2019年11月16日(土・現地時間)ブラジル・サンパウロ州パライーゾのジナシオ・ド・イビラプエラで『UFC Fight Night 164』(もしくは『UFC on ESPN+ 22』)が開催されました。以下にその試合レポート・結果を綴ります。
Photos(C)Alexandre Schneider/ UFC/ Zuffa LLC via Getty Images
▼ライトヘビー級 Main Event 5分5R
○ヤン・ブラホビッチ(36=ポーランド/同級6位)
判定2-1 ※47-49、49-47、49-47
×ジャカレ・ソウザ(39=ブラジル/ミドル級8位)
ブラホビッチは2011年11月に母国ポーランドのKSW(Konfrontacja Sztuk Walki)でライトヘビー級王座を獲得した実績を持つベテラン。UFCには2014年10月の『UFC Fight Night 53』から参戦し、現在までに7勝(2KO・TKO/2SUB)5敗の戦績を収めている。特にここ6試合は黒星が一つと安定しており、自身初のUFCタイトルマッチに向けて徐々に前進中だ。通算戦績は24勝(6KO・TKO/9SUB)8敗。
対するジャカレも2008年9月にDREAMミドル級グランプリで準優勝し、2010年8月にはStrikeforce世界ミドル級王者にも輝いたベテラン。UFCには2013年5月の『UFC on FX 8』から参戦し、9勝(4KO・TKO/3SUB)4敗の戦績を収めている。ミドル級では指折りのトップファイターだが、こちらもタイトルマッチは未経験。近年は勝ち負けを交互に繰り返しているということもあり、自身の体調とモチベーション、そして年齢的なところを考慮して階級アップを決断し、今回がその初戦となる。通算戦績は26勝(8KO・TKO/14SUB)7敗1ノーコンテスト。
1R、構えは両者ともにオーソドックス。ブラホビッチの右ローを左手でキャッチし、すかさず右オーバーハンドを振るうジャカレ。直後にお互いが見合ったところでジャカレがタックルを仕掛ける。ブラホビッチはケージを背負って防御。ジャカレは組んでケージに押し込み続ける。組みが緩んだところでブラホビッチは脱出。試合は再び打撃戦となるが、慎重な両者はなかなか手が出ない。ジャカレは再びタックルでブラホビッチにケージを背負わせ、組みの攻防に持ち込む。両者はこのまま膠着。会場からは大きなブーイング。
2R、上体を左右に振りながら近づいてくるジャカレに対し、ブラホビッチは間合いを保ちながら左ジャブ。ブラホビッチは右ストレートも当てるが、ジャカレに返す刀で右ストレートを当て返されてしまう。再び距離を取り直せば、ブラホビッチが左ジャブに加えて右カーフの攻撃。削られたくないジャカレは組みつくものの膠着状態。ブラホビッチが脱出すると試合は再び打撃戦に。すると今度はジャカレの右カーフが決まり始め、ブラホビッチがバランスを崩す場面もみられる。ジャカレはすかさず右ボディストレートを叩き込んだ。
3R、ブラホビッチが右カーフと左ボディジャブで先制。ブラホビッチがさらに前蹴りと左ジャブを放ったところで、ジャカレは右カーフを蹴る。打撃戦ではブラホビッチが左ジャブと右カーフのコンボをよく当て、ジャカレは右カーフのみで数も少なめ。ジャカレは再び組みつくがこれまでと同じく膠着状態に陥り、ブラホビッチに逃げられてしまう。ブラホビッチはなおも左ジャブと右カーフのコンボ攻め。ジャカレはパンチで変化をつけてからタックルに入るが、テイクダウンできない。
4R、ブラホビッチは序盤に右カーフを一発蹴り、以降は左ジャブのみの攻撃。なかなか手が出ないジャカレは頭と上体こそよく振るが、ブラホビッチの左ジャブを避け切れていない。ブラホビッチはジャカレの組み際に左ボディを入れ、少しもたついたところで左右アッパーも追加。ジャカレは案の定、組んで膠着して逃げられてブーイングされるという流れだ。再び打撃戦で右カーフを蹴り合う両者。体が少し傾いてしまうのも同じで互いにやや効いているようだ。ブラホビッチは左ジャブを突き、ジャカレが左へステップしたところに右ミドルも叩き込む。
