ネムコフ(右)の拳が唸り上げ、ベイダー(左)を追い込む Photos(C)Bellator MMA

 2020年8月21日(金・現地時間)、『Bellator 244』がアメリカ・コネチカット州アンカスビルのモヒガン・サン・アリーナで無観客開催されました。以下、試合レポート・結果です。

Main Event
▼Bellator MMA世界ライトヘビー級タイトルマッチ 5分5R
×ライアン・ベイダー(37=アメリカ/王者)
TKO 2R 3分02秒
○ワジム・ネムコフ(28=ロシア/挑戦者)
※ネムコフが新王座に就く。

同郷の先輩ヒョードル(左)とBellator代表のスコット・コーカー氏(右)から祝福を受けた新王者ネムコフ(中央)

 ベイダーは現在、ライトヘビー級とヘビー級のベルトを保持する二階級王者だが、ライトヘビー級で試合に出場するのは、実に2年9カ月ぶり。2017年11月の『Bellator 186』で、リントン・ヴァッセル(37=イングランド)の挑戦を2R・TKOで退け、同級王座の初防衛に成功して以来となる。

 キャリア通算戦績は27勝5敗1ノーコンテスト(12KO・TKO/3SUB)で、このうちUFC戦績が14勝5敗(7KO・TKO/1SUB)、Bellator戦績が5勝1ノーコンテスト(3KO・TKO/0SUB)だ。

 挑戦者のネムコフは伸び盛りの28歳。ここ3試合はフィル・デイヴィス(35=アメリカ)など元王者に連戦連勝し、文句無しで次期挑戦権を掴んでいる。

 キャリア通算戦績は11勝2敗(8KO・TKO/2SUB)で、このうちRIZIN戦績が2勝2敗(2KO・TKO/0SUB)、Bellator戦績が4戦全勝(2KO・TKO/1SUB)となる。

 1R、両者共にオーソドックスの構えで、ステップは軽快。ネムコフの繰り出す左ジャブと左フックに対し、ベイダーの返す右フックも鋭い。ネムコフはワンツーから左ハイを振り抜くなど、コンビネーション攻撃も見せて勢いづく。しかし残り時間1分に迫ったところで、ベテランのベイダーもタックルでテイクダウンに成功。互いに持ち味を見せる5分間となる。

 2R、パンチとステップを駆使した攻防が続く中、ネムコフの右ストレートがヒット。ベイダーが後退する。ネムコフは前手がアイポークとなってしまい、追撃は一時中断となったが、再開後も推進力は変わらず。ベイダーはキレが無くなり、左ジャブと右フックも空砲に。するとほどなく、ネムコフが左ジャブでベイダーを下がらせ、直後に見事な右ハイを炸裂させる。

 もろに喰らってしまったベイダーはダウン。ネムコフはすぐに鉄槌の集中砲火を浴びせる。なかなかレフェリーのストップがかからない中、ベイダーはなんとか立ち上がって逃れようとするが、背後からネムコフの左拳をもらって再びダウン。ここでレフェリーがようやく試合を止めた。

 ネムコフがTKO勝ちで王座奪取。ベイダーはBellatorで初黒星を喫すると共に王座陥落となった。

 試合後の勝利者インタビュー。ネムコフは「なかなかストップがかからず驚いたが、自分はやるべきことを続けた」とフィニッシュシーンを振り返り、「とても重要なベルトだ。UFCにも多くの選手がいるのは分かっているが、自分とベイダーがライトヘビー級のトップ2だと思っていた。そして今は自分が世界のベストだ」と初戴冠に胸を張る。

 セコンドに就いていたエメリヤーエンコ・ヒョードル(43=ロシア)は満面の笑みで祝福の拍手を贈った。

【関連記事】
二階級王者ベイダーが2年9カ月ぶりライトヘビー級防衛戦の計量パス、挑戦者ネムコフも準備万端
ヒョードル軍団筆頭ネムコフが元王者カルバーリョに一本勝ち


Preliminary Bout
▼175ポンド(79.38kg)契約 5分3R
○ヤロスラフ・アモソフ(26=ウクライナ)
TKO 1R 5分00秒 ※終了時点のドクターストップ
×マーク・レミンガー(27=アメリカ)

キャリア通算戦績を24戦全勝としたアモソフ(左)

