▼MMA ヘビー級(120.2キロ) 5分3R
×マウロ・チリリ(36=イタリア)
判定0-3
○アルジャン・ブラー(33=インド)

ガードの間を左ジャブで狙うブラー

 チリリは昨年11月のONEデビュー戦で、いきなりブランドン・ヴェラ(フィリピン)のONE世界ヘビー級王座に挑戦したが、わずか1分04秒でKO負け。今年5月の再起戦では、アラン・ンガラニ(カメルーン)に2分30秒でTKO勝ちしており、今大会で連勝を狙う。戦績は13勝(6KO・TKO/3SUB)3敗。

 ブラーはインド系カナダ人として初めて五輪に出場したという経歴の持ち主。2012年8月のロンドン五輪では、レスリング・フリースタイル120キロ級の代表だった。その後、MMAに転向し、2014年11月にプロデビュー。2017年9月からはUFCに参戦し、3勝1敗と勝ち越していたが、ONEを次なる活躍の場に選択した。戦績は10勝(3KO・TKO)1敗で、これが新天地デビュー戦となる。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。互いに前傾姿勢で細かく上体と拳を動かしながら打撃戦へ向かう気満々。早速、ブラーの左ジャブとチリリの左ジャブ、ブラーの右フックとチリリの左フックがぶつかり合う。ケージ中央から積極的にプレッシャーをかけるのはチリリ。ブラーはケージ際を右方向へサークリングしていく。

 チリリは追いかけながら右ローと左ジャブを連続ヒット。ブラーもワンツー2連打からタックルのフェイントをみせる。互いに両手を前に掲げて触り合う状態から、ブラーは急に上体を下げて足を掴みにいくが、チリリは腰を引いて対処すると今度は首相撲の体勢へ。ブラーはチリリの腕を振り払ってプッシュするが、直後に右フックを叩き込まれてぐらつく。

 そこまでダメージは大きくなかったか、ブラーはすぐに左ジャブからの右フック、左ボディからの右オーバーハンド、さらに左手クリンチからの右アッパーなどを返していく。チリリも下がらず左右フック。ブラーは左ジャブが当たり始めるが、チリリの右ローを嫌がる場面も。

 2R、ブラーは上体を下げてタックルに入るとみせかけ、チリリが腰を引かんとしたところへ右フック。チリリの右ローとワンツーはブラーにバックステップでかわされてしまう。接近戦の中で両者が前手を出したところで、チリリの指先がブラーの目に入るアイポーク。ブラーのダメージ回復を待って試合は再開される。

 ブラーが左ジャブからの右アッパー、左ボディからの右フックを入れれば、チリリは左フックから首相撲にとらえてヒザ蹴り、そして離れ際に右フックを返す。ブラーはタックルで片足をとらえるが、チリリは腰が強く倒れない。今度はチリリが左フック2連打から右ロー、首相撲からのヒザ蹴りも腹に突き刺す。ブラーも左手クリンチから右アッパー、左ジャブの連続突きで、チリリの目元と鼻から出血させる。

 3R、ブラーは左ジャブをさらに突き、右アッパーも振るう。チリリは左右フックで前に出るが、ブラーはバックステップ、ブロッキング、ウィービングでかわすか芯を外させるかで対処し、時おり左手クリンチからの右アッパーを返していく。出血が多くなってきたチリリは振り回すパンチの一辺倒になり、ブラーに決定打を与えることができず、試合終了を迎えた。

 ブラーが満場一致の判定勝ちでONE初戦をモノにしている。


▼MMA 女子アトム級(52.2キロ) 5分3R
○V.V Mei[山口芽生](36=日本)
判定3-0
×ジェニー・ファン(28=台湾)

マウントからパンチを落とすMei

 Meiは元DEEP JEWELSアトム級王者のベテラン。これまでに二度、アンジェラ・リー(シンガポール)とONE MMA世界女子同級王座を争い、いずれも敗れはしたが判定までもつれ込む熱戦だった。現在4連勝中と好調。今回対戦するファンとは2017年6月に一度対戦しており、その時は1Rにリアネイキドチョークを極めて一本勝ちしている。

 1R、構えは両者ともにオーソドックス。ファンはジリジリと間合いを縮めていき、右ローで先制。ファンの構えとその拳の揺らし方から、今にもパンチを振るわんとせんばかりの姿勢がうかがえる。距離が狭まったところで、Meiは早くもタックル。ファンは腰を落として対処し、Meiの離れ際を顔面ヒザ蹴りで狙う。

 サウスポーにスイッチしたファンはジリジリと前進し、Meiが距離を保ちながらケージ際を右方向へ移動すると、追いかけながら左ジャブとワンツー。Meiも時おり右ストレートを単発で返す。ファンはオーソドックスに戻して右ロー、そしてもう一度右ロー。これを待ち構えていたMeiは相手の蹴り足をすかさず左手でキャッチし、ファンがバランスを崩したところで背中に飛び乗りバックチョークの体勢を取る。

 体を捻ってなんとか正対せんするファン。Meiはすかさずマウントに移行してパンチを落とすが、ファンもブリッジから片足を抜いてハーフガードに戻す。なおも押さえ込むのはMei。ファンがクローズドガードになれば、Meiは中腰の体勢を取ってパウンドと鉄槌を届かせていく。強気なファンも下からパンチを返して攻める姿勢をみせた。

 2R、ファンの右カーフキックがたびたび快音を鳴らし、Meiの体が流れる場面も。Meiは左ミドルから右フックを繰り出し、ファンが打ち合おうと踏み込んだところで巧くタックル。テイクダウンされたファンはクローズドガードを取り、Meiが一瞬上体を起こしたところで腰辺りを足で押して立ち上がる。

 再び打撃戦。ファンの右カーフキックでMeiは足をかばう動き。ファンは左ミドルも蹴るが、Meiはここで蹴り足キャッチからテイクダウン、パウンドを落とすところまで持ち込む。しかしこれまでと同様、ファンはクローズドガードからMeiが上体を起こしたところで立ち上がる。おっしてファンは右カーフキック2連打。Meiはバチッという炸裂音とともに体勢が崩れ、片ヒザがマットに着いてしまう。ファンはMeiの組みも捌いてゴングを待った。

 3R、Meiはパンチの打ち合いを仕掛けるが、離れ際にファンの右フックを被弾。Meiはタックルもカットされる。ファンはMeiの右フックを空振りさせて右カーフキック、さらにワンツーも追加。苦戦が続くMeiだが、次にファンが右カーフキックを繰り出したところで、ようやくキャッチしてテイクダウンに成功する。

 サイドをキープしながら鉄槌と顔面ヒザ蹴りを入れるMei。ファンも常に動きを止めず、Meiの押さえ込みみが甘くなったところで立ち上がる。Meiは残り時間わずかの打撃戦でもテイクダウンを狙ってタックルを仕掛けた。

 ファンのカーフキックと立て直しの早さに苦戦を強いられたが、Meiが前半にマウントからパンチを落とす展開、そして試合を通じてテイクダウンからグラウンドで打撃を入れるかたちまでは作り、満場一致で判定勝ちとなった。

 マイクを向けられたMeiは、「今日お越しいただいたみなさん、ありがとうございました。判定ではなく一本でフィニッシュしたかったんですが、力が及ばずすみません。ただ、勝ったことでチャトリ(・シットヨートンONE会長兼CEO)さんにお願いがあります。アトム級のタイトルに挑戦させて下さい」と3度目のタイトルマッチをアピールした。