2019年10月26日(土・現地時間)シンガポール・インドア・スタジアムで『UFC Fight Night 162』(もしくは『UFC on ESPN+ 20』)が開催されました。以下に試合レポート・結果を綴ります。

▼メインイベント ウェルター級 5分5R
○デミアン・マイア(41=ブラジル/同級10位)
一本 3R 3分54秒 ※リアネイキドチョーク
×ベン・アスクレン(35=アメリカ/同級11位)

 権威あるグラップリング大会を制してきたマイアと、レスリングのオールアメリカンで五輪出場経験も持つアスクレンによる、MMA最高峰のグラップラー対決。

 マイアはこれまでにUFCのミドル級とウェルター級でタイトルマッチを経験しているベテラン。今年2月の『UFC Fight Night 144』(もしくは『UFC Fight Night on ESPN+ 2』)で、元Bellator世界ウェルター級王者ライマン・グッド(アメリカ)から一本勝ちを収め、3連敗から脱出を果たすと、続く6月の『UFC on ESPN 3』ではロッコ・マーティン(アメリカ)に判定勝ちし、復調している。

 対するアスクレンは先述のレスリングの実績に加え、MMAでもBellatorとONEの2団体で世界ウェルター級王座に就いた輝かしい経歴の持ち主。今年3月の『UFC 235』でオクタゴン初戦に臨み、元UFC世界ウェルター級王者ロビー・ローラー(アメリカ)から一本勝ちを収めた。だが、続く7月の『UFC 239』ではホルヘ・マスヴィダル(アメリカ)の飛びヒザ蹴りを前に、わずか5秒でマットに沈み、今大会で再起戦に臨むことになった。

 1R、構えはマイアがサウスポー、アスクレンがオーソドックス。マイアは右リードジャブを突きながら時おり左ストレートを繰り出す。アスクレンは左の前手で触りながら右の拳を振るい、そのまま組みつく動きをみせる。両脇を差したりプッシュしたりして対処するマイア。アスクレンは組み際にマイアの右ジャブや左フックを被弾して動きがおぼつかなくなる場面も。

 残り時間1分を切ったところで、アスクレンは再び組みにいき、マイアのヒザ蹴りをキャッチ。マイアは初めてテイクダウンを許すが、すぐに下から腕や足の関節技を狙う。足を取られたアスクレンはマイアに向かってパンチを落とす。下から崩しにかかるマイア。アスクレンはがぶりの体勢で押さえ込み、ホーンが鳴るのを待った。

 2R、右の拳を連打で突き出しながら前に出るアスクレン。マイアは素早く後ろへ下がって組ませない。アスクレンの右アッパーとマイアの左ストレートが交錯。中盤に入るとマイアは足の運びが遅れ始め、アスクレンの右ジャブと左フックを被弾し、顔面からの出血量も多くなる。

 残り時間1分に迫ったところでアスクレンはタックル。マイアはテイクダウンを許すが、オモプラッタの仕掛けから鮮やかにスイープする。これには観客も大歓声。引っくり返されたアスクレンはマイアにマウント取られてパンチを浴びる。終了間際にアスクレンが上体を起こして返せば、マイアはアームロックに切り替え。アスクレンは下になったマイアをまたぐようにして支点をずらし、あとは押さえ込んで切り抜けた。

 3R、右へ回り込みながら右ジャブを突くマイア。アスクレンは左の前手で触りながらついていく。マイアがケージ際で詰まったところでアスクレンは組みつく。いったんはマイアに引きはがされるも、アスクレンはしぶとく組みにいき、今度は裏投げに切り替えてテイクダウンに成功。だが、ここもアスクレンは制圧しきれず、マイアを立たせてしまう。

 打撃戦に戻るとマイアが右ジャブと左ストレートをヒット。アスクレンは構わず間合いを潰し、マイアの片足をとらえて引き倒す。しかし、マイアは足関節を取って再び鮮やかにスイープ。マウントを許したアスクレンは体を捻って下を向く。マイアは両足をアスクレンの胴に回して挟み込み、動きを制しながらチョーク。アスクレンは遠のく意識の中、マイアのヒザを1回叩くも直後に落ちてしまった。

 マイアが最高峰のグラップラー対決を一本勝ちで制し、3連勝をマーク。アスクレンは2連敗となった。

 試合後、マイクを向けられたマイアは「打撃で優位に戦えていることは分かっていた。ただ、自分の本質はいつだってグラップリングだ。それでも今日はストライキングで優勢に試合を進め、彼を疲れさせる必要があった。そうしなければ手強い相手だった」とコメントし、チーメメイトたちと輪になって勝利の喜びを分かち合った。


▼女子ストロー級 Prelim 5分3R
○ロマ・ルックブーンミー(23=タイ)
判定2-1 ※30-27、28-29、30-27
×アレクサンドラ・アルブ(29=モルドバ)

