2019年11月9日(土・現地時間)ロシア・モスクワのCSKAアリーナで『UFC Fight Night 163』(もしくは『UFC on ESPN+ 21』)が開催されました。以下に試合レポート・結果を綴ります。

▼メインイベント フェザー級 5分3R
○ザビット・マゴメドシャリポフ(28=ロシア/同級5位)
判定3-0 ※29-28、29-28、29-28
×カルヴィン・ケーター(31=アメリカ/同級11位)

 当初、今大会のメインイベントはジュニオール・ドス・サントス(ブラジル)vsアレクサンドル・ボルコフ(ロシア)のヘビー級ワンマッチであったが、ドス・サントスの体調不良による欠場(一報は10月22日)を受け、セミファイナルで予定されていたマゴメドシャリポフvsケーターがメインイベントに繰り上げとなった。メインイベントの試合は通常、5Rで争われるが、今回は急遽の繰り上げであったということから3Rで実施される。

 マゴメドシャリポフはUFC世界ライト級王者ハビブ・ヌルマゴメドフと同じ、ロシア連邦のダゲスタン共和国出身。チェチェン共和国発のACB(Absolute Championship Berkut)でフェザー級王座に就いた実績を持ち、2017年9月の『UFC Fight Night 115』でUFCデビューを果たすと、現在までに5戦全勝(0KO・TKO/3SUB)という結果でその存在を示している。通算戦績は17勝(6KO・TKO/7SUB)1敗。正確かつ多彩な打撃と極めの強さを兼ね備える。

 対するケーターも2017年7月の『UFC 214』でのUFCデビューから4勝(3KO・TKO/0SUB)1敗の好戦績を収めており、直近の2戦はいずれも1Rで相手を仕留めているハードパンチャーだ。通算戦績は20勝(9KO・TKO/3SUB)3敗となる。

 1R、出だしはともにオーソドックスで左回り。マゴメドシャリポフはダブルの左ジャブから右インローを蹴り、サウスポーにスイッチする。前手で細かく触り合う中、蹴りの動きをみせたマゴメドシャリポフに対し、ケーターは右ストレートを振り抜くが、これは惜しくも当たらない。オーソドックスに戻したマゴメドシャリポフは左ジャブを細かく突きながらぐんぐんと前に出て、右ストレートで狙ったり、ケーターが左にステップしたところで右カーフキックを入れたりする。ケーターは距離が近くなれば右アッパーや右フックで殴りつけんとするが、マゴメドシャリポフに巧く頭を下げてかわされ、左ボディを返されることも。

 マゴメドシャリポフは左ジャブの連続打ちに右ストレートを混ぜる攻撃を軸としつつ、奥足の前蹴りを相手の顔面とヒザに連続で打ち分ける攻撃、前足で相手の内スネを払ってから掛け蹴りに繋げる攻撃、サウスポーへのスイッチと同時に前手を曲げてのエルボーフェイントから左ボディを打つ攻撃など、バリエーションが豊富。攻守が入れ替わればマゴメドシャリポフがフットワークとディフェンステクニックを駆使し、ケーターにパンチを当てさせない。終了間際にはパンチの打ち合いの中で、マゴメドシャリポフのバックハンドブローもケーターの意表を突くかたちで決まる。

 2R、左ジャブをなんとか届かせんと腕を伸ばすケーターに対し、マゴメドシャリポフはオーソドックスから右足で後ろ蹴りを突き刺し、そのまま構えがサウスポーになったところで今度は左足の掛け蹴りで顔面を狙う。マゴメドシャリポフのうるさい関節蹴りもケーターの邪魔をする。中盤にジャブを突き合ってややペースが落ち着いたところで、マゴメドシャリポフはこの試合初めてのタックルでケーターの片足をとらえるが、テイクダウンせずに手を離す。ケーターは時おり左ジャブとワンツーを返すにとどまり、コンビネーションの攻撃は未だあまりみられない。

 マゴメドシャリポフは左ジャブにいくような動きからケーターが体重をかけた前足を払い、その倒れ際に背後を取るという鮮やかな技。ケーターはケージ際で胸を合わせ、マゴメドシャリポフの組みを振りほどく。なおもケーターはマゴメドシャリポフのフットワークと上体のムーブメントを前になかなかパンチを綺麗に当てさせてもらえない。終盤にケーターは左ジャブを連続で突き、マゴメドシャリポフがダッキングで忙しくなったところを二段飛びヒザ蹴りで強襲にいくが、これもぎりぎりのところで顔を背けられてしまう。一方、マゴメドシャリポフは片手倒立しながらハイを蹴るセンチャイキックまでも繰り出す。