5R、両足の甲が大きく腫れ上がってしまったブラホビッチだが、それでも構えをスイッチしながらカーフを蹴る。ジャカレがまたもタックルから組みつき、もやは膠着だけでなくブーイグも誘発する状態だ。それでもトライするジャカレ。膠着状態を見かねたレフェリーが両者を引き離す。ただ、その後に続くのは単発の蹴りを時々みせるのみの間合い合戦。ようやく試合が少し動いたのは残り時間1分30秒付近だった。ブラホビッチがジャカレのタックル際に右アッパーを合わせ、組みもさばいて転がす。ブラホビッチはジャカレが立ち上がるとすぐにパンチをまとめ、尻餅をつかせる。ブラホビッチは無理して攻め込まず、蹴りを散らして試合終了を待った。
互いに決め手を欠いた試合。ブラホビッチは数こそ少ないがジャブとカーフを当て、パンチをまとめる場面もみられた。一方、ジャカレは打撃も少なく、組んでからも仕掛けることができずに攻めあぐねた。結果はスプリットでブラホビッチに軍配。ブラホビッチはこれで2連勝。ジャカレはライトヘビー級転向初戦を落とし、2連敗となっている。
▼ライトヘビー級 Co-Main Event 5分3R
△マウリシオ・“ショーグン”・フア(37=ブラジル/同級14位)
判定1-1 ※29-28、28-29、28-28
△ポール・クレイグ(31=スコットランド)
ショーグンと当初対戦が予定されていたサム・アルビー(アメリカ)が、大会まで3週間を切ったところで手を骨折して欠場(一報は10月28日)。クレイグが代役として急遽参戦し、ショーグンと拳を交えることになった。
ショーグンは2005年8月にPRIDEミドル級グランプリで優勝し、2010年5月にはUFC世界ライトヘビー級王者にも輝いたベテランで、通算戦績は26勝(21KO・TKO/1SUB)11敗。前戦は昨年12月の『UFC Fight Night 142』で、タイソン・ペドロ(オーストラリア)に3RTKO勝ちを収めた。近年は負傷による長期欠場もあったが、元々、UFCでは試合頻度が多い方ではなく、今回も11カ月ぶりの参戦となる。
対するクレイグは通算戦績が12勝(1KO・TKO/11SUB)4敗で、サブミッションを得意とするフィニッシャー。UFCでの戦績は4勝4敗の五分だが、その白星は全て一本勝ちによるものだ。
1R、構えは両者ともにオーソドックス。クレイグは前足のミドルとインロー、 奥足の上段回し蹴りと前蹴りを散らしてから、右アッパーで一気に飛び込む。それと同時にショーグンの右フックがクレイグの肩を叩き、両者はそのまま組み合いに。投げから崩しにかかるのはクレイグ。ショーグンはすぐに立て直す。ケージ際で体勢を入れ替えながらの組みの攻防。膠着状態になったため両者は離れる。
今度はショーグンがクレイグの左ミドルをキャッチしてタックル。これを切ったクレイグはショーグンの首に腕を回しながら顔面ヒザ蹴りを突き刺す。ショーグンはなんとか頭を抜くが、直後に待ち構えていたのはクレイグのパンチのラッシュ。クレイグは何発か強打を当ててタックルに切り替える。ショーグンはケージを背負いながらなんとか切り抜け、終盤にはパンチで反撃に向かう。
2R、クレイグは左ミドルや右の前蹴りで牽制。ショーグンは構わず間合いを潰して右アッパーを突き上げる。両者の左ジャブは相打ち。ほどなくしてショーグンがクレイグの右ミドルをキャッチしてテイクダウンに成功し、ここぞとばかりに左右の拳を振り落とす。クローズドガードでショーグンを引き寄せるクレイグ。ショーグンはいったん立ち上がると、マットに背をつけたままのクレイグに対して右の拳で殴りつけいにいく。この展開はホーンが鳴るまで繰り返された。
3R、クレイグが左ミドル、左インロー、上段後ろ回し蹴りを散らし、にじり寄るショーグンを牽制。1分が経過したところで、クレイグはタックルの動きから自らマットに背をつけるようにして、ショーグンをグラウンドへ誘い込む。ショーグンはこれにつき合うが、パスガードできなければ立ち上がって拳から飛び込むことを繰り返す。そうして迎えた残り時間20秒。突如立ち上がったクレイグはパンチの連打で仕掛け、応戦してきたショーグンを最後の最後にタックルでテイクダウンした。
