ミオシッチ(右)が右の拳でコーミエ(左)を追い込む Photos(C)Jeff Bottari/ Zuffa LLC via Getty Images

 2020年8月15日(土・現地時間)に『UFC 252』が、アメリカ・ネバダ州ラスベガスのUFC APEXで無観客開催されました。以下、試合レポート・結果です。

Main Event
▼UFC世界ヘビー級タイトルマッチ 5分5R
○スティペ・ミオシッチ(37=アメリカ/王者)
判定3-0 ※49-46、49-46、48-47
×ダニエル・コーミエ(41=アメリカ/同級1位/挑戦者)
※ミオシッチが初防衛に成功。

ミオシッチ(左)がコーミエ(右)との決着戦を制した

 両者が拳を交えるのはこれで3度目。その全てがUFC世界ヘビー級タイトルマッチだ。 

 初対決は2018年7月の『UFC 226』。当時、初戴冠から3度の防衛に成功していたミオシッチに対し、1階級下のライトヘビー級王者だったコーミエが階級を上げて挑み、1R・KO勝ちで王座奪取、そしてUFC史上2人目の2階級同時戴冠を果たすこととなった。

 その後、コーミエは同年11月の『UFC 230』で、デリック・ルイス(35=アメリカ)の挑戦を退け、初防衛に成功。そして、翌年8月の『UFC 241』で、ミオシッチの挑戦を受け、2度目の防衛を目指すことに。結果はコーミエが4R・TKO負けで王座陥落、ミオシッチは雪辱を晴らし王座へ返り咲いた。

 それから1年の時を経て迎えるダイレクトリマッチ。コーミエは初対決後にルイス戦を挟んだが、ミオシッチに至っては3戦連続で同じ相手と拳を交えることになる。過去1勝1敗の五分で迎える3度目の決戦の行方やいかに。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。ミオシッチは間合いを保つように右へ左へと足を運びながら、単発の左インロー、左ジャブ、右ロー、右ストレートを丁寧に打ち、左ボディも綺麗に決める。しかし、ミオシッチはダブルの左ジャブを突こうとしたところで、コーミエにタックルを合わされ、テイクダウンを許してしまう。

 すぐに立ち上がるミオシッチに対し、コーミエはがぶりの体勢からヘッドロックして膝蹴り。ミオシッチはしばし我慢してコーミエの腕を振りほどく。試合は再び打撃戦。ミオシッチがワンツーと腹への右ストレートを打てば、コーミエは左ジャブと右カーフキック、カウンターの右オーバーハンドを返す。

 だが、ほどなくしてコーミエのアイポークにより中断。ミオシッチの回復を待って再開となる。ミオシッチは前半に見せたような足の運びから右フック、腹へのワンツー、左ジャブ、左右ローなど丁寧な攻撃。コーミエは組みにいくような動きを見せ、離れ際に右フックを振るう。終了間際にコーミエの一打がミオシッチの顔面をとらえる。

 2R、パンチの攻防の中、両者共に連打で仕掛ける場面も増え、有効打を当て合う。すると試合が動いたのは終了間際。ミオシッチの右フック連続打ちに対し、コーミエは距離を取ろうとするもかわしきれず、二発三発四発と喰らってしまいダウンする。残りわずかの時間でミオシッチはマウントからのパンチ。コーミエはホーンに救われるかたちで生還する。

 3R、ミオシッチは左ジャブを上下に打ち分けながらコーミエに迫り、機を見て右ストレートも当てにいく。コーミエはダメージが残っているようで表情もうつろ。コーミエのクリンチに対し、ミオシッチは密着しながら肩と肘で攻撃する。終盤にコーミエのクリンチから解放されたミオシッチは、ワンツーを振るって前進。コーミエは顔を背けて嫌がるが、この時、ミオシッチの前手の指がアイポークとなっていたようだ。

 4R、左目が塞がった状態のコーミエ。なおも試合はパンチの攻防が続く。コーミエは左ジャブを上下に打ち分け、右オーバーハンドで強打を狙う。ミオシッチはコーミエの一発を警戒しつつ、間合いが狭まれば右の拳を捻じ込むようにガツンと返していく。

