マスヴィダル(左)とネイト(右)が
「BMF」の称号をかけて激突した
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 2019年11月2日(土・現地時間)アメリカ・ニューヨーク州ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで『UFC 244』が開催されました。以下に試合レポート・結果を綴ります(※試合順を入れ替えている箇所があります)。

次頁 >> RIZIN経由の新星ホーゼンストライクが元王者アルロフスキーを29秒KO

▼メインイベント ウェルター級 5分5R
○ホルヘ・マスヴィダル(34=アメリカ/同級3位)
TKO 3R終了時点 ※ドクターストップ
×ネイト・ディアス(34=アメリカ/同級7位)

https://twitter.com/ufc_jp/status/1190755482757144579

 今大会のメインイベントはマスヴィダルとネイトが拳を交えるウェルター級ワンマッチ。勝者には「BMF」なる称号が送られるという。UFCはペイ・パー・ビュー大会のメインイベントにはUFC世界王座を懸けたタイトルマッチを組むのが通例。つまりベルトが懸からないワンマッチがメインイベントになるのは異例のことだ。しかも今大会はマディソン・スクエア・ガーデンでの開催ときている。まずは試合レポートの前に、異例のことが起こった経緯について触れたい(※長めです)。

 事の発端は今年8月の『UFC 241』でネイトが試合後に発した言葉だった。挑発、乱闘騒ぎ、放送禁止用語連発——。これまで過激な言動で人気を集めてきたネイトはこの日、3年ぶりの復帰戦ながらブランクを感じさせない戦いぶりで元UFC世界ライト級王者アンソニー・ペティス(アメリカ)に満場一致の判定勝ち。勝利者インタビューに臨むと、大歓声を受けながらこう発言した。

「俺が休んでいたのは他の奴らがどうしようもないからだ。そして戦うべき相手もいなかった。しかし、俺はこのベルトを防衛したい。相手は…ホルヘ・マスヴィダルが前回良い戦いをした。あの男に敬意を込めて。この戦いをあるべきかたちで実現できるのは俺たちだけだ。あの男がギャングスターなのは知っているが、西海岸のギャングスターではない」

 ネイトは次戦の相手にマスヴィダルを指名。マスヴィダルは7月の『UFC 239』で、元Bellator・ONE世界ウェルター級王者ベン・アスクレン(アメリカ)を相手に、試合開始直後の飛びヒザ蹴りでUFC史上最短の5秒KO勝利をあげており、大きな注目を集めていたところだった。

 そしてギャングスターのくだりが意味するところはおそらく、マスヴィダルがネイトと同じくストリートで腕を鳴らした過去を持つということ。カリフォルニア州ストックトン出身のネイトが西海岸のギャングスターなら、フロリダ州マイアミの出身のマスヴィダルは東海岸のそれということだ。

 ではネイトが王座に就いていないにもかかわらず、懸けると言ったベルトとは何なのか?その答えは大会後の会見でネイトの口から明かされる。

「これは戦いなんだ。プロフェッショナルスポーツのように振る舞うのはやめろよ。彼らが俺に求めるモノを獲りにいくだって?ちがうな。俺は俺の物を獲りにいく。Baddest Motherf**kerのタイトルだ。ベルトを早く準備しな」

 Motherf**ker(マザー○ッカー)はいわゆる放送禁止用語で、通常は愚か者や嫌な奴などと相手を侮辱する最もきつい類いの言葉だが、時に最高やナンバーワンを意味するスラングのBaddest(バッデスト)と用いられ、恐れ知らずの人間や自信満々の人間というような意味合いになるという。Baddest Motherf**ker。略してBMF。「最高のイカした野郎」もしくは「最高の愚か者」とでも言うべきか。ネイトはこの裏頂点を争う戦いをマスヴィダルに求めたのだ。

「ヘイ、@NateDiaz209。こいつら負け犬どもはf**kしておけ。MSGで会おう。#BMF title on the line #supernecessary」

