GLORY世界フェザー級王者ペットパノムルン(左)が勢い良く、そして力強く、必殺の左ミドルを蹴る Photos(C)GLORY Sports International

 2020年2月29日(土・現地時間)『GLORY 75: Utrecht』が、オランダ・ユトレヒト州ユトレヒトのセントラル・スタジオスで開催されました。以下、後半戦(Featured Fight〜Headline Event)の試合レポート・結果です。

Headline Event
▼GLORY世界フェザー級タイトルマッチ 3分5R
○ペットパノムルン・キャットムーカオ(24=タイ/王者)
判定5-0 ※49-45、49-45、49-45、49-45、49-45
×セルゲイ・アダムチャック(30=ウクライナ/同級1位/挑戦者)
※ペットパノムルンが4度目の防衛に成功。

GLORY世界フェザー級王者ペットパノムルンが4度目の防衛を果たし、もはや敵無し状態となった 

 両者はこれが三度目の対戦。一度目は2017年3月の『GLORY 39: Brussels』で行われたコンテンダートーナメント、二度目は昨年2月の『GLORY 63: Houston』で行われたGLORY世界フェザー級タイトルマッチ(ペットパノムルンの初防衛戦)で、いずれもペットパノムルンが判定勝ちしている。

 ペットパノムルンはムエタイのトップ選手としてルンピニーやラジャダムナンで活躍し、2016年頃からGLORYを主戦場にキックボクサーとしての活動を開始。2018年9月の『GLORY 59: Amsterdam』で、暫定王者としてGLORY世界フェザー級王座統一戦へと臨み、正規王者ロビン・ファン・ロスマレン(オランダ)に判定勝ちを収め、王座統一を果たした。現在までに3度の防衛に成功。今大会で4度目の防衛を目指す。GLORY戦績は10勝1敗1分(2KO・TKO)。

 対するアダムチャックはGLORY参戦当初からフェザー級のタイトル戦線に絡む活躍を続け、一度ベルトを巻いたこともある選手だ。2015年11月の『GLORY 25: Milan』で当時の王者ゲイブリエル・ヴァーガ(カナダ)に判定勝ちし、初戴冠を果たしたが、2016年7月の『GLORY 32: Virginia』でヴァーガに判定負けでリベンジを許し、2度目の防衛戦で王座を失うことに。その後も戴冠こそ逃しているが、GLORYで二度のタイトルマッチを経験するなど、常にトップ戦線を走っている。GLORY戦績は12勝6敗(1KO・TKO)。

 1R、構えは両者共にサウスポー。ペットパノムルンが右ミドルと右の前蹴り、右ジャブからの左ローでアダムチャックを寄せつけまいとする。アダムチャックは距離を潰すも、パンチを打ち損じてクリンチ。ペットパノムルンは右ミドル、左ロー、左ミドルを単発で当て、アダムチャックの仕掛ける動きを察知すると、先手のクリンチで潰していく。

 2R、右ジャブから左ボディストレートを打ち下ろすペットパノムルン。アダムチャックは至近距離から拳と膝で迫るも、ペットパノムルンにクリンチで制される。間合いが開けば、ペットパノムルンが単発でも飛び上がって力一杯の左ミドルと左ハイ。アダムチャックは右ボディストレートを当てるが、すぐにペットパノムルンに左右ローを当て返される。ペットパノムルンはアダムチャックの右ジャブをブロックして、即座に左ミドルを追加した。

 3R、アダムチャックは右ジャブと左フックを打ち、接近してから膝蹴りも。ペットパノムルンはプッシュして左ミドルと右インローを返す。両者がクリンチ状態になるとレフェリーが解く。攻め手が無い様子のアダムチャック。ペットパノムルンは右ジャブの連打から左ロー、プッシュしてから左ロー、相手の左ミドルをキャッチしての左ミドル返しなど、有効打を稼いでいく。

 4R、ペットパノムルンが右ジャブの細かい連打から左ミドルと左ロー。両者が拳で押し合う状態になると、ペットパノムルンが左ローで寸断する。クリンチが増える両者。ブレイクからの再開後、アダムチャックは胴回し回転蹴りを繰り出すも空振りに終わる。終盤にペットパノムルンがアダムチャックの左ミドルをキャッチし、倒れ際には左ミドルを叩き込もうとするが、これは反則。ペットパノムルンは減点となる。

