Photos(C)ONE Championship

ONE: CENTURY 世紀 PART I
2019年10月13日(日)
東京・両国国技館

▼メインイベント ONE MMA世界女子アトム級(52.2キロ)タイトルマッチ 5分5R 
○アンジェラ・リー(23=シンガポール/王者)
一本 5R 4分48秒 ※リアネイキドチョーク
×ション・ジンナン(31=中国/挑戦者)
※アンジェラが4度目の防衛に成功。

馬乗りになってパンチを落とすアンジェラ

 ONEの100回記念大会、そして2度目の日本大会の第1部メインイベントは、アンジェラvsジンナンの女王対決。両者は今年3月にONE MMA世界女子ストロー級タイトルマッチで一度対戦しており、その時は階級を上げて挑戦者として臨んだアンンジェラが5R1分37秒TKO負け、ジンナンは3度目の王座防衛に成功した。

 キャリア10戦目にして初黒星を喫することとなったアンジェラだが、7月にはミシェル・ニコリニ(ブラジル)とのストロー級マッチでも判定負け。今大会では本来のアトム級に戻し、自身の王座を懸けてのリベンジマッチとなる。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。パンチの手数で強気にたたみかけるジンナンに対し、アンジェラが下がることなくディフェンスしつつ組みを狙う。

 ジンナンはオーバーハンドの左とハンマーパンチのような右を当てるが、身長差と大振りなのもあって的を正確にとらえることができていない印象。アンジェラも反射的に頭を傾けたり上体を反らしたりして、食らっても芯はずらせているか。ジンナンが拳を振りかざして踏み込まんとすれば、アンジェラは前蹴りも使って止める。

 徐々に間合いを縮めて組むタイミングをうかがうアンジェラ。ジンナンはパンチをまとめて寄せつけまいとするが、距離を潰されたところでアンジェラの打ち下ろしの左ストレートやショートの右を被弾する。組みの攻防になると、ジンナンも両ワキを差し返して応戦。ジンナンはテイクダウンを許さなかったが、左目の下部と額の右部が大きく腫れ上がっている。

 2Rも同様の展開で試合が進み、残り1分30秒のところでジンナンのパンチにアンジェラがタックルを合わせ、この試合初めてのテイクダウンに成功。ジンナンはアンジェラにサイドを許し、顔面にヒザ蹴りを浴びてゴングを聞く。

 3Rに入ると試合は完全にアンジェラのペース。タックルを仕掛けて組んだアンジェラが、豪快に首投げを決めてそのまま袈裟固め、顔面パンチ、両足で腕を極めるアメリカーナ、そしてバックマウントからのチョークで攻め続ける。ジンナンは窮地をゴングに救われるかたちとなった。

 4R序盤、劣勢のジンナンにチャンス到来。開始から1分が過ぎた時、右ローを蹴ろうとしたアンジェラに対し、ジンナンが左フックから返しの右ストレートも振り抜き、ダウン気味に尻餅を着かせる。ジンナンはすぐに追撃に向かうが、アンジェラが組みついてくると深追いせずにスタンドへ戻す。

 中盤にはアンジェラが右フックを振るったところで、ジンナンが右ローで崩して左フックを巧く当てる場目も。しかし、ジンナンはやや疲労してきたか、終盤は右ローと左ハイを散らしながらにじり寄るアンジェラを前に、ケージ際をサークリングしながらのカウンター狙いとなる。

 5R、アンジェラは上下にステップを刻みながら左ジャブを細かく突き、ジンナンが左右フックで仕掛けようとすれば、先手で右ミドルをヒットさせていく。ジンナンも闘志は衰えず、アンジェラが右ローでバランスを崩すと、一気に左右フックのフル回転で迫る。

 アンジェラはすぐさま組みついてこの場はしのいだが、続く打撃戦でもジンナンの左フックと右ストレートのコンボを連続で浴びてしまう。ジンナンは足を取りにきたアンジェラに鉄槌連打。アンジェラは懸命にこらえながら組み直し、背後に回って根性全開の反り投げでテイクダウンを奪う。

 亀の状態で耐えるジンナンに対し、アンジェラは上から覆い被さり、両足で胴をロックしながらのエルボーとパンチ。そして残り20秒のところで、アンジェラはジンナンの首に手を回し、最後の勝負に打って出る。アンジェラ渾身の絞め上げ。ジンナンは両足がピンと伸び切り、残り時間12秒のところでついにタップした。

 アンジェラがリベンジを果たすとともに、本来の階級で王座防衛に成功。歓喜の涙を流したアンジェラは「夢を見ているような気分。正直、最後のラウンドはいっぱいいっぱいで、自分が何をしているのか分からなかったわ。でも、セコンドから父と弟の声は聞こえた。だから最後のラウンドはチームの力、家族の力で戦い、完全に彼らのおかげでベルトを守れた。ありがとう、トーキョー。昨夜の台風で大変な中、ここへ来てくれたみんなに感謝しているわ」と勝利のコメントを述べた。