 3R、マゴメドシャリポフの左インローがローブローとなり、レフェリーが注意を与える。試合が再開されると、距離を取るマゴメドシャリポフに対し、ケーターは左ジャブを突きながら追いかけて右オーバーハンド。マゴメドシャリポフは逃げ切り体勢なのかと思えば足を前に進め、ケーターの左アッパーにカウンターでショートの右ストレート、右フックをかわしてコンパクトに左右フックを返すなど、勝負どころでは打ち合う。マゴメドシャリポフのバックハンドエルボーのフェイントにすかさず両腕で顔を覆って反応するケーター。マゴメドシャリポフはそのガードの背後から巧く左フックを突き刺す。

https://twitter.com/UFC_Asia/status/1193289619854348293

 残り時間2分に差しかかろうとした辺りからケーターも意地のコンビネーションを振るい、マゴメドシャリポフに全てかわしたと思わせたところでさらにもう一発、左アッパーや左ボディを追加できるようになる。マゴメドシャリポフは疲れも出始め、これまでのように避けられない。残り時間1分を切ったところでケーターは飛びヒザ蹴りで賭けに出るが、マゴメドシャリポフはこれを逃さずしっかりとキャッチ。ケーターはそのままテイクダウンされて万事休すとなった。

 終盤にケーターの反撃にあったが、それ以外はマゴメドシャリポフが終始、主導権を握り続けて判定3-0完勝。マイクを向けられたマゴメドシャリポフは「ケーターが凄まじくタフだった。彼が3Rにあそこまで圧力をかけてくることは予想していなかったが、ダゲスタン、モスクワ、タイ、アメリカでしっかりと準備してきたことは活きたと思う」と試合を振り返り、「これで6連勝だ。マックス・ホロウェイvsアレックス・ボルカノフスキー(12月14日の『UFC 245』で組まれているフェザー級タイトルマッチ)の勝者と戦いたい。もし試合が組まれれば、5Rを戦えるように仕上げることを約束する。今回は不十分なところがあった。次はもっと良いパフォーマンスをみせたい」とタイトルマッチをアピールした。


▼セミファイナル ヘビー級 5分3R
○アレクサンドル・ボルコフ(31=ロシア/同級7位)
判定3-0 ※30-27、30-27、30-27
×グレッグ・ハーディ(31=アメリカ)

https://twitter.com/ufc/status/1193281867065085952

 先述の通り、ボルコフは当初、メインイベントでジュニオール・ドス・サントス(ブラジル)と対戦する予定であったが、ドス・サントスが体調不良で欠場したため、セミファイナルで代役出場のハーディと対戦することになった。

 ボルコフは201センチの長身から繰り出す強打を武器に、BellatorとM-1 Globalの米露メジャー団体でヘビー級王座に就いた実力者。UFCでも初参戦となった2016年11月の『UFC Fight Night 99』から、現在までに5勝(2KO・TKO/0SUB)1敗の好戦績を収めている。昨年3月の『UFC Fight Night 127』では、メインイベントで元UFC世界ヘビー級王者ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)に4RTKO勝ち。UFC初黒星は同年10月の『UFC 229』でデリック・ルイス(アメリカ)に喫した3RKO負けで、これはルイス恒例の剛腕大どんでん返しに見舞われてのことだった。通算戦績は30勝(20KO・TKO/3SUB)7敗。試合出場はルイス戦以来、1年ぶりとなる。

 対するハーディはNFLでもプレーしたアメリカンフットボールの元トップ選手で、2016年に総合格闘家へ転身。昨年、UFCのデイナ・ホワイト代表が新たな才能を発掘する企画「Dana White’s Tuesday Night Contender Series」の試合で勝利し、UFCと契約を結んだ。UFCデビュー戦は今年1月の『UFC Fight Night 143』(もしくは『UFC Fight Night on ESPN+ 1』で、反則のヒザ蹴りで失格負け。その後、2戦連続TKO勝ちを収めたが、10月18日の『UFC on ESPN 6』で試合のインターバル中に吸入器を使用したことが違反とみなされ(本人はコミッションのスタッフに許可を得て使用した喘息の薬と主張)、後日、判定勝ちがノーコンテストに覆ることとなった。

 NFL時代には元交際相手へのDV容疑で逮捕され、チーム内でも規律違反を重ねるなど、ハーディは素行の悪さでも知られる存在であっただけに、新天地でのこうした戦いぶりにも厳しい視線が向けられているようだ。そんな状況もあって、今回はドス・サントスの欠場という緊急事態を知り、汚名返上に向けて自ら志願しての代役参戦。前回の試合から3週間足らず、敵地で格上中の格上、米露メジャーの元2冠王に挑むという、試練の大一番に臨む。通算戦績は5勝(5KO・TKO/0SUB)2敗1ノーコンテスト。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。相手の内スネを前足でコツコツと蹴るボルコフに対し、左ジャブと右フックを合わせにいくハーディ。ボルコフは左ミドルを放ったところでハーディの鋭い右オーバーハンドを被弾しそうになる。そのまま足を下ろさず前蹴りに変えてプッシュせんとするボルコフ。ハーディはすかさずタックルでボルコフをケージに押し込み、しばしヒザ蹴りを入れてから自ら離れる。

