2020年7月25日(土・現地時間)、『UFC on ESPN 14(UFC Fight Island 3)』がアラブ首長国連邦・アブダビ(ヤス島)のUFCファイトアイランドでが開催されました。以下、試合レポート・結果です。

Main Event
▼ミドル級 5分5R
○ロバート・ウィテカー(29=オーストラリア/同級1位)
判定3-0 ※48-47、48-47、48-47
×ダレン・ティル(27=イングランド/同級6位)

ウィテカー(左)が王座陥落からの再起戦で強敵ティル(右)を下した Photo(C)Jeff Bottari/ Zuffa LLC via Getty Images

 ウィテカーは元UFC世界ミドル級王者。前回の出場は昨年10月の『UFC 243』で、UFC世界ミドル級王座統一戦に正規王者として臨んだが、暫定王者だったイズラエル・アデサニヤ(31=ナイジェリア)に2R・KO負けし、ベルトを失うと共に連勝記録が「9」で途絶えた。キャリア通算戦績は20勝5敗(9KO・TKO/5SUB)で、このうちUFC戦績は11勝3敗(5KO・TKO/0SUB)。今大会で再起を図る。

 対するティルはウェルター級のトップ選手として活躍し、タイトルマッチも一度経験。前回の出場は昨年11月の『UFC 244』で、ミドル級に階級を上げての初戦、そして2連敗からの再起戦に臨み、強豪ケルヴィン・ガステラム(28=アメリカ)にスプリット判定勝ちしている。キャリア通算戦績は18勝2敗1分(10KO・TKO/2SUB)で、このうちUFC戦績は6勝2敗1分(2KO・TKO/0SUB)。今大会で2連勝を目指す。

 1R、構えはウィテカーがオーソドックスで、ティルがサウスポー。探り合いから1分が経過したところで、ウィテカーが左の拳で仕掛ける。だが、ティルのカウンターを被弾したか、大きな炸裂音の後に倒れたのはウィテカーの方だ。すぐにパンチを落とすティル。ウィテカーはタックルでしのぐと、何事もなかった様に立ち上がる。ただ、ウィテカーはやはりダメージがあるのか、ティルの左ストレートを被弾する場面が目立つ。

 2R、左フックで飛び込んできたティルに対し、ウィテカーは鋭い反応でかわして左フックのカウンター。ティルは右カーフキックを返すが、ウィテカーの強烈な右オーバーハンドを被弾してダウンする。ウィテカーは抑え込みながらのエルボー。ティルはほどなくして脱出に成功し、再び打撃戦に戻るが、今度はウィテカーの左カーフと関節蹴りが悩みの種に。

 3R、ウィテカーは巧く距離を取りながら左カーフを蹴り、ティルの左ストレートと左ハイはしっかりガード。ティルはウィテカーの右オーバーハンドで脅かされると、自らの胸を叩いてみせる。ウィテカーは左ジャブを突き刺し、右ハイからのバックハンドブローも繰り出すなど勢いづく。ティルは打ってこいと再びアピールする。

 4R、ティルが鋭い踏み込みからワンツー。ウィテカーはここもかわす。ウィテカーが左カーフを蹴れば、ティルも負けじと右カーフ。今度はティルが左エルボーを打ち込み、下がるウィテカーを左アッパーの連打で追撃に向かう。ウィテカーはダメージは大きくなさそうだが、ひやりとさせられる。

 5R、ウィテカーが右オーバーハンドで仕掛け、ティルが攻撃を返さんと踏み込んでくると左フックのカウンターで迎撃。ティルはなおもウィテカーに左カーフを蹴られ、被弾後には腫れた前足を浮かせる場面も。ウィテカーはタックルのモーションから左右フック。終盤にはウィテカーがティルのパンチに合わせ、タックルでテイクダウンを決めるが、一太刀許したか、左耳付近から大量に出血していた。

 勝敗の結果は判定3-0でウィテカーに軍配。序盤のピンチを切り抜けたウィテカーが、左カーフで削りながら右オーバーハンドでビッグショットも決め、強敵相手に王座陥落からの再起戦を勝利で飾った。


Co-Main Event
▼ライトヘビー級 5分3R
○マウリシオ・“ショーグン”・フア(38=ブラジル)
判定2-1 ※29-28、28-29、29-28
×アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラ(44=ブラジル)

