2020年2月28日(金・現地時間)『ONE: KING OF THE JUNGLE』が、シンガポール・インドアスタジアムで開催されました。以下、試合レポート・結果です。なお、今大会の闘技場にはリングではなく、ケージが使用されています。
Co-Main Event
▼ONE Super Seriesムエタイ世界ストロー級王座決定戦 −56.7kg 3分5R
○サムエー・ガイヤーンハーダオ(36=タイ)
判定3-0
×ロッキー・オグデン(20=オーストラリア)
※サムエーが王座に就く。
サムエーは“左ミドル”の達人として知られるムエタイのベテラン。昨年12月のONE Super Seriesキックボクシング世界ストロー級王座決定戦では、初挑戦のルールながら強敵ワン・ジュングァン(中国)に判定3-0で完勝し、王者に輝いている。今回は本職のムエタイで、初参戦の若武者オグデンを相手に王座決定戦を闘う。
選手はボクシンググローブではなく、オープンフィンガーグローブを着用。闘技場はリングではなく、円形のケージとなる。
1R、構えはサムエーがサウスポー、オグデンがオーソドックス。サムエーはオグデンの前蹴りや左ミドルをキャッチして、すかさず左ミドルを返す。オグデンのワンツーと左右ローも鋭い。サムエーは時おりオグデンの膝に前蹴りを合わせ、その前進を止めていく。
2R、サムエーはオグデンがケージに詰まったところで左ミドルを連打。サムエーの左ストレートも離れ際のオグデンに届く。終了間際にオグデンが首相撲に持ち込んでの肘。サムエーは肘で斬り返し、間髪を容れず左ハイも追加する。
3R、オグデンが圧力をかけてワンツーと右ミドル。サムエーは巧みに間合いをコントロールして当てさせず、自らの左ミドルと左ストレートは届かせる。今度は左フックのフルスイングで飛び込むオグデン。サムエーはマタドールのようにかわす。終盤にはサムエーの肘と膝の強烈コンボにオグデンが顔を覆う場面も。
4R、戦況は変わらず。なんとか攻撃を当てたいオグデンだが、打てども打てどもサムエーにかわされてしまう。サムエーは要所要所でオグデンの軸足を払ってこかし、さらに攻勢を印象づける。
5R、左ミドルと左ストレートの連打でオグデンにケージを背負わせるサムエー。オグデンはサムエーの首を制しにいくが、肘を返されて顔を背ける。以降もサムエーはオグデンの攻撃をかわし、左ストレートと肘でたたみかる展開も作った。
結果はサムエーが文句無しの判定勝ち。サムエーがONE Super Seriesのキックボクシングに続き、本職のムエタイでも匠の技を見せてベルトを巻くことになった。
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Main Event
▼ONE Super Seriesキックボクシング世界女子アトム級タイトルマッチ −52.5kg 3分5R
×スタンプ・フェアテックス(22=タイ/王者)
判定1-2
○ジャネット・トッド(34=アメリカ/挑戦者)
※スタンプが初防衛に失敗、トッドが新王座に就く。
新型コロナウィルスの影響により、無観客で行われた今大会。メインイベントはスタンプvsトッドのONE Super Seriesキックボクシング世界女子アトム級タイトルマッチだ。
スタンプは現在、ONEでムエタイとキックボクシングの女子アトム級王座を同時に保持し、MMA(総合格闘技)でもデビュー4連勝中。アンジェラ・リー(シンガポール)に続く、ONE女子部門のスター選手へと上り詰め、3競技での同時戴冠も見据える。
今回はキック王座の初防衛戦。挑戦者のトッドとは昨年2月のONE Super Seriesムエタイ世界女子アトム級王座決定戦で一度拳を交えており、この時はスタンプが判定勝ちで王者に輝いている。異なるルールで迎える1年ぶり再戦の行方や如何に。
選手はオープンフィンガーグローブではなく、ボクシンググローブを着用。闘技場はリングではなく、円形のケージとなる。
1R、構えは両者共にオーソドックス。互いにパンチから右の蹴りに繋げるコンビネーションをぶつけ合う。ワンツーが鋭いのはトッド。スタンプはトッドの攻撃が終わると、間髪をいれず右ローを蹴る。
2R、トッドはさらにステップを駆使。スタンプの空振りが増える。トッドは左ストレート2連打から右ローを蹴るコンビネーションを決め、スタンプが前がかりになったところで右ハイ強襲。スタンプもトッドの打ち終わりを右ローで攻める。
