▼ONEムエタイ世界フライ級(61.2キロ)タイトルマッチ 3分5R
○ロッタン・ジットムアンノン(22=タイ/王者)
判定2-1
×ボルター・ゴンサルベス(21=ブラジル/挑戦者)
※ロッタンが初防衛に成功。

ロッタンは接近戦に持ち込んでパンチを当てた

 ロッタンは昨年6月にRISEのリングで那須川天心と拳を交え、延長判定で敗れはしたが、打たれても鬼の形相で前に出続ける闘志全開の戦いっぷりでファンを魅了。那須川には「試合に勝って勝負に負けた」とまで言わしめた。

 その後もハイペースで試合をこなし、新たに契約を結んだONEでは、今年8月にジョナサン・ハガティ(イギリス)のONEムエタイ世界フライ級王座に挑戦し、ダウンを奪っての判定勝ちでベルトを奪取している。今回はONE初参戦の新鋭ゴンサルベスを挑戦者に迎えての初防衛戦だ。

 試合はサークルケージ、オープンフィンガーグローブ着用で行われる。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。ローの蹴り合いで開戦。ロッタンがジリジリと前に出て圧力をかけていく。しかしほどなく、ゴンサルベスの右ハイ強襲がロッタンの側頭部にヒット。当たりはやや浅かったか。ロッタンは慌てた様子で右フックを振るうが、ゴンサルベスにブロックされて右フックと左ストレートを返されてしまう。ロッタンがゴンサルベスの右ミドルをキャッチして転倒させたところでファーストコンタクトが終了。

 再びローの蹴り合いになると、ゴンサルベスはロッタンの右ローをキャッチし、右オーバーハンドで吹っ飛ばす。ロッタンのアイポークでゴンサルベスにインジャリータイム確保。再開後、ロッタンがさらにさらに間合いを詰め始めながら左右フックの高速コンボを振るう。ゴンサルベスは後退が続き、組んだ際には投げ飛ばす荒技に出る。

 2R、左ミドルの連打が出始めたロッタン。ゴンサルベスは構えをスイッチしながらケージ際を左右に動き回り、左右フックをフルスイングしていく。ロッタンはさらに左ミドルの連打。ゴンサルベスは左右フックで応戦。ロッタンは鬼の剣幕で「打って来い」とゼスチャーで見せる。

 そこから至近距離でパンチの打ち合いに。ビッグヒットは無いが、ジリジリと歩を進めるのはロッタン。ゴンサルベスは終了直前にロッタンの左ミドルをキャッチし、ゴング後に軸足払いで転倒させて吠える。ロッタンはゴンサルベスを睨みつけながら立つ。ゴンサルベスの負けん気も強い。

 3R、サウスポーにスイッチしたゴンサルベスは、ロッタンの左ローを右手でキャッチし、すかさず左オーバーハンド、そして右ミドル。今度はロッタンがこの蹴り足を左手でキャッチして、右の拳をフルスイングする。どちらも空砲に終わるが、最初から迫力のあるコンタクトだ。

 にじり寄るロッタン。ケージ際のゴンサルベスはロッタンがパンチで仕掛けてくると、スーパーマンパンチやバックスピンエルボーで強襲する。ロッタンは左右フックで迫るが、ゴンサルベスも頭を下げたり素早く安全圏に移動したりと、クリーンヒットさせない。ゴンサルベスが距離を取りながら蹴りを散らしてくると、ロッタンは「前に出てこい」とゼスチャーでアピール。レフェリーが両者に積極性を促す注意を与える。

 するとほどなく、ロッタンがゴンサルベスの右フックを喰らいながらの右ショートフックを打ち込む。ゴンサルベスは倒れるが、すぐに立ち上がってダウンをまぬがれる。ロッタンは左ミドルを連打。そこまでダメージを受けていない様子のゴンサルベスは、左右フックを合わせにいく。終盤に両者は再び至近距離でパンチの打ち合いに。ゴングが鳴ると、2人そろって吠える。

 4R、ゴンサルベスがケージ際で足を止めると、ロッタンはすかさず左右フックで狙う。ゴンサルベスは左ローを返さんとするが、ここでロッタンの左フックを浴びて尻餅。ゴンサルベスがすぐに立ち上がり、これもダウンとはみなされない。勢いに乗り始めたロッタンは左右フックと左ミドル。ゴンサルベスも右ミドルから即座に右の拳を振り落とす攻撃を当てる。

 ロッタンが「もっと前に来い」、ゴンサルベスが「やってるじゃないか」と互いにゼスチャー。アピール合戦になると、レフェリーが注意して積極性を促す。ともに疲労もあるか。直後にゴンサルベスは組んで投げ飛ばす荒技。ロッタンは怒りの剣幕で吠える。以降も左右フックで前に出るのはロッタンだが、ゴンサルベスがそれを避けまくる展開が続いた。

 5R、迫り来るロッタンに対し、ゴンサルベスはオーソドックスからすっとサウスポーに切り替え、ワンツーの左ストレートを当ててすぐに左方向へ移動。ロッタンは右フックを振るいながら追いかけるが、今度はゴンサルベスに組まれてしまう。思うように攻撃ができない様子のロッタン。ゴンサルベスは右ハイをヒットさせ、すぐさまタックルさながらの組みつきをみせる。

