マナート(右)はライトヘビー級に落として臨んだ試合で、マスロボエフ(左)の剛腕に屈した Photos(C)GLORY Sports International

 2020年2月29日(土・現地時間)『GLORY 75: Utrecht』が、オランダ・ユトレヒト州ユトレヒトのセントラル・スタジオスで開催されました。以下、前半戦(Super Fight Series)までの試合レポート・結果です。

Super Fight
▼ライトヘビー級 3分3R
○セルゲイ・マスロボエフ(32=リトアニア/同級10位)
TKO 1R 1分48秒
×ロエル・マナート(26=オランダ)

ガードを固めるマナート(右)に対し、フックで攻めるマスロボエフ(左)

 マナートは現K-1 WORLD GPヘビー級王者。GLORYでも現在2戦2勝と活躍中だ。直近の試合は昨年11月、日本でK-1タイトル初防衛戦を闘い、クリス・ブラッドフォード(オーストラリア)の挑戦を1RKO勝ちで退けている。GLORY参戦は、2018年12月の『GLORY 62: Rotterdam』でキリル・コルニーロフ(ロシア)に判定勝ちして以来、1年2カ月ぶり。今大会では一階級下のライトヘビー級で試合に臨む。

 対するマスロボエフは母国リトアニアが本拠地のKOK(King of Kings)でライトヘビー級王者に君臨。GLORY初参戦は昨年10月の『GLORY 69: Dusseldorf』で、当時57戦全勝(54KO・TKO)中だったバハラーム・ラジャブザデ(アゼルバイジャン)に判定勝ちしている。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。開始早々にマスロボエフはローブローを受けるが大事には至らず。再開後は左右フックで仕掛けようとするマスロボエフに対し、マナートが早めのクリンチで捕らえたり、左ミドルと左の前蹴りで食い止めたり、先手先手で対応する。

 試合が動いたのは1分過ぎ。マスロボエフに右フックを当てられたマナートが打ち合いに転じるも、これが裏目に。マナートはマスロボエフの右フックをカウンターでもらい、腹に膝蹴りも突き刺されてロープ際まで後退する。すぐにマスロボエフがパンチをまとめて追撃。マナートはしゃがみ込んでしまったところで、ダウンとなる。

 マナートは立ち上がるが、顎を痛めたのか、流血した口に手をやりながらセコンドの方を向く。再開されると、マスロボエフがすぐさまパンチを連打して迫り、マナートを再びダウンさせる。マナートはここも立ち上がったが、10カウント中にファイティングポーズを取ることはなかった。

 マスロボエフがTKOで試合を決め、GLORYデビュー2連勝をマーク。マナートはライトヘビー級に落として臨んだGLORY3戦目で初黒星を喫することとなった。

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Super Fight
▼女子スーパーバンタム級 3分3R
○アニッサ・メクセン(31=フランス/同級1位)
TKO 2R 3分00秒 ※棄権
×イ・ジウォン(22=韓国)

左ハイをヒットさせるメクセン(左)

 メクセンは前GLORY世界女子スーパーバンタム級王者。昨年11月の『GLORY 71: Chicago』で、ティファニー・ヴァン・スースト(アメリカ)に判定負けし、2度目の王座陥落を味わうこととなった。王座奪還を目指し、今大会で再始動となる。

 対するジウォンはGLORYデビュー2連敗中。2年半ぶりの出場となった昨年3月の『GLORY 64: Strasbourg』では、新星サラ・ムサダク(トルコ)に判定負けしている。

 アナウンスされた通算戦績は、メクセンが99勝5敗(32KO・TKO)で、ジウォンが25勝4敗(6KO・TKO)。メクセンは100勝達成なるか。

 1R、メクセンが左インローに繋げるコンビネーションでジウォンを凌駕。メクセンが見せたのは左右フックから左インロー、右ローと左インローの連続蹴り、左インローのみの連続蹴り、パンチをブロックして返す刀の左インロー、右から左への二段蹴りなどで、一発一発が速い。鞭のようにしなるメクセンのロー。ジウォンは蹴っても殴ってもメクセンに倍返される展開が続く。

 2R、ジウォンのローをバックステップでかわしながらローを返すメクセン。ジウォンがストレート系のパンチを連打すれば、メクセンも同じようにして拳を交錯させ、最後は左インローをしっかり蹴る。さらにメクセンの独壇場は続き、飛び上がっての右スーパーウーマンパンチから着地と同時に左インロー、左ミドルで相手を下がらせてから左インローなど、ジウォンの前足を削っていく。ジウォンは内股が腫れ上がり、時おりバランスを崩すように。

