アリスター(上)がテイクダウンからの鉄槌でサカイ(下)を仕留めた Photos(C)Chris Unger/Zuffa LLC via Getty Images

 2020年9月5日(土・現地時間)、『UFC Fight Night 176UFC Vegas 9)』がアメリカ・ネバダ州ラスベガスのUFC APEX(無観客)で開催されました。以下、試合レポート・結果です。

Main Event
▼ヘビー級 5分5R
○アリスター・オーフレイム(40=オランダ/同級6位)
TKO 5R 26秒
×アウグスト・サカイ(29=ブラジル/同級9位)

ベテランのアリスター(左)は攻守の安定感と試合巧者ぶりを見せ、新鋭のサカイ(右)にUFC初黒星を与えた

 アリスターはリングス、PRIDE、DREAM、K-1で活躍した日本縁のベテラン。2007年11月にStrikeforceヘビー級王座獲得、2010年12月にはDREAMヘビー級王座獲得とK-1 WORLD GP優勝を成し遂げ、40歳となった現在も、UFCヘビー級ランカーとして世界の一線で戦っている。

 2連勝で迎えた昨年12月の『UFC on ESPN 7』では、試合終了間際にジャルジーニョ・ホーゼンストライク(32=スリナム)の一発を浴び、痛恨の5R・KO負け。今年5月の『UFC on ESPN 8』で臨んだ再起戦は、ウォルト・ハリス(37=アメリカ)に2R・TKO勝ちし、星を白に戻している。

 対するサカイはUFCデビュー4連勝中で、その前のImortal FCとDana White’s Contender Series Brazil(UFCの人材発掘トライアウト)での2試合を含めれば6連勝中と絶好調だ。Bellator MMA参戦も経験している。

 1R、両者共に構えはオーソドックスでスタート。慎重な探り合いから2分が経過しようとしたところで、サカイが右の前蹴りをアリスターの腹に突き刺し、続けて首相撲に持ち込んでの膝蹴りも入れる。アリスターはケージを背負いながらのディフェンス。サカイも深追いしない。距離を取り直す両者。以降はパンチ中心の攻防が続き、アリスターが右オーバーハンド、サカイが右アッパーをそれぞれ当てる。

 2R、互いに仕掛ける時にはパンチの連打で迫り、相手が顔を下げたところで膝蹴り。アリスターは時おり構えをスイッチしながらサカイの強打を丁寧にブロックし、左ボディフックと膝蹴りを返す。サカイはさらにパンチをまとめるが、アリスターのガードは堅い。アリスターはクリンチでサカイをケージに押し込み、至近距離から左フック。サカイは眉間から出血する。

 3R、アリスターが単発ながらもタイミング良く丁寧に打撃を散らし、右ロー、右オーバーハンド、右の関節蹴り、左ボディフックでサカイを脅かす。サカイの拳・膝・圧も依然として強力だが、アリスターのブロックをこじ開けることはできない。組みついてきたサカイに対し、アリスターは巧く足を掛けてテイクダウン。サカイはアリスターの鉄槌で再び眉間が割れる。

 4R、アリスターの右カーフキックでサカイが一瞬バランスを崩す。サカイはすぐにパンチをまとめ、アリスターのガードの上から右エルボーを連打。サカイの粘りがようやく実を結び、アリスターの額が割れる。しかし、試合巧者のアリスターはタックルから引き込むようにサカイを転がし、テイクダウンに成功。サカイはアリスターの鉄槌に背を向けるなど、苦しい展開を強いられる。

 5R、アリスターが開始早々にタックルで仕掛け、再び引き込むようにサカイを転がしてテイクダウン。サカイはアリスターの強烈な拳と肘を浴び、顔を背けて嫌がる。レフェリーはここで試合を止めた。