ラストマッチでの敗戦に肩を落とすホジェリオ(右)。一方、ショーグン(左)は同郷のレジェンドを三たび退け、勝利の雄叫びをあげた Photo(C)Jeff Bottari/ Zuffa LLC via Getty Images

 コーメインイベントに登場したのはPRIDEで活躍した2人のブラジル人レジェンド。ホジェリオが過去2戦2敗のショーグンを相手に、現役ラストマッチを戦った。

 両者が拳を交えるのはこれが三度目。一度目は2005年6月にPRIDEのリングで、二度目は2015年8月にUFCの金網で試合が行われ、いずれもショーグンが判定勝ちしている。今回は約5年ぶりの対決だ。

 ホジェリオの前戦は昨年5月の『UFC 237』で、ライアン・スパン(28=アメリカ)に1R・KO負け。一方、ショーグンの前戦は昨年11月の『UFC Fight Night 164』で、ポール・クレイグ(32=スコットランド)と判定1-1の引き分けだった。

 1R、構えはショーグンがオーソドックス、ホジェリオがサウスポー。ショーグンがケージ中央から圧力をかけ、強烈な右インローを蹴っていく。ホジェリオも機を見て鋭い左ストレート。徐々に両者がスリリングなパンチの攻防へと突入する。終盤にホジェリオの左ストレートが再びヒット。ショーグンはダメージを受けるが、タックルからのテイクダウンでなんとか切り抜ける。

 2R、ショーグンの右ミドルに対し、ホジェリオは構わず左ストレート。ショーグンはふらつきながらも左右フックで応戦するが、バランスを崩してホジェリオに上を許す場面も。ほどなくして両者がスタンド。再びパンチの打ち合いとなり、ホジェリオがショーグンを下がらせる。

 3R、なおも試合はホジェリオが左の拳、ショーグンが右の蹴りという展開。ショーグンは右ミドルからすかさず右ストレートを打ち下ろし、これがホジェリオの顔面をとらえ始める。終盤にショーグンの左右フックもカウンターでヒット。ショーグンはすかさず組みついてホジェリオを潰し、上から鉄槌をまとめた。

 勝敗の結果は判定2-1のスプリットでショーグンに軍配。激闘に敗れたホジェリオは両手を一度叩いて悔しそうにしたが、ショーグンが歩み寄ってくると握手とハグで健闘を称えた。

 試合後、ホジェリオは「44歳になり、休む時が来たと思う。UFCとPRIDEの素晴らしいチャンピオンであるショーグンと戦えたことを誇りに思う。自分はまだ戦えるとも思うが、新たな世代に託す時が来た」と、改めて現役を退くことを表明。

 一方、ショーグンは「レジェンドであるホジェリオに3度勝てたことを嬉しく思う。毎回、ホジェリオと対戦する時は熱戦になる覚悟で挑んでいる。今回の勝利で、自分もまた一つステップアップできたと思う」と、ホジェリオを称えると共に自身の勝利を喜んだ。

 ホジェリオの生涯戦績は23勝10敗(8KO・TKO/6SUB)。


Main Card
▼ヘビー級 5分3R
○ファブリシオ・ヴェウドゥム(42=ブラジル/同級14位)
一本 1R 2分30秒 ※腕十字
×アレクサンダー・グスタフソン(33=スウェーデン)

 ヴェウドゥムはかつてPRIDEで活躍し、その後、UFC世界ヘビー級王座も獲得した大ベテラン。キャリア通算戦績が23勝9敗(6KO・TKO/11SUB)で、このうちUFC戦績が11勝6敗(4KO・TKO/3SUB)だ。現在2連敗を喫しており、今大会で再起を図る。

 対するグスタフソンはUFC世界ライトヘビー級タイトルマッチを3度経験している実力者。キャリア通算戦績が18勝6敗(11KO・TKO/3SUB)で、このうちUFC戦績が10勝6敗(5KO・TKO/2SUB)だ。こちらも現在2連敗中で、今大会で階級を上げて復活を目指す。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。左ジャブを下から上に突いていくるグスタフソンに対し、ヴェウドゥムがかわして右ローを返す。グスタフソンは再びダブルの左ジャブ。今度はヴェウドゥムがタックルを仕掛け、グスタフソンの左足を捕らえる。