 ルックブーンミーはムエタイの強豪として活躍。2012年12月に16歳の若さで来日し、神村エリカとWPMFムエタイ世界女子ミニフライ級王座決定戦を争った経験も持つ(ルックブーンミーがKO負け)。昨年1月の『Invicta FC 27』でプロMMA白星デビュー。同年8月には『Pancrase 298』でMMA2戦目を戦い、華DATEから2RTKO勝ちを収めている。現在の戦績は3勝(1KO・TKO/0SUB)1敗。UFC初のタイ人選手として今大会に臨む。

 対するアルブも3勝(1KO・TKO/1SUB)1敗の戦績。プロ2戦目を2015年4月の『UFC Fight Night 64』で迎え、その後も1年半から2年おきにUFCで試合に出場している。前戦は今年2月の『UFC on ESPN 1』で、エミリー・ウィットマイア(アメリカ)に一本負けしている。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。グローブタッチからほどなく、ルックブーンミーが強烈な右ミドルを叩き込み、観客がどよめく。アルブも果敢にパンチを振るいながら向かっていくが、ルックブーンミーは首相撲にとらえてヒザ蹴りとエルボーで迎え撃つ。ルックブーンミーの着衣を引っ張り続けたアルブに対し、レフェリーが口頭注意。ここからの再開直後、アルブが左のフェイントから右フック、そして左ハイをルックブーンミーにヒットさせる。

 前に出てプレッシャーをかけるのはアルブ。ルックブーンミーは距離を保ちながら前蹴りで突き放す。アルブが強引に組みついてくれば、ルックブーンミーは自らの体を軸に素早く振り回すようなムエタイの投げで転倒させる。アルブは拳を握って遠間から飛び込もうとするが、ルックブーンミーの顔面前蹴りを被弾して鼻から出血。ルックブーンミーは首相撲からのヒザ蹴りとエルボーで削っていく。

 2R、左右フックで迫りくるアルブに対し、ルックブーンミーは素早く回り込んで当てさせない。アルブはルックブーンミーの右ハイを狙って組みつき、自ら下に引き込んで足関節を狙うが外されてしまう。ルックブーンミーは右ローから右フックに繋げる連続技を繰り出すが、ここでアルブの強烈な右ストレートを被弾。アルブはタックルにきたルックブーンミーをがぶって潰し、ケージ際に運んで左右フックを浴びせる。アルブの組みをほどいたところですぐに距離を取るルックブーンミー。アルブは再び組みつこうとするが、今度はルックブーンミーが投げでさばく。

 3R、右フックの交錯からルックブーンミーはすぐに首相撲。アルブは引きはがすが、ほどなくして再びルックブーンミーの首相撲につかまり、ヒザ蹴りとエルボーを喰らってしまう。以降も、投げによるさばき、首相撲からのヒザ蹴りとエルボー、相手の踏み込みに合わせた遠間からの顔面前蹴りなど、試合はルックブーンミーの独壇場。残り時間30秒で、アルブがようやく組みからのカニ挟みを決め、テイクダウンを成功させるが、フィニッシュに持ち込むまでの時間はなかった。

 判定は割れたが、ルックブーンミーがムエタイ技術を駆使した戦い方で終始主導権を握り、タイ人として初めてオクタゴンで勝利をつかんだ。

 試合後の勝利者インタビューでは、通訳に入った女性チームメイトが感極まる。ルックブーンミーは彼女の肩を抱き寄せると、「この勝利は私にとって多くを意味します。たくさんの方からのサポートのおかげで、私はここに立つことができています」と挨拶した。 


▼セミファイナル ライト級 5分3R
×マイケル・ジョンソン(アメリカ)
判定0-2 ※28-28、28-29、28-29
○スティービー・レイ(イギリス)

▼ライト級 Main Card 5分3R
×フランク・カマチョ(グアム)
一本 1R 2分02秒 ※リアネイキドチョーク
○ベニール・ダリウシュ(イラン)

▼ヘビー級 Main Card 5分3R
○シリル・ガーヌ(フランス)
一本 3R 4分46秒 ※リアネイキドチョーク
×ドンテイル・メイエス(アメリカ)

▼ウェルター級 Main Card 5分3R
○ムスリム・サリコフ(ロシア)
判定3-0 ※30-26、30-26、29-28
×ラウレアノ・スタロポリ(アルゼンチン)

▼女子ストロー級 Prelim 5分3R
○ランダ・マルコス(イラク)
判定2-1 ※29-28、28-29、29-28
×アシュリー・ヨーダー(アメリカ)

▼ライト級 Prelim 5分3R
×アレックス・ホワイト(アメリカ)
判定0-3 ※28-29、27-30、27-30
○ラファエル・フィジエフ(カザフスタン)

▼フェザー級 Prelim 5分3R
×エンリケ・バルソラ(ペルー)
判定0-3 ※28-29、28-29、27-30
○モフサル・エフロエフ(ロシア)

▼ヘビー級 Prelim 5分3R
×モーリス・グリーン(アメリカ/同級13位)
TKO 1R 2分11秒
○セルゲイ・パブロビッチ(ロシア/同級14位)

▼ヘビー級 Prelim 5分3R
○ハファエル・ペソア・ヌネス(ブラジル)
判定3-0 ※30-27、30-27、30-27
×ジェフ・ヒューズ(アメリカ)