気迫の表情で右アッパーを振るうホルム Photos(C)Josh Hedges/Zuffa LLC via Getty Images

 現地時間及び日本時間2020年10月4日(日)、『UFC Fight Island 4UFC on ESPN 16)』がアラブ首長国連邦・アブダビのUFCファイトアイランドで開催されました。以下、試合レポート・結果です。

メインイベント
▼女子バンタム級 5分5R
○ホリー・ホルム(38=アメリカ/同級2位)
判定3-0 ※50-44、50-45、50-45
×アイリーン・アルダナ(32=メキシコ/同級6位)

元女王ホルム(左)のパンチに押し込まれるアルダナ(右)

 元UFC女子バンタム級王者のホルムにランキング上昇中のアルダナが挑む一戦。この試合は当初、今年8月の『UFC Fight Night 173(UFC Vegas 5)』に向けて組まれていたが、アルダナの新型コロナウイルス感染により、今大会に延期となった。

 ホルムは2016年3月の『UFC 196』で、ミーシャ・テイト(34=アメリカ)に5R・一本負けし、初防衛ならず王座陥落となったが、その後もタイトルマッチを女子フェザー級で2度、女子バンタム級で1度戦うなど、トップ戦線を走り続けている。前回の出場は今年1月の『UFC 246』で、ラケル・ペニントン(32=同)との再起戦に臨み、判定勝ちだった。

 対するアルダナは3連勝を目指し、10カ月ぶりの試合だ。前回の出場は昨年12月の『UFC 245』で、当時プロ10連勝中、UFCデビュー4連勝中だったケトレン・ヴィエラ(29=ブラジル)相手に1R・KO勝ちを収めている。ここ6試合で唯一となる黒星は、昨年7月の『UFC on ESPN 4』で、ペニントンに喫した判定負けだった。

 1R、オーソドックスのアルダナが積極的に足を前へ運びながら左右ロー。サウスポーのホルムは左方向に回り込んで間合いを保ちながら横蹴りと前蹴りを返したり、突如踏み込んでワンツーを振り抜いたりする。時間の経過とともにホルムが鋭いパンチのコンビネーションでガンガン仕掛けるようになり、終盤にはテイクダウンも成功させて攻勢を強めた。

 2R、アルダナは引き続き前に出ようとするが、ホルムの左ストレートに仰け反り、横蹴りに背中を丸めるなど、なおも苦境。ホルムはスーパーウーマンパンチのフェイントから組みつくと、アルダナをケージ中央に運びながらテイクダウンする。アルダナはほどなく立ち上がるが、以降もホルムのパンチと横蹴りに苦しむ。

 3R、巻き返さんと前に出るアルダナに対し、ホルムはなおもステップを駆使していなす。ホルムは横蹴りを合わせるタイミングも絶妙で、アルダナの攻撃の芽を潰していく。アルダナはようやくパンチの距離に入って拳を振るうも、待っていたのはホルムのタックル。ホルムはテイクダウンからマウントも取り、試合を完全に支配する。

 4R、戦況は変わらず。ホルムがステップで距離を取りながら先手先手で右ジャブと横蹴りを繰り出し、アルダナがそれをひたすら追いかけていく展開だ。ホルムは横蹴りに左ミドルも加え、アルダナの腹に効かせる。ホルムはテイクダウンを追加すると、押さえ込まずにスタンドを選択。アルダナは前に出続けるものの、攻撃のかたちを作ることができない。

 5R、序盤の打ち合いでアルダナの右フックを被弾したか、ホルムは鼻から出血。ホルムはアルダナの右ミドルも喰らうが、すぐに横蹴りを返して譲らない。ホルムはバックステップのキレがやや落ち、アルダナに迫られるようになるが、それでもしっかりテイクダウンを決め、最後は気合いの声を張り上げながらのパンチラッシュで締め括った。

 ホルムが大差をつけての判定勝ち。健在ぶりを示す圧勝劇だった。

 試合後の勝利者インタビューで、ホルムは「磨かなければならないところは絶対にある。いつも言っていることだけれど、勝利と敗北のどちらからも学びたいと思うし、そうすれば常に学んでいることにもなる」と、自身の戦いに対する姿勢を強調。

 試合については、「相手は私と同じようによく動き回る選手だから、もし自分と戦うならどうするか、ということを考えた。2人の選手がともにゲームプランを遂行し、勝ったのは自分だった」と振り返った。

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プレリム
▼ウェルター級 5分3R
○カーロス・コンディット(36=アメリカ)
判定3-0 ※30–27、30–27、30–27
×コート・マクギー(35=アメリカ)