 グスタフソンはヴェウドゥムの軸足払いと引き込みに耐えると、鉄槌を連打して一気に脱出を狙う。だが、ヴェウドゥムはこれを許さず、グスタフソンを背後から崩して腕十字に持ち込む。グスタフソンは懸命に腕を引き寄せるが、最後はヴェウドムに屈し、タップアウトとなった。

 ヴェウドゥムが一本勝ちで連敗脱出。グスタフソンはヘビー級で再起ならず、3連敗となった。


Main Card
▼女子ストロー級 5分3R
○カーラ・エスパルザ(32=アメリカ/同級7位)
判定2-1 ※29-28、28-29、30-27
×マリナ・ロドリゲス(33=ブラジル/同級9位)

 エスパルザは初代Invicta FC世界ストロー級王者にして初代UFC女子同級王者。キャリア通算戦績が16勝6敗(3KO・TKO/4SUB)で、このうちUFC戦績が7勝4敗(0KO・TKO/1SUB)だ。前戦は今年5月の『UFC 249』で、強敵ミシェル・ウォーターソン(34=アメリカ)にスプリット判定勝ち。現在3連勝中と好調だ。

 対するロドリゲスはキャリア通算戦績が12勝2分(5KO・TKO/1SUB)で、このうちUFC戦績が2勝2分(0KO・TKO/0SUB)。未だ無敗を維持している。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。エスパルザが早々にタックルでテイクダウンに成功。ガードポジションで固めるロドリゲスに対し、エスパルザは時おり腰を上げて拳を振り落とし、抱え上げてのスラムも見舞う。だが、ロドリゲスも下からのエルボーでエスパルザの左まぶたをカット。ロドリゲスはエスパルザの足関節技から逃れると、スタンドに戻して右ストレート、さらにタックルも潰して肘を落としまくった。

 2R、ロドリゲスがタックルに来たエスパルザを引っくり返そうとし、両者はスクランブルの攻防に。上を取ったのはエスパルザで、再びパンチを落として終盤に足関節技を狙う攻め。しかし、ロドリゲスはこれを極めさせず、逆に上から強烈なパンチ。エスパルザの顔面が鮮血に染まる。ロドリゲスはスタンドに戻して右ストレート。エスパルザは終盤にまたも同じパターンで反撃を喰らってしまう。

 3R、エスパルザがタックル。ロドリゲスはケージを背負いながら片膝を着いた状態になり、ここでエスパルザの左拳を連打で浴びてしまう。エスパルザは粘りの末にロドリゲスを抑え込み、その体勢を終盤までキープ。終了間際に両者はスタンドに戻るが、エスパルザはだめ押しのタックルでテイクダウンを追加し、好印象を残した。

 判定はスプリットでエスパルザに軍配。エスパルザが苦戦を強いられながらも粘り強さを発揮し、ロドリゲスにキャリア初黒星を与えると共に4連勝をマークすることとなった。


Main Card
▼ライトヘビー級 5分3R
○ポール・クレイグ(32=スコットランド)
一本 1R 2分06秒 ※三角絞め
×ガジムラド・アンティグロフ(33=ロシア)

 クレイグはキャリア通算戦績が12勝4敗(1KO・TKO/11SUB)の寝技師。勝ち星のうち、5試合を三角絞めでフィニッシュしている。UFC戦績は4勝4敗1分(0KO・TKO/4SUB)。前戦は昨年11月の『UFC Fight Night 164』で、マウリシオ・“ショーグン”・フア(38=ブラジル)と判定1-1で引き分けている。

 対するアンティグロフは元ACB(Absolute Championship Akhmat)ライトヘビー級王者で、キャリア通算戦績が20勝6敗(4KO・TKO/15SUB)。こちらも寝技を得意としている。UFCではデビュー2試合連続一本勝ちからの2試合連続KO・TKO負けという戦いぶりだ。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。積極的に打撃を繰り出すクレイグに対し、アンティグロフもすぐに突進タックル。クレイグはテイクダウンを許すが、すぐに下から足を絡めていく。するとほどなく、腰を上げたアンティグロフがクレイグの三角絞めの餌食に。アンティグロフは懸命に右の拳を振り落としたが、クレイグの絞めは緩まず。最後はアンティグロフがタップした。

 クレイグが得意の三角絞めで一本勝ち。アンティグロフは持ち味を出せず、3連敗となった。


Main Card
▼ウェルター級 5分3R
○アレックス・オリヴェイラ(32=ブラジル)
判定3-0 ※30-27、30-27、30-27
×ペーター・ゾボタ(33=ドイツ)