 ロッタンはゴンサルベスのノーモーションの右ストレートも被弾。ゴンサルベスはロッタンの右ストレートをスウェーバックでかわす。そうして迎えた残り時間30秒。ロッタンは両手を上げてアピールを開始する。ゴンサレスはつき合わず、左フックのフェイントから後ろ回し蹴り。ロッタンはこれをブロックし、ゴング直前にケージ際のゴンサルベスに右ボディと右フックを当ててみせた。

 ヒットアンドアウェイを徹底したゴンサルベスと前に出続けたロッタン。ともに大きな山場を作れなかったが、試合が終了するとすぐさまそろってケージによじ上り、勝利をアピールする。判定はスプリットでロッタンに軍配が上がり、苦戦を強いられながらも初防衛成功となった。 


▼ONEキックボクシング世界フェザー級グランプリ 決勝 3分3R
○ジョルジオ・ペトロシアン(33=イタリア)
判定3-0
×サミー・サナ(30=フランス)
※ペトロシアンが優勝。

ペトロシアンが左ローを効かせていく

 優勝賞金が1億円という破格のONEキックボクシング世界フェザー級グランプリ。決勝は、世界に名を馳せるペトロシアンにビッグネームキラーのサナが挑むマッチアップとなった。

 アルメニア系イタリア人のペトロシアンは、ディフェンスとカウンターの卓越した技術を武器に、K-1 WORLD MAX世界トーナメントを2009年と2010年に連覇。現在も色褪せること無くトップレベルで活躍しており、今回のトーナメントは1回戦でペットモラコット・ペッティンディーアカデミー(タイ)、準決勝でジョー・ナタウット(タイ)をともに判定で下し、決勝へと駒を進めている。

 対するサナは190センチの長身を活かした攻撃を武器に、ヨーロッパの立ち技戦線で活躍してきたアルジェリア系フランス人。2016年にWBCムエタイ世界スーパーミドル級王座を獲得した実績を持つ。今回のトーナメントでは、1回戦でヨードセングライ・IWE・フェアテックス(タイ)を判定で破るアップセットを起こし、続く準決勝ではジャバル・アスケロフ(ロシア)に判定勝ち。決勝で再びビッグネームに挑むこととなった。

 試合はサークルケージ、ボクシンググローブ着用で行われる。

 1R、構えはペトロシアンがサウスポー、サナがオーソドックス。身長差は12センチ。ペトロシアンが左ストレートをサナのガード中央へと伸ばし、続けてガードの後ろ側から右フック、さらに左ローと、早速コンビネーションを繰り出す。サナも長い足で右ハイを振り抜き、軽く突き上げただけで顔面まで届くヒザ蹴りも脅威だ。

 ペトロシアンは左ミドルを当てるとすぐにブロックを固めながらステップバック。サナに返しの攻撃を当てさせない。ペトロシアンの前手で触ったり、前蹴りも使って距離をコントロールする。サナの右ミドルはペトロシアンのガードの上を叩き、右フックと右ストレートもかわしていく。サナの圧力も強いが、ペトロシアンがそれを巧くいなした。

 2R、右ミドルをガンガン蹴っていくサナ。ペトロシアンはブロックして即座に相手の蹴り足へ左ローを叩き込む。ペトロシアンは右アッパーでサナに両手のガードを閉じさせ、今度は右フックでガードの後ろ側からも狙い、そこからの左ローに繋げる攻めも好調。サナは左アッパーから左ストレート、左フックから右ストレートなど、パンチのバリエーションを増やすが、なかなか当てることができない。

 ペトロシアンは奥足への左ローも効かせ、サナの体がたびたび傾く。それでも終盤に入ると、サナがもう少し近めの距離から攻撃するようになり、ペトロシアンの離れ際に左フックとヒザ蹴りを届かせる。ペトロシアンは左ストレートを返したところで、サナに左フックのカウンターを合わされる場面も。ペトロシアンは前手でさらにうるさく触り、スウェーバックとバックステップの動きと頻度も前半より増えてきた。

 3R、サナは近距離から細かくパンチをまとめ、ペトロシアンがブロックを固めるとヒザ蹴りで腹を狙う。ペトロシアンは右へ回り込んで間合いを外しながらの右ジャブと右フックで応戦。サナは構わず接近戦で左右フック、右アッパー、ヒザ蹴りを入れ、ガチャガチャとした展開に持ち込まんとするが、ここはペトロシアンが流石の強固なブロックでヒットを許さない。

 サナがヒザ蹴りを勢い良く空振りさせたところで、ペトロシアンは左フックと返しの右フックを強打。ペトロシアンの左ストレートもサナのガードの隙間を通る。サナは再度ヒザ蹴りを狙うが、ペトロシアンはマタドールのようにかわす。残り時間1分を切ると、ペトロシアンは左ミドル、左ハイ、前蹴り、そしてステップでサナを近寄らせず、試合終了となった。

 満場一致の判定勝ちでサナがグランプリ優勝、そして優勝賞金1億円を獲得。結果がコールされるとペトロシアンは拳を天に突き上げながら両ヒザをマットに着け、ポーカーフェースがようやく笑顔に変わった。

 マイクを向けられたペトロシアンは、「自分が考えていたのは1億円のことではない。ナンンバー1になることだ」と第一声。次なる目標について聞かれると、「目標はいつも同じ。ハードなトレーニングとタイトル防衛だ」と答え、歓喜のチームメイトたちから抱きしめられた。

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