飛び交うブーイングの中、ミドル級王者アデサニヤは初防衛に成功した Photos(C)Jeff Bottari/Zuffa LLC/UFC 

 2020年3月7日(土・現地時間)アメリカ・ネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで『UFC 248』が開催されました。以下、試合レポート・結果です。

Main Event
▼UFC世界ミドル級タイトルマッチ 5分5R
○イズラエル・アデサニヤ(30=ナイジェリア/王者)
判定3-0 ※48-47、48-47、49-46
×ヨエル・ロメロ(42=キューバ/同級3位/挑戦者)
※アデサニヤが初防衛に成功。

狙いすました拳を鋭く突くアデサニヤ(右)

 アデサニヤは昨年4月の『UFC 236』でケルヴィン・ガステラム(アメリカ)に判定勝ちし、ミドル級暫定王座を獲得。続く10月の『UFC 243』では当時の正規王者ロバート・ウィテカー(ニュージーランド)に2RKO勝ちし、王座統一を果たした。現在、総合格闘技デビュー18連勝中(14KO・TKO/0SUB)。これが初防衛戦となる。

 対するロメロはこれがUFCで4度目のタイトルマッチ。1度目は2017年7月の『UFC 213』で暫定王座決定戦に臨み、ウィテカーに判定負け。2度目と3度目は自身の体重超過により、勝ってもベルトを巻く権利が無いという条件で出場しており、このうち2018年2月の『UFC 221』ではルーク・ロックホールド(アメリカ)との暫定王座決定戦に3RKO勝ちしたのの、チャンスを棒に振ることとなった。通算戦績は13勝4敗(11KO・TKO/2SUB)。4度目での念願成就なるか。

 1R、サウスポーのロメロは両脇を締めてガードを固めると、その場から全く動こうとしない。アデサニヤも軽くステップを踏むのみ。1分ほどでロメロが足を動かし始めるが、スイッチを繰り返すアデサニヤとのコンタクトは無いままさらに時間が経過。ここでようやくアデサニヤが左ローと右ミドルを蹴る。すると動く気配がなかったロメロも突如、左オーバーハンドをフルスイング。アデサニヤは大きなダメージこそ回避したようだが、被弾してひやりという場面だ。

 2R、中段前蹴りを入れるアデサニヤに対し、またもロメロの鋭い左フックがヒット。アデサニヤはここもダメージを受けた様子がなく、そのまま左右の蹴りを単発で当てていく。コンタクトの少ない試合に観客からはブーイング。だが、再びロメロが突如動き、右ローでアデサニヤの体勢を崩すと、一気に左フックの猛連打で襲いかかる。ブロックを固めるアデサニヤ。ロメロは深追いせず離れる。

 3R、アデサニヤがスイッチとステップを多用して動き回り、機を見て左ハイ強襲。ロメロは瞬時にスウェーバックしてかわす。アデサニヤはロメロの左カウンターを警戒しつつ、細かいフェイントを駆使して左ジャブ、左ロー、左ミドル、右ハイ、右の前蹴りなどを単発で丁寧に当てていく。

 4R、両者はレフェリーから注意を受けて臨む。ロメロがすぐに左ボディストレートを伸ばし、声を発しながらにじり寄る。アデサニヤは構わず左ロー。ロメロは被弾のたびに効いてないとアピールする。ほどなく、ロメロがサミングを受けて中断。再開直後にはロメロがタックルでテイクダウンを決めたが、アデサニヤを抑え込むことはできず。アデサニヤはすぐに立ち上がってステップを再開。アデサニヤの左ローを受けたロメロの前足が腫れ上がる。

 5R、右ミドルと前蹴りを繰り出すアデサニヤ。ロメロは左フックのカウンターを狙うが、アデサニヤをとらえることができない。アデサニヤの左ローを受けて体が傾くロメロ。アデサニヤは左ローをキャッチされてバランスを失うが、ロメロにテイクダウンさせることなく、すぐに距離を取る。終盤は互いに“来い来い”のゼスチャー。これがさらに会場のブーイングを誘うこととなった。

