2019年12月7日(土・現地時間)中国・深セン市の南山文体中心で『GLORY 73: Shenzhen』が開催されました。以下に試合レポート・結果を綴ります。

Photos(C) GLORY Sports International

Headline Event
▼GLORY世界ライト級タイトルマッチ 3分5R
○マラット・グレゴリアン(28=アルメニア/王者)
KO 5R 2分03秒
×エルヴィス・ガシ(26=アメリカ/同級3位/挑戦者)
※グレゴリアンが2度目の防衛に成功。

ガシをパンチで追い込むグレゴリアン

 グレゴリアンは今年5月の『GLORY 65: Utrecht』でシッティチャイ・シッソンピーノン(タイ)に判定勝ちし、念願のGLORY世界ライト級王座を初戴冠。シッティチャイを破ったのは5度目の対戦にして初だった。10月の『GLORY 69: Dusseldorf』では、新星ティジャニ・ベズタティ(モロッコ)の挑戦を判定勝ちで退け、初防衛に成功。通算戦績を62勝11敗1分1ノーコンテスト(35KO・TKO)としている。

 対するガシは23戦全勝(11KO・TKO)の通算戦績を持つ無敗の挑戦者。GLORYでは5試合を戦い、初陣となった2017年7月の『GLORY 43: New York』でジョシュ・ジョンシー(カナダ)を2RKO、今年7月の『GLORY 67: Orlando』でジャスティン・ホウトン(アメリカ)を1R23秒KOに下している。GLORY6戦目でのタイトル初挑戦だ。

 1R、構えはグレゴリアンがオーソドックス、ガシがサウスポー。ロープ際を右方向に移動しながら右ジャブと左ローを繰り出すガシに対し、リング中央から左フックのカウンターを狙うグレゴリアン。ガシは徐々にコンビネーションで仕掛け、細かい右ジャブから左ストレートと左ミドルに繋げる。

 グレゴリアンは固いブロックを築きつつ、左フックから右ロー、右ストレートから左ローといった対角線コンビネーション、左ローから右の拳でフェイントを入れての右ハイ、ワンツーから右ローなど散らす攻撃。ガシの左右ボディーとヒザ蹴りも強烈だ。一進一退の攻防となった。

 2R、ガシがパンチの6連打から左ハイ。グレゴリアンはブロックを固める。パンチに角度をつけてこじ開けんとするガシ。グレゴリアンがノーモーションの左ジャブと右ストレートのカウンターで応戦する。

 グレゴリアンは自ら仕掛ける時にはコンビネーションを散らしつつ、奥足に右ローを巧く効かせていく。ガシも要所要所で左フックを当て、終盤にダブルの右ジャブから左ストレートへと繋げる連打で、グレゴリアンを仰け反らせてみせた。

 3R、開始早々に荒々しいパンチの連打で迫るグレゴリアン。ガシもパンチをまとめて返さんとするが、グレゴリアンにカウンターの右ストレートと右ローで寸断される。

 グレゴリアンは左フックから右ローや右ハイに繋げる対角線攻撃。ガシはグレゴリアンの右ローで体が流れ始める。ガシのテンカオもなかなか当たらなくなった。

 4R、ガシはパンチの連打から左右ローを蹴るが、いったんグレゴリアンにパンチを振るわれると守りを強いられる。さらにグレゴリアンの右ローも完全に効いたようで、ガシは左足を上げたままになる場面も。グレゴリアンはすかさず足払いを決める。

 グレゴリアンの右フックと左ボディ、ヒザ蹴りと打ち下ろしの右ストレートのコンボもヒット。ガシはグレゴリアンの強烈な右ボディストレートも被弾し、終盤にはロープを背負う苦しい展開が続いた。

 5R、ガシは残った力を振り絞るようにパンチの連打と左ロー。グレゴリアンはコンビネーションを散らしながらの右ローですぐに跳ね返す。

 再びロープを背負わされたガシはなんとかクリンチ。残り時間1分を切ったところでガシはロープ際から左フックを繰り出すが、グレゴリアンにカウンターの右オーバーハンドと左フックを叩き込まれてマットに崩れ落ちた。

