2019年12月6日(金・現地時間)マレーシア・クアラルンプールのアシアタ・アリーナで『ONE: MARK OF GREATNESS』が開催されました。以下に試合レポート・結果を綴ります(※試合順は入れ替えています)。なお、今大会の闘技場はケージです。

Photos(C)ONE Championship

Main Event
▼ONE Super Series キックボクシング世界ストロー級(56.7キロ)王座決定戦 3分5R
○サムエー・ガイヤーンハーダオ(36=タイ)
判定3-0
×ワン・ジュングァン(24=中国)
※サムエーが新王座に就く。

カウンターのパンチも冴えたサムエー(左)

 ONE Super Seriesキックボクシングの初代世界ストロー級王座決定戦。ムエタイの古豪サムエーと中国キックボクシング界の強豪ジュングァンがベルトを争う。

 サムエーは強力な左ミドルを武器にルンピニー王座獲得やムエマラソン優勝を果たした実績の持ち主。今年5月にONE Super Seriesムエタイ世界フライ級王座の初防衛戦で、ジョナサン・ハガティーに判定負けしてベルトを失ったが、10月の再起戦ではダレン・ローラン(フランス)に2RKO勝ちを収めている。今回は初挑戦のキックボクシングルールでいきなりのタイトルマッチを戦う。

 対するジュングァンはハードパンチと負けん気の強さを持ち味とし、2017年9月にはK-1 WORLD GPフェザー級タイトルマッチで王者・武尊に判定で敗れはしたものの苦戦を強いている。また、今年8月にはホルヘ・バレラ(スペイン)を4RKOに下し、Enfusion 57キロ王座を獲得。その2カ月後に迎えたONEデビュー戦でフェデリコ・ローマ(アルゼンチン)に1RTKO勝ちし、今回の2戦目で早くもタイトルマッチの機会を得た。

 選手はボクシンググローブ着用。闘技場は円形ケージとなる。

 1R、構えはサムエーがサウスポー、ジュングァンがオーソドックス。持ち前のパンチを振るって仕掛けるのはジュングァン。サムエーはジュングァンの拳が眼前はかすめても顔色一つ変えず、ケージ際でサッと左に回り込んで素早く左ストレートを打ち込む。

 ヒットを許したジュングァンは自らの顔面を叩いてノーダメージを誇示。ゴングが鳴るとグローブタッチを求めるジュングァンに対し、サムエーは気づかない様子で観客に向けて両拳を突き上げてみせる。両者の心境を感じさせる一コマとなった。

 2R、ジュングァンがパンチで荒々しく迫るも、サムエーのバックステップとスウェーバックを前に当てさせてもらえない。サムエーはいなしながらの左インローとショートの左ストレート。ジュングァンはサウスポーにスイッチして右の蹴りをちらつかせるなど変化をつけてから突破を試みる。

 3R、ジュングァンはパンチをフル回転させ、サムエーをケージに押し込みながらの左右ボディ。サムエーはこれでも崩れず、ジュングァンの入り際に右ジャブと左ミドルを合わせる。さらに強引さを増すジュングァンだが、待ち受けるのはサムエーの狙いすました左ハイとテンカオだ。

 4R、サムエーは伝家の宝刀、左ミドルを蹴る頻度が増え、ジュングァンの空振りを誘いながらの左ストレートも続行。ジュングァンは左右ローからバックハンドブローに繋げる強襲に出るも、サムエーに見切られてしまう。

 5R、意地のパンチ連打で逆転の望みを捨てないジュングァン。サムエーはジュングァンに左右フックと左ストレートを当てられても、寸前に顔を傾けて芯をずらしているようだ。ジュングァンはパンチを殺されたままで試合終了となった。

 血気盛んな若手の勢いに対し、ベテランの技術と経験、そして集中力も光った試合。サムエーが「打たれ弱くなってきたのではないか?」「キックボクシングルールに適応できるのか?」といった声すらもいなすような戦いぶりで、ジュングァンから満場一致の判定勝ちを収め、ONE Super Seriesキックボクシング世界ストロー級王座を掴むことになった。

