▼コーメインイベント ヘビー級 3分3R
×モハメド・アブダラ(25=ドイツ/GLORY世界ヘビー級7位/117.8キロ)
判定1-4 ※28-29、29-28、27-30、27-30、27-30
○マイケル・スモリク(28=ドイツ/100.3キロ)

組まれる前にヒザ蹴りを入れるスモリク

 コーメインイベントは開催地ドイツ出身の選手たちによるヘビー級対決。GLORY世界ヘビー級7位アブダラとGLORY初参戦のスモリクが拳を交えた。

 両者はドイツで犬猿の仲として知られる関係。主に仕掛けているのはアブダラのようで、フィットネスインストラクターとしても活動しているスモリクのセミナーイベント中に突如乱入し、「お前のジムこそフェイクだ」とまくしたてたことも。以前に同門の選手がスモリクから挑発を受けたことに対し、根に持っていたという。

 アブダラはGLORY世界ヘビー級王者リコ・ヴァーホーヴェン(オランダ)のトレーニングパートナーとしても知られる選手で、戦績は通算で18勝(5KO)3敗、GLORYで2戦2敗。初参戦となった2017年5月の『GLORY 41: Holland』では、上位ランカーのディアンジェロ・マーシャル(キュラソー島)にKO負けし、2戦目の『GLORY 62: Rotterdam』では、タイトルコンテンダーのグト・イノセンテ(ブラジル)に判定負けとなり、いずれも強豪相手ではあったが、GLORYではまだ勝利を掴めていない。

 対するスモリクは戦績が通算で31勝(23KO)無敗。ドイツ最強のヘビー級選手との声もあがる選手だ。テコンドーをベースに持ち、2016年5月に他団体のリングで試合開始直後に旋風脚を決め、わずか3秒でKO勝ちしたことが大きな話題となった。これは同年の世界最速記録であったという。また、警官から俳優に転身し、さらにはキックボクサーと先述の通りフィットネスインストラクターの顔も持つという多才ぶり。この辺りもアブダラは気に食わないようだ。

 1R、グローブタッチ無しのバチバチモードで開戦。構えは両者ともにオーソドックス。スモリクがいきなりの飛びヒザ蹴りから着地と同時に右ハイ、転倒してもすぐに起き上がって右フックとヒザ蹴りを放つ。アブダラも右フックを振るいながら一気に間合いを詰め、スモリクをロープへと押し込む。

 以降もアブダラはハイガードで間合いを詰めながら左右フック。スモリクは足を使って距離を取り、アブダラが向かってくるとヒザ蹴りで迎え撃つ。しかし、すぐに両者はホールディングで膠着状態になるため、レフェリーが何度も引き離して口頭注意も与える。最初こそ盛り上がった観客からも徐々にブーイングが飛ぶ。

 2R、アブダラの戦法は変わらず。スモリクは横蹴りで突き放そうとしたり、距離を詰められる前になんとか右フックを当てようとしたりと試みるが、なかなか状況を打開できない。組み際に入るスモリクのヒザ蹴りが唯一の有効打か。観客のブーイングがさらに大きくなる。

 すると、ここでレフェリーが試合をいったん止め、「これはレスリングの試合ではない。キックボクシングの試合だ」と厳しく諭す。これには場内大歓声だ。しかし再開後も一度はパンチの攻防をみせたが、両者はまたすぐにホールディング状態になってしまう。場内からは大きなため息、そしてブーイング。

 3R、開始早々にクリンチしたアブダラをレフェリーが注意。それでも前進してくるアブダラに対し、スモリクは詰められる前にと、後ろ回し蹴りを一発当ててみせる。アブダラはようやく右ボディストレートから右フックを振るうが、今度はスモリクがクリンチ。その後も一発振るっては互いにヘッドロックしながらパンチをコツコツと打ち合うなど、両者の密着する展開は続いた。

