メインイベントのフライ級王座決定戦で圧勝したフィゲイレード。涙の初戴冠となった Photo(C)Jeff Bottari/ Zuffa LLC via Getty Images

 2020年7月19日(日・現地時間)、『UFC Fight Night 172UFC Fight Island 2)』がアラブ首長国連邦・アブダビ(ヤス島)のUFCファイトアイランドで開催されました。以下、試合レポート・結果です。※試合は無観客で行われています。

Main Event
▼UFC世界フライ級王座決定戦 5分5R
○デイブソン・フィゲイレード(32=ブラジル/同級1位)
一本 1R 4分48秒 ※リアネイキドチョーク
×ジョセフ・ベナビデス(35=アメリカ/同級2位)
※フィゲイレードが新王座に就く。

 ヘンリー・セフード(33=アメリカ)が返上したUFC世界フライ級王座を懸け、同級1位のフィゲイレードと同級2位のベナビデスが対戦した。

 両者は今年2月の『UFC Fight Night 169』でも同王座決定戦を戦っているが、その時はフィゲイレードが前日計量をパスできなかったため、ベナビデスが勝利した場合のみ、王座が認定されるという変則ルールで試合が行われ、結果はフィゲイレードの2R・KO勝ち。王座は空位のままとなっていた。

 4カ月半ぶりのダイレクトリマッチとなる今回、両者が問題無く前日計量をパスしたため、無事に通常ルールでの王座決定戦が実現する運びとなった。

 フィゲイレードはこれが2度目のタイトルマッチで、UFC戦績は7勝1敗(4KO・TKO/1SUB)。昨年3月の『UFC Fight Night 148』で、ジュシー・フォルミーガ(ブラジル)に判定負けしたのが、唯一の黒星となっている。

 対するベナビデスはこれが4度目のタイトルマッチ。1度目と2度目はいずれもデメトリアス・ジョンソン(アメリカ)に、先の3度目はフィゲイレードに戴冠を阻まれている。UFC戦績は15勝4敗(5KO・TKO/1SUB)。UFC初参戦から9年を迎えた中、悲願の王座獲得を目指す。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。試合は早々に動く。左ローを蹴ろうとしたベナビデスに対し、フィゲイレードの右フックがヒット。ベナビデスがゆっくりとマットに倒れ込む。

 フィゲイレードは素早く肘と拳を落とし、たまらず下を向いたベナビデスの背後からチョークをセット。しかし、ベナビデスも脅威の粘りを見せ、フィゲイレードのチョークから3度生還する。

 山場を乗り越えて立ち上がるベナビデス。試合は再び打撃戦となり、フィゲイレードの一発に対し、ベナビデスは二発、三発、四発と倍返しにせんとするが、なかなか当てることができない。

 逆に落ち着いて狙うフィゲイレードの右フックがヒット。倒れたベナビデスはすぐに立ち上がるが、ほどなくして再びフィゲイレードの右ストレートを喰らってダウンしてしまう。 

 フィゲイレードはマウントから肘を落とし、ベナビデスの顔面を切り裂くと、再び背後に回り込んでチョークをセット。完全に極まっているようだが、ベナビデスはタップしない。レフェリーはベナビデスの表情がうつろになったのを確認し、ここで試合を止めた。

 フィゲイレードがベナビデスを終始圧倒するパフォーマンスで一本勝ちし、今度こそUFC世界フライ級王座を掴んだ。 


Co-Main Event
▼ミドル級 5分3R
○ジャック・ハーマンソン(32=スウェーデン/同級6位)
一本 1R 1分18秒 ※ヒールフック
×ケルヴィン・ガステラム(28=アメリカ/同級7位)

 ハーマンソンは4連勝で臨んだ昨年9月の『UFC Fight Night 160』で、上位ランカーのジャレッド・キャノニア(アメリカ)に2R・TKO負け。今回の試合で再起を図る。

 対するガステラムは2連勝で臨んだ昨年4月の『UFC 236』で、イズラエル・アデサニヤ(ナイジェリア)とUFC世界ミドル級暫定王座を争うも、判定負けで初戴冠ならず。同年11月の『UFC 244』でもダレン・ティル(イングランド)に判定負け。今大会で連敗脱出を目指す。

 1R、開始直後からサウスポーに構えて積極的に間合いを縮めるガステラム。ハーマンソンは左右にステップし、右ミドルと左カーフキックを返すが、ガステラムに距離を詰められ右アッパーと左フックを喰らいそうになる。

