▼ONE MMA世界ライト級(77.1キロ)グランプリ 決勝戦 5分3R
○クリスチャン・リー(21=シンガポール)
判定3-0
×ザイード・フセイン・アサラナリエフ(24=トルコ)
※クリスチャンが優勝。

マウントからパンチを落とすクリスチャン

 ONE MMA世界ライト級グランプリの決勝。現ONE MMAライト級王者クリスチャンとフィニッシュ率100%戦士アサラナリエフのマッチアップだ。

 当初、アサラナリエフはもう一人のファイナリストであった元UFC世界ライト級王者エディ・アルバレス(アメリカ)と対戦することになっていたが、アルバレスは負傷によりトーナメントから離脱。今回のトーナメントにはエントリーされていなかったクリスチャンが、代役としていきなり決勝を戦うという急展開となった。

 クリスチャンはONE MMA世界女子アトム級王者アンジェラ・リーの弟。12勝3敗の戦績を持ち、今年5月には青木真也から2R51秒TKO勝ちでONE MMA世界ライト級王座を奪取し、初戴冠を果たした。過去には朴光哲、横田一則、徳留一樹といったベテラン王者たちからも勝利をあげている。

 対するアサラナリエフは現UFC世界ライト級王者ハビブ・ヌルマゴメドフと同じロシア連邦のダゲスタン共和国出身で、14歳の時にトルコに移住。戦績は8勝(6KO・TKO/2SUB)1敗で、反則負けの試合以外はすべてフィニッシュ勝利している。今回のトーナメントでは2月の1回戦でエブ・ティン(ニュージーランド)を25秒KO、5月の準決勝でアミール・カーン(シンガポール)を2分56秒KO。圧倒的な強さでここまで勝ち進んできた。

 1R、アサラナリエフが左ジャブからの右ローで先制。クリスチャンもすぐに左ジャブから右フックを狙って拳を振りかざすが、アサラナリエフに先に左フックを叩き込まれる。クリスチャンが構え直して打撃の間合いに入ると、アサラナリエフは前蹴りで弾き出し、戻ってくれば左フックで迎撃。今度は一気に飛び込んで右フックを振るうクリスチャン。アサラナリエフは一瞬にして組んで潰して投げて上を取る。

 足を抜いて立ち上がるクリスチャンに対し、アサラナリエフは顔面ヒザ蹴りを突き上げ、追いかけながらの右フック。クリスチャンは間一髪でかわす。以降もクリスチャンが右オーバーハンドで仕掛け、アサラナリエフが左右フックや右アッパーをまとめて返すスリリングな展開。中盤にクリスチャンはタックルから組んでの裏投げを豪快に決め、アサラナリエフをテイクダウンする。

 ここぞとばかりにパンチを落とすクリスチャン。アサラナリエフは下から腕十字を仕掛け、クリスチャンが振りほどいたところで立ち上がる。逃したくないクリスチャンはアサラナリエフの首に腕を回して顔面ヒザ蹴り。アサラナリエフはロックがほどいてクリスチャンの右フックをかわし、右フックをぶち込み返す。吹っ飛んだクリスチャンが立ち上がって離れようとすれば、アサラナリエフは追いかけて組みついて投げて、そしてテイクダウン。クリスチャンも決して譲らずすぐに立ち上がって組み合い、残り時間1分でテイクダウンからマウント奪取、そこからパンチを落としまくるという猛攻をみせた。

 2R、クリスチャンは早々にタックルからテイクダウンを決め、アサラナリエフが立ち上がると頭を押さえ込みながらのヒザ蹴り。アサラナリエフはこれをほどくと、距離を取ろうとするクリスチャンを追いかけながらの右フックで転倒させる。すかさずタックルから組みつくクリスチャン。アサラナリエフは投げを狙うが、クリスチャンも踏ん張ってテイクダウンを許さない。

 この攻防で消耗したアサラナリエフは肩で呼吸。クリスチャンは組んで振り回してアサラナリエフのスタミナをさらに削ると、左アッパー、右ミドル、顔面ヒザ蹴り、右フックを叩き込む。それでもアサラナリエフは突如生き返ったかのように右フックを返し、ここから組みの攻防に突入。互いにふらふらになりながら投げを踏ん張り合う展開となり、これを制したクリスチャンがアサラナリエフの背中をマットに着かせる。