 5R、左ジャブを突いて前に出るコーミエ。ミオシッチは至近距離からコンパクトにワンツーを返し、コーミエの連打はクリンチで封じる。巻き返したかったコーミエだが、好機を作ることができず。ミオシッチが判定3-0でコーミエとの決着戦を制し、初防衛も果たした。

 試合後のインタビュー。ミオシッチは「疲れたよ。早く家に帰りたい」と第一声を発し、「(コーミエは)素晴らしいファイターだ。やるべきことをやり、多くのタイトルを獲り、強敵を倒してきた」と、ライバルに向けて敬意の言葉を述べた。

 一方、コーミエは左目が全く見えていないことを明かしたが、「仕方ないことだ」とも受け入れ、「負けて終わりは悲しいけれど、乗り越えていきたい。タイトルマッチ以外の試合には興味が持てないんだが、この先にタイトルマッチの機会があるような感じもしない。そんなところだ」と、引退の意向を改めて示した。


Co-Main Event
▼バンタム級 5分3R
×ショーン・オマリー(25=アメリカ/同級14位)
TKO 1R 4分40秒
○マルロン・ヴェラ(27=エクアドル)

足を負傷して自らマットに背を着けたオマリー(下)は、ヴェラ(上)のパウンド追撃を喰らい力尽きた

 オマリーはキャリア通算戦績が12戦全勝(8KO・TKO/1SUB)で、UFCデビュー4連勝中(2KO・TKO/0SUB)のホープ。UFCでは2戦目と3戦目の間に2年間のブランクを挟んだが、今年復帰を果たして2連勝で再出発している。

 対戦相手のヴェラはキャリア通算戦績が15勝6敗(5KO・TKO/7SUB)、このうちUFC戦績が9勝5敗(4KO・TKO/4SUB)の実力者だ。前戦は今年5月の『UFC on ESPN 8』で、ソン・ヤンドン(22=中国)に判定負けしたが、それまでは5連勝5フィニッシュ(3KO・TKO/2SUB)という活躍ぶりだった。

 1R、まずはサウスポーに構える両者。ヴェラが右インローを蹴ると、オマリーがすぐに左カーフキックを返す。オマリーはオーソドックスにスイッチして右カーフも追加。オマリーの右ミドルも強烈だ。ヴェラもスイッチして前蹴りと右ハイ。蹴り中心の攻防が続く。

 異変が起きたのは残り時間が2分に迫った頃。オマリーが踏み込むような動きの中、足をもつれさせて転倒する。ヴェラは冷静にオマリーが立ち上がるのを待って打撃戦を再開。オマリーは表情こそ変わらないが、足の運びがぎこちなく、ケージにもたれかかる場面も。ヴェラは無理な追撃にはいかず、蹴りを入れながらジワジワと圧力を強める。

 そして迎えた終盤。オマリーは右の拳を振るいながら一気に前に出るが、やはり足がついてこず、バランスを崩すと自らマットに背を着ける。ヴェラはここでフィニッシュモードに入り、上から勢い良く肘を落とす。強烈な一打を喰らったオマリーは表情がうつろに。レフェリーが試合を止め、ヴェラのTKO勝ちが決まった。

 再起戦を勝利で飾ったヴェラ。一方、オマリーは思わぬかたちでキャリア初黒星を喫することとなった。

 勝利者インタビューに臨んだヴェラは、「試合前からポジティブであることを心がけていた。今も良い精神状態だ。自分自身のため、家族のため、そして国のためにハードワークする。それができれば、きっと夢は叶うんだ」と、充実した表情でコメントした。


Main Card
▼ヘビー級 5分3R
×ジュニオール・ドス・サントス(36=ブラジル/同級5位)
KO 2R 3分47秒
○ジャルジーニョ・ホーゼンストライク(32=スリナム/同級6位)