 アモソフはキャリア通算戦績が23戦全勝(8KO・TKO/10SUB)で、このうちBellator戦績が4戦全勝(0KO・TKO/1SUB)という未だ無敗。前戦は今年2月の『Bellator 239』で、当時8勝1敗(6KO・TKO/0SUB)の好戦績を残していたレスリングの猛者エド・ルース(29=アメリカ)を相手に、死力を尽くした激闘を繰り広げ、判定勝ちを収めている。

 対するレミンガーは、キャリア通算戦績が11勝1敗(5KO・TKO/3SUB)の選手。前戦は今年7月の『Bellator 242』で、ジェイク・スミス(?=アメリカ)に2R・TKO勝ちし、新天地デビュー戦を飾っている。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。アモソフが長い腕からストレート系のパンチを伸ばすように打てば、レミンガーがそれを左右フックで迎え撃つ。この攻防が1分半ほど続いたところで、今度はアモソフが左右のパンチ連打で仕掛け、レミンガーにダメージを与える。

 ケージを背負ったレミンガーはタックルを仕掛けようとするも、既に足にきているか、そのまま崩れ落ちるように背をマットに着けてしまう。アモソフは押さえ込みながら肘と拳を振り落とし、レミンガーの顔面を血で赤く染める。なんとか生還したレミンガーであったが、左まぶたのカットが深い。

 すると2R開始前、レミンガーはドクターチェックで試合続行不能の判断に。アモソフが会心のTKO勝ちで全勝記録を「24」へと更新した。

【関連記事】
アモソフが熱戦制し破竹の23連勝


Co-Main Event
▼147ポンド(66.68kg)契約 5分3R
○ジュリア・バッド(37=カナダ)
判定3-0 ※30-26、30-27、30-27
×ジェシー・ミーレ(35=アメリカ)
※ミーレの体重超過により、試合はリミット145ポンド(65.77kg)の女子フェザー級から147ポンド(66.68kg)契約に変更して実施された。

ミーレ(左)をケージに押し込んで膝蹴りを入れるバッド(右)

 バッドはBellator MMA世界女子フェザー級王者として臨んだ今年1月の『Bellator 238』で、最強の挑戦者クリス・サイボーグ(35=ブラジル)に4R・TKO負けし、4度目の防衛ならず王座陥落。今大会で再起を図る。

 対するミーレは昨年10月の『Bellator 231』で、タリア・ノゲイラ(34=ブラジル)にスプリット判定勝ち。Bellator初陣を白星で飾っている。

 試合はミーレの体重超過により、リミット145ポンド(65.77kg)の女子フェザー級から147ポンド(66.68kg)契約に変更して実施された。

 1R、構えはバッドがオーソドックスで、ミーレがサウスポー。ミーレは右ジャブを細かく出し、右ストレートにも積極に繋げる。バッドは警戒しながら様子をうかがい、徐々にワンツーと右ストレートのカウンターで応戦開始。終盤にはバッドが組みつき、ミーレをケージに押し込みながら膝蹴りを突き刺す。ミーレはバッドに体勢を崩され、テイクダウンも許してしまう。

 2R、ミーレはステップを刻んで間合いを取りつつ、時おり前手のフックと左ストレートを当てにいく。バッドは右ミドルを返し、ミーレの仕掛けにはワンツーと右ストレートのカウンターで反応。終盤にまたもバッドが首相撲に持ち込んでミーレを崩し、テイクダウン後には強烈な拳と肘を落とすなどさらなる優勢を印象づける。

 3R、バッドはパンチの攻防の中で間合いを縮めると、早々にミーレの蹴り足を捕らえてテイクダウン。今度はバッドが肩固めを仕掛ける。ミーレは苦しそうな表情。バッドはマウントに移行してさらに絞め上げんとするが、汗で滑るのもあってか、極めることができない。それでもバッドは終始トップポジションをキープし、ミーレに反撃を許さず。バッドが判定3-0の完勝で再起戦を飾った。


Feature Bout
▼ヘビー級 5分3R
×ロイ・ネルソン(44=アメリカ)
判定0-3 ※27-30、27-30、27-30
○ワレンティン・モルダフスキー(28=ロシア)

接近戦でネルソン(左)を追い込むモルダフスキー(右)