 グレゴリアンがKO勝ちで2度目の防衛に成功。ガシは24戦目で初黒星となった。

 グレゴリアンは「良い試合だった。リングが少しスリッピーなのもあって、あまり良いパフォーマンスを見せることができなかったが、KO勝ちという結果には満足している」と試合を振り返り、さらなる防衛を誓った。

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Co-Headline Event
▼GLORYフェザー級アジアトーナメント 決勝 3分3R
○リヴァー・ダズ(26=オーストラリア)
判定3-2 ※29-28、28-29、29-28、28-29、29-28
×マァン・ガオファン[Goafeng Meng](22=中国)
※ダズがトーナメント優勝。

ダズが無敗のままトーナメント優勝

 4選手出場のもと開催されたGLORYフェザー級1dayアジアトーナメント。決勝はフィリピン系オーストラリア人のダズと地元中国のガオファンのマッチアップとなる。

 ダズは“フィリピーノ・フラッシュ”の異名を持ち、フー・ビンチィェン(21=中国)とのハイスピードバトルを判定で制しての勝ち上がり。通算戦績を27勝1分(6KO・TKO)としている。

 一方、ガオファンは久保政哉(26)から2度のダウンを奪い、大差の判定勝ちで決勝進出。通算戦績は29勝4敗(16KO・TKO)となっている。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。リング中央からワンツーを飛ばすガオファンに対し、ダズはロープ際を右方向へ移動しながらカウンターを狙う。ガオファンは右ハイで惜しい場面を作り、直後にややもたついたダズをクリンチに捕らえてヒザ蹴りを突き刺す。

 ダズは負けじと左右フックを当てにいくが、ガオファンの上段回し蹴りをもらって後退。ダズのダメージはそこまで大きくなさそうだが、以降はガオファンが久保戦に続きパンチのコンビネーションで攻勢を強めた。

 2R、前蹴りと上段回し蹴りを飛ばすガオファン。ダズは怯むことなくパンチの打ち合いを挑み、拳の交錯後には左右ローを蹴っていく。際どい展開でも臆することなく仕掛け続けるダズだが、時おりガオファンの一撃をもらって動きが止まる場面も。

 徐々に疲労の色も濃くなる両者。ダズがワンツーから左右ローに繋げれば、ガオファンも右ストレートからの左フックで応戦する。しかし、先にスタミナ切れとなってしまったガオファンは、ダズが追いかけながら繰り出す右ストレートと前蹴りを喰らうことになった。

 3R、ガオファンはダズの左ローをかわすと、すかさずその蹴り足の腿裏に右ロー。ダズもパンチの打ち合いに誘い、乗ってきたガオファンの打ち終わりを狙って右ローを蹴る。動きが雑になり空振りも増え始めたガオファン。ダズはワンツーからの右ローで攻め続ける。

 ガオファンは歯を食いしばりながら右ロー、右ミドル、ヒザ蹴り。ダズは構わず間合いを潰し続け、終盤にかけてはブレイクされてもしぶとくクリンチからのヒザ蹴りを突き刺した。

 両者が死力を尽くした熱戦は判定3-2のスプリットでダズに軍配。ダズはGLORYの4人制トーナメント優勝者の称号「ラモン・デッカーズ・メモリアル・トロフィー」を受け取ると、喜びの声を上げながら子どものように飛び跳ねる。

 その後、マイクを向けられたダズは「トップ10、トップ5と戦いたいんだ。次はそういう相手と試合させてほしい」と、次戦に向けてアピールした。


Featured Fight
▼ライト級 3分3R
○ジョシュ・ジョンシー(26=カナダ/同級4位)
判定4-1 ※29-28、27-30、29-28、29-28、29-28
×ストヤン・コプリフレンスキー(25=ブルガリア/同級5位)

ランカー同士の再戦を制したジョンシー

 ライト級の実力者同士の1年9カ月ぶりとなる再戦。初対決は昨年3月の『GLORY 52: Los Angeles』で、その時は判定3-2でジョンシーが勝利している。