 試合終了直後、両者は額と額を付き合わせて怒りの剣幕だ。アデサニヤは大ブーイングに耳を傾け、中指を立てて応える。一方、ロメロは何やらケージサイドの方を見ながらエキサイトしていた。

 結果は判定3-0でアデサニヤに軍配。王者が初防衛に成功した。

 ブーイングの中、勝利者インタビューに応じたアデサニヤは、「難しい試合だったが、俺は自分がすべきことをやった。彼の足を見て欲しい。俺がぶっ壊してやったんだ。1Rに彼のハードショットを喰らい、そこから自分の中のベストショットを返さなくてはと思った。あの腫れた足が全てを物語っている。自分は勝つためにすべきことをしたまでだ」と、試合を振り返る。

 一方、ロメロも「この試合は俺の勝利だ。皆はリアルファイトが見たいんだ。ここで本物の戦士達が戦う姿が。ペイ・パー・ビューだってそのために払ってくれてる。彼は偽者のチャンピオンだ」と、最後まで譲らなかった。
 


Co-Main Event
▼UFC世界女子ストロー級タイルマッチ 5分5R
○ジャン・ウェイリー(30=中国/王者)
判定2-1 ※48-47、48-47、47-48
×ヨアンナ・イェンドジェイチェク(32=ポーランド/同級4位/挑戦者)
※ウェイリーが初防衛に成功。

まさに死力を尽くした戦いを繰り広げた現女王ウェイリー(左)と元女王ヨアンナ(右)

 ウェイリーはUFC史上初の中国人王者。昨年8月に母国で開催された『UFC Fight Night 157』に出場し、当時のUFC世界女子ストロー級王者ジェシカ・アンドラージ(ブラジル)に42秒TKO勝ちを収め、見事に戴冠を果たした。通算戦績は20勝1敗(10KO・TKO/7SUB)。プロデビュー戦以外は負けなしだ。これが初防衛戦となる。

 対するヨアンナはかつて5度のUFC世界女子ストロー級王座防衛を果たした元絶対女王。王座陥落は2017年11月の『UFC 217』で、ローズ・ナマユナス(アメリカ)に1RKO負けしてのことだった。2018年4月の『UFC 231』でダイレクトリマッチに臨むも判定負け。その後はストロー級戦線で2勝をあげ、今大会で再び女王返り咲きを目指す。

 1R、構えは両者共にオーソドックスでスタート。出だしは左ジャブと左ローで探り合う展開であったが、すぐに鋭いパンチの交換が始まり、ヨアンナが右ストレートをヒットさせたり、左右ローに繋げたりする。しかし、中盤過ぎにはウェイリーの拳も火を吹き、断続的に連打をまとめ、その都度、右フックと右ストレートがヨアンナの顔面を叩く。両者の鼻っ柱は早くも真っ赤だ。

 2R、激しいパンチの打ち合いの中でヨアンナがしっかりと右ローに繋げる。ウェイリーはタックルを仕掛けるもテイクダウンならず。首相撲の攻防に移行すると、ヨアンナは膝、ウェイリーは肘でそれぞれ攻撃。いったん距離を取ってから再び打ち合いに転じたところで、ウェイリーの右ストレートのカウンターが2発炸裂。ヨアンナはウェイリーのサイドキックも喰らって表情がうつろに。しかし、終了間際にヨアンナもスイッチから左ハイをぶち込み、ただでは終わらせない。

 3R、序盤にウェイリーの左カウンターを喰らったヨアンナだが、サウスポーにスイッチしてからは強烈な左ストレートを返すなど一転攻勢。ヨアンナの左ハイ、左ミドル、ワンツーもウェイリーを脅かす。ウェイリーは蹴り足キャッチからの右フック。ヨアンナは吹っ飛ばされてしまうが、すぐに体勢を立て直し、ワンツーの攻撃を再開。ウェイリーの右の大砲も依然強力だが、ヨアンナのスピードの乗ったパンチが有効打を作る。