 マスヴィダルもネイトに向けてこうツイート。当初、マスヴィダルにはカマル・ウスマン(ナイジェリア)のUFC世界ウェルター級王座に挑戦する話しもあったようだが、BMFを巡るネイトとのやり取りにファンが盛り上がるのを受け、UFCはナンバーシーリーズ大会のメインイベントにマスヴィダルvsネイトを組むことを決めた。

 UFCのデイナ・ホワイト代表はネイトの言葉通り、BMFのベルト製作までもオーダー。さらにかつてプロレス界のトップスター選手で、現在は俳優として活躍するザ・ロックこと、ドウェイン・ジョンソンがベルトのプレゼンターを務めるという。かくして、マスヴィダルvsネイトはBMFタイトルマッチという一大イベントと化したのだった。

 もちろん、こうした盛り上がりは両者のキャラクターだけでなく、実力と実績が伴うからこそのこと。

 マスヴィダルは2008年から2010年にかけて日本で戦極などに参戦した経験を持ち、2011年にはギルバート・メレンデス(アメリカ)とStrikeforce世界ライト級王座を争ったこともあるベテラン(マスヴィダルが判定負け)。UFCには2013年から参戦し、ダロン・クルックシャンク(アメリカ)、ドナルド・セラーニ(同)、ダレン・ティル(イギリス)、そして先述のアスクレンら、強豪を破ってきた。通算戦績は34勝(16KO・TKO/2SUB)13敗。現在2連勝中だ。

 一方、ネイトは2007年にTUFのライト級トーナメントを制し、UFCに参戦。2012年にはベンソン・ヘンダーソンのUFC世界ライト級王座に挑戦している(ネイトが判定負け)。近年特に話題を集めたのは2016年のコナー・マクレガー(アイルランド)との2連戦で、1戦目は急遽の代役出場ながら一本勝ちし、5カ月後の2戦目は判定負け。そして、この試合後に先述した3年間の長期離脱に至っている。通算戦績は20勝(4KO・TKO/12SUB)12敗。パフォーマンスボーナスはこれまで15回受賞している。ちなみに兄の元Strikeforce世界ウェルター級王者ニック・ディアスも悪童として名高い。

 危険な香り漂うマスヴィダルとネイトのBMFタイトルを懸けた戦いの幕がここに切って落とされた。

 1R、構えはマスヴィダルがオーソドックス、ネイトがサウスポー。マスヴィダルが前戦の飛びヒザ蹴りを再現するかのように小走りで前へ出ると、察知したネイトはすぐに距離を取る。何か言葉を発し合う両者。今度はネイトがダブルの右ジャブから左ストレート、そして前蹴りを入れながらにじり寄り、マスヴィダルは右ミドルとワンツーを返して組みつく。観客からは「ディアス」のコールだ。

 首相撲からヒザ蹴りを突き刺すマスヴィダル。直後の離れ際にネイトはマスヴィダルの左エルボーを被弾し、ぐらついて前のめりになったところで右ハイも顔面に叩き込まれてダウンする。いきなり大ピンチのネイトは下から足をうるさくして応戦。マスヴィダルは上から割って入るようにしながらパンチを落とすが、無理に追撃はしない。しばしの猪木アリ状態が続いたところで、マスヴィダルはスタンドを要求する。

 右まぶたをカットされて顔面が血に染まったネイトは、マスヴィダルの右ミドルをキャッチして組みつく。マスヴィダルはエルボーを入れて突き放す。今度はネイトが左右フックで襲撃。マスヴィダルはすぐに組みついてニヤリと笑みを浮かべ、離れ際にパンチのコンビネーションをまとめる。終了間際にネイトも右ボディから左ストレートをマスヴィダルの首元にねじ込んだ。

 2R、開始直後からネイトが上下に弾みながら間合いを縮め、ケージ際を移動するマスヴィダルにパンチのコンビネーションを振るう。マスヴィダルはさっと回り込んで回避し、右ミドルを返していく。ネイトは動きを止めたところで、マスヴィダルが繰り出す左ジャブからの右フックをもろに喰らい、さらに右ミドルも叩き込まれると、観念したかのように自らマットに背をつける。マスヴィダルはパンチを数発落とし、またすぐにスタンドを要求。