 通算戦績はジョンシーが30勝10敗(15KO・TKO)、コプリフレンスキーが11勝3敗(5KO・TKO)。タイトル挑戦経験もあるジョンシーに対し、コプリフレンスキーはリベンジなるか。

 1R、構えは両者共にオーソドックス。コプリフレンスキーは鋭いパンチのコンビネーションで圧力をかけながら右ローや前蹴りを混ぜる攻め。ジョンシーはガードとステップで守りを固めながら左右ローや右ミドルを返す。

 コプリフレンスキーはバックハンドブローをかわされるとすかさず右ミドル。コプリフレンスキーの切り替えとジョンシーの反応の速さに会場はどよめく。コプリフレンスキーはヒザ蹴りを突き上げるタイミングも絶妙だ。

 2R、コプリフレンスキーはなおも強烈なパンチの連打で仕掛け、左ミドルや右ローにも繋げるが、ジョンシーのディフェンスは崩れない。ジョンシーは単発の左フック、左ミドル、左ロー、右ストレートを素早く当てては、またブロックを固める。

 ジョンシーの左インローに足をもっていかれるコプリフレンスキー。パンチの攻防ではコプリフレンスキーの左ボディが強烈だが、ジョンシーも打ち終わりに右フックをヒットさせる。コプリフレンスキーは左ハイを被弾して腰が落ちる際どい場面もあった。

 3R、ジョンシーがコプリフレンスキーの踏み込みに合わせて左右ロー。コプリフレンスキーはパンチの圧力を落とさず、ジョンシーの左ハイをかわして即座に右ローを返すなど譲らぬ構えだが、相手の攻撃をブロックした際に転倒する場面が多いのは気になるところか。

 ジョンシーは左ハイでコプリフレンスキーのマウスピースをふっ飛ばし、前蹴りで転倒も誘い、そのたびにガッツポーズで優勢をアピール。ただ、ジョンシーの顔も鼻血にまみれており、油断はできない。終盤にかけてはコプリフレンスキーがワンツーや左右フックからの左ミドルを連続で決めてみせた。

 互いのスタイルとテクニックを存分にぶつけ合った好勝負。ジャッジ1名が3ポイント差でコプリフレンスキー、残り4名が1ポイント差でジョンシーを支持した。

 再戦を制したジョンシーは「30-27の判断はよく分からないが、接戦だったとは思っている。コプリフレンスキーは優れた選手だ。自分はその相手に2連勝した。メインイベント(ライト級タイトルマッチ)がどちらに転がろうと、自分にとってはリベンジマッチ。雪辱は果たしたいと思う」とアピールした。


Featured Fight
▼GLORYフェザー級アジアトーナメント 準決勝② 3分3R
○マァン・ガオファン[Goafeng Meng](22=中国)
判定5-0 ※29-26、30-25、30-25、30-25、30-25
×久保政哉(26=日本)
※ガオファンがトーナメント決勝進出。

 4連敗中の久保が復活を目指してトーナメント出場。地元中国の若武者ガオファンと拳を交えた。通算戦績は久保が17勝12敗1分(5KO・TKO)、ガオファンが28勝4敗(16KO・TKO)となっている。

 1R、構えはガオファンがオーソドックス、久保がサウスポー。序盤は久保が左ミドルと左ハイを積極的に蹴る場面も見られたが、時間の経過と共にガオファンがパンチのコンビネーションで主導権を取る。ガオファンの拳は強力かつ正確で、久保はガードの外側から左右フック、内側にから右ストレートと左右アッパー、そして腹には右ストレートを次々と叩き込まれてしまう。

 ガオファンのヒザ蹴りと右ハイも喰らった久保は何度も頭を振ってノーダメージをアピールするが、足元はおぼつかず、クリンチも増え気味。すると終了間際、ガオファンの左アッパーと右フックで久保は完全に足が泳ぎ、とどめの左フックでついにダウンを喫する。久保はゴングに救われるかたちで生還となった。