 5R、アダムチャックが左ハイから上段後ろ回し蹴りに繋げるも、ペットパノムルンには届かず。ペットパノムルンはクリンチから膝蹴りを連打する。ペットパノムルンの後頭部に拳を当ててしまうなど苛立ちが隠せないアダムチャック。パンチの交錯からクリンチとなる場面も多い。束の間、両者の間合いが開いている時には、ペットパノムルンが右ジャブから左ローと左ミドル、さらには踵落としと上段後ろ回し蹴りも狙い、アダムチャックを翻弄した。

 結果は判定5-0でペットパノムルンが完勝。返り討ちで4度目の王座防衛を果たしたペットパノムルンは、次なる標的について尋ねられ、「準備された相手であれば、誰とでも闘う」と返答。挑戦者も一巡し、もはや敵無し状態の感もあるが、今後、挑戦者として名乗りを上げ、絶対王者の牙城を崩す選手が現れるのか。今後の展開にも期待したい。

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Co-Headline Event
▼ミドル級 3分3R
○ユースリー・ベルガロイ(27=チュニジア/同級2位)
TKO 2R 1分02秒
×ヤコブ・シュトゥーベン(28=ドイツ/同級6位)

拳を振るいながら追いかけるベルガロイ(右)

 ベルガロイは2017年12月の『GLORY 49: Rotterdam』と2018年7月の『GLORY 55: New York』で二度、アレックス・ペレイラ(ブラジル)のGLORY世界ミドル級王座に挑戦しているが、一度目は3RTKO負け、二度目は1RKO負けに終わっている。ただ、2017年4月の『GLORY 40: Copenhagen』では、王者になる前のペレイラに判定勝ちしており、対ペレイラ戦1勝2敗という状況。実力もランキング通りトップレベルにある。

 対するシュトゥーベンはこれがGLORYデビュー3戦目。GLORY戦績は1勝1敗だ。前回の出場は昨年10月の『GLORY 69: Dusseldorf』で、ケヴィン・ヴァン・ヒークレン(オランダ)に判定勝ちし、GLORY初白星を掴んでいる。今大会では過去最強の敵に挑む。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。シュトゥーベンが左右フックの動きから中段後ろ回し蹴りを放つも、これは当たりが浅い。シュトゥーベンがロープ際で詰まっている間、ベルガロイは左ジャブ、左ロー、右ロー、右ストレートなど、単発の攻撃を一周させる。シュトゥーベンは左右ローと左ボディを返したが、ベルガロイの右フックで再びコーナーを背負う展開に。ベルガロイは右フック、右ボディ、右ストレート、右アッパー、膝蹴り、そして右ローでたたみかけ、シュトゥーベンをコーナーに釘付けとする。

 2R、シュトゥーベンは近づいてくるベルガロイに対し、左右ローとワンツーを返すも、ダメージを与えることはできず。直後にベルガロイがクリンチから顔面膝蹴り、右ストレート、右ボディ、左右アッパー、膝蹴り、左右ボディストレート、そしてとどめの右アッパーと右フック。ついにシュトゥーベンがダウンする。シュトゥーベンは立ち上がるが、眉間から鼻にかけてが裂けており、すぐにドクターストップ。ベルガロイのTKO勝ちが決まった。

 ランカー同士の対決とは言え、ベルガロイは圧倒的な差を見せての勝利。試合後、マイクを向けられたベルガロイは、「彼には全てをぶつけなければならなかった。タイトルマッチを要求したいからだ。ペレイラよ、もう一度闘って欲しい。皆はお前を恐れているようだが俺は違う。階級変えても追いかけるぜ」と、GLORY世界ミドル級・ライトヘビー級の同時二階級王者ペレイラに再戦を呼びかけた。


Featured Fight
▼ライト級 3分3R
○ティジャニ・ベズタティ(22=モロッコ/同級2位)
TKO 2R 3分00秒
×ミカエル・パランドレ(27=フランス/同級10位)

