Photos(C)ONE Championship

ONE: CENTURY 世紀 PART Ⅱ
2019年10月13日(日)
東京・両国国技館

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 10.13 ONE日本大会の第2部で行われた「修斗vsパンクラス」王者対抗戦の模様を別建てで綴る。ストロー級、バンタム級、ライト級、ウェルター級で4試合が行われ、両団体の王者たちが意地とプライドをぶつけ合った。

▼MMA 「修斗vsパンクラス」王者対抗戦 ストロー級(56.7キロ) 5分3R
○猿田洋祐(32=日本/修斗世界ストロー級王者)
KO 2R 59秒
×北方大地(28=日本/パンクラス・ストロー級王者)

強烈なパウンドを落とした猿田

 対抗戦のトリはストロー級マッチ。修斗世界王者にして元ONE世界王者の猿田とパンクラス王者の北方が拳を交えた。

 猿田は2017年10月の修斗世界ストロー級王座決定戦で、澤田龍人をパウンドTKOに下し、悲願のベルト獲得。今年1月には鈴木隼人の代役として急遽臨んだONE世界同級タイトルマッチで、王者ジョシュア・パシオ(フィリピン)を判定2-1で破り、2団体で戴冠を果たした。しかし、それからわずか3カ月後に行われたダイレクトリターンマッチでパシオに4RKO負けを喫し、リベンジを許すとともにONE王座の初防衛に失敗。今回の試合が再起戦となる。

 対する北方は初挑戦となった2016年12月のパンクラス・ストロー級タイトルマッチで、当時14連勝中の絶対王者・砂辺光久に2R一本負け。それから2年7カ月、5連勝で辿り着いた今年7月の再戦で、砂辺を5RパウンドTKOに下し、リベンジを果たすとともに絶対王者の長期政権に終止符を打った。今回の試合はパンクラス・ストロー級の新王者として迎える初戦となる。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。左オーバーハンドで勢い良く飛び込んだ北方、それを右フックで迎え撃った猿田、両者がいきなり激しくぶつかる。続けて北方は深く踏み込んでの左ジャブ。今度は猿田がジャストなタイミングでタックルを合わせ、テイクダウンを決める。

 ケージを背に立ち上がろうとする北方。猿田は押し倒して肩固め、いったんほどいて鉄槌を落としていく。北方は相手の身を引き寄せてながらのハーフガード状態が続いたが、残り時間40秒のところでケージを背に片ヒザを着く体勢に。終了間際に猿田が離れ、両者がスタンドに戻ってゴングとなった。

 2R、猿田の左フックにヒザ蹴りを合わせる北方。両者はそのまま打ち合いになる。猿田は北方の左ハイをまともに喰らうが、顔面で受け止めての蹴り足キャッチでテイクダウンする。すぐにガードポジションを取った北方は下からエルボー連打。猿田は北方の両手を掴んでいったん動きを止める。

 この体勢のまま5秒ほど見合った状態となるが、次の瞬間、猿田は一気に右の拳、そして左フックを振り落とす。この左フックがアゴへと届き、北方はうつろな表情に。続く猿田の左右鉄槌連打で北方の頭がバウンドするのをみて、レフェリーがすぐに割って入った。

 落ち着いたと思ったところから、勝負は一瞬の攻防で決着。修斗王者の猿田がパンクラス王者の北方を鉄槌で失神TKOに下し、これで両団体の対抗戦は2勝2敗で決着することとなった。

 会心のTKO勝ちを飾った猿田は、「Thank you Kitakata-san. Thank you everyone. This is Shooto. This is “The Ninjya”. This is Yamato-damashii!(ありがとう、北方さん。ありがとう、みんな。これが修斗、これがザ・ニンジャ[ONEでの猿田の異名]、これが大和魂だ!)」と英語で第一声。