 4連敗中の元UFCファイター・ネルソンに対し、4連勝中の元RIZINファイター・モルダフスキーがマッチアップした。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。ネルソンはケージ中央から左ジャブでプレッシャーをかけ、モルダフスキーが詰まったところでタックルを仕掛ける。モルダフスキーが素早く体勢を入れ替え、ネルソンがケージを背負う展開に。モルダフスキーは組みの攻防の中でスペースができるとパンチと膝蹴り。ネルソンはブロックを固めて凌ぐ時間が続く。

 2R、左ジャブの連打を繰り出すモルダフスキーに対し、ネルソンは渾身の右アッパーも空振り。モルダフスキーはネルソンを再びケージに押し込むと、タックルの動きも見せつつ拳と肘で削っていく。ネルソンも左フックと右アッパーを捻じ込もうとするが、モルダフスキーに密着されて思うように打たせてもらえない。

 3R、消耗が激しいネルソンは前に出るものの、モルダフスキーのフットワークになかなか追いつかない。モルダフスキーは左ジャブを当てては距離を取り、後半に入ると再び組みついてネルソンをケージに押し込む。ネルソンはなんとか振り払って連打をまとめんとする場面もあったが、最後まで打開ならず。

 モルダフスキーが手堅い試合運びの末に判定3-0でネルソンを下し、5連勝をマーク。一方のネルソンは苦しい5連敗となった。


Feature Bout
▼ミドル級 5分3R
○ジョン・ソルター(35=アメリカ)
一本 3R 3分11秒 ※肩固め
×アンドリュー・カペル(35=アメリカ)

一本勝ちで3連勝となったソルター(左)

 ソルターはBellator戦績が7勝1敗(1KO・TKO/5SUB)で、現在2連勝中。対するカペルは昨年11月の『Bellator 233』で、初参戦ながら“キング・モー”・ラワル(39=アメリカ)引退試合の相手を務め、1R・KO勝ちを収めている。

 1R、構えはソルターがオーソドックスで、カペルがサウスポー。ソルターが序盤から積極的にタックルを仕掛け、カペルに打たせる間もなくテイクダウンしてグラウンドへと持ち込む。カペルは残り時間1分半のところでソルターにマウントを許し、いったんは返そうとしたが、再び押さえ込まれてしまう。

 2R、ジリジリと間合い詰めてくるカペルに対し、左オーバーハンドを振るうソルター。カペルは再び接近を試みるが、またすぐにソルターのタックルに捕まる。ソルターはテイクダウンを決め、今度は難なくマウントに移行。カペルは返すことができず、ゴングが鳴るまでの3分近い時間をソルターにマウントでキープされる。

 3R、カペルは右ストレートと右ハイを繰り出すが、ソルターのタックルを警戒して踏み込めない。ソルターはすぐにタックルでテイクダウンを決めると、ここもマウントに移行して肩固めの体勢に。カペルは成す術無くタップアウトとなった。

 ソルターが一本勝ちで3連勝をマーク。カペルはBellator初黒星となった。


Preliminary Bout
▼ライト級 5分3R
×アダム・ピコロッティ(アメリカ)
判定1-2 ※28-29、29-28、28-29
○シドニー・アウトロー(アメリカ)

Preliminary Bout
▼バンタム級 5分3R
×エリック・ペレス(メキシコ)
判定0-3 ※27-30、28-29、27-30
○ジョシュア・ヒル(カナダ)

Preliminary Bout
▼フェザー級 5分3R
○ウェーバー・アルメイダ(ブラジル)
KO 1R 3分57秒
×サリーム・ムキディノフ(タジキスタン)

Preliminary Bout
▼150ポンド(68.04kg)契約 5分3R
×ヴラディスラブ・パルブチェンコ(ウクライナ)
判定0-3 ※28-29、27-30、28-29
○ジョン・デ・ヘスース(アメリカ)

Preliminary Bout
▼ライト級 5分3R
×ウラジミール・トコフ(ロシア)
判定1-2 ※28-29、29-28、28-29
○クリス・ゴンザレス(アメリカ)

Preliminary Bout
▼フェザー級 5分3R
○ルーカス・ブレナン(アメリカ)
TKO 2R 4分14秒
×ウィル・スミス(アメリカ)