 アリスターがTKO勝ちで2連勝をマーク。サカイは連勝が途絶え、UFC初黒星となった。

 試合後の勝利者インタビュー。アリスターは「サカイがタフな有望株であることはご存知の通り。自分がやり返すような展開になることも予想はしていた。しっかりと準備してきたからこそ、再び結果を残すことができたんだ。40歳にしてね(笑)」と、自身の年齢を強調しながらご満悦の様子だ。

 今後の展望について聞かれると、「特に考えてはいないけれど、ファイトキャンプとチームのことが好きだし、自分は戦うことに情熱を持っている。少し休んで今年の末か、来年の頭には戻ってきたいと思う」と、次戦に向けて意欲を示した。

 今回の勝利で、アリスターのキャリア通算戦績は47勝18敗1ノーコンテスト(25KO・TKO/17SUB)、UFC戦績は12勝7敗(9KO・TKO/0SUB)に。一方、敗れたサカイのキャリア通算戦績は15勝2敗1分(11KO・TKO/0SUB)、UFC戦績は4勝1敗(2KO・TKO/0SUB)となった。

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Co-Main Event
▼ライトヘビー級 5分3R
○オヴィンス・サン・プルー(37=アメリカ)
KO 2R 4分07秒
×アロンゾ・メニフィールド(32=アメリカ)

再起戦のサン・プルー(右)が一撃必殺のKO勝ち

 ベテランのサン・プルーと新鋭のメニフィールドによるライトヘビー級ワンマッチ。当初、8月22日(土・同)の『UFC on ESPN 15』で組まれていた試合だが、サン・プルーが事前の新型コロナウイルス検査で陽性となったため、今大会に延期されていた。

 サン・プルーは2016年のUFCライトヘビー級タイトルコンテンダーで、必殺のヴォンフルーチョークが有名。昨年9月の『UFC Fight Night 160』で、ミハル・オレクシェイチュク(25=ポランド)にヴォンフルーチョークで2R・一本勝ちし、3連敗を免れたが、今年5月の『UFC Fight Night 171』では、ベン・ロズウェル(38=アメリカ)にスプリット判定負けし、黒星先行となっている。

 対するメニフィールドはUFCデビュー2連勝からの黒星という戦いぶり。2戦連続KO・TKO勝利で臨んだ今年6月の『UFC 250』で、デヴィン・クラーク(30=アメリカ)に判定負けし、キャリア10戦目にして初黒星を喫することとなった。

 1R、構えはサン・プルーがサウスポーで、メニフィールドがオーソドックス。遠めの間合いから左の前蹴りと左ストレートを繰り出すサン・プルーに対し、メニフィールドは左右に移動しつつ仕掛ける時には一気に左右オーバーハンドを振るう。時間の経過と共にサン・プルーが圧力を増し、メニフィールドはカウンター狙いに。終了間際にメニフィールドの左フックが、サン・プルーの顔面をかすめる。

 2R、サン・プルーはなおもケージ中央から鋭くコンパクトな左の中段前蹴り攻めを続行。メニフィールドはサークリングしながら右フックのカウンターを狙うが、やや腹に効かされてきた様子だ。すると残り時間1分を切ったところで試合が動く。右ボディストレートで一気に踏み込んだメニフィールドに対し、サン・プルーはカウンターの左フック一閃。サン・プルーがメニフィールドをマットに這わせた。

 サン・プルーが再起戦で会心のKO勝ち。メニフィールドは2連敗となった。


▼ウェルター級 5分3R
○ミシェル・ペレイラ(25=ブラジル)
一本 3R 4分39秒 ※リアネイキドチョーク
×ゼリム・イマダエフ(26=ロシア)

ペレイラ(右)が自身の持ち味でこれでもかと言うほど魅せた

 ペレイラは前転蹴り、バク宙フットスタンプ、ケージを使った三角飛び蹴りなど、トリッキー且つアクロバティックな打撃技で魅せる期待の新鋭だ。UFCデビュー1勝1敗で臨んだ今年2月の『UFC Fight Night 167』では、ディエゴ・サンチェス(38=アメリカ)を追い込んだが、頭部に反則の膝蹴りを入れてしまい、3Rで失格負け。今大会で連敗脱出を目指す。