ローキックを蹴るベズタティ(左)。精度の高い攻撃を丁寧に当てていった

 ベズタティはGLORYライト級のホープで、そのルーツ、言動、ファイトスタイルからバダ・ハリ(モロッコ)と重ねられることも多く、“ワンダーボーイ”の異名を持つ。前回の出場は昨年10月の『GLORY 69: Dusseldorf』で、GLORY世界ライト級王者マラット・グレゴリアン(アルメニア)に挑むも、大差の判定負け。王座を取り逃がすのはこれが二度目だった。今回の試合で再起を図る。

 対するパランドレはGLORYデビュー3連勝で臨んだ昨年10月の『GLORY 70: Lyon』で、ブルーノ・ガザーニ(ブラジル)に判定負け。こちらも今回が再起戦となる。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。パランドレの左ミドルを受けて、ベズタティはすぐさま右ロー。今度はベズタティの左右ローを受けたパランドレが右ローを返す。ベズタティはローを蹴りつつ、時おり左ハイに切り替えたり、左ジャブ、ワンツー、左右フック、左フックから右ミドルなどを当てたり、有効打を重ねていく。

 2R、パランドレはベズタティにワンツーをかわされ、左ミドルもブロックされる。ベズタティは直後に左右フックを返し、そこから至近距離でワンツー、左右アッパー、右フックなどを散らし、パランドレのガードを突破。パランドレの左右ハイはベズタティにかわされてしまう。ベズタティはその後も左フックから右ローの対角線攻撃、単発の右ロー、右ストレート、左ボディ、右ローなどを丁寧に当てていく。

 3R開始前、パランドレは負傷が見られる左腕のドクターチェックを受け、試合続行は不可能の判断。ベズタティがTKO勝ちで再起を飾ることとなった。

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Featured Fight
▼ウェルター級 3分3R
×ハルート・グレゴリアン(30=アルメニア/同級2位)
判定0-5 ※28-29、28-29、27-30、27-30、27-30
○ジェイミー・ベイツ(30=イングランド/同級9位)

前王者ハルート(左)にパンチを当てるベイツ(右)

 ハルートは昨年3月の『GLORY 64: Strasbourg』で、セドリック・ドゥンベ(フランス)に2RTKO負けし、2度目の防衛戦でGLORY世界ウェルター級王座から陥落。今大会で約1年ぶりの再起戦に臨む。

 対するベイツはGLORY戦績が3勝1敗。これまでの対戦相手の顔ぶれから見ても、ハルートが過去最強の敵と言える。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。ハルートは両腕ガードを高めに保ちながら間合いを縮め左インローを蹴る。ベイツはロープ際を移動しながら左右の前蹴りを放ち、機を見てクリンチやパンチの連射。パンチで仕掛けたいハルートだが、ベイツが動き回ったりクリンチしたりするため、なかなか拳を届かせることができない。

 2R、開始早々にレフェリーから「ストップ」の声がかかったにもかかわらず、ハルートがワンツーを打ってしまい、右の拳を被弾したベイツはその場に倒れ込んでしまう。これはダウンとはみなされず、ベイツの回復を待って試合は再開。パンチを振るってプレッシャーをかけるハルートだが、ベイツはすぐにパンチを交錯させてクリンチ。ベイツはロープに近い位置からの前蹴り、ストレート系のパンチ、クリンチからの膝蹴りなどを狙い、ハルートに攻撃のかたちを作らせない。

 3R、一発当てんと向かってくるハルートに対し、ベイツはコーナーを背にしながら長い足を伸ばして寄せつけまいとする。ハルートが強引に右フックで割って入ろうとすれば、ベイツはすぐにクリンチ。ベイツは左ジャブの連打から踵落とし、さらに左ジャブから左の中段前蹴りで、ハルートに尻餅を着かせる。だが、これはダウンとはみなされず。以降もベイツがステップとクリンチを駆使し、ハルートに強打を当てさせなかった。

 結果は判定5-0でベイツに軍配。ベイツは2Rに予期せぬダメージも受けたが、自らのスタイルを貫いてハルートの良さを消すなど、過去最強の相手から価値ある勝利を掴んだ。