 打撃戦に戻るとボルコフがジリジリと間合いを縮め、単発の左ハイ、そして左フックからの右ストレートを繰り出し、これに観客がチャントで呼応。ハーディは我慢強くブロックしたり左方向に回り込んだりしながら左ジャブを突いていく。終盤にはハーディも左フックの2連打をボルコフのブロック外側に当てる。

 2R、ボルコフはハーディににじり寄り、ケージ際に追い込んだところで左右フックから左ミドル。ハーディもボルコフの左ジャブを手で払いのけるとすかさずタックルを仕掛け、テイクダウンにはいかずに離れ際を右フックで強襲するが、これは惜しくもヒットしない。ボルコフは再びハーディの内スネを前足で蹴りながら、奥足でのミドルも混ぜていく攻め。ハーディの右オーバーハンドがボルコフの耳付近にガツンと入るが、ダメージを与えるまでには至っていない。

 今度はボルコフが奥足の前蹴りをみせるようになり、これが下から上へ中足で突き刺すようなかたちでたびたびハーディの腹をとらえる。ハーディは左ジャブを返そうとするも、ボルコフに巧く左ミドルも合わされてしまう。口が開いて動きもやや緩慢になってきたハーディに対し、ボルコフの打ち下ろす左ジャブもヒットし始める。

 3R、開始早々に顔面を蹴り上げんとするボルコフ。ヒヤッとさせられたハーディーはすぐに左ジャブを返すが、ボルコフに避けられてしまうと急に苛立ったように左右の拳を振るいながら突進してヒザ蹴りを突き上げる。ボルコフはこれもしっかりブロック。

 ボルコフがコンパクトに繰り出す左ジャブと右ストレート、そして左ミドルと右カーフキックもハーディを削っていく。ハーディは右ローを蹴ったところでボルコフに左ハイを合わされるが、これはやや当たりが浅かった様子。ハーディはボルコフの左ミドルがくると、腹をかばって背中を丸めるようになり、頭が下がり気味のところを左ハイで狙われてしまうという悪循環に陥って試合終了を迎えた。

 じっくりと正確な打撃で削っていったボルコフが判定3-0の完勝で再起。ハーディは敗れはしたものの、前半はボルコフの意表を突くようなパンチで奮闘する場面もあり、格上相手に最後まで落ち着いて戦い抜いた。


▼ウェルター級 Main Card 5分3R
×ゼリム・イマダエフ(ロシア)
KO 2R 2分54秒
○ダニー・ロバーツ(イギリス)

▼ライトヘビー級 Main Card 5分3R
×カディ・イブラギモフ(ロシア)
判定0-3 ※27-30、28-29、27-30
○エド・ハーマン(アメリカ)

▼ウェルター級 Main Card 5分3R
×ラマザン・エミーフ(ロシア)
判定0-3 ※27-30、28-29、28-29
○ロッコ・マーティン(アメリカ)

▼ライトヘビー級 Main Card 5分3R
○シャミル・ガムザトフ(ロシア)
判定2-1 ※28-29、29-28、29-28
×クリッドソン・アブレウ(ブラジル)

▼ライトヘビー級 Prelim 5分3R
○マゴメド・アンカラエフ(ロシア)
KO 3R 29秒
×ダルチャ・ランギアムブーラ(南アフリカ)

▼ウェルター級 Prelim 5分3R
○ルスタム・ハビロフ(ロシア)
判定3-0 ※30-27、29-28、29-28
×セルゲイ・カンドチコ(ロシア)

▼ミドル級 Prelim 5分3R
×ロマン・コプィロフ(ロシア)
一本 3R 4分01秒 ※リアネイキドチョーク
○カール・ロバーソン(アメリカ)

▼ウェルター級 Prelim 5分3R
×アブバカル・ヌルマゴメドフ(ロシア)
一本 1R 2分50秒 ※三角絞め
○ダビッド・ザワダ(ドイツ)

▼ライト級 Prelim 5分3R
×アレクサンダー・ヤコブレフ(ロシア)
判定0-3 ※28-29、28-29、28-29
○ルーズベルト・ロバーツ(アメリカ)

▼女子バンタム級 Prelim 5分3R
×ジェシカ・ローズ・クラーク(オーストラリア)
判定0-3 ※27-30、27-30、27-30
○パニー・キアンザド(イラン)

▼バンタム級 Prelim 5分3R
×グリゴリー・ポポフ(ロシア)
判定1-2 ※28-29、28-29、29-28
○デビッド・グラント(イギリス)