 ガステラムのパンチを搔い潜って組みつくハーマンソン。ガステラムはそれを豪快に投げ返す。しかし、ハーマンソンはここで慌てず、不用意に立ち上がろうとしたガステラムの足を捕らえてヒールフック。これがしっかりと極まり、ガステラムはたまらずタップした。

 再起戦のハーマンソンが秒殺一本勝ち。ガステラムは悔しい3連敗となった。


Main Card
▼ライト級 5分3R
×マルク・ディアケイジー(27=コンゴ)
判定0-3 ※27-30、28-29、28-29
○ラファエル・フィジエフ(27=キルギスタン)

 ディアケイジーはUFCデビュー3連勝から3連敗 2連勝で復調の兆し。現在までのUFC戦績は5勝3敗(2KO・TKO/0SUB)だ。

 一方、フィジエフは現在のUFC戦績が1勝1敗(0KO・TKO/0SUB)。UFCデビューは2019年4月の『UFC Fight Night 149』で、 マゴメド・ムスタファエフ(ロシア)に1R・TKO負けしたが、同年10月の『UFC Fight Night 162』でアレックス・ホワイト(アメリカ)に判定勝ちし、オクタゴン2戦目で初白星を掴んでいる。

 1R、構えは両者共にオーソドックスでスタート。ディアケイジーの右カーフキックと後ろ回し蹴りが空振り。フィジエフはサウスポーにスイッチして先制の左ミドルを強打し、すぐにケージを背負ったディアケイジーを抱えてテイクダウンする。スタンドに戻れば、フィジエフの強烈な左右ミドルが次々とヒット。フィジエフの左フックと膝蹴りも喰らったディアケイジーは、たまらずタックルを仕掛けるが、これも防がれてしまう。

 2R、ディアケイジーの鋭い左ハイに対し、フィジエフは瞬時に上体を大きく反らすマトリックス避けで何度もかわす。試合はフィジエフの左右ミドルと左右ローの炸裂音が何度も響き渡る展開に。ディアケイジーはフィジエフのパンチももらい、鼻から出血する。

 3R、フィジエフはパンチのコンビネーションに左インローと左ミドルを混ぜる攻撃を続行。ディアケイジーはワンツーと後ろ回し蹴りを返すが、頑丈なフィジエフにダメージを与えるには至らない。しかし終盤、やや動きが落ちてきたフィジエフに対し、ディアケイジーの強烈な右ストレートがヒット。フィジエフは一瞬動きが止まったが、またすぐに前進を開始してバックハンドブローを返す。ディアケイジーは二段飛び膝蹴りで強襲にいくがクリーンヒットならず。

 フィジエフが持ち前のパワフルな打撃で終始試合を優勢に運び、判定3-0で勝利。フィジエフがディアケイジーの3連勝を阻止し、自らは2連勝とした。


Main Card
▼女子フライ級 5分3R
○アリアネ・リプスキ(26=ブラジル)
一本 1R 1分28秒 ※膝十字
×ルアナ・カロリーナ(27=ブラジル)

 リプスキはポーランドの『KSW』で女子フライ級王者として活躍後、『UFC』と契約。昨年1月の『UFC Fight Night 143』でジョアン・コールダウッド(スコットランド)に、同年6月の『UFC Fight Night 154』でモリー・マッキャン(イングランド)に、いずれも判定負けし、UFCデビュー2連敗というスタートだったが、同年11月の『UFC Fight Night 164』ではイザベラ・デ・パードゥア(ブラジル)に判定勝ちし、オクタゴン3戦目で初白星を掴んだ。

 対するカロリーナは『Dana White’s Tuesday Night Contender Series Brazil』での勝利を経て、UFCと契約。昨年5月の『UFC 237』でプリシラ・カショエイラ(ブラジル)に判定勝ちし、白星デビューを飾っている。

 1R、構えはリプスキがオーソドックスで、カロリーナがサウスポー。カロリーナはケージ際まで下がって右ローを蹴るが、詰めてきたリプスキの強烈な右ボディでバランスを崩し、早々に転倒してしまう。

 カロリーナは抑え込みにきたリプスキを両足で突き放し、下からヒールフックを狙う。リプスキは支点をずらしながら移動し、カロリーナのみぞおち辺りに座るような体勢に。リプスキはカロリーナの左足を抱えて両足で挟み込むと、そのままゆっくりと後方へ反らしていく。膝を極められたカロリーナは悲鳴をあげてタップした。