ショーグンは1Rのピンチを脱してからはグラウンドで上をキープしながらクレイグに拳を落とすなど、巻き返していたようではあったが、勝敗の結果は判定1-1でドロー。コールを受けた両者は厳しい表情をみせた。
▼ライト級 Main Card 5分3R
○チャールズ・オリベイラ(30=ブラジル/同級13位)
KO 1分26秒
×ジャレッド・ゴードン(31=アメリカ)
オリベイラは27勝(7KO・TKO/18SUB)8敗1ノーコンテストの通算戦績を誇るサブミッションアーティスト。UFC史上最多の一本勝ち記録「13」を絶賛更新中だ。また、現在5連勝中でそのすべてがフィニッシュ(4KO・TKO/1SUB)して決したもの。今回もKOするか極めるかで勝てば、UFC最多の連続フィニッシュ勝利記録も塗り替えることになる。
対戦相手のゴードンは通算戦績が15勝(6KO・TKO/2SUB)3敗。UFCでは昨年6月の『UFC Fight Night 112』でのデビューから3勝(1KO・TKO/0SUB)2敗の戦績だ。
1R、構えは両者ともにオーソドックス。前手でオリベイラのガードを払って右の拳をねじ込むゴードン。すぐに距離を取り直したオリベイラは、ゴードンの右フックに合わせて組みつき、鮮やかな投げを打つ。ゴードンは片手を先について踏ん張り、背中をマットにつけまいとうつ伏せ。オリベイラは腕に絡みついて腕十字をセットするが、ここはゴードンにちぎられてしまう。
スタンドでの打撃戦に戻る両者。オリベイラがゴードンの前蹴りを飛び越えるようにスーパーマンパンチの右を当てる。ゴードンはオリベイラに右ローや左ボディで先手を取られる場面が多い。するとゴードンが左ジャブから右の拳を振り抜いたところで、オリベイラの右フックがカウンターで炸裂。両ヒザががくっと落ちたゴードンはオリベイラの追撃の右アッパーを喰らってぐったりとなった。
鮮烈KO決着に沸く会場。オリベイラが前回のニック・レンツ(アメリカ)戦に続き、またも打撃で試合を決着させ、UFC最多の連続フィニッシュ勝利記録「6」を保持することとなった。
▼ミドル級 Main Card 5分3R
×アントニオ・アロヨ(ブラジル)
判定0-3 ※27-30、27-30、27-30
○アンドレ・ムニス(ブラジル)
▼ミドル級 Main Card 5分3R
×マルクス・ペレス(ブラジル)
判定0-3 ※27-30、27-30、27-30
○ウェリントン・トゥルマン(ブラジル)
▼ウェルター級 Prelim 5分3R
×セルジオ・モラエス(アメリカ)
KO 3R 4分19秒
○ジェームス・クラウス(ブラジル)
▼フェザー級 Prelim 5分3R
○リカルド・ラモス(ブラジル)
一本 1R 3分57秒 ※リアネイキドチョーク
×エドアルド・ガラゴリ(ウルグアイ)
▼ライト級 Prelim 5分3R
○フランシスコ・トリナウド(ブラジル)
判定3-0 ※30-27、29-28、29-28
×ボビー・グリーン(アメリカ)
▼ウェルター級 Prelim 5分3R
×ワーレイ・アウヴェス(ブラジル)
一本 2R 1分22秒 ※三角絞め
○ランディ・ブラウン(アメリカ)
▼フェザー級 Prelim 5分3R
○ダグラス・シウバ・ジ・アンドラージ(ブラジル)
判定3-0 ※30-27、30-27、30-26
×ヘナン・バラオン(ブラジル)
▼130.5ポンド(59.19キロ)契約 Prelim 5分3R
○アリアネ・リプスキ(ブラジル)
判定3-0 ※30-26、30-26、29-27
×イザベラ・デ・パードゥア(ブラジル)
※リプスキと当初対戦する予定であったヴェロニカ・マセド(ベネズエラ)が健康上の問題を理由に欠場。2日前のオファーを承諾したデ・パードゥアが緊急出場。
※デ・パードゥアは女子フライ級の規定体重をパスできなかったため、対戦相手のリプスキに報奨金の30%を支払う。試合は契約体重で実施。
▼女子バンタム級 Prelim 5分3R
×バネッサ・メロ(ブラジル)
判定0-3 ※27-30、27-30、27-29
○トレイシー・コルテス(アメリカ)