2020年1月18日(土・現地時間)アメリカ・ネバダ州ラスベガスのT-Mobileアリーナで『UFC 246』が開催されました。以下、試合レポート・結果です。

Photos(C)Jeff Bottari/ Zuffa LLC/ UFC

Main Event
▼ウェルター級 5分5R
〇コナー・マクレガー(31=アイルランド/ライト級4位)
TKO 1R 40秒
×ドナルド・セラーニ(36=アメリカ/ライト級5位)

ダウンしたセラーニに鉄槌でとどめを刺すマクレガー

 UFC史上初の二階級(フェザー級及びライト級)同時制覇、無敗の世界五階級制覇王者フロイド・メイウェザー・ジュニア(アメリカ)相手にプロボクシングデビュー戦、ネイト・ディアス(同)や現UFC世界ライト級王者ハビブ・ヌルマゴメドフ(ロシア)との乱闘騒動、引退表明からわずか9日での撤回、ウイスキーブランドの立ち上げなど——。

 数々の歴史と話題を創ってきたUFCのスーパースター、マクレガーが1年3カ月ぶりの復帰戦に臨んだ。

 マクレガーは2018年10月の『UFC 229』でヌルマゴメドフのUFC世界ライト級王座に挑戦し、4R一本負けで王座返り咲きならず。昨年には一度引退を表明したが、先述の日数でそれを撤回している。今回はウェルター級での復帰戦。同階級での試合は、2016年8月の『UFC 202』でネイトに判定勝ちして以来となる。

 対するセラーニはこれまでに50戦を闘い、UFC世界ライト級タイトルマッチも経験しているベテラン。ウェルター級での試合は、2018年11月の『UFC Fight Night 139』でマイク・ペリー(アメリカ)に1R一本勝ちして以来となる。

 1R、開始直後にいきなり左ストレートを振り抜くマクレガー。セラーニはかわすと同時にタックルで組みつくが、マクレガーの肩打ちを喰らってしまう。マクレガーはセラーニを突き放すと左ハイ。ダメージを受けたセラーニはマクレガーの飛び膝蹴りと左フック連打も浴びてダウンする。マクレガーの鉄槌に顔を覆うセラーニ。ここでレフェリーストップとなった。

 割れんばかりの歓声に包まれる場内。マクレガーがブランクをものともせず、圧巻の秒殺TKO勝ちで復活の狼煙を上げた。

 マイクを向けられたマクレガーは「レベルチェンジと同時に相手を肩で攻撃するのは練習してきた」と話した所で興奮を抑えきれず、「アイルランドやったぞ!」と叫ぶ。そして「最高の気分だ。この試合で新たに歴史を刻めた。UFC史上初めて、フェザー級、ライト級、ウェルター級の三階級でKO勝利したファイターになることができた。とても誇らしく思う」と喜び、関係者とサポーターへ感謝の言葉を述べた。

 また、試合序盤に見せた肩打ちについては、「完全に不意打ちだっただろうな。見事なレベルチェンジだ。ドナルドも全く見えていなかった。良い感じの距離感から肩を入れることができた。うれしいね。完璧に彼の顎を捉えている」と振り返る。 

 さらに「階級をこれだけ変更して、ここまで強いファイターがどこにいるってんだ。それもすべてフィニッシュでな。本当に自分を誇りに思うね。たとえUFCがベルトを剥奪しようが、意味のないベルトを勝手に作ろうが、俺の二階級制覇ステータスには敵わない。それに俺は三階級でKOを決めた。これは誰にも真似できない。覚えておくがいい。歴史に名前を幾度も刻んできたのはこの俺だ。アイルランドを背負ってな! ママ愛しているよ。ドナルドもありがとう!」とまくしたて、自身のウイスキーブランドの宣伝も忘れなかった。

 試合も試合後もマクレガーの独壇場と化したオクタゴン。スターは変わらずスターのままだった。

 一方、敗れたセラーニは「(マクレガーの肩打ちについて)今までに見たことがない攻撃だった。あれで鼻血も出始めたし、蹴りも喰らってしまった。やばいなと思ったし、(ダメージを受けるには)早すぎるだろうという気持ちだった」と試合を振り返り、「俺はこの競技を愛している。まだまだ続けていくさ。(今日の結果は)気にしないよ」との言葉で締め括った。

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Prelim
▼女子フライ級 5分3R
〇ロクサン・モダフェリ(37=アメリカ/同級7位)
判定3-0 ※30-27、30-27、30-26
×メイシー・バーバー(21=アメリカ/同級9位)

無敗の新星バーバーに日本縁のベテラン選手モダフェリが立ちはだかった

 モダフェリはSmackgirl、Valkyrie、DEEP JEWELSなどに参戦経験を持つ日本縁のベテラン。UFCでは勝ち負けを交互に繰り返しながら現在までに2勝3敗の戦績を収めている。前戦は昨年7月の『UFC on ESPN 4』で、ジェニファー・マイア(ブラジル)に判定負け。今回の試合が再起戦となる。