 すると3R開始前、ジウォンが左足の痛みを訴え棄権の意思表示。メクセンが圧巻のパフォーマンスでTKO勝ちし、再起戦を飾ると共に通算100勝を達成した。

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Super Fight
▼ライト級 3分3R
○ゲーリック・ビイェ(23=フランス)
判定5-0 ※29-27、30-26、30-26、30-26、30-26
×アルトゥール・サラディアク(28=ポーランド)

サラディアク(左)をダウンさせたビイェ(右)のハイキック

 ビイェは昨年10月の『GLORY 70: Lyon』でモハメド・ヘンドゥーフ(モロッコ)に判定負け。GLORY戦績は2勝2敗としている。

 対するサラディアクは昨年10月の『GLORY 69: Dusseldorf』でヴラッド・トゥイノフ(ロシア)に判定負け。GLORYデビュー戦を落としている。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。パンチをガンガン振るうサラディアクに対し、ビイェは固いブロックを築きながらワンツー、右ロー、左ボディ、膝蹴り、左アッパー、前蹴りをコンパクトかつ丁寧に返していく。終盤にはサラディアクがクリンチからの膝蹴りと右フックで仕掛けるが、ビイェに右フックのカウンターを叩き込まれて吹っ飛ぶ。

 2R、接近戦の中でビイェの左ボディ、ワンツー、膝蹴りが連続ヒット。ビイェはサラディアクの左フックをブロックすると、直後に左ジャブからの左ハイを綺麗に叩き込み、先制のダウンを奪う。立ち上がったサラディアクはビイェの猛攻にさらされ、ダウンこそまぬがれたがマットに両手が着いてしまう場面も。ビイェの右ローもサラディアクの前足を破壊する。

 3R、ビイェは左の拳から右ローに繋げる攻撃。サラディアクは前足を蹴られるたび体勢が崩れる。ビイェの左右アッパーと左ボディーもサラディアクのガードを突破。サラディアクもタフさを見せるが、持ち堪えるのが精一杯という状態だった。ビイェが大差の判定勝ちで、GLORY3勝目をあげている。


Super Fight
▼ライト級 3分3R
×モハメド・ヘンドゥーフ(29=モロッコ)
判定2-3 ※28-29、28-29、29-28、29-28、28-29
○ブルーノ・ガザーニ(34=ブラジル)

ガザーニ(左)が気迫の表情でローを蹴る

 ガザーニはHEATミドル級王者の実績を持ち、現在、GLORYデビュー2連勝中。セコンドにはK-1 WORLD GP覇者にして元GLORY世界ヘビー級王者のセーム・シュルト(オランダ)が就く。対するヘンドゥーフは今大会でGLORYデビュー2連勝を狙う。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。ガザーニがヘンドゥーフの蹴りをブロックしながら間合いを潰し、両拳と左膝をガツガツとぶつけていく。ガザーニの右ボディでヘンドゥーフの体が一瞬くの字に。ガザーニのプレッシャーに対し、ヘンドゥーフも至近距離から細かくパンチを散らすようになり、機を見て右ハイ、右オーバーハンド、左右ローへと繋げていく。 

 2R、パンチから左右ローを蹴る両者。熾烈なコンビネーションの応酬が続く。ほどなくすると、ヘンドゥーフが業を煮やしたかのように左右フックをフルスイング。ガザーニは下がることなく、ブロックを固めて押し返す。なおも一進一退の削り合い。終盤にはヘンドゥーフがガザーニの左フックをかわし、素早く背後に回り込んでラッシュ。ガザーニはヘンドゥーフの右ロー、左ミドル、左フックを被弾する。

 3R、ガザーニはガードを固めながら真っすぐ間合いを縮めて左右ローと膝蹴り。ヘンドゥーフはサッと回り込んでパンチの連射から左右ローを返す。被弾しても歯を食いしばりながら足を前へ運ぶガザーニ。ヘンドゥーフはコーナーに詰まったところでガザーニの二段飛び膝蹴りに脅かされる。やられたらやり返す構えのヘンドゥーフも止まることなく左右のパンチと蹴りを続行。前に出続けるガザーニと手数を重ねるヘンドゥーフ。両者譲らぬ激闘となった。

 結果は判定3-2でガザーニに軍配。ガザーニが苦しみながらも接戦をモノにし、GLORYデビュー3連勝を飾った。

 試合後、マイクを向けられたガザーニは「接戦だったが、判定は正しいと思う。圧力をかけ続けるのは作戦だった」と、シュルトの通訳を介して勝利を振り返っている。


Super Fight
▼フェザー級 3分3R
○ヴィンセント・フォシアーニ(31=ドイツ)
判定5-0 ※29-27、28-27、28-27、28-27、28-27
×ジン・シジュン(29=韓国)