 4R、ここもパンチの打ち合いから開戦。ヨアンナの左ストレートとウェイリーの右フック、ウェイリーの右ハイとヨアンナの右ハイが相打ちとなる。ウェイリーが左フックを叩き込めば、ヨアンナも首相撲に捕らえて荒々しく膝蹴り。ヨアンナが右ボディストレートと左フックのコンボを決めれば、ウェイリーも右ストレートを返す。壮絶な打ち合いの中、終盤にヨアンナがパンチと肘打ちのコンボでウェイリーにケージを背負わせる場面も。

 5R、大きな拍手が沸き起こる中、両者はハグをして最後の5分間に臨む。ヨアンナはワンツーとワンツースリーから右ロー。ウェイリーはワンツーと左右フックのカウンターで応じる。ヨアンナの連打を一発で寸断するウェイリーの拳。ヨアンナは額と鼻骨の辺りが大きく腫れ上がっている。それでも打ち返すヨアンナ。再び両者がド突き合いに転じる。ウェイリーはワンツーと左インロー。終了間際にヨアンナも意地のバックハンドブローを返した。

 壮絶な死闘。結果は判定2-1でウェイリーに軍配が上がった。ヨアンナは女王返り咲きならず。ウェイリーの初防衛成功となった。

 試合後、マイクを向けられたウェイリーは、「皆も知っている通り、コロナウィルスの影響で私達はここへ辿り着くまでがとても長旅だった。厳しい中でも私達は成し遂げることができた。皆が一丸となって戦えば、私達はきっと勝てるということ。私達の国は今、大きな悲劇を経験している。私達は共に戦い、そして勝つ」と、時おり目頭を押さえながら鼓舞するメッセージを伝える。

 また、中英通訳を介さず、自らの英語でも「ありがとう。英語が得意ではないから勉強している。友人達と英語でコミュニケーションも取りたい。助けてくれた皆、ありがとう」と、懸命に言葉を伝えた。

 一方、敗れたヨアンナは「私は見ての通り顔が腫れ上がっている。頭もくらくらしてしまって。彼女のパフォーマンスは素晴らしかった。チャンピオンにおめでとうと言いたい。共に良い試合ができて幸せだった。サポートしてくれた人々に感謝している。またすぐに戻ってきたい」と、王者を称えて自らの再起も誓った。


Main Card
▼ライト級 5分3R
○ベニール・ダリウシュ(イラン)
KO 2R 1分00秒
×ドラッカー・クロース(アメリカ)

Main Card
▼ウェルター級 5分3R
○ニール・マグニー(アメリカ)
判定3-0 ※30-27、30-27、30-27
×リー・ジンリャン(中国)

Main Card
▼ウェルター級 5分3R
○アレックス・オリベイラ(アメリカ)
判定2-1 ※29-28、28-29、29-28
×マックス・グリフィン(ブラジル)

Prelim
▼バンタム級 5分3R
○ショーン・オマリー(アメリカ)
TKO 1R 2分02秒
×ホセ・キノネス(メキシコ)

Prelim
▼ライト級 5分3R
○マルク・マドセン(デンマーク)
判定3-0 ※29-28、29-28、29-28
×オースティン・ハバード(アメリカ)

Prelim
▼ミドル級 5分3R
○ホドルフォ・ヴィエラ(ブラジル)
一本 1R 2分58秒 ※ヘッドアンドアームチョーク
×サパルベク・サファロフ(ロシア)

Prelim
▼ミドル級 5分3R
○ジェラルド・マーシャート(アメリカ)
一本 2R 2分13秒 ※リアネイキドチョーク
×デロン・ウィン(アメリカ)

Early Prelim
▼フェザー級 5分3R
○ギガ・チカゼ(ジョージア)
判定2-1 ※29-28、29-28、28-29
×ジャマル・エマース(アメリカ)

Early Prelim
▼バンタム級 5分3R
○ダナー・バットゲレル(モンゴル)
KO 1R 3分01秒
×グイド・カネッティ(アルゼンチン)

Early Prelim
▼117.5ポンド(53.3kg)契約 5分3R
-エミリー・ウィットマイア(アメリカ)
試合中止
-ポリアナ・ヴィアナ(ブラジル)
※ウィットマイアが体重超過。試合は女子ストロー級の115ポンド(52.16kg)から117.5ポンド(53.3kg)契約に変更して実施される予定であったが、同選手が体調不良となったため中止に。