Photos(C)ONE Championship
ONE: CENTURY 世紀 PART Ⅱ
2019年10月13日(日)
東京・両国国技館
▼メインイベント ONE MMA世界ライトヘビー級(102.1キロ)タイトルマッチ 5分5R
○アウンラ・ンサン(34=ミャンマー/王者)
TKO 2R 3分23秒
×ブランドン・ヴェラ(42=フィリピン/挑戦者)
※ンサンが初防衛に成功。
ONEの100回記念大会、そして2回目の日本大会の大トリを飾るのは、ONE MMA世界ライトヘビー級タイトルマッチ。1階級上のヘビー級王者であるベラが階級を落とし、ミャンマーの英雄ンサンの保持するライトヘビー級のベルトに挑んだ。
ンサンは2017年6月にONE MMA世界ミドル級王座、昨年2月に同ライトヘビー級王座を獲得し、2階級同時制覇を達成。ミドル級王座はその後、元DEEPメガトン級王者・長谷川賢の挑戦を2度に渡ってTKOで退けるなど、現在までに計4度の防衛に成功している。今回はライトヘビー級王座の初防衛戦だ。
対するヴェラは2005年から2013年までの8年間、UFCヘビー級戦線で活躍してきた大ベテラン。フランク・ミア、ランディ・クートゥア、ジョン・ジョーンズといった重量級の新旧王者たちとも拳を交えてきた。その後、ONEに活躍の場を移し、2015年12月にONE MMA世界ヘビー級王座を獲得。階級を下げての王座挑戦は今回が初となる。
1R、ミャンマー人サポーターたちから「アウンラ」の大合唱が沸き起こる中、試合開始のゴング。構えは両者ともにオーソドックス。ンサンがいきなり右カーフキックで炸裂音を響かせ、ヴェラは左インローを返すも空振り。ンサンは前傾姿勢で間合いを詰め、ヴェラが右へ回り込もうとしたところを左オーバーハンドで狙う。ヴェラはサウスポーにスイッチして左ミドル、いったんオーソドックスに戻すが、ンサンの右カーフキックを喰らうと再びサウスポーに切り替える。
その後もスイッチを繰り返すヴェラがオーソドックスになれば、すかさず強烈な右カーフキックを当てていくンサン。削られる状況が続いていたヴェラも、中盤辺りでンサンの左ミドルをキャッチすることに成功し、体勢が崩れたところへ飛びヒザ蹴り、さらに片手クリンチからのエルボーを打ち込む。ようやく見せ場を作ったヴェラは左ミドルも増やしていく。しかし、残り1分を切ったところで、ンサンが右オーバーハンドで斬り込み、返しの左ショートフックもヒット。ンサンは主導権を譲らない。
2R、なおも試合は打撃戦。ンサンは再び右オーバーハンドで斬り込み、パンチの連打から右カーフキック。ヴェラが負けじとパンチの連打から首相撲に持ち込んでヒザ蹴りを繰り出すと、ンサンは冷静にガードして右アッパーを突き上げる。そのままパンチの打ち合いになる両者。ヴェラの左右フックも当たるが、ンサンは平然とした表情だ。
そして中盤戦。ンサンが左カーフキックも蹴り始め、ヴェラはどちらに構えても前足を削られていく。にじり寄るンサン。ヴェラは気迫の表情で左フックをぶつけるが、ンサンの左ショートフックを被弾してついによろめく。ンサンは右ハイを追加し、ここからパンチの猛攻。ヴェラも足元をふらつかせながら懸命にエルボーで迎え撃ち、ンサンの顔面をカットする。
ンサンは回転エルボーで強襲。ヴェラも返す刀で回転エルボーを放つが空振りし、直後にンサンの右フックを喰らってついにダウン。亀の状態のヴェラにンサンが一方的にパウンドを打ち込む状況をみて、レフェリーが試合を止めた。
ンサンがTKO勝ちでライト級王座の初防衛に成功。試合後にマイクを向けられたンサンは、「楽しかったよ。トーキョー、アリガトウ。君たちは素晴らしい。いい気分だね。またすぐにでもジムへ戻るよ。練習してテクニックを研ぎ澄ましたい。自分は19歳から戦ってきたけれど、今や34歳なんだ」と笑顔でコメント。
試合について「プレッシャーをかけ続ける戦略だった。彼はパワーがある。見て分かる通り、彼のエルボーも喰らった。すべてを着実に遂行しなければならなった。自分の仕事はやり遂げたよ」と振り返り、最後はミャンマー語で母国のサポーターにメッセージを送った。
▼セミファイナル MMA ライト級(77.1キロ) 3分3R
○青木真也(36=日本)
一本 1R 54秒 ※ダースチョーク
×ホノリオ・バナリオ(30=フィリピン)
青木は今年3月、ONE初の日本大会でエドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)に一本勝ちし、ONE MMA世界ライト級王座奪還に成功。しかし、5月の初防衛戦でクリスチャン・リー(シンガポール)にTKO負けして再びベルトを失い、今大会で再出発となる。