 対するバーバーは8戦全勝(5KO・TKO/2SUB)の通算戦績を誇る新星。今回の試合がUFC4戦目だ。

 1R、サウスポーのバーバーは積極的に間合いを詰めてワンツー。オーソドックスのモダフェリはフットワークを駆使してバーバーの圧力をかわすと、右ストレートを当てて組みつく。テイクダウンを許すバーバー。モダフェリは上をキープしながら肩固めを狙い、終盤にはバックマウントを取るなど攻め込む。

 2R、開始早々にモダフェリの左ストレートを被弾したバーバーがダウン。モダフェリはバーバーの下からのフットチョークを捌き、マット・ヒューズ・ポジションからマウントへ移行する。一度はバーバーにポジションを返されるが、モダフェリはほどなく上を取り返し、マウントからのパンチ、そして肩固めで畳みかける。バーバーの顔面は血に染まった。

 3R、左足のドクターチェックを受けて試合に入るバーバー。モダフェリの右ストレートを被弾したバーバーは腰が落ち、左足も引きずっている。モダフェリは組みついてテイクダウン。バーバーもアームロックを仕掛けてひっくり返してみせる。いったん立ち上がるモダフェリ。バーバーはすぐにタックルを仕掛けるが、モダフェリにがぶって潰されてしまう。モダフェリは抑え込んで試合終了を待った。

 再起戦のモダフェリが判定勝ち。無敗の新鋭バーバーはベテランに屈し、キャリア9戦目で初黒星となった。


Co-Main Event
▼女子バンタム級 5分3R
〇ホリー・ホルム(38=アメリカ/同級3位)
判定3-0 ※29-28、30-27、30-27
×ラケル・ペニントン(31=アメリカ/同級5位)

前に出てきたペニントンをサイドキックで突き放すホルム

 ホルムは元UFC世界女子バンタム級王者。近年は階級を上げて女子フェザー級でタイトルマッチを闘うこともあったが、前戦は昨年7月の『UFC 239』でアマンダ・ヌネス(ブラジル)の女子バンタム級王座に挑戦し、1RTKO負けで王者返り咲きを果たすことはできなかった。今回の試合は半年ぶりの再起戦となる。

 対するペニントンは4連勝で臨んだ2018年5月の『UFC 224』で、ヌネスの女子バンタム級王座に挑戦したが、5RTKO負けで初戴冠ならず。同年11月の『UFC Fight Night 139』でも、元UFC世界女子フェザー級王者ジャーメイン・デ・ランダミー(オランダ)に判定負け。しかし、今年7月の『UFC on ESPN 4』ではアイリーン・アルダナ(メキシコ)に判定勝ちし、連敗脱出を果たしている。

 ホルムとペニントンはこれが4年11カ月ぶりの再戦。初対決は2015年2月の『UFC 184』で、この時はホルムがスプリット判定で勝利している。また、ホルムはこの9カ月後の『UFC 193』で当時のUFC世界女子バンタム級王者ロンダ・ラウジー(アメリカ)に2RKO勝ちし、新女王に輝くこととなった。

 1R、オーソドックスのペニントンが左ジャブやワンツーを突きながらじりじりと前進。サウスポーのホルムは間合いを取りながら前足での関節蹴りを積極的に繰り出す。ペニントンはステップのフェイントから一気に前へ足を運び、右ストレートで仕掛けるが、ホルムに組まれてケージを背負わされる。以降はケージ際での組みの攻防が続き、ホルムが押し込む時間が多かった。

 2R、ペニントンの左ジャブを右の前手で触るホルム。ペニントンは右ストレートを連打しながら突進するが、ホルムにかわされる。ホルムはペニントンをケージに押し込み、組みの攻防を優位に展開。ペニントンは体勢を入れ替えようとするが、すぐにホルムに戻されてしまう。

 3R、ホルムはペニントンのパンチをかわして左ハイ。今度はペニントンが組みついていくが、ホルムに振りほどかれるか、ケージへと押し返されるかの状況が続く。残り1分を切った所でホルムが左ストレートからの右アッパーをヒット。ホルムはクリンチとフットワークを駆使し、ペニントンに反撃を許さなかった。

 ホルムが判定3-0でペニントンを返り討ち。ペニントンは2連勝ならず、ホルムが再起戦を飾った。


Main Card
▼へビー級 5分3R
〇アレクセイ・オレイニク(42=ロシア/同級12位)
一本 2R 4分38秒 ※腕十字
×モーリス・グリーン(33=アメリカ)

 オレイニクは57勝13敗1分(8KO・TKO/45SUB)の通算戦績を誇る寝技師。直近の2試合では、アリスター・オーフレイム(オランダ)とウォルト・ハリス(アメリカ)に1RKO・TKO負けしており、今大会で連敗脱出を目指す。

 対するグリーンは8勝3敗(2KO・TKO/4SUB)の通算戦績を収める新鋭。昨年10月の『UFC Fight Night 162』でセルゲイ・パブロビッチ(ロシア)に1RTKO負けし、UFC4戦目で初黒星を喫している。今回の試合が再起戦だ。