 リプスキが秒殺一本勝ちで2連勝をマーク。カロリーナはオクタゴン2戦目での初黒星となった。


Main Card
▼フライ級 5分3R
×アレクサンドル・パントージャ(30=ブラジル/同級4位)
判定0-3 ※28-29、28-29、28-29
○アスカル・アスカロフ(27=ロシア/同級7位)

 パントージャは2018年11月の『UFC Fight Night 140』で佐々木憂流迦に1R・一本勝ちしている実力者。ここ5試合で唯一の黒星は、昨年7月の『UFC 240』でデイブソン・フィゲイレード(ブラジル)に喫した判定負けだ。UFC戦績は6勝2敗(2KO・TKO/2SUB)で、キャリア通算戦績は22勝4敗(8KO・TKO/8SUB)。

 対するアスカロフは11勝1分(3KO・TKO/7SUB)のキャリア通算戦績と高いフィニッシュ率を誇る新鋭だ。UFC初参戦は昨年9月の『UFC Fight Night 159』で、ブランドン・モレノ(メキシコ)と引き分け。続く2戦目は今年1月の『UFC 246』で、ティム・エリオット(アメリカ)に判定勝ちし、オクタゴン初白星を掴んでいる。『UFC』に参戦する前は強豪ひしめく、ロシア・チェチェン共和国の『ACB(Absolute Championship Berkut)』で活躍していた。

 1R、パントージャがいきなり右ストレートを放ちながら飛びつき、アスカロフを下へ引き込む。パントージャの三角絞めと腕十字を防いで腰を上げるアスカロフ。パントージャはすぐにヒールホールドも狙う。アスカロフは懸命のディフェンス。スクランブルを経てスタンドに戻ると、アスカロフがしぶといタックルでテイクダウンを狙う。しかし、パントージャは腕十字の仕掛けから巧く背後に回り込み、残り時間1分はバックチョークを狙うなど支配した。

 2R、サウスポーのアスカロフに対し、オーソドックスのパントージャが右ローと右ミドル。アスカロフは蹴り足をキャッチしようとしたり、パンチでカウンターを狙ったり、タックルを合わせたり、根気強く反撃を試みる。終盤にはスクランブルの中でバックチョークを狙い合うなど、スリリングな展開が続いた。

 3R、アスカロフの右ローに合わせてパントージャが右ストレート。尻餅を着いたアスカロフが立ち上がろうとしたところで、パントージャの右ミドルもヒットする。パントージャは単発の右ミドルと左フックなどから繋げるコンビネーションの右ミドルで攻撃。しかし、試合が進むにつれてパントージャはアスカロフの右フックと右ストレートを被弾する場面が増え、消耗を隠せなかった。

 結果は判定3-0でアスカロフに軍配。拮抗する場面もあったが、粘り強いタックルでアグレッシブにテイクダウンを狙い続け、右のビッグショットも当てたアスカロフが、オクタゴンで2勝目をあげた。


Prelim
▼ライトヘビー級 5分3R
○ロマン・ドリーゼ(ジョージア)
TKO 1R 4分15秒
×カディ・イブラギモフ(ロシア)

Prelim
▼150ポンド(68.04kg)契約 5分3R
○グラント・ドーソン(アメリカ)
判定3-0 ※30-26、30-27、29-27
×ナド・ナリマニ(イングランド)

Prelim
▼ライト級 5分3R
×ジョセフ・ダフィー(アイルランド)
一本 1R 2分25秒 ※ギロチンチョーク
○ヨエル・アルバレス(スペイン)

Prelim
▼バンタム級 5分3R
○ブレット・ジョーンズ(ウェールズ)
判定3-0 ※29-28、29-28、29-28
×モンテル・ジャクソン(アメリカ)

Prelim
▼バンタム級 5分3R
×マルコム・ゴードン(カナダ)
一本 1R 4分42秒 ※三角絞め
○アミール・アルバジ(スウェーデン)

Prelim
▼ライト級 5分3R
○ダヴィ・ラモス(ブラジル)
判定3-0 ※30-27、30-27、29-28
×アルマン・ツァルキヤン(ジョージア)

Prelim
▼ヘビー級 5分3R
×カルロス・フェリペ(ブラジル)
判定0-2 ※28-28、27-29、27-29
○セルゲイ・スピバック(モルドバ)