 サムエーが健在ぶりを証明。敗れたジュングァンは勝敗のコールを受けると、拍手でサムエーを称えた。


Prelim
▼ONE Super Series ムエタイ フライ級(61.2キロ) 3分3R
×ルイ・ボテーリョ(25=ポルトガル)
判定0-3
○内藤大樹(23=日本)

前戦に続き、左カーフを効かせた内藤

 内藤はシュートボクシング(SB)日本スーパーバンタム級王者の実績を持ち、キックボクシングルールにおいても工藤政英、村越優汰、原口健飛、MOMOTAROといった国内トップ選手たちを破るなど活躍。今年10月のONEデビュー戦では、アレクシ・セレピソス(ニュージーランド)にムエタイルールで3R2分48秒TKO勝ちを収め、堂々の新天地スタートを切っている。

 対するボテーリョは昨年6月に小笠原裕典とムエタイルールで拳を交え、前半戦をリードするも2R終了間際にバックスピンエルボーで逆転KO負け。その後はパンパヤック・ジットムアンノン(タイ)に判定負け、渡辺優太に判定勝ち、スーパーレック・ギアットムーガーオ(タイ)に判定負けという結果だ(渡辺との試合はキックボクシングルール)。

 選手はオープンフィンガーグローブ着用。闘技場は円形ケージとなる。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。内藤が前戦に続き、序盤から右カーフキックを蹴っていく。ボテーリョはカットしながら、仕掛ける時には迫力のあるパンチのコンビネーションを振るう。

 内藤は巧みにスウェーバックでかわし、左フックのカウンターを当てにいく。終盤にはボテーリョも左右フックの連打に右アッパーを混ぜる攻撃から、内藤の離れ際に右ローを合わせ、接近戦ではバックスピンエルボーで強襲にいくなど印象を残す。 

 2R、グローブタッチ直後に内藤が左ジャブからの右ロー。前足への右カーフを警戒していたか、ボテーリョは軸足を刈られて転倒する。内藤は時おりサウスポーにスイッチし、ボテーリョの打ち終わりに左ローや左ハイを返す。

 時間が経過するにつれて内藤の右カーフで体が流れるようになるボテーリョ。パンチの攻防になれば、内藤は左フックのカウンターも惜しい場面が続く。内藤の左ハイもボテーリョの側頭部をかすめた。

 3R、序盤に内藤の前手がアイポークとなるが、試合再開後も戦況は変わらず。内藤が左ハイ、左インロー、右の前蹴り、右ハイを散らしつつ、左ジャブと左フックを見せて、ボテーリョを牽制していく。

 なんとか攻撃を当てたいボテーリョはパンチを連打して仕掛けるが、内藤にことごとくスウェーバックでかわされる状況が続く。終了間際の打ち合いでも、内藤がボテーリョの左フックをブロックして即座に右カーフを返した。

 内藤はフィニッシュに繋げることはできなかったものの、ボテーリョを完封する内容で満場一致の判定勝ち。ONEで2連勝を飾った。


Main Card
▼ストロー級(56.7キロ) 5分3R
×澤田龍人(25=日本)
判定0-3
○ボカン・マスンヤネ(26=南アフリカ)

澤田をパウンドで削るマスンヤネ

 澤田は17歳でプロデビューし、修斗のストロー級戦線で活躍。戴冠こそ果たせなかったが、19歳から21歳にかけて修斗世界タイトルマッチを3度経験するなど、若い頃から経験を積んできた。現在はシンガポールの名門ジム「Evolve MMA」に所属。今年8月のONEデビュー戦ではアジス・カリム(インドネシア)にわずか69秒で一本勝ちし、上々の滑り出しを見せている。

 対するマスンヤネは母国のEFC(Extreme Fighting Championship)でプロデビューから5戦全勝(0KO・TKO/1SUB)の戦績を残し、7月の『PANCRASE 307』で初来日。試合では当時、パンクラス・フライ級5位だった荻窪祐輔をスープレックスで投げ飛ばすなど、強靭なフィジカルをみせつけて判定勝ちした。今回の試合がONEデビュー戦となる。