鋭い左ストレートをヒットさせるコンディット。5年5カ月ぶりの勝利を掴んだ

 コンディットは元UFCウェルター級暫定王者のベテランだが、現在5連敗中。1年10カ月の長期離脱期間を経て、今大会で復帰となる。対するマクギーも現在2連敗中で、これが1年ぶりの復帰戦だ。

 1R、オーソドックスのマクギーは左右の蹴り上中下段に散らしながら、右ストレートで顔と腹を狙う。一方、コンディットはディフェンス主体で、構えをリラックスさせてステップを踏んだり、サウスポーからオーソドックスにスイッチしたりしながらマクギーの攻撃をかわす。

 コンディットは徐々にパンチを出し始めるが、単発の左ストレートを打ったところでマクギーの左右フックを浴びそうになり、仰け反る場面も。しかし終了間際に両者打ち合いになると、コンディットの右アッパーが見事にカウンターで決まり、マクギーをダウンさせる。マクギーはブザーに救われるかたちで生還した。

 2R、コンディットはその場でステップを刻みリズムを取ったかと思えば、瞬時に踏み込んで拳を当てる。試合はコンディットのペースに。マクギーはコンディットが踏み込もうとしたところで左ハイを蹴ったり、左右フックのカウンターを狙ったりして応戦。コンディットも深追いしない。

 頭を振ったり上体を上下させたりしながら仕掛けるタイミングをうかがうコンディット。マクギーはコンディットの強烈な左ミドルで一瞬動きが止まり、直後に追撃の右ストレートも被弾する。終盤にコンディットはストレート系のパンチを伸ばしていくが、ここは距離を詰め切ることができなかった。

 3R、左右ローの蹴り合いでスタート。巻き返したいマクギーが徐々にパンチで仕掛けるようになり、左右ボディストレートがコンディットに届く。しかし、コンディットはマクギーの頭が下がったところを左ハイで狙うなど落ち着いた戦いぶりだ。マクギーは左ミドルをコンディットにキャッチされ、転倒してしまう場面も。

 コンディットはワンツーを打った場面で足を捻ったか、しばしステップがぎこちなくなるが、それでも左ミドルを連続で蹴っていく。終盤にマクギーは右ストレートでコンディットを押し込んだが、反撃は及ばず。

 コンディットが復帰戦で判定勝ち。コンディットの勝利は、2015年5月の『UFC Fight Night 67』で行われたチアゴ・アウベス(37=ブラジル)戦以来、実に5年5カ月ぶりとなった。


プレリム
▼女子ストロー級 5分3R
○ロマ・ルックブーンミー(24=タイ)
判定3-0 ※30–27、30–27、29–28
×ジン・ユ・フレイ(35=アメリカ)

ルックブーンミーがムエタイ仕込みの蹴りと首相撲で元Invicta FC女王フレイを下した

 ルックブーンミーはパンクラス参戦なども経て、タイ人として初めてUFCと契約。今大会はUFCデビュー1勝1敗で迎える3戦目だ。前戦は今年2月の『UFC Fight Night 168』で、アンジェラ・ヒル(35=アメリカ)に判定負けしている。

 対するフレイは元Invicta FCアトム級王者で、RIZIN参戦なども経てUFC入り。今年6月の『UFC Vegas 4(UFC on ESPN 12)』で、ケイ・ハンセン(21=アメリカ)に3R・一本負けし、新天地初戦を落としている。

 1R、オーソドックス構えから右インローを蹴ったルックブーンミーに対し、左ストレートを合わせにいくサウスポー構えのフレイ。このファーストコンタクト以降も、ルックブーンミーは距離を取りながら右インロー・ミドル・ハイを当てていく。

 一気に間合いを潰して組みつくフレイ。ルックブーンミーはケージを背にしてテイクダウンさせない。その後も打撃の交換の中でフレイは足を取りにいったり、タックルを仕掛けたりするが、ルックブーンミーの首相撲に捕まり、肘と膝を浴びてしまう。

 2R、ルックブーンミーは右の前蹴りを顔面と膝に打ち分け、フレイの前進を牽制。フレイが強引に間合いを詰めれば、ルックブーンミーは素早く首相撲に捕らえ、ケージに押し込みながら肘と膝の連打で削りまくる。

 距離を取っての打撃戦でも、ルックブーンミーが巧みに間合いを調整しながら右インロー・ミドル・前蹴りで攻撃。フレイは左右ストレートを合わせようとするも、その拳がルックブーンミーまでなかなか届かない。