シジュン(左)は1Rにダウンを奪うも、粘るフォシアーニ(右)に逆転を許した

 シジュンは韓国内でのタイトル獲得はもちろん、日本のリングにもたびたび上がり、いずれも敗れはしたが、日菜太、緑川創、ダニロ・ザノリニ(ブラジル)といった実力者達と拳を交えている。今大会でGLORYデビューを果たす。

 対するフォシアーニはこれがGLORY2戦目。2019年3月の『GLORY 64: Strasbourg』では、リヴァー・ダズ(オーストラリア)に判定負けし、初戦を落としている。

 1R、構えはシジュンがオーソドックス、フォシアーニがサウスポー。シジュンは打ち合いの中で左右ボディを効かせ、フォシアーニが下がり気味となったところへ中段前蹴りをジャストミートさせる。フォシアーニが悶絶ダウン。勝負あったかに思われたが、フォシアーニはなんとか立ち上がると、シジュンの追撃に苦しみながらも生還する。

 2R、下がることなく打ち合いにいくフォシアーニ。シジュンはパンチの交錯からもつれたところで、フォシアーニに膝蹴りで狙われて転倒し、これがダウンと判断される。勢いづいたフォシアーニはパンチと膝蹴りのコンボでたたみかけ、シジュンのバックハンドブローを潰して右ハイ。シジュンは左右フックを空振りして足がもつれるなど、疲労の色も浮かぶ。

 3R、シジュンの前進に対し、フォシアーニは素早く回り込んで右フックを強打。直後にフォシアーニがラッシュを仕掛け、左ハイ、右フック、右ロー、膝蹴りでシジュンにロープを背負わせる。シジュンの左右フックも依然として強烈だが、フォシアーニの勢いを食い止めることはできない。終盤にはフォシアーニの左ハイとカウンターの膝蹴りも決まった。

 結果は判定5-0でフォシアーニに軍配。フォシアーニが1Rの大ピンチを乗り越えて、逆転勝ちでGLORY初白星を掴んだ。一方、シジュンは好機に仕留め切ることができず、GLORYデビュー戦を落としている。


Under Card
▼女子スーパーバンタム級 3分3R
○ロレーナ・クライン(32=オランダ)
判定5-0 ※29-28、30-27、30-27、30-27、30-27
×アルミーラ・ティンチュリーナ(30=ロシア)

ロレーナ(右)渾身のスーパーウーマンパンチがヒット

 ロレーナは2012年から2013年にかけてシュートボクシングに参戦。RENAには敗れたものの、延長R判定にまでもつれ込む熱戦を演じている。2014年にはEnfusionでメロニー・ヘウヘス(オランダ)に判定勝ち。近年はリングを離れている時期もあったようだが、今大会でビッグステージ復帰となる。

 花道に姿を現したロレーナは勇ましい表情でタメにタメて、そこから一気に飛び込み前転でリングイン。ド派手な入場で闘志全開をアピールする。セコンドには猛獣メルヴィン・マヌーフ(オランダ)が就く。

 対戦相手のティンチュリーナはこれがプロデビュー戦だが、好戦的なロレーナを前にしても涼しい表情だ。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。ロレーナがいきなり右スーパーウーマンパンチで奇襲をかけ、クリンチに逃れんとしたティンチュリーナを突き倒す。左ジャブから右ローを繋ぐ長身のティンチュリーナに対し、ロレーナがパワフルなパンチを上下に打ち分けながら右ローも追加。ロレーナの右ボディも良く決まる。

 2R、ティンチュリーナがアグレッシブさを増し、鋭いワンツーを打ち下ろす。ロレーナは被弾して鼻血を流すが、右オーバーハンドで飛び込んだり、右ローを蹴ってすぐに距離を取ったりして応戦する。ティンチュリーナはワンツーに加え、カウンターの膝蹴りと前蹴り。ロレーナはややペースダウンして、体も紅潮してくる。

 3R、ストレート系のパンチと膝蹴りで迫るティンチュリーナ。ロレーナは気合いの声を張り上げながら右オーバーハンド、右ボディストレート、バックハンドブローから右フック、右フックから右ローをぶつけていく。ロレーナはティンチュリーナの顔面前蹴りを喰らう場面もあったが、手数を落とさず押し切った。

 結果はロレーナの判定勝ち。ティンチュリーナもプロデビュー戦ながら強敵相手に善戦した。

 試合後、マイクを向けられたロレーナは、「自分はこの舞台に相応しいのか、ここで勝つだけの力があるのか、自問自答していた」と涙に声を詰まらせたが、「前半は動きが硬くなってしまったけれど、3Rになってからは体も温まってきた。これからもっともっとパフォーマスを向上させていきたい」と最後は笑顔で飛躍を誓った。


Under Card
▼フェザー級 3分3R
×ボウイ・ゾンネフェルト(オランダ)
判定0-5 ※27-30、27-30、27-30、27-30、27-30
○アントニオ・カンポイ(スペイン)