 1R、構えは澤田がオーソドックス、マスンヤネがサウスポーで開戦。右アッパーから斬り込んだマスンヤネに対し、澤田の右フックがヒットする。だが、ここでバッティングが発生。左目を手で押さえる澤田にしばしのインジャリータイムが設けられて再開となる。

 マスンヤネの組み際に腰投げを合わせにいく澤田。マスンヤネは素早く切り返して一瞬マウントを取るが、澤田も即座に反応してスクランブルに持ち込む。目まぐるしい攻防に盛り上がる会場。マスンヤネが澤田の背中側からしっかりとクラッチし、組み伏せながらのヒザ蹴りで優勢となった。

 2R、澤田がマスンヤネの前進を捌きながら左右フックをコンパクトに当て、二段飛びヒザ蹴りも繰り出す。しかし、いったん組みつくと強さを発揮するのはマスンヤネ。背中を許した澤田は再び裏腿にヒザ蹴りを打ち込まれてしまう。

 澤田はしばしの我慢から一気に立ち上がると、すぐにパンチのコンビネーションを振るって右ボディをヒットさせるが、マスンヤネの組みはしぶとく強力。最終的に澤田はガードポジションを強いられる。

 3R、組まれる前にパンチを当てたい澤田。マスンヤネはスイッチを駆使しながらバックスピンキックも繰り出し、観客を沸かせる。ほどなくして組みついたマスンヤネはスクランブルを制して背後からクラッチ。このまま試合時間残り30秒でレフェリーがブレイクに入るまで、澤田はコントロールされる苦しい展開が続いた。

 レスリング出身同士の一戦はマスンヤネが満場一致の判定勝ち。澤田は新天地2戦目で初黒星となった。


Co-Main Event
▼ONE Super Seriesキックボクシング世界バンタム級(65.8キロ)王座決定戦 3分5R
○アラヴァディ・ラマザノフ(25=ロシア)
判定3-0
×ジャン・チェンロン(21=中国)
※ラマザノフが新王座に就く。

顔面前蹴りをヒットさせるラマザノフ

 ラマザノフはロシア連邦ダゲスタン共和国出身で、IFMA(国際アマチュアムエタイ連盟)の世界王者に3度輝いた実績の持ち主。昨年10月のONEデビュー戦でペットモラコット・ペッティンティーアカデミー(タイ)からムエタイルールで満場一致の判定勝ちを収め、その名を知らしめた。

 対するチェンロンは2017年4月にGLORYの4人制コンテンダー・トーナメントを制している実力者。昨年1月には中国Emei Legendのリングで、シンマニー・ゲーオサムリット(タイ)からも判定勝ちしている。

 選手はボクシンググローブ着用。闘技場は円形ケージとなる。

 1R、構えはラマザノフがオーソドックス、チェンロンがサウスポー。ラマザノフがワンツーや左右フックで仕掛け、入り際には前蹴りも巧く混ぜていく。その離れ際を左右フックで狙うチェンロン。ラマザノフは構えをスイッチしながら蹴る右ローも強烈だ。

 2R、ラマザノフはステップで距離を保っての左右ロー。チェンロンは追いかけながらパンチのコンビネーションを振るう。チェンロンの左右フックと左ストレート、ラマザノフのテンカオとバックハンドブロー。スリリングな攻防が続く。

 3R、開始早々にラマザノフが前蹴りからのワンツーを見事にヒットさせ、チェンロンをダウンさせる。しかし、ここから立ち上がったチェンロンは左右フックのフルスイングで、ラマザノフの追撃を寸断。チェンロンはパンチから左ローと左ミドルに繋げ、猛烈な勢いで巻き返しを図る。

 チェンロンの拳が頭上をかすめる展開に、ラマザノフはヒットアンドアウェイとカウンターを徹底する構え。チェンロンは前がかりに攻めるも、ラマザノフにワンツーを合わされて一瞬腰が落ちてしまう場面もあった。

 4R、タフなチェンロンはラマザノフにテンカオと前蹴りを突き刺されても構わず左右フック。ラマザノフはクリンチが増えて注意を受ける。ケージに押し込みながらの右ジャブと左ボディをヒットさせたチェンロン。ラマザノフはテンカオと右のカウンターを狙うも受けに回り続ける。