ホーゼンストライク(右)が復活のKO勝利。持ち前の剛腕で元王者ドス・サントス(左)をマットに沈めた

 ドス・サントスは2011年にUFC世界ヘビー級王座を獲得した経験を持つベテラン。王座陥落後もトップ戦線で活躍し、2014年には現王者のミオシッチに判定勝ちしたこともある。キャリア通算戦績は21勝7敗(15KO・TKO/1SUB)で、このうちUFC戦績は15勝6敗(10KO・TKO/0SUB)。ここ2試合はフランシス・ガヌー(33=カメルーン)とカーティス・ブレイズ(29=アメリカ)にTKO負けし、キャリア初の連敗から今大会で再起を図る。

 対するホーゼンストライクはキャリア通算戦績が10勝1敗(10KO・TKO/0SUB)で、このうちUFC戦績が4勝1敗(4KO・TKO/0SUB)。アリスター・オーフレイム(40=オランダ)をも飲み込んだ剛腕だが、今年5月の『UFC 249』でガヌーに1R20秒・KO負けし、キャリア11戦目で初黒星となった。こちらも今回の試合が再起戦となる。 

 1R、両者共にオーソドックス構えで、体を細かく動かしながらリズムを取る。探り合いの中、ドス・サントスが左ジャブから右オーバーハンド。ホーゼンストライクはドス・サントスの踏み込みに右ローを合わせる。ドス・サントスはステップを踏んで左右へ動き回るようになり、腹への左ジャブを起点にしながら右オーバーハンドと右ハイ。ホーゼンストライクは被弾を防ぐことに集中する。

 2R、細かいフェイントを使った駆け引きが続く中、ホーゼンストライクが徐々に間合いを狭めて圧力を増す。ドス・サントスはこれまで通りの動きから右オーバーハンドを届かせる場面もあったが、ホーゼンストライクの鋭いワンツーを前に距離を取るように。するとほどなく、ケージ際まで後退したドス・サントスに対し、ホーゼンストライクが一気に仕掛けて左右フックを炸裂させる。

 ダウンしたドス・サントスは立ち上がろうとするが、ホーゼンストライクに追撃の拳を浴びせられ、再びマットに崩れ落ちてしまう。ここでレフェリーが試合を止めた。ホーゼンストライクが再起戦でTKO勝ち。ドス・サントスは新勢力に飲み込まれるかたちで3連敗となった。


Main Card
▼149.5ポンド(67.81kg)契約  5分3R
×ハーバート・バーンズ(ブラジル)
TKO 2R 4分37秒
○ダニエル・ピネダ(アメリカ)
※バーンズの体重超過により、試合はリミット145ポンド(65.77kg)のフェザー級から149.5ポンド(67.81kg)契約に変更して実施された。

Main Card
▼バンタム級 5分3R
×ジョン・ドッドソン(アメリカ/同級12位)
判定0-3 ※27-30、27-30、27-30
○メラブ・ドバリシビリ(ジョージア/同級15位)

Preliminary Card
▼ライト級 5分3R
×ジム・ミラー(アメリカ)
判定0-3 ※28-29、28-29、27-29
○ヴィンス・ピシェル(アメリカ)

Preliminary Card
▼女子ストロー級 5分3R
×フェリス・ヘリッグ(アメリカ/同級15位)
一本 1R 1分44秒 ※腕十字
○ビルナ・ジャンジロバ(アメリカ)

Preliminary Card
▼146.5ポンド(66.45kg)契約 5分3R
×T. J.・ブラウン(アメリカ)
判定0-3 ※28-29、28-29、28-29
○ダニー・チャベス(アメリカ)
※ブラウンの体重超過により、試合はリミット145ポンド(65.77kg)のフェザー級から146.5ポンド(66.45kg)契約に変更して実施された。

Preliminary Card
▼女子ストロー級 5分3R
×アシュリー・ヨーダー(アメリカ)
判定0-3 ※28-29、28-29、27-30
○リビーニャ・ソウザ(ブラジル)

Early Preliminary Card
▼ヘビー級 5分3R
○クリス・ドーカス(アメリカ)
TKO 1R 4分28秒
×パーカー・ポーター(アメリカ)

Early Preliminary Card
▼フェザー級 5分3R
○カイ・カマカ・三世(アメリカ)
判定3-0 ※29–28、29–28、29–28
×トニー・ケリー(アメリカ)