 3R、フレイが開始早々に起死回生のタックルでテイクダウンに成功するが、押さえ込み切ることができず、ルックブーンミーにスタンドを許す。フレイはすぐにルックブーンミーの背中に飛び乗るが、崩すことはできない。ルックブーンミーはフレイを一気に振り払い、打撃戦に戻す。

 なおもジリジリと迫るフレイに対し、ルックブーンミーは右インロー・ミドル・ハイ・前蹴り。フレイはなんとか接近し、ルックブーンミーの首相撲に捕まりそうになったところで巧くタックルに切り替えるが、それでもテイクダウンできなかった。

 ルックブーンミーがフレイに付け入る隙を与えず、判定3-0で完勝。ルックブーンミーは再起戦を飾り、UFC戦績を2勝1敗とした。一方、フレイはUFCデビュー2連敗という厳しい結果となった。


メインカード
▼女子バンタム級 5分3R
○ジャーメイン・デ・ランダミー(36=オランダ/同級1位)
一本 3R 3分25秒 ※ギロチンチョーク
×ジュリアナ・ペーニャ(31=アメリカ/同級4位)

迫るペーニャをパンチで突き放すデ・ランダミー

 デ・ランダミーは1階級上の女子フェザー級で戴冠歴を持ち、現在は女子バンタム級のトップランカー。前戦は昨年12月の『UFC 245』で、現王者アマンダ・ヌネス(32=ブラジル)に挑戦したが、判定負けだった。今大会で再起を図る。

 対するペーニャは再起戦として臨んだ昨年7月の『UFC Fight Night 155』で、元UFC女子フライ級王者ニコ・モンターニョ(31=アメリカ)に判定勝ち。今大会では元王者を相手に2連勝を狙う。

 1R、ジリジリと間合いを縮めてくるペーニャに対し、リーチで上回るデ・ランダミーが間合いを保ちながら右ストレートと右アッパーをヒットさせ、打撃戦を優位に展開。ペーニャは終了間際にテイクダウンを決め、次の5分間へと繋げる。

 2R、ペーニャがいきなり乱打戦を仕掛けて組みつき、粘るデ・ランダミーをテイクダウン。ペーニャは鉄槌を落としながらデ・ランダミーを押さえ込み、ほどなくしてギロチンチョークを仕掛ける。しかし、ここでデ・ランダミーが体を捻って脱出すると、上を取り返してヴォンフルーチョーク。ペーニャはブザーに救われるかたちで難を逃れる。

 3R、ペーニャはパンチの連打に左ハイも混ぜながら果敢に打撃で押し込み、デ・ランダミーにケージを背負わせて組みつく。懸命に耐えるデ・ランダミーに対し、ペーニャはタックルに切り替えるが、これが裏目に。デ・ランダミーがペーニャをギロチンチョークで絞め落とし、試合を決着させた。

 デ・ランダミーが再起戦で一本勝ち。試合後の勝利者インタビューで、デ・ランダミーは王者ヌネスに向けて「あなたの美しい家族を祝福したい(ヌネスの同性パートナーであるニーナ・アンサロフが9月に第一子を出産)。でも、ベルトはまだ持っていて欲しい。まだ終わっていない。鉄の女がここにいる。押忍」と、再挑戦を表明した。


セミメインイベント
▼ヘビー級 5分3R
○ヨルガン・デ・カストロ(ガーボベルデ)
判定3-0 ※30-27、30-27、29-28
×カルロス・フェリペ(ブラジル)

メインカード
▼バンタム級 5分3R
○カイラー・フィリップス(アメリカ)
TKO 2R 44秒
×キャメロン・エルス(イングランド)

メインカード
▼ミドル級 5分3R
×デクアン・タウンゼンド(アメリカ)
TKO 2R 3分15秒
○ドゥスコ・トドロビッチ(セルビア)

プレリム
▼フェザー級 5分3R
△シャルル・ジョーデイン(カナダ)
引き分け 判定1-1 ※30-27, 28-29, 28-28
△ジョシュア・クリバオ(オーストラリア)

プレリム
▼ミドル級 5分3R
×ジョーダン・ウィリアムズ(アメリカ)
判定0-3 ※27-29、27-29、28-29
○ナッソーディン・イマボフ(フランス)

プレリム
▼バンタム級 5分3R
○ケイシー・ケニー(アメリカ)
判定3-0 ※30-25、30-26、30-27
×アラテン・ヘイリ(中国)

プレリム
▼ライト級 5分3R
○ルイージ・ベンドラミニ(ブラジル)
TKO 1R 1分12秒
×ジェシン・アヤリ(ドイツ)