 5R、チェンロンはケージを背負わせながらパンチのコンビネーションを振るい、左右ボディを捻じ込んでから顔面ヒザ蹴りも突き上げ。足の運びが重くなり疲労の色が隠せないラマザノフだが、要所要所で顔面前蹴りとテンカオを決めて老獪さをみせた。

 ダウンを奪ったラマザノフがチェンロンの反撃を振り切り、満場一致の判定勝ち。ONE Super Seriesキックボクシング世界バンタム級の初代王者に輝いた。


Prelim
▼72.0キロ契約 5分3R
×ロディアン・メンチャベス(25=フィリピン)
一本 2R 1分45秒 ※ニンジャチョーク
○ユン・チャンミン(25=韓国)

チョークに捕らえるチャンミン

 チャンミンを相手にMMAデビュー戦を行う予定であったムエタイの世界的強豪ファビオ・ピンカ(フランス)が負傷欠場。チャンミンは代役のメンチャベスと拳を交えることになった。

 チャンミンは昨年7月にAbema TVの企画番組「格闘代理戦争」のトーナメントで優勝し、ONEとのプロ契約を獲得。今年3月にONE初の日本大会でプロデビューを果たし、現在までに3戦全勝(1KO・TKO/2SUB)の結果を残している。

 対するメンチャベスは昨年6月のONEデビュー戦でリー・カイウェン(中国)に13秒KO負けを喫して以来、1年半ぶりの戦線復帰。通算戦績を5勝2敗(2KO・TKO/3SUB)だ。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。チャンミンが左右の前蹴りをメンチャベスのヒザや太腿に細かく当てながら、右カーフキックを当ててペースを掴む。メンチャベスは早くも足を削られて、チャンミンに右フックも強打される。

 チャンミンの左インローがメンチャベスの下腹部に当たってしまうが、試合はインジャリータイムを経て再開。チャンミンはメンチャベスの右ローをキャッチして転倒させると、以降は上をキープしながらパウンドとエルボーを落としていく。

 2R、チャンミンの右カーフで体が流れるメンチャベス。チャンミンはワンツーと右アッパーもヒットさせ、メンチャベスの動きがかなり鈍ったところで豪快な飛びヒザ蹴りを放つ。

 メンチャベスは喰らいながらもタックルに出るが、チャンミンのチョークに捕まり万事休す。チャンミンがこのままメンチャベスをタップさせた。

 一本勝ちで4連勝をマークしたチャンミンは次戦の相手にエドワード・ケリー(フィリピン)を指名し、「自分の打撃が本物のストライカーにどのくらい通用するのか知りたい」との理由も語った。


Main Card
▼女子アトム級(52.2キロ) 5分3R
×ジヒン・ラズワン(マレーシア)
判定0-3
○デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

Main Card
▼ウェルター級(83.9キロ) 5分3R
○アギラン・ターニ(マレーシア)
判定2-1
×ダンテ・スキーロ(アメリカ)

Main Card
▼フライ級(61.2キロ) 5分3R
×グルダーシャン・マンガット(インド、カナダ)
一本 1R 4分35秒 ※リアネイキドチョーク
○リース・マクラーレン(オーストラリア)

Main Card
▼ONE Super Series キックボクシング ライトヘビー級(102.1キロ) 3分3R
○アンドレイ・ストイカ(ルーマニア)
KO 1R 1分57秒
×アンデウソン・シウバ(ブラジル)

Prelim
▼ONE Super Series ムエタイ フライ級(61.2キロ) 3分3R
×ルーシラー・プーケットトップチーム(タイ)
判定0-3
○エリアス・マムーディ(アルジェリア)

Prelim
▼バンタム級(65.8キロ) 5分3R
×モハメド・アイマン(マレーシア)
判定0-3
○チェン・ルイ(中国)

Prelim
▼バンタム級(65.8キロ) 5分3R
○ティアル・サン(ミャンマー)
判定3-0
×キム・ウンキョン(韓国)

Prelim
▼女子フライ級 5分3R
×ソヴァナリィ・エム(ベトナム、アメリカ)
一本 1R 2分14秒 ※ギロチンチョーク
○ラヤネ・バストス(ブラジル)