3R、トッドがワンツースリーのパンチから右ハイを蹴れば、スタンプは左ジャブから右ロー。トッドは右ミドルと右ハイも追加して印象を残す。スタンプは右フックが大振りになったところでトッドの左ミドルを被弾。トッドの左ボディもスタンプに効いたようだ。
4R、打ち合いになればトッドの右ハイと左ボディがヒット。スタンプは勢い良くワンツーを振り抜くもクリーンヒットさせることができない。トッドはすぐさまお返しの右ストレートや左ミドル。トッドの左ハイ強襲もスタンプを脅かす。
5R、トッドがワンツースリーのパンチから右ミドルのコンビネーション。スタンプは負けじと右ストレートを返すが、打ち合いに転じたところでトッドにワンツーで顎を跳ね上げられてしまった。
結果は判定2-1でトッドに軍配。トッドが異なるルールでスタンプにリベンジを果たし、ONE Super Seriesキックボクシング世界女子アトム級の新女王に輝いた。
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Main Card
▼MMA ライト級 −77.1kg 5分3R
×アミール・カーン(25=シンガポール)
一本 1R 1分39秒 ※リアネイキドチョーク
○江藤公洋(31=日本)
江藤はDEEPで活躍後、ONE Warrior Series(ONEのトライアウトシリーズ)で3勝1敗の結果を残しONEと契約。昨年7月のONEデビュー戦では、ONE Warrior Seriesで唯一の黒星(1RTKO負け)を喫した相手、パク・デソン(韓国)と再び拳を交えるも、2RTKO負けでリベンジならず。今大会で再起を図る。
対するカーンは2018年11月にONE世界ライト級王座決定戦を経験している実力者(試合はエドゥアルド・フォラヤンに判定負け)。3連敗で臨んだ昨年11月の試合では、エブ・ティン(ニュージーランド、マレーシア)に判定勝ちし、復活の狼煙を上げた。
1R、江藤が幸先良く組みの攻防に持ち込むと、ケージ際で粘るカーンの足を刈ってテイクダウン。身を起こそうとしたカーンに対し、江藤は素早くバックチョークをセットする。これがしっかりと極まり、カーンがタップ。江藤がタイトルマッチ経験者を相手に電光石火の一本勝ちを収め、ONE本戦で嬉しい初白星を掴んだ。
Main Card
▼MMA ウェルター級 −83.9kg 5分3R
○秋山成勲[よしひろ](44=日本、韓国)
KO 1R 3分04秒
×シェリフ・モハメド(37=エジプト)
秋山は2006年10月のHERO’Sライトヘビー級王座決定トーナメントで優勝した実績を持ち、UFC参戦も果たしたベテラン。長らく戦線を離れていたが、昨年6月にONEで3年7カ月ぶりに実戦復帰し、アギラン・ターニ(マレーシア)に判定負けとなった。今回が8カ月ぶりの再起戦だ。
その秋山の復帰2戦目の相手に決まったのはモハメド。母国エジプトのEFC(Egyptian Fighting Championship)でライトヘビー級王者に輝いた実績の持ち主だ。ただ、ONEでは3試合に出場しているが、ターニに判定負けするなどし、3戦全敗と未だ勝ち星は掴めていない。
1R、パンチを連打しながら重戦車のように向かってくるモハメドに対し、ガートとステップで応戦する秋山。モハメドの勢いは序盤までで、徐々に秋山が鋭い右ストレートと右ローを当て始める。モハメドは右の拳を振りかざすも足がついてこず。秋山はすかさず右の拳をカウンターで叩き込み、モハメドをマットに沈めた。
秋山がKO勝ちでONE初白星をあげると共に、2014年9月の『UFC Fight Night 52』でアミール・サダロー(アメリカ)に判定勝ちして以来、5年6カ月ぶりとなる勝利も掴んでいる。
Main Card
▼MMA 女子ストロー級 −56.7kg 5分3R
○ティファニー・テオ(30=シンガポール)
TKO 3R 4分45秒
×三浦彩佳(29=日本)
三浦は今年1月に強敵マイラ・マザール(ブラジル)に2R一本勝ち。昨年2月のONEデビュー戦から3試合連続の一本勝ちと好調を維持したまま、中48日というスパンで新天地4戦目に臨むことになった。
対戦相手のテオはONEで5勝1敗の成績を収めている実力者。唯一の黒星は2018年1月のONE世界女子ストロー級タイトルマッチで、王者ション・ジンナン(中国)に喫した4RTKO負けだ。前回の試合出場は2018年11月で、強豪ミシェル・ニコリニ(ブラジル)に判定勝ちしている。