 立ち上がったネイトは下がることなく右ジャブを突いて前に出るが、マスヴィダルに組まれてパンチとエルボーのコンボを被弾。それでもネイトはマスヴィダルに背を向けるようにしてケージ際を歩いてみせる。マスヴィダルはすかさず右フックを叩き込み、首相撲にとらえて顔面ヒザ蹴りの連打。さらにマスヴィダルはネイトを背後から抱え上げ、マットに叩きつけるようにテイクダウン。ネイトも亀の状態から腰を上げると、マスヴィダルを背中に乗せたまま前転し、もつれ合いの中でヒールホールドを狙う。マスヴィダルがこれを外して鉄槌を落としたところでホーンが鳴った。
 
 3R、下がることなくパンチをうるさく散らして前に出るネイトだが、前手を伸ばしたところでマスヴィダルの右ストレートを喰らう。マスヴィダルはパンチの連打から組みつき、エルボーを入れて離れる攻め。ネイトはそれでもパンチを散らし、マスヴィダルの右オーバーハンドと右ミドルを喰らっても喰らっても歩を前に進める。マスヴィダルは再び組みつくと、しばしの間、ネイトをケージに押し込んだ状態をキープ。ネイトは半身の体勢から前転して引き込もうとするも、すっぽ抜けてマットに背をつけてしまう。すかさず鉄槌を落とすマスヴィダル。ネイトも下から掌底とエルボーで応戦した。

 4R開始前、右まぶたをカットしているネイトにドクターチェックが入ると、観客からは大ブーイング。ネイトはやる気満々で構えてみせるが、ここで無念のストップとなり、マスヴィダルのTKO勝利が決まった。不満げな表情を浮べて言葉をかわす両者。BMFタイトルマッチはやや不完全なかたちで幕を閉じることとなった。

 ザ・ロックからBMFベルトを腰に巻かれたマスヴィダルは勝利者インタビューに応じ、「ネイトには『またやろうぜ』と今伝えたよ」と再戦での完全決着をアピール。「俺は対戦相手に意識を持たせたまま帰らせるのは好きじゃない。(中略)ニューヨークのみんな、またやるからな。良い3Rを過ごせただろ。ブーイングは勘弁してくれよ。俺は医者じゃないからな。またやるから心配するな」と続けた。

 一方、ネイトは観客からの声援にはマッスルポーズで応えてみせたが、マイクを向けられると「奴らが止めてしまうとは思わなかった。俺は続けるつもりだったのに」とやはり不満げ。また、コメンテーターのジョー・ローガンから「あなたが打たれ強いのはみんな分かっている。だからこそ4Rと5Rを戦えなかったことは致命的なのでは?」と尋ねられると、ネイトは「特に今日はちょっとした問題もあってね。普段ほど動くことができなかったんだ。もっと蹴ろうと思っていたんだが、ホルヘがやるべきことを巧くやったよ」とコンディションが万全ではなかったとも明かし、最後は「俺はお前たちのために戻ってくるからな」と再起を誓った。


▼ヘビー級 Prelim 5分3R
×アンドレイ・アルロフスキー(40=ベラルーシ)
KO 1R 29秒
○ジャルジーニョ・ホーゼンストライク(31=スリナム)

https://twitter.com/ufc/status/1190783607880577024

 ホーゼンストライクは8戦全勝(7KO・TKO)の通算戦績を誇る新星。唯一の判定決着は、昨年5月の『RIZIN.10』でアンドレイ・コヴァレフ(ウクライナ)を下した試合だ。UFCには今年2月の『UFC Fight Night 144』(もしくは『UFC on ESPN+ 2』)から参戦し、現在2戦連続の秒殺KO勝利中。UFCでの試合時間はまだ1分03秒だ。