対するバナリオは2013年2月に初代ONE MMA世界フェザー級王座のベルトを巻いた実力者で、フォラヤンと同じくフィリピンのTeam Lakay[チーム・ラカイ]所属、すなわち打撃を持ち味としている。近年は階級を上げ、今年1月にはONE MMA世界ライト級グラプリに出場したが、ローウェン・タイナネス(アメリカ)にTKO負け。8月の試合でも判定負けし、現在2連敗中だ。
1R、「青木」コールの中、試合開始。構えは青木がサウスポーでバナリオがオーソドックス。前手での触り合いから青木がすぐにタックルを仕掛け、踏ん張るバナリオをケージまで押し込む。青木は右腕を相手の左ワキ下に差し込んだ右四つ組み。バナリオは粘るも、青木に投げられテイクダウンを許す。
立ちにいくバナリオに対し、青木はがぶりの体勢からすかさず相手の肩と首を巻き込んで絞めるダースチョーク。バナリオは青木に絞められたまま捻り倒され、体が前方に一回転。青木は逃すことなく、バナリオをギブアップさせた。
青木が王座陥落からの再起戦で秒殺一本勝ち。直後にセキュリティを置き去りにして入場花道を駆け上がった青木は、背筋をまっすぐに伸ばした安楽座の体勢になってステージ上から真顔で一点を見つめてみせる。そして再びケージへと戻った青木は、バナリオとそのセコンドたちと握手を交わし、勝ち名乗りを受けた。
迎えた勝利者インタビュー。青木は「お願い。今回はマイク貸して。お願い」とリングアナから向けられたマイクを奪うと、「36歳になって、家庭壊して、好きなことやって…。どうだお前ら!うらやましいだろ!」と目を見開いて絶叫。「とにかく、いいものを創るために、クリエイティブなライバルたちに勝つために、必死で生きていきます!」と青木らしく盛り上げた。
▼ONE MMA世界バンタム級(65.8キロ)タイトルマッチ 5分5R
○ビビアーノ・フェルナンデス(39=ブラジル/王者)
一本 2R 2分26秒 ※リアネイキドチョーク
×ケヴィン・ベリンゴン(31=フィリピン/挑戦者)
※ビビアーノが初防衛に成功。
ビビアーノはDREAMでバンタム級とフェザー級の2階級王者として活躍。その後、ONEに活躍の場を移し、ONE MMA世界フェザー級王者として7度の防衛に成功するなど、絶対的な地位を築き上げてきたが、昨年11月にベリンゴンに判定負けし、ついに王座陥落となった。
再戦の機会はすぐに訪れ、舞台は今年3月に開催されたONE初の日本大会。ダイレクトリターンマッチとなった試合は、3Rにベリンゴンが後頭部へエルボーを落とす反則攻撃を行い、ダメージを受けたビビアーノが試合続行不可能になるという、不完全燃焼の幕切れを迎える。
結果的にはベリンゴンの反則負けでベルトを取り戻したビビアーノだが、それは不本意なかたち。今大会で改めて試合が組まれる運びとなった。なお、両者はこれが4度目の対戦。先の反則裁定試合も含め、ビビアーノが2勝1敗と勝ち越している。
1R、構えは両者ともにオーソドックス。ビビアーノが右ローで先制。ベリンゴンは右カーフキックを蹴り返す。ビビアーノは3回喰らったところでタックル。ベリンゴンは開始1分でテイクダウンを許す。ビビアーノは押さえ込みながらコツコツとパンチ。ベリンゴンはハーフガードで相手をホールドしながら守りを固める。ビビアーノは終盤までこの状態をキープし、残り20秒のところで立ち上がってゴングを聞く。
2R、開始早々にビビアーノはベリンゴンの鋭い右カーフキックを受けてバランスを崩す。右ミドルで追撃にいくベリンゴン。しかし、ビビアーノはこれをキャッチし、ケージまで押し込んでタックル、倒れないとみれば一気に下に引き込む。ベリンゴンは体が一回転。ビビアーノが鮮やかにテイクダウンを決め、ベリンゴンのサイドを取る。
立ち上がりたいベリンゴンは、ビビアーノがやや押さえ込みを緩めたところで一気に体を反転させて腹這いに。ビビアーノはこの瞬間を逃さず、がぶりの体勢から素早くベリンゴンの背中に飛び乗り、バックチョークを仕掛ける。腰を上げてビビアーノを前方に落とそうとするベリンゴン。ビビアーノはベリンゴンの体を横へ倒し、セットしたチョークで一気に絞め上げる。これがしっかりと極まり、ベリンゴンはタップした。
ビビアーノがベリンゴンとの決着戦を会心の一本勝ちで制し、初防衛に成功。マイクを向けられたビビアーノは、「ありがとう、ジャパン。ありがとう、トーキョー。いつも自分に温かく接してくれて。愛している」と挨拶。試合については「自分がポジションを取れば、相手は逃れることができない。嬉しいよ」と自信を持って振り返り、「ケヴィンには素晴らしい戦いをありがとうと言いたい。マニラ、フィリピンのみんなも愛している。ありがとう」と対戦相手を称えた。