 対するイマダエフもUFCデビュー2連敗という難局に立つ。他団体での試合は全てKO・TKO勝ちで決めてきた強打の復活なるか。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。パンチを振るって前に出てきたイマダエフに対し、ペレイラは背後のケージを蹴っての飛び膝蹴り、さらに首相撲からの膝蹴りも突き上げる。いずれもやや当たりは浅かったか、イマダエフは舌を出してノーダメージのアピールだ。

 続けてペレイラは変則的なステップからいきなり動きを止めて右ストレートをぶつけ、さらに右足でケージを蹴って飛び上がりながらの右ミドルも追加。ペレイラはイマダエフを撹乱させながら鋭い左ジャブを上下に打ち分け、狙いすました右ストレートも当てる。イマダエフはダウン気味に尻餅を着く場面も。

 2R、ペレイラが構えをスイッチしながら手招きしてイマダエフを挑発。イマダエフの右ローとペレイラの飛び膝蹴りは相打ちになる。ペレイラは吹っ飛んでしまうが、すぐに立ち上がってお返しの旋風脚。これはイマダエフが難なくかわす。

 ペレイラは前転蹴りで魅せようとするも空振りし、立ち上がり際をイマダエフにパンチで狙われる危ない場面も。イマダエフはペレイラの動きに慣れ始め、徐々にパンチのコンビネーションで前に出る。だが、ペレイラはイマダエフの攻撃をかわしながら、左ジャブと左の前蹴りを返して反撃を許さない。

 3R、ペレイラはダンスのようなステップから右足でケージ蹴って右スーパーマンパンチ。被弾したイマダエフがぐらつく。ペレイラはすぐに首相撲に持ち込んで膝蹴りを入れるが、イマダエフの左右フックが飛んでくると深追いせず距離を置く。

 なんとかパンチを当てようと前に出るイマダエフ。ペレイラはノーガードの挑発も混ぜながらディフェンスし、左ジャブでイマダエフの鼻を突く。そして迎えた終盤、ペレイラはイマダエフに組みつくと、大きく抱え上げてテイクダウンし、すぐさま背後からチョーク。イマダエフが自らの手で額を触る動作を見て、レフェリーが試合を止めた。

 ペレイラは持ち味を存分に見せての一本勝ち。イマダエフはレフェリーストップの直後は「タップしていない」と不満の意を示していたが、ほどなくして結果を受け入れた。

 ペレイラは連敗脱出を果たし、UFC戦績が2勝2敗(1KO・TKO/1SUB)に。一方、イマダエフはUFCデビュー3連敗となった。


▼ミドル級 5分3R
○アンドレ・ムニス(ブラジル)
一本 1R 2分42秒 ※腕十字
×バルトス・ファビンスキ(ポーランド)

▼フェザー級 5分3R
○ブライアン・ケレハー(アメリカ)
一本 1R 39秒 ※ギロチンチョーク
×レイ・ロドリゲス(アメリカ)
※ロドリゲスはケビン・ナティブダド(アメリカ)の直前欠場を受け、急遽の代替参戦。

▼女子フライ級 5分3R
○ビビアン・アラウジョ(ブラジル)
判定3-0 ※29-28、30-27、30-27
×モンタナ・デ・ラ・ロサ(アメリカ)

▼バンタム級 5分3R
×コール・スミス(カナダ)
判定0-3 ※28-29、28-29、28-29
○ハンター・アジュール(アメリカ)

▼ライト級 5分3R
-ティアゴ・モイゼス(ブラジル)
試合中止
-ジェイリン・ターナー(アメリカ)
※新型コロナウイルス感染症の検査で陽性反応が出たことを受けて試合中止。

▼ヘビー級 5分3R
-アレクサンドル・ロマノフ(モルドバ)
試合中止
-マルコス・ホジェリオ・デ・リマ(ブラジル)
※新型コロナウイルス感染症の検査で陽性反応が出たことを受けて試合中止。