 対するアルロフスキーはかつてUFC世界ヘビー級王者のベルトを巻いたベテランだが、近年は黒星が先行。ノーコンテスト1戦を挟んで3連敗という状況であったが、今年7月の『UFC on ESPN 4』でベン・ロズウェル(アメリカ)に判定勝ちし、久しぶりの白星をつかんでいる。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。開始すぐに左ジャブから間髪入れず左インローを蹴るホーゼンストライク。アルロフスキーは左ジャブを伸ばすが、ホーゼンストライクの鋭い左ジャブのカウンターをもらって早くも後退する。すかさずホーゼンストライクは左右フックを連打。アルロフスキーは被弾しながらも身を屈めて射程距離から抜け出す。

 直後にローの蹴り合いで体が流れるアルロフスキー。ジリジリと迫りくるホーゼンストライクに対し、アルロフスキーはたまらず右ストレートで一気に前に出る。しかし次の瞬間、ホーゼンストライクがバックステップしながら左フック一閃。アルロフスキーは前方にばたりと倒れ込んだ。ホーゼンストライクが元王者をわずか29秒でマットに沈めた。


▼セミファイナル ミドル級 5分3R
×ケルヴィン・ガステラム(アメリカ/同級4位)
判定1-2 ※30-27、28-29、27-30
○ダレン・ティル(イギリス/同級10位)

 ガステラムはマイケル・ビスピン(イギリス)とジャカレ・ソウザ(ブラジル)を破り、今年2月の『UFC 224』で当時ロバート・ウィテカー(オーストラリア)が保持したUFC世界ミドル級王座に挑戦する予定であった。しかし、ウィテカーが大会当日の体調不良でまさかの欠場となり試合も中止に。4月の『UFC 236』でイズラエル・アデサニヤ(ナイジェリア)とUFC世界ミドル級暫定王座決定戦を争うも、判定負けを喫することとなった。今回は再起戦となる。

 一方、ティルは昨年9月の『UFC 228』で、当時タイロン・ウッドリー(アメリカ)が保持したUFC世界ウェルター級王座に挑み、一本負け。これがキャリア19戦目にして初黒星だった。続く今年3月の『UFC Fight Night 147』(もしくは『UFC on ESPN+ 5』)ではホルヘ・マスヴィダル(同)にKO負け。今大会からミドル級に階級を上げ、再出発することになった。

 1R、構えは両者ともにサウスポー。ガステラムが序盤から組みの攻防に持ち込み、ティルが受け止める展開が続く。3分が経過したところでようやく離れる両者。以降はティルが間合いを保ちながら左ローと右インローを蹴り、急に動きを止めて左ストレートやエルボーを振り下ろす攻撃をみせた。

 2R、ティルはガステラムのパンチを回り込んでかわすと、なおも距離を保ちながら単発の右ローと左ストレート。ガステラムは左右フックで迫るもかわされ、組みの攻防からの離れ際をティルにエルボーで狙われる。ガステラムの伸ばした指先がアイポークとなるが、ティルはすぐに試合再開。左カーフキックを蹴り合う展開からガステラムが組みついてティルをケージに押し込む。だが、ティルが離れるようとすれば、ガステラムは無理に追い込まない。終盤にかけてはガステラムが左ローを当てる以外のコンタクトがみられず、観客からブーイングが飛び始める。

 3R、ティルはガステラムの左ミドルをキャッチして左ストレートを振るうがこれは不発。ティルはガステラムの組みをさばいたところでワンツーをヒットさせる。再びティルがサークリングしながら距離を取り、ガステラムが追いかける展開に。かと思えば、ティルは突如ストップして回転エルボーで斬りつける。ガステラムはティルの首相撲につかまり、ヒザ蹴りを打たれる場面も。残り時間1分のところでガステラムはタックルからテイクダウンに成功。ティルが立ち上がると、ガステラムは終了間際にもう一度テイクダウンを追加した。

 互いにやや攻め手を欠いた接戦となり、判定はスプリットでティルに軍配。ティルが階級転向初戦を勝利で飾り、ガステラムは2連敗となった。


▼ウェルター級 Main Card 5分3R
○スティーブン・トンプソン(36=アメリカ/同級9位)
判定3-0 ※30-26、30-26、29-27
×ビセンテ・ルーケ(27=アメリカ/同級14位)