 オリヴェイラは前戦が今年3月の『UFC 248』で、マックス・グリフィン(34=アメリカ)に判定勝ちし、連敗を「3」でストップ。キャリア通算戦績が21勝8敗1分2ノーコンテスト(12KO・TKO/5SUB)で、このうちUFC戦績が10勝6敗1ノーコンテスト(4KO・TKO/3SUB)となっている。

 対するゾボタは前戦が2018年3月の『UFC Fight Night 127』で、レオン・エドワーズ(28=ジャマイカ)に3R・TKO負けし、連勝が「2」で途絶えた。キャリア通算戦績は17勝6敗1分(5KO・TKO/10SUB)で、このうちUFC戦績は4勝2敗(1KO・TKO/1SUB)。今回の試合が2年4カ月ぶりの復帰戦となる。

 1R、構えはオリベイラがオーソドックスで、ゾボタがサウスポー。打撃戦の中で、互いにミドルでダメージを狙う。効かせたのはオリベイラの方で、三日月蹴り気味の右ミドルがゾボタの腹に刺さる。ゾボタは表情こそ変えないが、直後にその場で上下にステップしたり、ケージ際へと後退したりする場面も。

 2R、オリベイラが左ローから一気に飛び上がっての右ハイに繋げる二段蹴り。ゾボタはタックルでオリベイラをケージに押し込む。オリベイラは肘を落としながら踏ん張ると、体勢を入れ替えてゾボタを引き剥がす。ゾボタは頭頂部から出血。オリベイラの右ミドルでゾボタの背中が一瞬丸まる。ゾボタは偶発的なローブローとアイポークを受ける不運も。終了間際にはオリベイラが右ストレートでゾボタを吹っ飛ばす。

 3R、オリベイラの右ミドルを喰らったゾボタは、その場で自ら体を一周させる。オリベイラはゾボタのタックルに素早く腰を引いて対応。ゾボタは右カーフキックを返すが、オリベイラの右ミドルにはやはり後退を強いられてしまう。オリベイラが細かく出す前手もゾボタの悩みの種。オリベイラはそれをフェイントにして左ジャブに変えたり、右ストレートに繋げたりしながら主導権を握り続け、判定3-0で完勝した。


Main Card
▼ウェルター級 5分3R
○ハムザト・チマエフ(26=スウェーデン)
TKO 1R 3分09秒
×リース・マッキー(24=北アイルランド)

 プロデビュー7連勝中(4KO・TKO/3SUB)の新星チマエフは中10日での連戦。同じ会場で7月15日(水)に開催された『UFC on ESPN 13(UFC Fight Island 1)』でオクタゴンデビューを果たし、キャリア通算戦績22勝9敗1ノーコンテストのジョン・フィリップス(35=ウェールズ)に2R・一本勝ちしている。UFC参戦前はライト級で戦っていた。

 対するマッキーはUFC初参戦で、キャリア通算戦績が10勝2敗1分(7KO・TKO/3SUB)。こちらもBAMMA(British Association of Mixed Martial Arts)では、ライト級王座に就いた実績を持つ。

 1R、チマエフがグローブタッチ、ステップ、右の拳から飛び込んでのタックル、ケージ際まで運んでのテイクダウン、マウント移行、そして容赦無いパウンドと、試合開始からフィニッシュに持ち込む流れまでを無駄なく仕掛ける。マッキーは背を向けるたびに耳元へチマエフの拳を打ちつけられ、早くも成す術無しの状況。このまま展開は変わらず、最後はレフェリーストップとなった。

 中10日の連戦にもかかわらず、チマエフが圧倒TKO勝ち。勝利者インタビューに臨んだチマエフは、「1時間後にもう1試合戦ってもいいくらいだ。自分の階級には何人の選手がいるんだ?全員ぶちのめせる。チャンピオンと戦いわせてくれ。ライト級でもウェルター級でも良い。どちらにも勝てる。同じ日にね。稼ぐぜ」と、自信たっぷりに語った。


Prelim
▼160ポンド(72.57kg)契約 5分3R
○フランシスコ・トリナウド(41=ブラジル)
TKO 3R 1分30秒
×ジャイ・ハーバート(32=イングランド)
※トリナウドは規定体重をオーバー。試合はリミット155ポンド(70.31kg)のライト級から160ポンド(72.57kg)契約に変更して実施。

