スミス(左)の顔面にジャブを突き刺すラキッチ(右) Photos(C)Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images

 2020年8月29日(土・現地時間)、アメリカ・ネバダ州ラスベガスのUFC APEXで『UFC Fight Night 175UFC Vegas 8)』が無観客で開催されました。以下、試合レポート・結果です。

Main Event
▼ライトヘビー級 5分3R
×アンソニー・スミス(32=アメリカ/同級5位)
判定0-3 ※26-30、27-30、27-30
○アレクサンダル・ラキッチ(28=オーストリア/同級8位)

タイトル挑戦経験もある実力者スミス(左)を相手に再起戦を飾ったラキッチ(右)

 当初、メインイベントとして予定されていたのは、ザビット・マゴメドシャリポフ(29=ロシア/同級3位)vsヤイール・ロドリゲス(27=メキシコ/同級5位)のフェザー級ワンマッチであったが、ロドリゲスが負傷により欠場。スミスvsラキッチのライトヘビー級ワンマッチが繰り上げでメインイベントになった。

 スミスは3連勝で臨んだ昨年3月の『UFC 235』で、自身初となるUFCライトヘビー級タイトルマッチを戦い、当時の王者ジョン・ジョーンズ(33=アメリカ)に判定負け。その3カ月後の『UFC Fight Night 153』では、アレクサンダー・グスタフソン(33=スウェーデン)に4R・一本勝ちしたが、続く今年5月の『UFC Fight Night 171』で、グローバー・テイシェイラ(40=ブラジル)に5R・TKO負けを喫している。

 キャリア通算戦績は32勝15敗(17KO・TKO/12SUB)で、このうちUFC戦績が8勝5敗(5KO・TKO/2SUB)。今回の試合が再起戦となる。

 対するラキッチの前戦は昨年12月の『UFC Fight Night 165』で、2018年タイトルコンテンダーのヴォルカン・オーズデミア(30=スイス)相手にスプリット判定負け。UFCデビュー5連勝ならず、2011年10月のプロデビュー戦以来となる黒星を喫している。

 キャリア通算戦績は12勝2敗(9KO・TKO/1SUB)で、このうちUFC戦績が4勝1敗(2KO・TKO/0SUB)。スミスと同じく、今大会で再起を目指す。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。ラキッチは左の前手を伸ばすように構え、左インローと右カーフキックで序盤から炸裂音を響かせる。スミスはラキッチの蹴りを受けながらジリジリと間合いを縮めていたが、1分半ほど経過したところで右カーフの強烈2連打を効かされてしまい、たまらずその場に倒れ込んでしまう。

 がぶりの体勢でスミスを押さえ込んだラキッチ。スミスはラキッチの片足を捕らえながら潜り込む。ラキッチはバランスを崩してスミスに背中を許すが、すぐに前方へ落として再びがぶりの体勢に。スミスはガードポジションを取り、以降はラキッチにトップキープされる時間が続いた。

 2R、ラキッチはグローブタッチ直後に右カーフを見舞い、直後にスミスのクリンチを膝蹴りで迎え撃つ。ラキッチの強烈な左ミドルもスミスの悩みの種に。スミスは右ストレートから一気に組みつくが、投げ損じたか、自らバランスを崩してマットに背を着けてしまう。スミスはガードポジション。ラキッチはホーンが鳴るまでトップキープし続ける。

 3R、ラキッチは狙いを定めるように左の前手を伸ばして右カーフ。大きな炸裂音が響く。スミスは左フックが空振りに終わり、構え直したところでラキッチの左フックを被弾。ラキッチはすぐに左ハイも2発見舞い、スミスにガードの上から効かせる。スミスはなんとかラキッチをクリンチで捕らえるが、ここも投げがすっぽ抜けるようになり、マットに背を着けてしまう。ここから試合終了まで4分以上もの間、ラキッチがスミスを組み伏せ続けた。