 トンプソンは2度のUFC世界ウェルター級タイトルマッチを経験している実力者。いずれもタイロン・ウッドリー(アメリカ)と拳を交え、1戦目は引き分け、2戦目は判定負けとなった。2017年11月の『UFC 217』でホルヘ・マスヴィダル(同)に判定勝ちして再起を飾るも、その後はダレン・ティル(イギリス)に判定負け、アンソニー・ペティス(アメリカ)にKO負けと、2連敗を喫している。

 対するルーケは2017年10月の『UFC Fight Night 119』で、ニコ・プライス(同)に一本勝ちしたのを皮切りに、現在6連勝(4KO・TKO/1SUB)中と絶好調。今大会で元タイトルコンテンダー越えとともに上位ランキング進出を狙う。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。足幅を広めに取ったトンプソン上下にステップしながらスイッチも繰り返すお馴染みのスタイルだ。ルーケが右カーフキックを積極的に蹴ると、トンプソンはサウスポーにスイッチしてサークリング。ルーケは左右ローで前足を狙い、中盤にはパンチをまとめてトンプソンに迫る。

 トンプソンは落ち着いてステップバックしながら左右フックをコツコツと打ち返し、ルーケにケージを背負わされてもクリーンヒットは許さない。間合いを取れば、トンプソンはサウスポーで右ジャブと左ストレートのコンボ、オーソドックスで単発の右フックと左ハイ、左ジャブからの右ミドルなどを巧く散らした。

 2R、右ミドルを蹴るルーケに対し、トンプソンは左右フックをコンパクトに振るう。トンプソンはサウスポーで伸ばした左ストレートとルーケの左ジャブが交錯。トンプソンは左ハイも追加する。パンチを連打して仕掛けるルーケ。トンプソンは素早くステップバックして射程距離から外れる。トンプソンは素早く回り込みながらワンツーや単発のパンチを上下に散らし、さらに前がかりになったルーケを絶妙なタイミングの横蹴りでふっ飛ばす。

 ルーケがすぐに立ち上がってパンチを連打してくれば、トンプソンは再びバックステップでかわしながらショートの右を当ててぐらつかせる。ルーケも果敢に向かい続け、パンチの打ち合いを仕掛けるが、ヒットさせるのは振りがよりコンパクトなトンプソンの方だ。トンプソンは華麗な横蹴りや後ろ回し蹴りでもルーケをおびやかした。

 3R、ルーケが右ミドルを蹴れば、トンプソンは少し間を置いて強烈な横蹴り。ルーケがふっ飛ぶと、トンプソンは「立て」のゼスチャーをみせてグローブタッチする。直後に前に出んとしたルーケに対し、サウスポーのトンプソンが強烈な左フック。ルーケは腰から崩れ落ち、ついにダウンする。

 トンプソンは鉄槌を数発落とすが、無理に追い込まずに再び「立て」のゼスチャー。以降もトンプソンが構えをスイッチしながら右へ左へと動き回って距離をコントロールし、ストレート系のパンチを単発とワンツーで突き、左右ハイ、横蹴り、掛け蹴りの強襲もみせて、ルーケを追い込んだ。

 ジャッジは満場一致でトンプソンを支持。トンプソンが好調の相手にしっかりと実力差をみせ、判定勝ちで連敗脱出を果たした。


▼ヘビー級 Main Card 5分3R
○デリック・ルイス(34=アメリカ/同5位)
判定2-1 ※30-27、28-29、29-28
×ブラゴイ・イワノフ(33=ブルガリア/同級8位)

 ルイスは3連勝で臨んだ昨年11月の『UFC 230』で、当時のUFC世界ヘビー級王者ダニエル・コーミエ(アメリカ)に挑戦するも一本負け。今年3月の『UFC Fight Night 146』(もしくは『UFC on ESPN+ 4』)でも、ジュニオール・ドス・サントス(ブラジル)にTKO負けしており、今大会で連敗脱出を目指す。

