子格闘技イベント「SEI☆ZA」を中心選手として牽引し、ラウェイのリングでタイトルを掴むなど活躍した。総合格闘技の通算戦績は8勝3敗2分(0KO・TKO/8SUB)。現在、4戦連続1R1分以内で一本勝ちという好調ぶりだ。

 対するヴァーゾサは2018年5月の『Invicta FC 29』でプロデビューして以来、現在まで土付かずの5連勝(0KO・TKO/0SUB)。他団体での試合が1戦あったため、Invicta FCでは5戦目での初タイトルマッチということになる。

 試合前、ストリアレンコは自身の名前がコールされると、ラウェイのファイティングポーズを見せて闘志をアピールした。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。ストリアレンコがいきなりスーパーウーマンパンチ&エルボーと右ハイで仕掛け、ヴァーゾサが組んできたところで下に引き込む。ヴァーゾサはストリアレンコの腕十字を防いで鉄槌。両者はスタンドに戻る。その後もストリアレンコがかなりのハイペースで攻め、パンチの打ち合いの中で右ハイ、クリンチからのエルボー、そして再び引き込んで腕十字を狙うなど止まらない。ヴァーゾサも守勢ながら要所で拳を当て返し、ストリアレンコに鼻血を流させる。

 2R、試合は一転して落ち着いた打撃戦に。右ローを蹴るストリアレンコに対し、ヴァーゾサが鋭いワンツーを合わせにいく。拳のフルスイングを右から左へと繋ぐストリアレンコだが、次第にヴァーゾサの右フックをカウンターでもらい始める。ヴァーゾサはストリアレンコのタックルをカットして鉄槌を落とし、グラウンドの攻防は回避。ストリアレンコは鼻からの出血が激しくなる。

 3R、ストリアレンコはカウンターを喰らえど前に出る圧で勝り、パンチの連打から右ロー、右ミドル、左インローへと繋ぐ攻撃を一回一回、力を込めて当てていく。ヴァーゾサは左右に足を動かしながらの右フックと右ストレートを継続するが、終盤にストリアレンコのエルボーを連続で被弾。ヴァーゾサの額の中央から鼻骨にかけてがパックリと裂け、鮮血が飛び散る。 

 4R、激しく交錯するストリアレンコの肘とヴァーゾサの拳。マットが赤く染まる。今度は左ジャブでヴァーゾサの傷を狙うストリアレンコ。ヴァーゾサもワンツーでストリアレンコを仰け反らせる。相打ちも多いが、パンチ以外の攻撃があまり見られないヴァーゾサに対し、ストレリアレンコが右の蹴りとジャンピングエルボーのパワーショットも見舞うなど攻勢か。

 5R、リードを許しているヴァーゾサは足を前に運んでワンツー。顔面狙いが続いていたヴァーゾサだが、中盤には左ボディをヒットさせる。受けに回る時間が続くストリアレンコも要所で鋭い左ジャブと左エルボー。両者共に全身が血しぶきで真っ赤という中、ヴァーゾサの方はさらに傷口がさらに広がる。終盤に強烈な右ストレートを返したヴァーゾサに対し、意地の右フックで踏ん張るストリアレンコ。両者の拳は最後まで激しく交錯した。

 死闘の結果は判定2-1でストリアレンコに軍配。ストリアレンコがヴァーゾサに初黒星をつけ、初参戦のInvicta FCで王座を掴んだ。

 試合後、マイクを向けられたストリアレンコは、「この機会を与えてくれたInvicta FCに感謝したい。自分がアメリカで知られていないことは理解しているけれど、とにかくこの舞台で戦いたかった。2年前、日本でラウェイのタイトルマッチを迎える私に向けて、コーチがリトアニアから贈ってくれたとても心に響く言葉がある。それによって、『私は格闘家であることを運命づけられている。そして自分自身、愛してくれる人々、チームメイト、彼のために王座を掴まなくてはならない』と鼓舞された」と、感謝の思いを口にする。

 そして、「次の相手が誰であろうと構わない。自分の前に立ちはだかる相手を倒していきたい」と、今後の王座防衛も力強く誓った。

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Co-Main Event
▼PHOENIX SERIESバンタム級トーナメント 決勝 5分3R
○ティニーシャ・テネット(アメリカ)
判定3-0 ※30-27、30-27、30-27
×テイラー・グアルダード(アメリカ)
※テネットがトーナメント優勝。

打撃戦を終始支配したテネット(右)がトーナメント優勝

 PHOENIX SERIES(フェニックス・シリーズ)は、Invicta FCが昨年から新たにシリーズ化した8人制の1dayトーナメントを基本とする大会。第3弾となる今大会ではバンタム級でトーナメントが行われた。

 出場選手のプロキャリアが平均して2〜3戦という中、5分1Rの1回戦と準決勝を突破し、5分3Rの決勝へと駒を進めたのはテネットとグアルダードの二人だ。

 テネットはプロデビュー2連勝でのトーナメント出場。昨年5月の『Ring of Combat 68』で1RTKO勝ちし、続く11月の『Invicta FC 38』では判定勝ちしている。対戦相手はいずれも自身と同じ、プロキャリア1〜2戦の相手だった。