 試合終了後、ご当地ファイターの予想を裏切る戦いぶりに、観客は大ブーイング。組まれる前になんとか前蹴りとヒザ蹴りを当てていたスモリクの判定勝ちが告げられると、ブーイングをかき消す歓声も上がった。

 マイクを向けられたスモリクは「相手が抱きついてくるから、なかなか蹴らせてもらえなかったが、とにかく勝ったんだ。試合に向けてハードなトレーニングを積んできた。アブダラには敬意を持っているし、試合に勝てたことを誇りに思う。アブダラとの戦争は終結したと宣言する」と話し、アブダラとハグする。

 続けてアブダラがコメントを開始すると、観客はさらに大きなブーイング。アブダラは思わず口をつぐんでしまったが、「大丈夫だよ。これはスポーツなんだ。落ち着いてくれ。俺たちはいがみ合ったが、今はお互いに敬意を持っている。スポーツらしくあるべきだと思っている」と言葉を絞り出した。


▼MAIN CARD ライトヘビー級 3分3R
○ルイス・タヴァレス(29=オランダ/GLORY世界ライトヘビー級3位)
判定5-0 ※30-27、30-27、30-27、30-27、30-27
×マイケル・ドゥート(29=オランダ/GLORY世界ライトヘビー級5位)

ガードの後ろ側からフックを入れるタヴァレス

 GLORY世界ライトヘビー級3位タヴァレスと同級5位ドゥートの重量級オランダ人対決。前日計量では一触即発の事態となったが、リング上での決戦の行方やいかに。

 タヴァレスはオランダ『Enfusion』のライトヘビー級王者として活躍後、『GLORY』と契約を結んだ。昨年12月の『GLORY 62: Rotterdam』でアルトゥール・ゴロフ(ラトビア)に判定勝ちし、白星デビューを飾ったが、今年6月の『GLORY 66: Paris』でフェリペ・ミケレッティ(ブラジル)に判定負けを喫している。戦績は通算で60勝(22KO・TKO)8敗。

 対するドゥートはGLORY初参戦が2013年3月の『GLORY 5: London』。今年3月の『GLORY 64: Strasbourg』で、タイトルコンテンダーのドネギ・アベナ(スリナム)に敗れるも、判定まで持つれ込む健闘をみせている。戦績は通算で43勝(20KO・TKO)11敗、GLORYで6勝(3KO・TKO)7敗だ。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。タヴァレスが右ローで先制し、ドゥートの右ストレートをブロックして左インローも蹴る。ドゥートが左ジャブを突くと、タヴァレスはサウスポーにスイッチ。タヴァレスはドゥートのワンツーを避けて、すぐにワンツーで伸びのある左ストレートをヒットさせる。さらにタヴァレスは右ジャブから左インロー。ドゥートもタヴァレスが同じ攻撃を再度狙ったところで、軸足に強烈な右ローを入れて転倒させる。

 タヴァレスはオーソドックスにスイッチし、ドゥートのワンツースリーをかわして左ボディ、そして右ローと左ミドル、さらにワンツーの右ストレートも腹に叩き込む。ドゥートも徐々に左右フックのカウンターで惜しい場面を作るが、タヴァレスは巧みに構えをスイッチし、サウスポーで左ミドルと左インロー、オーソドックスで右フックから左インロー、最後は飛びヒザ蹴りのコンビネーションをまとめた。

 2R、オーソドックスでスタートしたタヴァレスは左ジャブを連打で突き、一気に右ストレートで射抜く。ドゥートは左ショートフックのカウンターを合わせにいくが、タヴァレスは素早いウィービングでかわして右ローを返す。タヴァレスの反応とディフェンスが光る。

 しかし、パンチの切れでは引けを取らないドゥートも、中盤になって鋭い踏み込みのフェイントから左アッパー、タヴァレスの体が流れたところでガードの隙間から右アッパーをヒット。さらにタヴァレスが拳を振るわんと踏み込んだジャストのタイミングで、ドゥートは右ショートフックから返しの左フックを見事に決める。タヴァレスはダメージを受けて後退するが、ラッシュを仕掛けたドゥートにカウンターの左フックを叩き込み、追撃を食い止めた。