 トリナウドはキャリア通算戦績が25勝7敗(9KO・TKO/5SUB)、このうちUFC戦績が15勝6敗(4KO・TKO/2SUB)。現在2連勝中だ。

 対するハーバートはキャリア通算戦績が10勝1敗(8KO・TKO/1SUB)で、元CWFC(Cage Warriors Fighting Championship)ライト級王者。これがUFCデビュー戦となる。

 トリナウドが前日計量で規定体重をオーバーしたため、試合はリミット155ポンド(70.31kg)のライト級から160ポンド(72.57kg)契約に変更して行われた。

 1R、構えはトリナウドがサウスポーで、ハーバートがオーソドックス。トリナウドが左フックをヒットさせ、タックルでのテイクダウン、立ち際のチョーク、抑え込みながらのエルボーなどで終盤まで主導権を握る。だが、ハーバートが短い残り時間の中、組みの攻防から膝蹴りを突き刺し、投げを潰して上を取り返す。

 2R、開始直後にハーバートが細かい左ジャブから渾身の右ストレート。これが見事にヒットし、トリナウドがダウンする。トリナウドはハーバートに背中を許し、チョークで狙われ窮地に。トリナウドはハーバートの左腕を掴んで巻き込み、なんとかここを切り抜けてスタンドに戻すが、その後も膝蹴りと右ストレートを喰らって腰が落ちるなど、窮地が続く。

 3R、トリナウドは顔を腫らしながらもガードを固めて前進を続け、積極的に左ミドルと左インローを蹴っていく。蹴りから左の拳にも繋がり始めるトリナウド。ハーバートはフットワークを使いながら左ジャブとワンツーを細かく返すが、やや雑になってきた印象だ。するとほどなく、トリナウド渾身の左オーバーハンドがカウンターで炸裂。額に直撃を受けたハーバートがばたりとマットに倒れる。

 ここで完全に勝負ありかと思われたが、レフェリーストップはかからない。ためらいながらもパンチを落とし始めるトリナウド。5発目が入ろうとしたところでようやくレフェリーが試合を止め、トリナウドの逆転TKO勝ちとなった。


Prelim
▼ウェルター級 5分3R
×ニコラス・ダルビー(35=デンマーク)
一本 1R 2分48秒 ※リアネイキドチョーク
○ジェシー・ロンソン(34=カナダ)

 ダルビーはキャリア通算戦績が18勝3敗1分1ノーコンテスト(6KO・TKO/4SUB)。2015年から2016年にかけてUFCに参戦するも、1勝2敗1分でリリースとなった。しかしながら、ダレン・ティル(27=イングランド)相手にドローに持ち込む実力も持っている。その後、CWFC(Cage Warriors Fighting Championship)でウェルター級王座を獲得。昨年9月の『UFC Fight Night 160』で、3年ぶりにオクタゴン復帰を果たし、アレックス・オリベイラ(32=ブラジル)に判定勝ちを収めた。

 対するロンソンはキャリア通算戦績が21勝10敗(10KO・TKO/7SUB)。こちらも2013年から2014年にかけてUFCに参戦するが、3戦全敗でリリースとなった過去を持つ。その後、母国のTKO(TKO Major League MMA)でライト級王座を獲得し、PFL(Professional Fighters League)参戦も経て、UFCとの再契約に繋げた。

 1R、構えはダルビーがオーソドックスで、ロンソンがサウスポーだ。打撃戦の構えの両者。コンビネーションの応酬からダルビーが首相撲でロンソンをケージに押し込むが、テイクダウンには繋がらない。離れてはすぐに打撃の交換。蹴りを散らすなど手数はダルビーだが、ロンソンは落ち着いて正確に右カーフキックと右フックのカウンターなどを当てる。

 するとほどなく、ダルビーが右ストレートをロンソンに捌かれ、体が流れたところで右ジャブと左ストレートを喰らってダウン。ロンソンはマウントからエルボーを落とし、ダルビーが背を向けたところでチョークを極めた。ロンソンが6年越しのオクタゴン4戦目で、嬉しい初勝利を掴んだ。


Prelim
▼ヘビー級 5分3R
○トム・アスピナル(27=イングランド)
TKO 1R 40秒
×ジェイク・コリアー(31=アメリカ)