 2R、久保がいきなり左ハイを浴びせにかかるが、ガオファンはブロックして再びガードの隙間から捻じ込むようにパンチの連打。久保はクリンチに逃れようとするも、ガオファンに左ジャブからの右ストレートと右フックを連続で打ち込まれ、前のめりにダウンする。

 なんとか立ち上がる久保。すぐにガオファンはパンチで追撃に向かう。久保は目の焦点も定まっておらず、サンドバッグ状態となるが、それでも倒れずに時おり左ハイと右ジャブを返す。ガオファンも打ち疲れたか、空振り後にヒザを着く場面も。久保がここもなんとか生き残る。

 3R、左ハイと左ミドルを蹴りまくる久保だが、ガオファンの軽めの右ローでバランスを失うほどやはり足にきているようだ。ただ、ガオファンも徐々に疲れが出始めて攻撃は失速。一矢報いたい久保は懸命に蹴りを当てるものの、形勢を変えることは難しく、試合はこのまま終了となった。

 ガオファンが2度のダウンを奪い、大差の判定勝ちで決勝進出。久保はKO負けこそまぬがれたが、GLORYで厳しい5連敗となった。

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Featured Fight
▼GLORYフェザー級アジアトーナメント 準決勝① 3分3R
○リヴァー・ダズ(26=オーストラリア)
判定5-0 ※29-28、29-28、29-28,、29-28、29-28
×フー・ビンチィェン[Binqian Hu](21=中国)
※ダズがトーナメント決勝進出。

 ダズはフィリピン系オーストラリア人で、WMC同国王者の肩書きを持つ。通算戦績は26勝1分(6KO・TKO)。GLORYでは過去2試合を戦っている。

 対するビンチィェンは通算戦績が12勝5敗2分(5KO・TKO)。GLORYには初参戦となる。

 構えは両者共にオーソドックス。1R開始早々からハイスピードバトルが展開され、特にビンチィェンはパンチが一度回転し始めるとなかなか止まらない。ダズの反応も速く、ビンチィェンはストレート系のパンチと前蹴りでカウンターを取られる場面も。

 試合が動いたのは3R。前がかりになるビンチィェンに対し、ダズが顔面へのヒザ蹴りと前蹴り、さらにカウンターの右ストレートを効かせる。ここで後退を見せたビンチィェンは後半に手数を戻して食い下がるも及ばず。ダズが満場一致の判定勝ちで決勝に駒を進めた。


Superfight
▼ミドル級 3分3R
○スゥン・チァォ[Chao Sun](中国)
TKO 3R 46秒
×ファーカット・ガサノフ(カザフスタン)

Superfight
▼フェザー級 3分3R
○キム・ジンヒョク(韓国)
TKO 1R 3分00秒 ※ドクターストップ
×ルゥー・ドォンチィァン[Dongqiang Lu](中国)

Superfight
▼ヘビー級 3分3R
−アンドレイ・ヒョンラッセンチャック(ロシア)
ノーコンテスト 1R 1分09秒 ※偶発的なローブロー
−ブルーノ・チャヴェス(ブラジル)

Superfight
▼ライト級 3分3R
×ヴラッド・トゥイノフ(ロシア)
TKO 3R 23秒
○ブルーノ・ガザニ(ブラジル)

Superfight
▼フェザー級 3分3R
×トーン・フェアテックス(タイ/同級7位)
TKO 2R 2分22秒
○ヂァォ・チゥァンリン[Chuanlin Zhao](中国)

Prelim
▼ウェルター級 3分3R
○イュ・ヂィェンホォン[Jianhong Yu](中国)
判定5-0 ※29-28、29-28、29-28、29-28、29-28
×ドォゥ・イュンロォン[Yunlong Dou](中国)

Prelim
▼女子スーパーバンタム級 3分3R
○セリーナ・フローレス(アメリカ)
判定3-2 ※28-29、28-29、29-28、29-28、29-28
×ヂァン・マァン[Meng Zhang](中国)