 3R、ドゥートはタヴァレスの左ボディストレートに左フック、左ジャブには右フックと、いずれもコンパクトなカウンターを狙うが、タイミングはやや遅れて空を切る。タヴァレスはドゥートが右へステップするのを逃さず、左ジャブを伸ばしてから右フックを強打。ドゥートが左ローを蹴れば、タヴァレスはすかさず右ボディを返す。

 両腕を上げて頭を覆うように守りを固めるドゥートに対し、タヴァレスの右フックはガードの後ろ側から巻き込むように決まり、空いた腹には左ボディ。ドゥートは顔が紅潮して手数が一気に落ちる。タヴァレスは無理な追撃には入らず、構えをスイッチしながらジャブ、ミドル、スーパーマンパンチ、バックハンドブローを牽制気味に放ち、試合終了を迎えた。

 タヴァレスは2Rにひやりとする場面もあったが、それ以外は試合を支配し、判定5-0でドゥートを撃破。試合後にはお互いの健闘を称え合った。


▼MAIN CARD ミドル級 3分3R
○ユースリー・ベルガロイ(27=チュニジア/GLORY世界ミドル級4位)
判定5-0 ※29-28、29-28、30-27、30-27、30-27
×アーリック・ボケメ(29=コンゴ)

バックハンドブローで強襲するベルガロイ

 ベルガロイは2017年4月の『GLORY 40: Copenhagen』で、現GLORY世界ミドル級王者&同ライトヘビー級暫定王者アレックス・ペレイラ(ブラジル)から判定勝ちしている実力者。その後、同年12月の『GLORY 49: Rotterdam』と昨年7月の『GLORY 55: New York』で二度、ペレイラのミドル級王座に挑戦したが、いずれもKO・TKOで敗れている。

 前戦は昨年10月の『GLORY 65: Utrecht』でドノヴァン・ウィッセ(フランス)に判定負けし、今大会で再起を目指す。戦績は通算で25勝(13KO)6敗、GLORYで6勝(3KO・TKO)3敗。対戦相手のボケメは戦績が通算で30勝(17KO)2敗という選手で、この試合がGLORYデビュー戦となる。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。ボケメは高めにガードを維持しながら気合いのかけ声とともに左右ローを蹴る。ベルガロイも左右ローを返し、相手の蹴り終わりを狙った右ローも当てていく。さらにクリンチからのヒザ蹴りも突き刺すベルガロイ。ボケメは体を揺さぶられる。終盤にはベルガロイが右フックをガードの上から強打し、スーパーマンパンチからの二段飛びヒザ蹴りも繰り出した。

 2R、気合いのかけ声を発しながら左右フックを振るうボケメ。ベルガロイはしっかりとブロックし、前蹴りからの右ハイをヒットさせる。ボケメは構わずクリンチに持ち込んでヒザ蹴り。体格も一回り大きいベルガロイに対し、ボケメは懐に潜り込んで左右フックを返さんとするが、クリーンヒットさせることができない。リーチで勝るベルガロイは遠間から前蹴り、右ロー、右ストレートを打ち、接近戦ではヒザ蹴りでボケメを巧く削っていく。終了間際にベルガロイのバックハンドブローも決まる。

 3R、ボケメが気合いの左右フックを叩き込み、特に左ショートフックは強烈。ベルガロイは打ち下ろしの左ジャブとヒザ蹴りで応戦する。アドレナリン全開で間合いを詰めていくボケメだが、たびたびバッティングを誘発し、レフェリーが警告。以降はベルガロイが左ジャブと右ストレートをテンポ良く突きながら左インローと右ミドルも混ぜ、丁寧に有効打を重ねた。ベルガロイが再起戦で満場一致の判定勝ち。ボケメも敗れはしたが、格上相手に健闘した。

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