 ラキッチがタイトルコンテンダー相手に終始試合を支配し、判定3-0で完勝。ラキッチは再び星を白に戻した。一方、スミスは完敗を喫し、これで2連敗となった。
 
 試合後の勝利者インタビュー。ラキッチは「初のメインイベンターだった。支えてくれた人も多く、プレッシャーもあったけど、肩の荷が下りたよ。元タイトル挑戦者相手にこのパフォーマンスというのは嬉しい限りだ」と勝利を喜び、「新しいレスリングコーチの下、この試合に向けて準備してきた。自分はただの危険なストライカーではなく、レスリングとグラップリングでも試合を支配できる。これでトップ5に入ったんだ。この階級の他の選手に対して俺を見くびるなと警告しておきたい」と手応えと自信を口にした。


Co-Main Event
▼ウェルター級 5分3R
×ロビー・ローラー(38=アメリカ/同級13位)
判定0-3 ※27-30、27-30、27-30
○ニール・マグニー(33=アメリカ/同級14位)

リーチで勝るマグニー(右)のストレートがローラー(左)をとらえる

 ローラーは現在3連敗中。2017年12月の『UFC on Fox 26』で、ハファエル・ドス・アンジョス(35=ブラジル)に判定負け、昨年3月の『UFC 235』で、ベン・アスクレン(36=アメリカ)に1R・一本負け、同年8月の『UFC on ESPN 5』で、コルビー・コヴィントン(32=同)に判定負けという状況だ。

 キャリア通算戦績は28勝14敗1ノーコンテスト(20KO・TKO/1SUB)で、このうちUFC戦績が13勝8敗(6KO・TKO/0SUB)。今大会で連敗脱出なるか。

 一方のマグニーは現在2連勝中。2018年11月の『UFC Fight Night 140』で、サンチアゴ・ポンジニッビオ(33=アルゼンチン)に4R・KO負けしたが、今年5月の『UFC 248』で、リー・ジンリャン(32=中国)に判定勝ち、続く6月の『UFC 250』で、アンソニー・ロッコ・マーティン(30=アメリカ)に判定勝ちしている。

 キャリア通算戦績は23勝7敗(7KO・TKO/3SUB)で、このうちUFC戦績が16勝6敗(6KO・TKO/0SUB)。今大会で3連勝なるか。

 1R、構えはローラーがサウスポーで、マグニーがオーソドックス。ローラーはパンチを振るってタックルを仕掛けるが、マグニーに潰され、背中も許してしまう。マグニーはローラーが立ち上がってもしぶとく組みつき、体勢を崩していく。ローラーはマグニーにテイクダウンされ、苦しい時間が続いた。

 2R、打撃戦の中でマグニーは右ミドルを叩き込むと、すぐに組みついてローラーをテイクダウン。マグニーがすぐにバックグラブポジションに移行し、ローラーを攻め立てる。ローラーはなんとか脱出を試みるが、しぶといマグニーに組み伏されてしまう。終盤にスタンドの展開が訪れても、ローラーはマグニーの首相撲に捕まり、膝蹴りと肘打ちを喰らうなど劣勢のままだ。

 3R、序盤にローラーの右フックがようやくヒット。一瞬顔をしかめたマグニーは、ローラーを引き込むようにして自らマットに背を着ける。巻き返したいローラーであったが、グラウンドで展開を作れず。両者が膠着状態のためレフェリーはスタンドを指示。以降はマグニーが打撃戦でも押し気味となり、サークリングしながらの左ジャブ、右ストレート、ワンツーからの膝蹴り、首相撲からの膝蹴りなどでローラーを脅かした。

 マグニーが判定3-0で完勝し、3連勝をマーク。ローラーは苦しい4連敗となった。


Main Card
▼女子フライ級 5分3R
×キム・ジヨン(30=韓国/同級14位)
判定0-3 ※27-30、27-30、27-30
○アレクサ・グラッソ(27=メキシコ)

グラッソ(左)がキレのあるジャブを起点にコンビネーションでジヨン(右)を攻め込んだ

 ジヨンのキャリア通算戦績は9勝2敗2分(2KO・TKO/3SUB)で、このうちUFC戦績が3勝2敗(1KO・TKO/0SUB)。GLADIATOR女子バンタム級とDEEP JEWELSバンタム級で王座に就いた実績を持つ。前戦は昨年10月の『UFC 243』で、ナディア・カセム(24=オーストラリア)に2R・KO勝ち。ここ2戦は体重超過で臨んでいたが、今回は計量を無事にパスしている。