 対するイワノフはWSOF世界ヘビー級王座に就いた実績を持ち、昨年7月の『UFC Fight Night 133』でドス・サントスを相手にUFC初陣を戦い判定負け。今年3月の『UFC Fight Night 146』でベン・ロズウェル(アメリカ)に判定勝ちし、UFC2戦目で初勝利をつかんでいる。

 1R、構えはルイスがオーソドックス、イワノフがサウスポー。会場が大きな「USA」のコールに包まれる中で開戦する。開始1分、イワノフがルイスの左ミドルをキャッチしてテイクダウンに成功。ルイスは簡単にサイドを許すが、イワノフがアームロックをセットせんとしたところで一気にスタンドし、パンチのラッシュを浴びせる。ルイスお馴染みの形勢逆転っぷりに場内は大歓声だ。

 ルイスはいったん攻撃を止めたかと思えば、イワノフがひと呼吸置いたところで右ハイ強襲。イワノフはすぐに組みつく。ルイスはイワノフをケージに押し込みながらタックルに切り替えてテイクダウン。尻餅を着いたイワノフはすぐに立ち上がるが、なおもケージを背負わされる状況が続く。ルイスはイワノフの離れ際に左右フックとエルボーと振るう。

 2R、左オーバーハンドを振るって組みにいくイワノフ。ルイスはケージに押し込み、イワノフの離れ際を右アッパーで狙う。すぐに前手で触り合う距離を取る両者。ルイスは落ち着いたかと思えば、突如、右ストレートを振り抜き、イワノフがかわしたところで片手クリンチから右アッパーの連打で猛攻を仕掛ける。イワノフはケージ際まで後退。ルイスはなおも右アッパーの連打で迫る。

 イワノフはなんとかかわして組みつくと、起死回生のテイクダウンに成功し、ルイスのサイドからアームロックをセット。しかし、ルイスは再びイワノフの捻りに合わせて一気に立ち上がり、その勢いでパンチをラッシュする。イワノフは懸命に距離を取ったが、右目尻から出血。ルイスはイワノフが組みついてくると、顔面ヒザ蹴り、右アッパー、右フックの連続攻撃を叩き込んでぐらつかせる。イワノフは終了間際に再び組みつき、払い腰での豪快テイクダウンから渾身のチョーク。ここでホーンが鳴り、ルイスは何事もなかったかのようにぬっと立ち上がる。

 3R、前手を出して探り合う両者。イワノフが左右フックで仕掛けるも空振りに終わる。だるそうに右ローを放つルイス。イワノフは組みついて投げにいくが、ルイスは踏ん張り続ける。残り時間1分30秒を切ったところで、ルイスは自らタックルを仕掛けるが、これはイワノフががぶってカット。イワノフはチョークを狙うも汗で滑ってしまい、急いで立ち上がるが、ここもルイスに右アッパー攻めを許してしまう。ルイスは終了間際にもパンチをまとめた。

 判定はスプリットでルイスに軍配。ルイスが連敗脱出を果たし、イワノフは2連勝を逃すこととなった。


▼ライト級 Main Card 5分3R
○ケビン・リー(27=アメリカ/同級10位)
KO 1R 2分47秒
×グレゴール・ガレスピー(アメリカ/同級11位)

https://twitter.com/ufc_jp/status/1190818503210786817

 リーはUFC世界ライト級暫定王座決定戦を争ったこともある実力者だが現在2連敗中。昨年12月の『UFC on FOX 31』でアル・アイアキンタ(アメリカ)に判定負けし、今年5月の『UFC Fight Night 152』(もしくは『UFC Fight Night on ESPN+ 10』)ではハファエル・ドス・アンジョス(ブラジル)に一本負けしている。通算戦績は17勝(2KO・TKO/8SUB)5敗だ。