 フィニッシュブローについては、「試合前のインタビューでもパウンドで勝つと言ったので、ここはすごく練習してきました。練習してきたことが出せて良かったと思います」と振り返り、「7月にベルトを失ってしまいました。人生良いことも悪いこともあって。でもまたベルトに向かって歩き出すと決めたんで。ベルトを奪還します。タイトルマッチお願いします」とタイトル再挑戦をアピールした。


▼MMA 「修斗vsパンクラス」王者対抗戦 バンタム級(65.8キロ) 5分3R
○佐藤将光[しょうこう](31=日本/修斗世界バンタム級王者)
TKO 2R 4分30秒
×ハファエル・シウバ(34=ブラジル/パンクラス・バンタム級王者)

ガードで顔を覆うシウバに佐藤がパンチの猛攻

 佐藤はこれまでにパンクラス、SRC、修斗、ROAD FC、ONEなど国内外のリング・ケージを経験してきた猛者にしてベテラン。2015年からは修斗を主戦場とし、2017年10月の修斗世界バンタム級王座決定戦で石橋佳大から判定勝利を飾り、戴冠を果たした。今年5月のONEデビュー戦では、竹中大地らを破り当時6連勝中だったマーク・アベラルド(オーストラリア)からも2RパウンドTKO勝ち。修斗の戦績も含めると、現在4戦連続KO・TKO勝利中だ。

 対するシウバも歴戦の猛者。2013年から2015年にかけては参戦したBellatorでは、バンタム級トーナメント優勝とタイトルマッチを経験している。近年はパンクラスを主戦場とし、昨年5月のパンクラス・バンタム級暫定王座決定戦では元修斗世界同級王者・上田将勝に判定勝ち。その後も2連勝を飾り、この間に石渡伸太が正規王座を返上したため、暫定から正規へと昇格することとなった(なお、石渡には2017年5月のタイトルマッチで判定負けしている)。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。佐藤が右カーフキックで先制。シウバは構わずケージ中央からジリジリと前進し、佐藤のタックルを捌いてすぐさま背後に回り込む。シウバは足を払ったりタックルに切り替えたりして崩しにかかえうが、佐藤は倒されても素早い身のこなしで立ち上がる。それでも下に潜り込んで足をとらえにいく粘りのシウバ。佐藤は腰を落としてテイクダウンを許さず、上からエルボーを落とし続け、シウバのスタミナを消耗させた。

 2R、佐藤は細かいフェイントとステップを刻みながら左右に動き、右アッパーからの右カーフキックで先制。シウバはバックハンドブローを返し、佐藤が「来い来い」と手招きした直後にタックルでテイクダウンする。佐藤はすぐに立ち上がると、下に潜り込んで足を掴んでくるシウバに対し、腰を落としながらのエルボーとアゴ下からのパンチ。1Rと同じ展開だ。

 そして迎えた残り時間1分。シウバの掴みが緩んだところで、佐藤は一気に腰を上げる。スタミナを使い果たしてしまったシウバは両手で頭を覆いながら立ち上がり、完全防御の体勢。佐藤がパンチを浴びせると、シウバの体は力無く揺れる。佐藤は顔面ヒザ蹴りも混ぜながらパンチをまとめ、シウバはケージを背負ってもはやサンドバック状態。最後は佐藤が左右フックを叩き込み、シウバが四つん這いになったところでレフェリーストップとなった。

 佐藤が強敵シウバからインパクト大のTKO勝ち。団体対抗戦で修斗側に初勝利をもたらした。マイクを向けられた佐藤は「This is Shooto!」と第一声。「I’m exciting. Training everyday, I believe myself, I believe my team, I believe my supporters. Thank you very much. Shooto is strong.(興奮しています。毎日トレーニングを積み、自分自身、自分のチーム、自分のサポーターを信じています。ありがとうございます。修斗は強い)」と英語で喜びのコメントを続けた。

 また、フィニッシュシーンについては「一発目を効かせた時にいけると思いました。ここでたたみかけないと逆にフィニッシュされてしまうこともあるので。いける時に思い切り仕留めてやろうと思って、やり切りました」と振り返った。