▼セミファイナル ONE MMA世界フライ級(61.2キロ)グランプリ 決勝戦 5分3R
○デメトリアス・ジョンソン(33=アメリカ)
判定3-0
×ダニー・キンガッド(24=フィリピン)
※ジョンソンが優勝。

腕を極めにいくジョンソン

 ONE MMA世界フライ級グランプリの決勝戦。“DJ”こと元UFC世界同級王者ジョンソンにONE同級タイトルコンテンダーのキンガッドが挑むマッチアップとなる。

 今年3月の1回戦でジョンソンは若松佑弥に一本勝ち、キンガッドは池田仙三に判定勝ち。続く8月の準決勝でジョンソンは和田竜光に判定勝ち、キンガッドはリース・マクラーレン(オーストラリア)に判定勝ちし、ともに決勝進出を果たした。

 ジョンソンはMMAのフライ級史上最強、MMAのパウンド・フォー・パウンド(階級を超越して与えられる最強の称号)と謳われる、まさにトップ中のトップ選手。UFC世界フライ級王者として11度の王座防衛に成功し、これはUFC史上最多記録となっている。

 一方、キンガッドも2017年11月にONE世界フライ級タイトルマッチを経験している実力者。その試合では王者アドリアーノ・モラエス(ブラジル)に一本負けしているが、その後は若松と和田などを破り、6連勝をあげている。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。開始早々にいきなり仕掛けたキンガッドが左フックから右ミドル。ジョンソンはケージ際まで素早く下がってかわすと、軽やかなステップで中央へ足を運ぶ。すぐに両者はパンチの間合い。ジョンソンが右フックから組みつけば、キンガッドも投げを狙い、互いの体を振り回す。そして組み合った状態のままケージ際に落ち着いたところで、両者はいったん離れる。

 再び打撃戦。ステップを駆使して動き回りながら左インローと右フックを繰り出すジョンソンに対し、キンガッドが左右フックをみせつつ、左の関節蹴りと右カーフキックなど得意の蹴り技を当てていく。しかし、ほどなくしてジョンソンがタックルでテイクダウンに成功し、立ち上がろうとするキンガッドにチョーク。キンガッドはスクランブルに持ち込んで脱出するが、離れ際に背を向けてしまい、後方からジョンソンの右フックを浴びる。直後にジョンソンが2度目のタックルでテイクダウンを決め、サイドからのアームロック、駄目ならマウント移行とポジションキープで支配しきった。

 2R、開始早々にジョンソンがキンガッドの左右フックをかわして電光石火のタックル。キンガッドもジョンソンの巧みなコントロールに1分30秒近く耐え、がぶる相手の下へ潜り込むタックルから立ち上がりに成功する。そしてキンガッドは右カーフキック。効かされたジョンソンがサウスポーにスイッチする。それでもジョンソンは止まること無く、すぐに右フックからのタックルでテイクダウン。キンガッドは負けじと腕十字を狙う場面もあったが、ジョンソンのコントロールとパウンドに耐える時間が続く。

 3R、ジョンソンの左インローに右フックを合わせにいくキンガッド。ジョンソンは素早いバックステップで当てさせない。キンガッドがワンツーの右ストレートをなんとか届かせると、ジョンソンはここで間合いを詰め、右フックを誘ってすかさずタックル。キンガッドはテイクダウンを許し、再びコントロールされる苦しい局面に陥る。

 しかし、残り2分のところでジョンソンが腕を狙いにくると、キンガッドはすぐに反応して立ち上がり、首をロックされながらも足をかけながら振り回すようにしてテイクダウンを奪い返す。この試合初めてジョンソンは押さえ込まれる展開となるが、ほどなくしてスクランブルからスタンド。続く組みの攻防では、ジョンソンがキンガドの投げを前転で受け流すように捌き、上を取る。ジョンソンがバックチョークの体勢に入ったところで試合終了となった。

 終わってみればジョンソンが流石の力をみせつけ、満場一致の判定勝ちでグランプリ制覇。優勝ベルトを肩にかけて勝利者インタビューに臨んだジョンソンは、「分かっていたことだが、キンガッドはタフだった。カーフキック、グラウンド、パンチ、そして何より彼は彼が持つすべてをぶつけてきた。だからスタイルを崩さないように我慢強く戦う必要があった」と、試合を振り返った。

 そして次なる展開について聞かれると、「アドリアーノ・モラエスは野獣で偉大なグラップラーだ。ただ、疲れたからオフも取りたい」と答え、オフ後にタイトル挑戦を狙う意向を示した。


▼ムエタイ 女子アトム級 3分3R
○ジャネット・トッド(アメリカ)
KO 2R 2分29秒
×エカテリーナ・ヴァンダリーバ(ベラルーシ)

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