 対するガレスピーはキャリア5年で13戦全勝(6KO・TKO/5SUB)の通算戦績を誇る新星。大学時代にはオールアメリカンに4度選出されたトップレスラーでもある。UFCでは現在までに5試合を戦い、2016年9月の『UFC Fight Night 95』で迎えたデビュー戦以外は全試合でフィニッシュ。トップ10ランカーと対戦するのはこれが初めてとなる。

 1R、構えは両者ともにオーソドックスで、開始直後から前傾姿勢でパンチを振るい合う。ガレスピーがタックルの動きをみせれば、リーは素早く反応して対処。左ジャブの突き合いになると、リーチで勝るリーの左ジャブとワンツーがヒットする。ガレスピーも右アッパーや左右フックで変化をつけるが、リーに当てさせてもらえない。

 ガレスピーはやや間合いが遠くなり、パンチが空を切り始める。逆にリーは左フックから右ボディに繋げるコンビネーションを巧く返す。するとこの直後、リーが右フックで仕掛け、ガレスピーが体を傾けながら離れんとしたところで左ハイ一閃。まともに喰らったガレスピーは意識を失い、足がそろって棒のように倒れた。

 リーが衝撃の失神KO勝ち。新星ガレスピーは14戦目で初黒星となり、トップ10ランカーの力を知ることとなった。


▼ライトヘビー級 Prelim 5分3R
○コーリー・アンダーソン(30=アメリカ/同級7位)
TKO 1R 2分07秒
×ジョニー・ウォーカー(27=ブラジル/同級11位)

https://twitter.com/ufc/status/1190806782383407104

 アンダーソンは2014年のTUF 19ライトヘビー級トーナメント優勝者。パトリック・カミンズ(アメリカ)、グローバー・テイシェイラ(ブラジル)、イリル・ラティフィ(スウェーデン)をいずれも判定で下し、現在3連勝中と好調だ。

 対するウォーカーは昨年8月の『Dana White’s Contender Series Brazil 2』で勝利し、UFCと契約を果たした新鋭だ。UFC初参戦は同年11月の『UFC Fight Night 140』。これまでにカリル・ラウントリー・ジュニア(アメリカ)を1分57秒KO、ジャスティン・レデット(同)を15秒KO、ミシャ・サークノフ(ラトビア)を36秒KOし、猛威を振るっている。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。フェイントとステップを駆使して変則的に動き回るウォーカーに対し、アンダーソンがタックル。ウォーカーはケージを背負ってテイクダウンさせない。いったん離れるアンダーソン。ウォーカーは前手を伸ばしながら頭と上体を動かすが、立ち上がりと比べてもステップが少ない。アンダーソンはこれを逃さず、右オーバーハンドでウォーカーを仰け反らせ、右フック2連発でダウンさせる。

 ウォーカーは鉄槌を浴びながらもなんとか立ち上がって組みつくが、アンダーソンに片手クリンチからの右アッパーを突き上げられてふらふらに。その後も崩れど崩れど起き上がってくるウォーカーに対し、アンダーソンはパンチを振るい続け、とどめは渾身の右ストレート。ここで危険を判断したレフェリーが割って入ったが、ウォーカーは腰砕けになりながらも最後まで倒れず意地をみせ、興奮状態のアンダーソンに目をやった。

 好調同士の一戦はアンダーソンが好機を逃さずTKO勝ち。敗れたウォーカーは呆然としたままレフェリーに呼び寄せられるが、隣で興奮冷めやらぬアンダーソンが不思議なダンスをするのをみるとようやく苦笑いを浮べ、観客に向けて指でハートサインを作ってみせた。アンダーソンもメインイベンターに劣らず、なかなかのBMFぶりで観客を沸かせた。


▼フェザー級 Prelim 5分3R
○シェーン・ブルゴス(30=アメリカ/同級12位)
TKO 3R 4分32秒
×マクワン・アミルカーニ(28=フィンランド)

 ブルゴスは2016年12月の『UFC Fight Night 102』でUFC初参戦。現在までにUFCで5勝1敗の好戦績を収めており、今年5月の『UFC Fight Night 151』(もしくは『UFC on ESPN+ 9』)ではカブ・スワンソン(アメリカ)に判定勝ちしている。