▼MMA 「修斗vsパンクラス」王者対抗戦 ウェルター級(83.9キロ) 5分3R
×エルナニ・ペルペトゥオ(34=ブラジル/修斗世界ライト級王者)
判定0-3
○手塚裕之(29=日本/パンクラス・ウェルター級暫定王者)

たくましい腕でパワフルにパンチ振るう手塚

 ペルペトゥオは修斗ブラジルを主戦場とし、2013年8月に修斗世界ウェルター級王座を獲得。その翌年にはUFCへとステップアップを果たした。UFCは2戦2敗で離脱。その後は防衛記録は無いようだが、修斗ではワンマッチで3連勝し、ベルトも保持している。通算でみると、近年は修斗での勝利と他団体での敗戦を交互に繰り返している状況。今回が初来日でONEデビュー戦となる。

 対する手塚は筋骨隆々の体から繰り出すハードパンチを武器とし、異名は“野生獣”。パンクラス・ウェルター級王者グライコ・フランサ(ブラジル)が他団体(PFL)へ参戦中のため、今年6月に高木健太との暫定王座決定戦を争うことになり、そこで1R一本勝ちを収め、今大会の対抗戦にパンクラス王者として乗り込むこととなった。ペルペトゥと同じく、これがONEデビュー戦だ。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。右ローで先制したのはリーチで勝るペルペトゥオ。手塚も右フックを合わせにいく。両者の右ローがバチッと交錯。するとほどなく、ペルペトゥオが強烈な左ハイ、やや当たりは浅かったが、手塚が面食らった様子で後ろに下がると、左右フックの連打でたたみかける。被弾をまぬがれるた手塚は左方向へサークリングし、ペルペトゥオの右ローに合わせて弾丸タックル。ペルペトゥオは素早く腰を引いてテイクダウンさせない。

 ここは深追いせず打撃戦に戻る両者。手塚が「打ってこい」とゼスチャーで呼びかけると、ペルペトゥオはバックハンドブロー、右ローからの後ろ回し蹴りを繰り出す。手塚も右ローと左インローを当て返すが、ワンツーや左右フックは空を切る場面が多い。しかし残り時間2分を切ると、手塚はもう一歩踏み込んで右ボディと右ストレートの高速コンボをヒット。手塚は左フックも届き始め、終了間際には飛びヒザ蹴り、着地して即座に右ハイなど、攻勢の印象を残した。

 2R、右ローと左インローを当てていく手塚に対し、ペルペトゥオは左右フックを合わせにいく。手塚はペルペトゥオの右フックをもらってバランスを崩し、両手が一瞬マットに着く場面も。手塚はケージ際を右へ左へ移動して距離を取りにいくが、ペルペトゥオは追いかけながら左ボディと右フックを打ち込む。手塚のタックルにもペルペトゥオは素早く腰を引いてテイクダウンさせない。

 しかし中盤に入ると再び戦況が変化。手塚が間合いを縮め始め、左フックから右ストレートのコンビネーションを振るっていく。そして終了間際になると、両者はパンチの打ち合いに。互いに大きなダメージを与えるようなクリーンヒットは無かったが、近距離では軌道がコンパクトな手塚のパンチの方が、より衝撃を与えていたか。

 3R、手塚がジリジリと相手ににじり寄り、左フックからの右ストレートで仕掛ける。ペルペトゥオは伸びのある右ストレートを入れて応戦。当たりは浅くも被弾を許した手塚は右ローを蹴り返す。ペルペトゥオは後ろ回し蹴りからカカトを落とす技で強襲。手塚も左右フックをまとめる。

 打撃戦でガードの上を叩き合う展開が続く中、手塚がペルペトゥオの右ローをキャッチして即座に振り回しながらテイクダウン。意表を突かれるかたちとなったペルペトゥオは、下から手塚の体を引き寄せて守りを固めるが、徐々に口が開いてきて消耗がうかがえる。手塚はペルペトゥオの引き寄せが甘くなったところで、すかさず鉄槌とエルボーをヒット。ペルペトゥオは下から足をばたつかせて抵抗するが、手塚は気合いのパンチを振り落とし続け、スタンドを許さなかった。