 1R、いきなり右オーバーハンドをフルスイングしたきたオレイニクに対し、グリーンが右ロー。オレイニクは転倒する。グリーンはグラウンドには付き合わずスタンドを選択するが、ほどなくオレイニクに背後から組みつかれ、テイクダウンを許してしまう。サイドから抑え込むオレイニク。グリーンもガードポジションに戻し、三角絞めで応戦する。しかし、グリーンはオレイニクの袈裟固めに捕まり、終盤にかけては完全制圧を許す。

 2R、巻き返したいグリーンは右エルボー、左ハイ、左アッパー、右フック、右ハイ、そして首相撲からの膝蹴り。ガス欠状態のオレイニクは全て被弾して足元がふらつく。それでも組みついてテイクダウンを成功させるオレイニク。グリーンは下からアームロックを狙う。これを防いだオレイニクはマウントに移行して腕十字をセット。グリーンは無念のタップとなった。

 ピンチを脱したオレイニクが一本勝ちで連敗脱出。グリーンは2連敗となった。


Main Card
▼バンタム級 5分3R
〇ブライアン・ケレハー(33=アメリカ)
一本 1R 2分49秒 ※ギロチンチョーク
×オデー・オズボーン(28=ジャマイカ)

 2連敗中のケレハーと4連勝でUFCデビューとなるオズボーンの一戦。当初はPrelim(プレリム)で組まれていた試合だが、クラウディア・ガデーリャ(ブラジル)vsアレクサ・グラッソ(メキシコ)のストロー級ワンマッチが中止となったことを受け、Main Card(メインカード)に昇格となっている。

 1R、オズボーンは蜘蛛のようにマットを這う動きからいきなり飛び上がってのスーパーマンパンチ。被弾したケレハーはいったん距離を取る。オズボーンはサウスポーに構えてワンツー。オーソドックスのケレハーはパンチをかわしながら前足への左ローを当て、開始1分が近づいた所でタックルからテイクダウンを決める。

 上からパンチを落とすケレハー。ガードポジションのオズボーンもエルボーで応戦する。ケレハーはオズボーンの片足をまたいでハーフマウントへ。オズボーンはここで立ち上がろうとするが、ケレハーのチョークに捕まり万事休す。ケレハーが渾身の力で絞め上げ、オズボーンをタップさせた。

 ケレハーが会心の一本勝ちで連敗脱出。オズボーンのUFCデビュー戦は黒星となった。


Main Card
▼ライト級 5分3R
×アンソニー・ペティス(32=アメリカ/同級11位)
一本 2R 1分46秒 ※リアネイキドチョーク
〇ディエゴ・フェレイラ(35=ブラジル)

 再起戦の元UFC世界ライト級王者ペティスに現在5連勝中のフェレイラが挑む一戦。ペティスは近年、勝ち負けが交互に繰り返しており、前戦は昨年8月の『UFC 241』で、3年ぶりに復帰してきたネイト・ディアス(アメリカ)に判定負けしている。

 1R、フェレイラは膝を上げ下げする動きを混ぜながら構えをスイッチし、パンチから積極的に間合いを縮めて組みにいく。サウスポーのペティスはケージ際を移動しながら右ジャブ、左右フック、左ハイを繰り出し、フェレイラがパンチを放つ前に巧く射程範囲から離れる。

 中盤過ぎにフェレイラがタックルから組みつき、ペティスの体勢が崩れた所でバックポジションへ。ペティスはフェレイラのチョークを防いで立ち上がる。しぶとく組みつくフェレイラ。ペティスは終了間際にもテクダウンを許す。

 2R、フェレイラが早々にペティスの右足を捕らえてテイクダウン。ペティスは倒れ際に背中を向けてしまい、再びフェレイラにバックポジションを許す。フェレイラはパンチを落としながらペティスをコントロールし、ほどなくチョークをセット。ペティスは苦痛の表情で無念のタップとなった。

 好調のフェレイラが元王者を相手に会心の一本勝ち。ペティスは苦しい2連敗となった。


Prelim
▼フェザー級 5分3R
×アンドレ・フィリ(アメリカ)
判定0-3 ※28-29、28-29、28-29
〇ソディック・ユサフ(ナイジェリア)

Prelim
▼フライ級 5分3R
×ティム・エリオット(アメリカ/同級7位)
判定0-3 ※28-29、27-30、27-30
〇アスカル・アスカロフ(ロシア/同級12位)

Prelim
▼ライト級 5分3R
〇ドリュー・ドーバー(アメリカ)
TKO 1R 1分10秒
×ナスラット・ハクパラスト(ドイツ)

Early Prelim
▼ライトヘビー級 5分3R
〇アレクサ・カムール(アメリカ)
判定3-0 ※29-28、30-27、30-27
×ジャスティン・レデット(アメリカ)

Early Prelim
▼女子フライ級 5分3R
〇サビーナ・マゾ(コロンビア)
判定2-1 ※29-28、29-28、28-29
×J.J.アルドリッチ(アメリカ)

Main Card
▼女子ストロー級 5分3R
-クラウディア・ガデーリャ(ブラジル)
試合中止
-アレクサ・グラッソ(メキシコ)
※ グラッソが女子ストロー級規定体重をオーバーしたため、NSAC規約により試合は中止に。