 対するアミルカーニはUFCデビュー戦となった2015年1月の『UFC on Fox 14』で、アンディ・オーグル(イギリス)に開始直後の飛びヒザ蹴りとパンチで8秒KO勝ちして注目を集めた選手。こちらも現在までにUFCで5勝1敗の好戦績を収めている。

 1R、構えはブルゴスがオーソドックス、アミルカーニがサウスポー。アミルカーニが早々に組みついてテイクダウンに成功。ブルゴスはパンチを落とされたか、早くも右まぶたをカットされて出血する。アミルカーニは立ち上がるブルゴスの背後からしぶとく組みついて何度も投げ崩し、残り時間2分のところでチョークをセット。これはやや浅かったか、ブルゴスが外して脱出する。ブルゴスはすぐに間合いを詰めていくが、アミルカーニはサークリングしたり飛びヒザ蹴りのフェイントをみせたりしてパンチを当てさせない。

 2R、なおも前に出て圧力をかけるブルゴス。タックルをカットされたアミルカーニはサークリングして間合いを取る。ブルゴスはしつこく追いかけてパンチのコンビネーションを振るい、アミルカーニの組みとタックルも潰していく。アミルカーニはタックルを断念して自らマットに背をつけたところで、ブルゴスに強烈なパウンドを落とされた。

 3R、開始直後にアミルカーニが飛びヒザ蹴りで奇襲に出るが、ブルゴスは難なく回避。アミルカーニは疲労もあるのか、飛びすさりにこれまでのキレがない。好機とみたブルゴスは一気にパンチをまとめ、効かされたアミルカーニが苦し紛れのタックルに出ると、潰して鉄槌を落としまくる。しかし、ほどなくしてブルゴスはいったん追撃を止めて自ら立ち上がり、アミルカーニにも「立て」のゼスチャーでスタンドを要求。

 アミルカーニは座り込んだ状態からなんとか立ち上がるが、ブルゴスの右ハイと右ストレートを喰らっても棒立ちの状態だ。ブルゴスはアミルカーニのタックルを潰し続け、その都度スタンドを要求。タフなアミルカーニは足元をふらつかせながらも立ち続けるが、最後はブルゴスの右ボディと右フックでダウンし、レフェリーに試合を止められた。

 ブルゴスが判定までもつれ込ませることなく、TKOでフィニッシュし3連勝をマーク。アミルカーニは3連勝ならず、UFCで2敗目を喫した。


▼ミドル級 Prelim 5分3R
×ブラッド・タバレス(31=アメリカ/同級11位)
KO 1R 2分27秒
○エドメン・シャバージアン(21=アメリカ/同級13位)

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。序盤は左ジャブの突き合い・かわし合いから右フックや右ローに繋げる攻防に。2分が経過したところで、シャバージアンのワンツーが綺麗に決まり、タバレスが前のめりにダウンする。

 シャバージアンの鉄槌を浴びながら立ち上がるタバレス。シャバージアンはすぐにワンツー、右ハイ、右フックをまとめ、タバレスが足を止めたところで首相撲にとらえてヒザ蹴りを突き上げる。タバレスは間一髪でこれをかわすも、直後にシャバージアンの左ハイ強襲をまともに喰らい、マットに大の字となった。

 まさに“ゴールデンボーイ”の異名にふさわしい勝ちっぷり。シャバージアンが格上タバレスをもKOに下し、11連勝をマークした。


▼女子フライ級 Early Prelim 5分3R
○ケイトリン・チョケイジアン(アメリカ)
判定3-0 ※29-28、29-28、29-28
×ジェニファー・マイア(ブラジル)

▼ウェルター級 Early Prelim 5分3R
○ライマン・グッド(アメリカ)
TKO 3R 2分03秒
×チャンス・レンカンター(アメリカ)

▼フェザー級 Early Prelim 5分3R
×フリオ・アルセ(アメリカ)
判定1-2 ※28-29、28-29、29-28
○ハキーム・ダオドゥ(カナダ)