 アスピナルはこれがUFCデビュー戦。これまではBAMMA(British Association of Mixed Martial Arts)やCWFC(Cage Warriors Fighting Championship)などに出場してきた。キャリア通算戦績は7勝2敗(6KO・TKO/1SUB)だ。

 コリアーはキャリア通算戦績が11勝4敗(5KO・TKO/3SUB)で、このうちUFC戦績は3勝3敗(1KO・TKO/0SUB)の五分。しかしながら、前戦は2017年11月の『UFC Fight Night 120』で、マルセル・フォルトゥナ(34=ブラジル)に判定勝ちしているものの、その後は試合から遠ざかっており、これが2年4カ月ぶり復帰戦となる。

 アスピナルが右ローからワンツー、続けて単発の右ストレート。被弾したコリアーは一瞬動きが止まる。ほどなくして左の拳を伸ばしていったコリアーに対し、アスピナルは膝蹴りからワンツーの鋭いコンビネーションで迎撃。コリアーが背を向けて倒れ込み、レフェリーストップで試合は決した。アスピナルが秒殺TKOでUFC初戦を飾った。


Prelim
▼フェザー級 5分3R
○モフサル・エフロエフ(26=ロシア)
判定3-0 ※30-27、29-28、30-27
×マイク・グランディ(33=イングランド)

 エフロエフは元M-1 Globalバンタム級王者で、UFCデビュー2連勝中。キャリア通算戦績は12戦全勝(3KO・TKO/4SUB)のパーフェクトレコードだ。

 対するグランディはキャリア通算戦績が12勝1敗(1KO・TKO/8SUB)。2017年1月には日本で修斗世界フェザー級王者の斎藤裕に判定勝ちしている。昨年3月の『UFC Fight Night 147』で、ナド・ナリマニ(33=イングランド)に2R・TKO勝ちし、オクタゴンデビュー戦を飾っている。

 1R、構えは両者共にオーソドックスだ。グランディはエフロエフが蹴りを放とうとしたところ、瞬時にタックルを合わせてテイクダウン。がぶりの体勢に持ち込んだグランディに対し、エフロエフは腰を一瞬上げてから一気に下げる反動を使い、巧く後方へブリッジするように引っくり返すと、その勢いのままスタンドに戻す。

 しかし、エフロエフはほどなくパンチを振るわんとしたところで、再びグランディのタックルの餌食に。グランディのチョークに歯を食いしばるエフロエフだが、体を捻ってなんとか脱出する。その後はグランディのタックルを捌いていくエフロエフ。グランディは右ミドルを蹴ったところで、エフロエフの強烈な右フックをカウンターで喰らってしまう。

 2R、右目の下が腫れ上がってきたグランディ。エフロエフは右オーバーハンドから飛び込むと、グランディの離れ際を右アッパーで狙う。エフロエフのパンチを次々と被弾しながらもタックルで食らいつこうとするグランディ。エフロエフは腰を引いて対処するか、体勢を崩されてもすぐに立て直し、グラウンドに持ち込ませない。

 3R、組みつこうとするグランディを引き剥がしてパンチを当てるエフロエフ。2分が経過したところでグランディが意表を突くタックルを決め、エフロエフを背後から抑え込む体勢に。グランディの粘りがようやく実ったかに思われたが、ここもエフロエフが力強く振りほどいて立ち上がる。1分後にも同様の局面。エフロエフはテイクダウンディフェンス後、しっかり左ジャブと右アッパーを当てていった。

 エフロエフが判定3-0で完勝し、連勝記録を「13」に更新。グランディはUFC初黒星とキャリア2敗目を喫することとなった。


Prelim
▼ヘビー級 5分3R
○タナー・ボーザー(カナダ)
TKO 1R 2分36秒
×ハファエル・ペソア・ヌネス(ブラジル)

Prelim
▼女子バンタム級 5分3R
×ベチ・コヘイア(ブラジル/同級13位)
判定0-3 ※27-30、27-30、28-29
○パニー・キアンザド(スウェーデン)

Prelim
▼ウェルター級 5分3R
○ラマザン・エミーフ(ロシア)
判定3-0 ※30-27、30-27、29-28
×ニクラス・シュトルツェ(ドイツ)

Prelim
▼バンタム級 5分3R
○ナサニエル・ウッド(イングランド)
判定3-0 ※30-27、30-27、30-27
×ジョン・カスタネーダ(アメリカ)