「噛ませ犬扱いされていた」と言う36歳ブランソン(左)。ベテランが無敗の22歳シャバージアン(右)に初めての敗北を味わわせた Photos(C)Chris Unger/ Zuffa LLC via Getty Images

 2020年8月1日(土・現地時間)、『UFC Fight Night 173』がアメリカ・ネバダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されました。以下、試合レポート・結果です。

Main Event
▼ミドル級 5分3R
○デレク・ブランソン(36=アメリカ/同級8位)
TKO 3R 26秒
×エドメン・シャバージアン(22=アメリカ/同級9位)

鋭い右ジャブを繰り出すブランソン(右)。パンチから飛び込んでタックルに切り替えるベテランの攻めに、シャバージアン(左)は苦しんだ

 当初、ホリー・ホルム(38=アメリカ)vsアイリーン・アルダナ(32=メキシコ)の女子バンタム級ワンマッチがメインイベントとして予定されていたが、アルダナが新型コロナウイルス検査で陽性となったため、同カードは延期に。これに伴い、コーメインイベントで組まれていたシャバージアンvsブランソン(36=同)のミドル級ワンマッチが、メインイベントに繰り上がった。

 シャバージアンはUFCデビュー4連勝中のホープ。キャリア通算戦績は11戦全勝(9KO・TKO/1SUB)と負け知らずだ。全勝という結果もさることながら、判定までもつれたのが1試合のみで、それ以外は全て1Rでフィニッシュしている。前回の出場は昨年11月の『UFC 244』で、当時同級11位の実力者ブラッド・タヴァレス(32=アメリカ)に1R・KO勝ちだった。

 そんな快進撃を続けるシャバージアンに今回用意された相手は、同級8位のベテランにして強豪との試合経験も豊富なブランソンだ。キャリア通算戦績は20勝7敗(11KO・TKO/3SUB)、このうちUFC戦績は11勝5敗(6KO・TKO/1SUB)。勝ち星の中には、ロレンズ・ラーキン(33=アメリカ)、ユライア・ホール(35=ジャマイカ)、リョート・マチダ(42=ブラジル)といった猛者達からあげたものもあり、タイトル戦線進出を見据えるシャバージアンにとっては試金石となりそうだ。 

 通常のメインイベントは5分5Rだが、今回は大会が迫ったタイミングでの繰り上がりであったことから5分3Rで行われる。

 1R、構えはブランソンがサウスポーで、シャバージアンがオーソドックス。互いに前手で触りつつ、ブランドンが左ミドル・前蹴り・インロー、シャバージアンは左ジャブからの右ストレート・フックなどを落ち着いたペースで繰り出す。

 口火を切ったのはブランソンで開始2分、左ストレート2連打と共に一気に飛び込み、ボディロックからシャバージアンをテイクダウン。シャバージアンはほどなく立ち上がるが、離れ際にブランソンの強烈な左エルボーを喰らってしまう。シャバージアンも火が点き、以降はキレのある右フックを混ぜたパンチのコンビネーションで仕掛け、たびたびブラソンを脅かす。

 2R、再び打撃の交換。シャバージアンが強烈な右ミドルで先制する。ブランソンはシャバージアンの右の拳も警戒しながら丁寧に右ジャブとワンツーと左の蹴りを返し、これにタックルも混ぜていく。たびたびケージを背負わされるシャバージアン。ブランソンはテイクダウンに至らなければ、離れ際に左エルボーと左ボディを打つなど、シャバージアンの消耗を誘う。

 すると残り1分が迫ったところで、ついにブランソンがシャバージアンの背中をマットに着かせ、サイドから抑え込むことに成功。シャバージアンはブランソンにマウントを許す場面もあり、強烈な拳と肘の攻撃でさらに削られてしまう。終了間際にはシャバージアンがダメージから体も脱力した様子になるが、ここはなんとか持ち堪える。
 
 3R、ドクターがシャバージアンの様子を確認したうえで開始。だが、ダメージが残ったままのシャバージアンは、ブランソンの左右ストレートを嫌がって後退し、直後に力なく組み伏されてしまう。ブランソンのパウンドで亀の状態になるシャバージアン。レフェリーはすぐに試合を止めた。

 ブランソンがTKO勝ち。シャバージアンはキャリア12戦目にして初の敗北となった。

 ベテランらしい落ち着きが光ったブランソン。「この試合はハードだった。SNSでも噛ませ犬扱いされて。しかしながら、ネガティブな声を大きく上回るサポートも受けることができた。コーチは『お前は門番なんかじゃない。お前の持っているものを奴らに見せてやれ』と鼓舞してくれたんだ。だから今、こうして喜びに浸ることができている」と、勝利のコメントを残した。