1R、三浦がテオの左ジャブを捕まえると、その左腕を脇に挟んで巻き込む。テオは抵抗するも、三浦得意の袈裟固めに捕まってしまう。肩固めをセットする三浦。テオは顔も体も紅潮してくるが、耐えに耐えてここを生還する。
2R、三浦は再びテオの左腕を脇に挟んで巻き込むも、今度は崩し切ることができず。テオは同じ轍を踏まず、同様の展開になれば三浦を背後から組み伏せてパンチを落とす。スタンドに戻ると、疲労した三浦が一気にペースダウン。テオがここぞとばかりにワンツー、右ロー、左ミドルなどの打撃をぶつける。
3R、三浦はテオの左ミドルにタックルを合わせるもテイクダウンならず。テオは右ローで巧く三浦の前足を削り、左ハイ強襲も成功させる。疲労困憊で足元がおぼつかない三浦はタックルが失速。テオは三浦を亀の状態にさせると、膝蹴りと鉄槌を一方的に打ち込み、レフェリーストップを呼び込んだ。
三浦はテオにTKO負けとなり、タイトル戦線から一歩後退すると共にパンクラス時代から続く連勝は6でストップ。一方、テオは1年4カ月ぶりの試合を制し、2連勝となった。
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Lead Card
▼MMA 女子アトム級 −52.2kg 5分3R
×山口芽生(37=日本)
判定0-3
○デニス・ザンボアンガ(23=フィリピン)
元DEEP JEWELSアトム級王者の山口は5カ月ぶりのONE参戦(日本でのリングネームはV.V Mei[ヴィー・ヴィー・めい])。2018年5月のONE世界女子アトム級タイトルマッチで王者アンジェラ・リー(シンガポール)に判定負けしたが、その後はラウラ・バリン(アルゼンチン)に1R一本勝ちするなどし、4連勝をマークしている。
今大会で当初対戦が決まっていたメン・ボー(中国)は欠場。ザンボアンガがボーに代わって山口と拳を交える。通算戦績は山口が21勝11敗1分(2KO・TKO/9SUB)で、ザンボアンガが6戦全勝(2KO・TKO/2SUB)。キャリアでは山口が大きく上回っている。
1R、構えは両者共にオーソドックス。ザンボアンガがジリジリと前進し、時おり左ジャブとワンツーを突く。山口は左右に足を運びながらパンチを返し、機を見てタックルを仕掛けるが、腰が強いザンボアンガを崩すことができない。それでもしぶとく片足を捕らえて離さない山口。ザンボアンガはテイクダウンを許さず、終盤には鋭いパンチの連打を山口に浴びせる。
2R、勢い良く踏み込んで右フックを当てるようになった山口。ザンボアンガはすかさずストレート系のパンチを連打して押し返す。前がかりになるザンボアンガに対し、山口が中盤に意表を突くタックルでテイクダウンに成功。しかし、ザンボアンガは山口の足関節技を防ぎながら鉄槌を届かせていく。山口は一方的にもらってしまう場面も。
3R、ここも山口にタックルを決めさせないザンボアンガ。山口はパンチを振るって飛び込むが、入り際をザンボアンガにパンチで狙われたり、クリンチと膝蹴りで跳ね返されてしまう。右目の下が大きく腫れてきた山口。ザンボアンガは山口をケージに押し込んだ状態をキープし、左の拳をコツコツと当て続けた。
ザンボアンガが元タイトルコンテンダーをほぼ完封する内容で判定勝ち。山口の連勝は4でストップとなった。
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Lead Card
▼MMA バンタム級 −65.8kg 5分3R
○トロイ・ウォーゼン(アメリカ)
判定3-0
×マーク・フェアテックス・アベラルド(ニュージーランド、フィリピン)
Lead Card
▼MMA フェザー級 −70.3kg 5分3R
×シャノン・ウィラチャイ(タイ)
判定1-2
○ホノリオ・バナリオ(フィリピン)
Lead Card
▼MMA アトム級 −52.2kg 5分3R
○リトゥ・フォガット(インド)
判定3-0
×ウー・チャオチェン(台湾)
Lead Card
▼MMA ウェルター級 −83.9kg 5分3R
○ムラド・ラマザノフ(ロシア)
TKO 1R 4分53秒
×ぺ・ミョンホ(韓国)
Lead Card
▼MMA バンタム級 −65.8kg 5分3R
×ラディーム・ラフマン(シンガポール)
一本 2R 2分00秒 ※リアネイキドチョーク
○ジェフ・チャン(カナダ)