 拮抗した打撃戦は手塚が終盤の攻勢で満場一致の判定勝ち。パンクラス側に2勝目をもたらした手塚は、「バックスピンが多くてビックリした。まあ、もらわなかったけど」と苦笑いし、「今日は台風ですごく大変だったのに、来てくれてありがとうございます。みなさん、楽しんでいって下さい」と感謝の言葉を述べた。


▼MMA 「修斗vsパンクラス」王者対抗戦 ライト級(77.1キロ) 5分3R
×松本光史[こうし](36=日本/修斗世界ライト級王者)
判定0-3
○久米鷹介[たかすけ](34=日本/パンクラス・ライト級王者)

背後からチョークを狙う久米

 松本は2016年4月の修斗世界ライト級王座決定戦で、川名雄生に3R一本勝ちしてベルトを獲得。昨年3月の初防衛戦で岡野裕城を1RKO、今年5月の2度目の防衛戦では小谷直之を4RKOに下している。一方ではこの間の昨年5月に、初参戦のRIZINでダロン・クルックシャンク(アメリカ)に1RKO負けという苦汁も経験。ONEにも初参戦となるが、修斗の王者として他団体での2連敗は避けたいところか。

 対する久米は2013年から2014年にかけてROAD FCで3度タイトルマッチに臨み、いずれも判定負けで戴冠を逃すという悔しさを経験。それを糧にパンクラスに戻ってからは2連勝でライト級タイトルマッチに進み、2016年9月に元UFCの徳留一樹を1RパウンドTKOで仕留め、王者のベルトを巻くこととなった。その後も2度の防衛に成功。直近では今年4月、HEATライト級王者の強敵トム・サントス(ブラジル)の挑戦を3R一本勝ちで退けている。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。早々に松本が左ジャブを突きながらプレッシャーをかけ、久米が間合いを取りながら左インローと右ローを返す。パンチの間合いになったところで、松本が久米の右フックを被弾してぐらつく。久米は松本をケージに押し込んでヒザ蹴り。松本も体勢を入れ替えて離れ際に右フックを返す。

 以降も両者が近い距離でパンチをガンガン打ち合い、交錯後に組む展開が続く。バッティングによるものか、久米が左まぶたをカットし、ドクターチェックと回復のためのインジャリータイムが取られる。再開直後に久米がタックルの仕掛けから松本の背中に飛び乗り、エルボー連打、バックチョーク、そして外されたら今度は腕十字の連続攻撃。松本は腕を引き寄せてなんとか耐えた。

 2R、久米のカットした左まぶたを狙って左ジャブを突いていく松本。久米は左右フックで迎え撃ち、出血が激しくなるとタックルを仕掛ける。松本は尻餅を着くが、腰を引いて対処し、潜り込んできた久米の背後に巧く回り込んでバックチョークの体勢。松本は両足を久米の胴に回し、足首を四の字にフックして動きを制す。極めることはできなかったが、松本がやられたことをしっかりとやり返した。

 3R、久米が早々にタックルでテイクダウン。松本は田入れ際に久米の首に腕を回すが、入りが浅く引き寄せることができない。久米は腰を上げた体勢からヒザ蹴りを落としまくる。松本はなんとか久米の足をとらえにいくが、背中を許す厳しい状況。久米は両足を松本の胴に回して足首を四の字にフック、そしてパンチを打ち込みながらバックチョークのタイミングをうかがう。松本はなんとか腰を上げて久米を前方に落とそうとするが、逃れることができないまま試合終了となった。

 互いにバックチョークを狙い合った両者。支配した時間が長かった久米が満場一致の判定で勝利した。久米は「今も戦って分かりましたが、本当に素晴らしい修斗のチャンピオンでしたので、しんどかったですが、勝つことができて良かったです。松本選手、ありがとうございました」と松本を称え、勝利のコメントとした。