 しばしの間、うつろな表情で天井に目をやるアサラナリエフであったが、マウントを取ったクリスチャンがパンチを落とし始めると、一瞬のブッリッジで脱出。クリスチャンは逃すまいと粘り強く組みつき続け、再びテイクダウンから今度は難なくマウント奪取に成功する。双方もはや満身創痍。クリスチャンはパンチとエルボーを落とすが、力が入らなくなって前に打っ伏す場面も。

 3R、クリスチャンのグローブッタッチにアサラナリエフが応じて開始。クリスチャンは早々に右ストレートを入れてタックル。アサラナリエフも腰を落としてテイクダウンさせない。肩で呼吸しながら左ジャブを突き合う両者。アサラナリエフは再びタックルと組みを捌ききると、クリスチャンにケージを背負わせて右フックと右アッパーの連打を叩き込む。

 それでもクリスチャンは切られても切られてもタックルを仕掛け続け、ついにテイクダウンに成功。消耗が激しいアサラナリエフは難なくマウントを許してパンチとエルボーを落とされ、ブリッジからの脱出にも失敗すると亀の状態になってしまう。クリスチャンは馬乗りになって相手の側頭部にパンチ。アサラナリエフは出血したか、マットが血に染まっていく。試合はこのまま終了となった。

 勝敗の行方は判定に委ねられ、満場一致でクリスチャンに軍配。緊急エントリーの現王者がグランプリ優勝を果たすこととなった。


▼MMA フライ級(61.2キロ) 5分3R
○若松佑弥(24==日本)
判定3-0
×キム・デファン(32=韓国)

右腕を痛めた若松は左の拳で勝負した

 ONEフライ級の日韓対決。若松は今年3月のONEライト級ワールドグランプリ・1回戦で、元UFC世界同級王者デメトリアス・ジョンソン(アメリカ)に2R一本負けを喫したが、持ち前の強打で世界トップの相手に迫る場面を作るなど善戦してその名を上げた。8月の再起戦では、後のONE世界同級王者ジェヘ・ユスターキオ(フィリピン)を1R1分59秒でKOし、ONE3戦目で初勝利をあげている。戦績は11勝(10KO・TKO)4敗。

 対するデファンは、2014年5月にビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル)のONE世界バンタム級王座に挑戦したこともある実力者。当時は無敗だったが、ビビアーノに2R1分16秒で一本負けし、キャリア12戦目にして初黒星となった。また、その前の試合では元ONE世界同級王者ケヴィン・ベリンゴン(フィリピン)に1R4分39秒で一本勝ちしている。近年は勝ち負けを繰り返しており、今年8月の前戦ではユサップ・サーデュラエフ(ロシア)に判定負け。戦績を15勝(4KO・TKO/6SUB)6敗1分としている。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。フェイントとステップで探り合う展開からデファンが右ローを蹴ると、若松もかわして右フックをフルスイングする。若松はケージ中央から細かく出入りするステップを刻んで接近し、右ローを空振りさせたデファンに右アッパーからの左フック。デファンもこの一瞬の間に右ショートフックを当てる。

 なおも打つ気満々で迫る若松が深く踏み込んで左ジャブを突けば、デファンは右ミドルを合わせて応戦。緊迫感のある雰囲気の中、両者はやや見合う時間が長くなり、レフェリーが注意で積極性を促す。残り1分のところでデファンがタックルを仕掛け、後ろへ下がる若松を追いかけながら右フックをヒットさせる。若松は右方向へサークリングしながら終了を待った。

 2R、再び探り合う展開が続く中、若松の左ローとデファンの右ローが交錯。デファンが徐々に間合いを詰めるようになると、若松は左ジャブと左フックで迎え撃たんとする。しかし、コンタクトは少ない状況。若松は右がなかなか出ない。レフェリーが再び積極性を促す注意を与える。左右フックで間合いを潰し始めたデファンに対し、若松は左ローと左ジャブ。デファンはタックルも仕掛けるが、若松は一気に後ろへ下がって取らせない。

 残り1分を切ったところで、デファンがついにタックルから組みつくことに成功し、若松の体を振り回しながら背後に回り込む。若松は上から潰されて一瞬寝かされるものの、すぐに抜け出して組み返す。しかし、粘り強いデファンは若松の片足を掴んで高く持ち上げると、右フックを入れてテイクダウン。デファンは鉄槌とフェイスロックで攻めの印象を残した。