 対するグラッソのキャリア通算戦績は11勝3敗(4KO・TKO/0SUB)で、このうちUFC戦績が3勝3敗(0KO・TKO/0SUB)。前戦は昨年9月の『UFC Fight Night 159』で、元UFC女子ストロー級王者カーラ・エスパルザ(32=アメリカ)に判定負けしている。今回はフライ級に階級を上げて再起を図ることになった。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。左ジャブを多用しながら右ストレートと左フックに繋げるグラッソに対し、ジヨンはスウェーバックとバックステップでかわしながら左右フック・アッパーのカウンターを狙う。時おり足を止めて打ち合う両者。序盤はジヨンがカウンターの左フックでグラッソを脅かしていたが、終盤はグラッソが入り際に上体を振るなど変化をつけてからの連打でジヨンに迫る。グラッソは左ミドルと右ローにも繋げた。

 2R、グラッソはなおも左ジャブを攻撃の起点とし、仕掛ける時には連打に右ボディストレートを混ぜ、離れ際には蹴りを追加。グラッソは常に動き続けて同じ場所にとどまらず、ジヨンにカウンターを取らせない。終盤にはグラッソが右オーバーハンド、ワンツー、右スーパーウーマンパンチ、右フックなどをクリーンヒットさせる。

 3R、ジヨンは圧力を一段と増して仕掛けるようになり、遠めの間合いからワンツーの右ストレートを強打。直後の打ち合いではグラッソも左フックのカウンターを返す。ジヨンはパンチの連打から突進してクリンチ。ここから両者はケージ際で体勢を入れ替えながら組みの攻防を繰り広げるが、残り時間1分でテイクダウンに成功したのはグラッソだ。ジヨンはグラッソに拳と肘を落とされ、マットに背を着けたまま試合終了を迎えた。

 判定は満場一致でグラッソに軍配。グラッソがフライ級転向初戦で完勝し、再起を飾った。


Main Card
▼フェザー級 5分3R
○リカルド・ラマス(アメリカ)
判定3-0 ※29–27、29–27、29–27
×ビル・アルジオ(アメリカ)

Preliminary card
▼ミドル級 5分3R
×マキ・ピトーロ(アメリカ)
判定0-3 ※27-30、27-30、27-30
○インパ・カサンガナイ(アメリカ)

Preliminary card
▼ミドル級 5分3R
×アレッシオ・ディ・キリコ(イタリア)
判定0-3 ※28-29、28-29、27-30
○ザック・カミングス(アメリカ)

Preliminary card
▼151ポンド(68.49kg)契約5分3R
○アレックス・カサレス(アメリカ)
一本 1R 3分38秒 ※リアネイキドチョーク
×オースティン・スプリンガー(アメリカ)
※スプリンガーの体重超過により、試合はリミット145ポンド(65.77kg)のフェザー級から151ポンド(68.49kg)契約に変更して実施。

Preliminary card
▼ウェルター級 5分3R
○ショーン・ブレイディ(アメリカ)
一本 2R 1分47秒 ※ギロチンチョーク
×クリスチャン・アギレラ(アメリカ)

Preliminary card
▼女子ストロー級 5分3R
○ポリアナ・ヴィアナ(ブラジル)
一本 1R 1分53秒 ※腕十字
×エミリー・ウィットマイア(アメリカ)

Preliminary card
▼117ポンド(53.07kg)契約 5分3R
○マロリー・マーティン(アメリカ)
一本 2R 1分33秒 ※リアネイキドチョーク
×ハンナ・シファーズ(アメリカ)
※シファーズの体重超過により、試合はリミット115ポンド(52.16kg)の女子ストロー級から117ポンド(53.07kg)契約に変更して実施。

Main Card
▼ライトヘビー級 5分3R
-マゴメド・アンカラエフ(ロシア)
試合延期
-イオン・クテラバ(モルドバ)
※クテラバが新型コロナウイルスの事前検査で陽性となったため、試合は後日に延期。