Co-Main Event
▼女子フライ級 5分3R

×ジョアン・コールダウッド(36=スコットランド/同級3位)
一本 1R 4分29秒 ※腕十字
○ジェニファー・マイア(31=ブラジル/同級6位)

腕十字をしっかり極めて一本勝ちしたマイア(上)は喜びの表情

 マイアは元Invicta FC世界フライ級王者。キャリア通算戦績が17勝6敗(4KO・TKO/4SUB)で、このうちUFC戦績が2勝2敗(0KO・TKO/0SUB)となっている。前回の出場は昨年11月の『UFC 244』で、ケイトリン・チョケイジアン(31=アメリカ)に判定負け。ここ2戦は体重超過していたが、今回は無事にパスして試合に臨む。

 対するコールダウッドはWBCムエタイのイギリス王座とISKAの世界王座を獲得するなど、立ち技の強豪として活躍。その後転向したMMAでは、キャリア通算戦績が14勝5敗(5KO・TKO/1SUB)で、このうちUFC戦績が6勝4敗(1KO・TKO/0SUB)という戦いぶりだ。前回の出場は昨年9月の『UFC 242』で、アンドレア・リー(31=アメリカ)に判定勝ちしている。

 コールダウッドは当初、今年7月の『UFC 251』で、ワレンチナ・シェフチェンコ(32=キルギス)のUFC世界女子フライ級王座に挑戦する予定だったが、王者の負傷欠場により試合が流れてしまった。自身初となるUFCタイトルマッチに再び辿り着くためにも、今回の試合は落とせない。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。マイアが上体を左右に揺らしながら積極的にストレート系のパンチを繰り出す。コールダウッドも打撃戦の構えだが、序盤は反応が遅れ気味となり、たびたびマイアの左ジャブとワンツーを被弾。時間の経過と共にコールダウッドも左の前蹴りが出るようになり、マイアの進撃をブロックする。

 お返しとばかりに右の前蹴りを返すマイア。コールダウッドはこれを逃さずキャッチしてテイクダウンを決める。だが、ここから攻めたのは下になったマイアの方で、エルボーを返しながら両足を絡めて仕掛ける動き。コールダウッドがこれを嫌がり腰を上げるが、マイアの腕十字に捕まってしまう。コールダウッドは体を転がしても逃れることができず、最後はマイアに腕を伸ばされタップした。

 マイアが再起戦で会心の一本勝ち。ここで勝利してタイトルマッチに繋げたかったコールダウッドだが、悔しい結果となった。


Main Card
▼ウェルター級 5分3R
○ビセンテ・ルーケ(ブラジル/同級11位)
KO 2R 4分56秒
×ランディ・ブラウン(ジャマイカ)

Main Card
▼ライト級 5分3R
×ランド・バンナータ(アメリカ)
判定0-3 ※26-30、27-30、27-30
○ボビー・グリーン(アメリカ)

Preliminary card
▼140.5ポンド(63.73kg)契約 5分3R 
×フランキー・サエンツ(アメリカ)
TKO 3R 57秒
○ジョナサン・マルチネス(アメリカ)
※マルチネスは体重超過。試合はリミット135ポンド(61.24kg)のバンタム級から140.5ポンド(63.73kg)契約に変更して実施。

Preliminary card
▼フェザー級 5分3R
×ジョニー・ムニョス(アメリカ)
判定0-3 ※27-29、27-29、27-29
○ネイト・マネス(アメリカ)

Preliminary card
▼フェザー級 5分3R
○ジャマル・エマース(アメリカ)
判定3-0 ※30-27、30-27、30-27
×ビンス・カチェロ(アメリカ)

Preliminary card
▼バンタム級 5分3R
△クリス・グティエレス(アメリカ)
判定0-0 ※28-28、28-28、28-28
△コーディ・ダーデン(アメリカ)

Preliminary card
▼ミドル級 5分3R
-エリック・スパイスリー(アメリカ)
試合中止
-マルクス・ペレス(ブラジル)→チャールズ・オンティベロス(アメリカ)
※ペレスが健康上の問題により計量当日に欠場。その後、スパイスリーは代役のオンティベロスと195ポンド(88.45kg)契約で対戦することがいったんは決まったが、コミッション規約により、試合自体が中止となった。