 3R、若松はサークリングと出入りしながら左ジャブを当てていき、デファンが詰めてくると左右フックの連打で迎え撃つ。若松のカウンタータックルもたびたび決まるようになり、デファンが尻餅を着く場面も。若松はグラウンドの勝負には入らずスタンドを選択し、ヒットアンドアウェイで左ジャブを突いていく。

 だが、残り2分でデファンが若松をつかまえ、タックルでテイクダウン、そしてマウント奪取からエルボーの連打。若松はブリッジから下を向くが、デファンは裸絞めの体勢に持ち込んで逃さない。それでも若松は残り30秒で一気に体を捻って立ち上がり、デファンを前方に落とすことに成功。若松は立ち上がったデファンのガードの上から右ハイを叩き込むが、それ以上の攻撃を出せずにタイムアップを迎えた。

 試合を通じてヒットアンドアウェイで左ジャブを当てた若松。後半戦のグラウンドで好機を作ったデファン。判定は若松に軍配が上がった。

 試合後、マイクを向けられた若松は「今日は台風の中、会場まで足を運んで下さってありがとうございました。KOできなかったけど、勝てて良かったです。本当はKOしたかったんですが、1Rでたぶん右手が折れてたので、左で作って何が何でも勝とうと思いました」と、試合中に右腕を負傷していたことを明かした。

 そのうえで、「やっぱり総合格闘技は打撃だけではなく、もっと組み技も織り混ぜてオールラウンドで戦えないと駄目だと思います。でも僕なんか全然特別な人間じゃないんですけど、こうやって世界の舞台で戦えているということをみんなに見てもらって、勇気を与えられたら良いと思います」と、反省も含めて今後の目標を述べた。


▼ムエタイ ストロー級(56.7キロ) 3分3R
○サムエー・ガイヤーンハーダオ(36=タイ)
KO 2R 1分20秒
×ダレン・ローラン(21=フランス)

左ストレートを振り抜くサムエー

 サムエーは元ルンピニースタジアム認定スーパーバンタム級・フライ級・フェザー級の三階級王者で、左ミドルの達人として知られる。対するローランはWBCムエタイ世界フェザー級王者の実績を持つ。

 アナウンスされた戦績はサムエーが366勝7敗、ローランが36勝5敗。キャリアではかなりの差があるが、サムエーは今年5月にONEムエタイ世界フライ級王座の初防衛戦で、22歳の新鋭ジョナサン・ハガティ(イギリス)に2度のダウンを奪われ、まさかの判定負けで王座から陥落しており、ハガティ世代のローランもアップセットを狙っている。

 1R、構えはサムエーがサウスポーで、ローランがオーソドックス。ローランは左ジャブを細かく突き、サムエーの左ローをカットして即座に右ローを蹴り返す。続けてローランは左右のヒザを上げるフェイントから前蹴り。サムエーは様子をうかがっていたが、ローランが再び同じフェイントをみせると、前蹴りがくる前に左ストレートを振り抜く。ローランはバランスを崩して両手がマットに着くが、これはダウンとみなされない。

 ステップを刻みながら動き回るようになったローランは、右ミドルと右インローを当て、さらに飛び上がっての二段蹴りを豪快に放つが、これは大きく空振りして落下。サムエーもローランの右ミドルをキャッチして軸足払いを返す。なおも蹴りをうるさく散らすローラン。サムエーはブロッキングとカットしながら虎視眈々と左ストレートで顔面を狙っていたが、終了間際に左ミドルを蹴ったところでローランが巻き込むように打った右フックを被弾。サムエーは片ヒザががくっと落ちてマットに着くが、これもダウンとはみなされない。ローランの追撃のヒジも浴びたサムエーは、ゴングに救われるかたちとなった。

 2R、サムエーは左インローを当てるが、2発目を狙ったところで、ローランに右ストレートを合わされる。それでもサムエーは左ミドルと左インローをガンガン蹴っていく。ローランは徐々に下がる場面が出始め、強引に振り抜いたワンツーも不発に終わる。そしてこの直後、首相撲に持ち込もうとしか、ローランが不用意に両手を前に掲げたところを逃さず、サムエーは電光石火の左ショートフック。ダウンしたローランは意識こそあるが、戦意を喪失した様子でマットに大の字となったまま10カウントを聞いた。

 危ない場面があったはものの、サムエーが要所で相手の隙を逃さず、KO勝ちで再起戦を飾った。

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