 一方、グアルダードは今大会がプロ選手として初の舞台。2011年まではアマチュア選手として精力的に試合をこなし、9勝1敗(2KO・TKO/3SUB)の好戦績を残すなど、期待の十代として活躍していた。アマチュア時代の唯一の黒星はあのロンダ・ラウジー(アメリカ)に喫した1R一本負け。現UFCファイターのラケル・ペニントン(同)には判定勝ちし、アシュリー・エバンス・スミス(同)にも2R一本勝ちしている。

 1R、構えは両者共にオーソドックスでスタート。テネットが長いリーチとフットワークを使い、間合いをコントロールしながら打撃戦を優位に進める。テネットの右カーフキックと左側へ回り込んで返す左フックがヒット。グアルダードは左ジャブから右ストレートと右アッパーを振り抜くが、テネットになかなか届かない。残り時間1分を切ると組みついてテイクダウンを試みるグアルダード。テネットはケージを背負ったり、がぶったりしてしっかりと防ぎ切る。

 2R、テネットが今度は左ジャブを散らしながら左インローを当てていき、直後にグアルダードの右フルスイングが飛んでくれば、素早くステップバックしてかわす。大振りになるグアルダード。テネットはサウスポーにスイッチして右ジャブを打ったり、関節蹴りとカーフキックを合わせたり、ワンツーで仕掛けたりと、攻撃も単調にならない。グアルダードのパンチは空を切り続ける。

 3R、なおも戦況は変わらず、テネットが打撃戦を優位に展開。グアルダードはパンチから右の蹴りに繋げ、これが時おりテネットに届くようになるが、ダメージを与えるには至らない。テネットは前後左右に細かくステップを刻んでグアルダードのパンチをかわし、スイッチも混ぜながらジャブと関節蹴りを返し続けた。

 テネットが打撃戦を支配し、判定3-0の完勝でトーナメント優勝。全試合を通じて安定した戦いぶりを見せたテネットは、「自分としては5戦全勝だと思っている(5分1Rの1回戦と準決勝はエキシビションとして記録される)。次のメインイベントはポップコーン片手に観戦する。どちらが勝とうが、タイトルマッチまでの数カ月先を楽しみたい」と、自信に満ちた表情で王座挑戦をアピールした。

 一方、9年ぶりの実戦復帰にして実質プロデビューという状況の中、健闘を見せたグアルダードは、「もっとコーチの指示をしっかりと聞くべきだった」と悔し涙をこぼしながらも、「また一からやり直し。これが現実。強くなって戻ってきたい」と前を向いた。

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▼PHOENIX SERIESバンタム級トーナメント 準決勝(2) 5分1R
○ティニーシャ・テネット(アメリカ)
判定3-0 ※10-9、10-9、10-9
×ホープ・チェイス(アメリカ)
※テネットが決勝に進出。

▼PHOENIX SERIESバンタム級トーナメント 準決勝(1) 5分1R
×セリーナ・デヘズース(アメリカ)
判定1-2 ※9-10、10-9、9-10
○テイラー・グアルダード(アメリカ)
※グアルダードが決勝に進出。

▼PHOENIX SERIESバンタム級トーナメント リザーブ戦(2) 5分1R
○ミッツィ・メリー(アメリカ)
判定3-0 ※10-9、10-9、10-9
×モーガン・ヒッカム(アメリカ)
※メリーがリザーバーの権利を得る。

▼PHOENIX SERIESバンタム級トーナメント リザーブ戦(1) 5分1R
○ケリー・クレイトン(アメリカ)
一本 1R 4分51秒 ※リアネイキドチョーク
×フロリーナ・モーラー(ルーマニア)
※クレイトンがリザーバーの権利を得る。

▼PHOENIX SERIESバンタム級トーナメント 1回戦(4) 5分1R
○ティニーシャ・テネット(アメリカ)
判定3-0 ※10-9、10-9、10-9
×ブリトニー・ヴィクトリア(アメリカ)
※テネットが準決勝に進出。

▼PHOENIX SERIESバンタム級トーナメント 1回戦(3) 5分1R
×ジュリア・オットリーノ(アメリカ)
判定0-3 ※9-19、9-10、9-10
○ホープ・チェイス(アメリカ)
※チェイスが準決勝に進出。

▼PHOENIX SERIESバンタム級トーナメント 1回戦(2) 5分1R
×クレア・ガスリー(アメリカ)
判定0-3 ※9-19、9-10、9-10
○テイラー・グアルダード(アメリカ)
※グアルダードが準決勝に進出。

▼PHOENIX SERIESバンタム級トーナメント 1回戦(1) 5分1R
×ケリ・ケネソン(アメリカ)
判定0-3 ※9-19、9-10、9-10
○セリーナ・デヘズース(アメリカ)
※デヘズースが準決勝に進出。